新入社員研修の適切な期間|業務に上手く繋げるための5つのコツ

最終更新日: 2024/05/10 公開日: 2024/02/29

4月になると新入社員が入社し、一斉に研修が始まります。フレッシュな新入社員の顔を見ると、早く即戦力になってほしいと期待が膨らむのではないでしょうか。

しかし、新入社員研修を毎年のことだからと惰性で繰り返し、良い結果を得られずにいる企業もあるようです。

新入社員研修を受ける人は毎年変わり、自社を取り巻く環境も変化し続けているため、研修もその年に合ったものにする必要があります。

この記事では、新入社員研修の期間にスポットを当て、以下の内容について説明します。

  • 新入社員研修の一般的な期間
  • 新入社員研修の内容
  • 新入社員研修の期間の決め方
  • 新入社員研修を成功させるコツ

新入社員研修で効果的に教育したい人事担当者や、新入社員の離職率の高さに悩んでいる経営者の参考になる記事ですので、ぜひ最後までお読みください。

新入社員研修の一般的な期間

新入社員研修の期間は職種によって異なります。事務系の職種であれば1か月以内の研修期間が設けられていることが多いですが、技術系の専門職の場合は3か月程度研修を行います。

技術系の研修期間が長い理由は、身につけなければいけない知識やスキルが多いためです。最初は全職種の新入社員に対する研修を行い、そのあとで技術系の専門的な研修を実施しています。

新入社員研修の内容

新卒の新入社員は社会人として初めて自社に入社するため、学ぶべきことがたくさんあります。そのため、入社してすぐに実施される新入社員研修の内容は多岐にわたります。

  1. 社会人としてのマインドセット
  2. ビジネスマナー
  3. ビジネススキル
  4. 自社の理解

基本的な内容が多いですが、自社で働くうえで必要なものを研修に入れましょう。

1. 社会人としてのマインドセット

新入社員の中には学生時代の気分が抜けずに入社している人もいます。会社員になると責任を持った行動が求められます。

社会人が持つべき意識や考え方を教えることで、会社の一員として働く意味を見出すことが大事です。

自社の中には様々な価値観を持つ人が在籍していますが、自社のビジョンや理念をもとにした行動指針を作成し、研修後も統一した指導ができるようにしておきましょう。

2. ビジネスマナー

新入社員研修で教える基本的なビジネスマナーは以下のような内容です。

  • 敬語
  • あいさつ
  • 身だしなみ
  • お辞儀
  • 名刺の渡し方
  • 電話応対
  • メールの送り方

取引先や顧客などと信頼関係を構築するために、ビジネスマナーは最低限必要です。新入社員がビジネスマナーをできずに恥をかかないためにも、実践を通して研修をする必要があります。

ビジネスマナーは一朝一夕で身につくものではないため、研修が終わっても配属先での行動を見ながら繰り返し教えることが重要です。

3. ビジネススキル

ビジネススキルには一般的なものと専門的なものの2種類があります。一般的なビジネススキルは以下のような項目で、どの業務にも必要なスキルです。

  • ITスキル
  • 報連相
  • 時間管理
  • コミュニケーションスキル
  • 論理的な思考
  • 課題解決能力
  • プレゼンテーションスキル

専門的なビジネススキルは、職種や部署ごとに異なります。業界用語や自社独自のシステムなどを教えます。専門スキルは配属先で実践しながら教えることが多いです。

新入社員に自社の業務を広く知ってもらうためには、ジョブローテーションが効果的です。各部署に2週間程度お試しで配属し、それぞれの業務に就かせることで新入社員の適性を見ることもできます。

4. 自社の理解

新入社員が自社の一員となるために、自社に対する理解は必須です。自社で統一して認識されている項目を教えます。

  • 企業理念・ビジョン・ミッション
  • 事業目的・社会貢献・価値観
  • 組織図・役員構成・社員
  • 歴史・組織文化
  • 商品・サービス

新入社員は就職活動である程度の知識をつけているはずですが、自社に愛着を持ち、長く勤められるように深く理解してもらうのがポイントです。

新入社員研修の期間を決める3ステップ

新入社員研修を実施する際、期間を決めてから内容を決める方法を取りがちですが、それではクオリティの高い研修ができません。

研修期間の正しい決め方は、以下の3ステップです。

  1. 研修の目標を決定する
  2. 研修内容を決定する
  3. カリキュラムの期間を決めて合算する

最初に研修の目標を決め、目標にあった研修内容を決めた後に期間を決めるという順番です。期間ありきで内容を決めるのではないことに注意してください。

1. 研修のゴールを決定する

研修のゴールとは、研修後の新入社員の姿です。研修のゴールが不明瞭では研修に一本筋の通った統一感がなくなります。

新入社員は研修のゴールがわからなければ、研修で何を身につければ良いのかがわからず研修を受ける意味をなくしてしまいます。

研修のゴールを決めるには、人事担当だけでなく各部署の代表者の意見も聞くことが大事です。新入社員は各部署に配属されるため、働く姿を間近で見るのは配属先の先輩社員や上司だからです。

2. 研修内容を決定する

研修内容を決める際は、身につけてもらいたいスキルやマインドを具体的にリストアップします。すべての項目を新入社員研修で教えられない場合は、実践の方が身につきやすい項目をOJTで学ばせることを考えましょう。

過去の受講者のアンケートや研修担当の意見を参考にすると、必要な研修内容がわかります。

座学ではなく、実践式のロールプレイや受講生同士で考えるグループワーク、ディスカッションなどの方法を取り入れて実施することでより理解が深まるでしょう。

3. 研修内容から期間を計算する

具体的に研修内容が決まれば、それぞれの項目ごとに必要な期間を計算します。研修内容ごとに期間を計算すれば、余裕を持った期間設定が可能です。

最後に計算したすべての期間を合算すれば、必要な研修期間がわかります。合算した研修期間が研修可能な期間よりも大幅に超過してしまった場合は、再度研修内容を考え直しましょう。

新入社員研修を成功させる5つの方法

新入社員研修を成功させることができれば、配属先での仕事へのモチベーションが高まります。

ユームテクノロジージャパン株式会社が2022年卒の新入社員に対して実施した「新人研修の満足度調査」では、新人研修に満足した新入社員の93.2%がモチベーションが高まったと回答しました。

同じ調査で新人研修に満足できなかった新入社員の中で、転職を検討している人が63.2%います。(参照:ユームテクノロジージャパン株式会社「22卒社員の新人研修の満足度調査」

新入社員研修を成功させることは、研修後の仕事に対する姿勢に繋がり、離職率の低下に貢献します。

1. 研修期間は長すぎても短すぎてもいけない

新入社員研修が長すぎるとだらけてしまい、入社時のモチベーションが下がってしまいます。短すぎると必要な研修ができず配属後に苦労したり、研修内容が薄く満足度が上がらなかったりという問題が起こります。

研修期間は学生時代から社会人としての切り替えタイミングですので、新入社員の意欲を下げず、十分に育成できる期間を設定しましょう。

2. 研修する量に余裕を持たせる

学生時代から社会人へと環境が大きく変わるため、新入社員研修では様々なことを学ばせたくなりますが、余裕のあるスケジュールを設定しましょう。

研修で教えなければならないことと配属先で教えるべきことを区別し、配属先でできることはOJTやメンター制度を活用して教えると効率的です。

1つの項目を研修し終えた時点で確認テストを実施してメリハリをつけると、モチベーションが下がりにくくなります。

3. 研修目的を新入社員に示す

研修目的とは、会社が新入社員に求めていることです。

目的を新入社員が知ることで、研修のゴールが明確になり向上心が高まります。ただ学ぶだけの研修から能動的に意識づけができるため、研修が意義深いものとなるでしょう。

また、会社側も目的を明確にしておくと、必要な研修内容や適切な研修時間をわかります。

4. 研修内容を社員に共有する

新入社員研修が終わっても受講者はまだ一人前の社員とは言えません。配属先で先輩や上司から指導を受けながら成長していくのです。

そのため、現場の社員と研修担当者は密に連絡を取り合い、教えたことと教えていないことの情報を共有する必要があります。

研修で教わっていないことを学んだこととして現場で指導してしまうと、新入社員は不安を感じます。現場に配属されても矛盾のない指導を行うことが重要です。

5. 現場のフォロー体制を整える

新入社員研修と現場では周りの雰囲気が異なります。研修は学びの部分が大半を占めますが、現場に配属されると人間関係を一から構築し仕事をしなければなりません。

新入社員の緊張や不安を和らげるためにも、現場でのフォロー体制を整え受け入れる姿勢を作りましょう。新入社員研修期間中から現場の社員とコミュニケーションが取れることが望ましいです。

短い期間でも新入社員研修で成果を上げる5つのコツ

多くの企業が新入社員研修はしっかりと実施したくても人的にも時間的にもリソースが少ないため、短期間で終わらせて配属先で戦力となってほしいと考えています。

ここでは短期間でも成果を上げられる新入社員研修のコツを5つ紹介します。

  1. 対面形式とオンラインセミナーを併用する
  2. 新入社員研修の効果測定をする
  3. 外部講師に依頼する
  4. フォローアップ研修を実施する
  5. 懇親会を開催する

新入社員の不安を払拭し成長を促せるような研修を取り入れ、長く自社で働いてもらえるように研修計画を立てましょう。

1. 対面形式とオンラインセミナーを併用する

ベネッセホールディングスが実施した新入社員研修の意識調査によると、対面形式とオンラインセミナーを併用した企業は全体の45%です。回答した企業の意見には以下のようなものがありました。

  • オンラインセミナーのみでは緊張感に欠け、対面形式では疲れるため、使い分けるのが良い
  • オンラインセミナーを受けてから対面形式で研修をすると質問の質が高くなる
  • オンラインセミナーのみでは新入社員の不安を払拭できない

(参考:ベネッセホールディングス「2023年度新人研修に関する意識調査」

対面形式とオンライン研修の利点を上手く使い分けることで、新入社員研修の効果が大きくなったと実感している企業が多いことがわかります。

新入社員はオンラインセミナーを見ることで予習と復習ができ、対面形式での研修に対する理解が早くなり、新入社員研修実施の意義が高まります。

2. 新入社員研修の効果測定をする

新入社員研修は毎年行われます。よって受講した社員にアンケートやヒアリングを行い、満足度を確認し次年度に向けて改善していく必要があります。

2013年6月に株式会社ディスコが実施した社員研修のアンケートでは「受講直後のアンケート調査等による受講者の満足度評価」をしている企業は60.5%でした。(参考:株式会社ディスコ キャリアリサーチ「社員研修に関するアンケート」結果

研修の効果を測定するには、研修前後にテストを行ったり、業務内で研修内容を理解できているか都度確認するのが効果的です。

新入社員研修はどの年度もやることが同じになりがちですので、形骸化しないように毎年ブラッシュアップを心がけましょう。

3. 外部講師に依頼する

新入社員研修では社内の人間が講師となることが多いですが、講師となる人は担当の仕事と研修の実施で業務量が増えてしまうことが課題です。

株式会社ジェイックの教育研修に関する調査では、人事や教育担当のリソース不足に40%以上の企業が悩んでいます。(参考:株式会社ジェイック「2022年度教育研修の実態と課題」

最近は外部講師に新入社員研修を依頼している企業が増えています。外部講師は教育専門のプロであるため、教え方のばらつきがなく必要な知識を効率的に教えられることが利点です。

ビジネスマナーやビジネススキルには一般的な内容が多いため、外部講師を活用しやすいです。

4. フォローアップ研修を実施する

フォローアップ研修は、新入社員研修の3か月後や6か月後などに行う研修のことです。業務に慣れた頃に研修を再度実施することで、知識やスキルの定着を狙うとともに、悩みや不安の解消が期待できます。

2022年に公表された厚生労働省の調査によると、新卒で入社した後3年以内の離職率は30%を超えています。(参考:厚生労働省「新規学卒就職者の利殖状況(平成31年3月卒業者)」

高い予算をかけて採用し教育したにもかかわらず3年以内に離職してしまうと自社にとって損失となりますので、定期的なフォローアップ研修も新入社員研修の一環として企画しておきましょう。

5. 懇親会を開催する

株式会社manebiが実施した新入社員研修の動向調査によると、新型コロナウイルスの感染防止対策が緩和されたことにより、2023年度からリアルの交流会を増やす企業が53.3%という結果でした。(参考:株式会社manebi「2023年新入社員研修に関する動向調査」

それまではオンラインセミナーのみだった新入社員研修が、対面形式を復活できるようになり、より交流に力を入れるようになったとわかります。

新入社員に早く会社に慣れてもらうためには、一緒に働く社員とのコミュニケーションが欠かせません。懇親会を開催することで、配属後の意思疎通がしやすくなります。

新入社員研修の期間が適切であれば配属先で活躍が見込める

この記事では、新入社員研修の期間を決める方法や研修を成功させる方法などを説明しました。

新入社員研修が他の研修と異なるのは、受講者が社会人として第一歩を踏み出す新卒だということ。そのため、研修期間を入社直後にまとめて取り業務に必要なことを学ばせています。

研修期間は長すぎると学生気分が抜けずだらけてしまい、短すぎると教育不十分なまま業務に取り組まなければなりません。

満足度の低い研修をすると離職率が高まる原因になるので、適切な研修期間を設定することが大事です。

自社の研修期間は適切なのか、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。

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最終更新日: 2024/05/10 公開日: 2024/02/29