- 有料セミナーにはクーリングオフが適用されるのだろうか?
- クーリングオフの対象になる場合とならない場合の区別とは?
- 申込みのキャンセルとクーリングオフはどう違うのだろう?
このような疑問を感じていませんか?
今回は、クーリングオフの概要とセミナーでの扱いについて解説します。
セミナー受講者を募集する際の注意点も併せて紹介しますので、セミナー開催を予定している方はぜひ参考にしてください。
クーリングオフとは
そもそもクーリングオフとはどのような制度なのか、概要を確認しておきましょう。
クーリングオフが適用されるケース、適用されないケースを把握しておくことが大切です。
クーリングオフが可能な取引・期間
クーリングオフとは、特定商取引法第48条に定められている制度のことです。
消費者が契約を締結した後でも、原則8日以内であれば契約を無条件に解除できることが民事ルールとして認められています。
クーリングオフが適用される取引と期間は次の通りです。
取引の種類 | 期間 |
・訪問販売 ・電話勧誘販売 ・特定継続的役務提供 ・訪問購入 |
8日間 |
・連鎖販売取引 ・業務提供誘引販売取引 |
20日間 |
ポイントは、突然の訪問や勧誘によって消費者が十分に考える時間を確保できない状況で契約している点です。
契約をする際、しっかりと返金制度が契約書に明記されているかどうかはとても大切なところです。
たとえば訪問販売であれば、セールス担当者が唐突に訪ねてきたことで、言われるがままに契約してしまう場合もあるでしょう。
冷静に考えた上で申込みの撤回や契約の解除ができるようにすることで、消費者を保護するのがクーリングオフの主な目的です。
クーリングオフ期間はいつから起算するか
クーリングオフが可能な期間は8日間ですが、問題は「いつから起算して8日間と考えるか」という点です。
クーリングオフ期間の起算日は、申込みや契約に際して消費者が法定書面を受け取った日と考えてください。
別の見方をすると、申込書や契約書が発行されなかった場合、クーリングオフが有効な期間が不明確になります。
同様に、書面の記載内容に不備があれば8日間を過ぎてもクーリングオフが認められるケースも考えられるのです。
起算日は申込書・契約書が基準になるという点をしっかりと押さえておきましょう。
クーリングオフが適用されない取引の例
例1:通信販売
消費者庁では、通信販売を次のように定義しています。
通信販売の場合、消費者が自らの意思で商品を選び、申込みや契約を決断したと見なされます。
消費者が広告を見て自ら申し込んでいない場合、通信販売とは認められません。
アポイントメントセールスや電話勧誘販売には「売り込み」が介在しているため、通信販売に含まれない点に注意してください。
例2:事業者間取引
クーリングオフは消費者保護を目的とした制度のため、法人間取引など事業者同士の契約には適用されません。
法人名義で購入した物品・契約したサービスは、クーリングオフの対象外です。
クーリングオフは対個人の取引にのみ適用される点に注意しましょう。
有料セミナーはクーリングオフの対象になる?
次に、有料セミナーの開催を告知して受講者を募る場合、クーリングオフの対象になるのか確認していきましょう。
中途解約や取消権についても、クーリングオフとの違いをしっかりと押さえておく必要があります。
募集方法によっては対象になる
結論からお伝えすると、有料セミナーがクーリングオフの対象になるのは一定の条件を満たした場合に限られます。
具体的には、営業電話や対面営業を通じて受講者を獲得した場合はクーリングオフが適用されると考えてください。
一方、Web広告やLPを見た人が自らの意思でセミナーに申し込んだ場合、クーリングオフの対象にはなりません。
参加予定者が勧誘されて申し込んだのか、自分の意思で申し込んだのかが重要なポイントとなるのです。
中途解約との違い
前述の通り、特定継続役務提供もクーリングオフの対象ですが、数ヶ月間など長期にわたるセミナーの場合はどうでしょうか。
実は、特定商取引法の規制対象となるのは以下に挙げる7つの「指定役務」に限られています。
・エステティック 1ヶ月を超えるもの
・美容医療
・語学教室 2ヶ月を超えるもの
・家庭教師
・学習塾
・パソコン教室
・結婚相手紹介サービス
ビジネス関連のセミナーは上記の7つの役務に該当しないため、長期にわたって開催してもクーリングオフの対象にはなりません。
セミナー期間中に受講者が何らかの理由で受講を取りやめたい場合、中途解約によって受講を停止するケースが多いでしょう。
クーリングオフが「無条件で」契約を解除できることに対して、中途解約は条件付きにできる点が大きな違いです。
中途解約の統一ルールは法律で定められていないため、中途解約時の規定をあらかじめ定めておく必要があります。
すでに受講した分を返金額から差し引いたり、一定の回数を受講した後は返金に応じないルールを定めたりするのが一般的です。
取消権が認められるケース
特定商取引法では、次に挙げるような誇大広告による勧誘を禁止しています。
・実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示
誇大広告によって契約や申込みに至った場合、契約自体を無効とする「取消権」の行使が認められています。
セミナーの場合、「確実に効果がある」と謳うなど、過大な宣伝をすることのないよう注意しなければなりません。
セミナーを企画する際には、上記の点も踏まえてタイトルやキャッチコピーを検討することが大切です。
クーリングオフに関する情報を明示する重要性
クーリングオフが適用されるセミナーの場合、クーリングオフに関する情報を明示することが非常に重要です。
クーリングオフに関する情報を明示する目的として、主に次の3点が挙げられます。
クーリングオフ期間の起算日を明確にするため
クーリングオフ期間は、前述の通り法定書面を発行した日から8日間です。
8日間という期間はあくまでも民事ルールであり、係争が起きた場合に被害回復を図る際に根拠となる私法上のルールといえます。
クーリングオフ規定が明示されていない場合、申込者は無期限でクーリングオフができると誤解しかねません。
トラブルを未然に防ぐためにも、セミナー申込者に誤解を与えない表記をすることが非常に重要です。
クーリングオフの期間の起算日については、申し込み時に発行する規約等に明示しておくのが得策でしょう。
法的な争いを回避するため
クーリングオフに関する情報を明示しない場合、申込者がクーリングオフ期間が過ぎたことに気づかない可能性は十分にあります。
クーリングオフ期間を過ぎてから受講料全額の払い戻しを受けるには、契約自体が無効だったと主張する必要があるでしょう。
法定書面の不備や不実の告知が行われた事実があったことなど、セミナー主催者側の落ち度について法的に争うことになってしまいがちです。
申込者にあらかじめクーリングオフに関する情報を明示することで、法的な争いにならないよう、事前に対策を講じておきましょう。
参加検討者に安心して申し込んでもらうため
クーリングオフについてセミナー主催者から情報が開示されていれば、参加検討者はより安心して申し込むことができます。
申込者にとって明らかにメリットのある情報のため、「きちんとしている」「怪しいセミナーではなさそうだ」と感じるでしょう。
セミナーに申し込む人が少なからず懸念することの1つに、期待していた内容と全く違っていたという状況が挙げられます。
申込後は受講料が一切返金されないとすれば、たとえセミナーの内容に興味があっても申込みを躊躇する人もいることでしょう。
一方、クーリングオフの情報を確認したことによって、万が一の場合も「受講料は払い戻される」という安心感につながります。
クーリングオフに関する情報の明示が、セミナー参加を検討している人の背中を押してくれる場合もあるのです。
セミナー受講者を募集する際の注意点
クーリングオフの対象になる・ならないを問わず、セミナー受講者を募集する際に注意しておくべきポイントがあります。
特定商取引法や消費者契約法など、関連する法律をきちんと押さえておくことが大切です。
次に挙げる注意点はセミナーの規模や受講料を問わず、必ず実践しましょう。
特定商取引法に基づく表記を明示する
通信販売はクーリングオフの対象になりませんが、特定商取引法の対象となる点に注意してください。
Webサイトに掲載されたセミナーの案内を見た人が、自らの意思で申し込むケースも通信販売に含まれます。
特定商取引法に基づく表記を明示することは、有料セミナーを開催するのであれば必須事項です。
具体的には、下記の項目例を参考にWebサイト等に「特定商取引法に基づく表記」を掲載しましょう。
・事業者の名称
・販売責任者名
・住所、電話番号
・メールアドレス(メールで広告を送る場合)
・販売価格
・申込みの有効期限
・申込みの撤回やキャンセルの方法
・支払方法
・支払期限
・引き渡し方法と時期
クーリングオフが適用されるセミナーの場合は、上記に加えてクーリングオフに関する特約も記載する必要があります。
特定商取引法に基づく表記は努力義務ではなく「義務」のため、項目に抜け漏れのないよう十分に注意しましょう。
申込み完了時に書面を交付する
特定商取引法では、事業者が契約を締結する際に重要事項を表示した書面を交付することを義務づけています。
対象となる取引は、通信販売を除く全ての取引です。
重要事項として記載する項目や文字の大きさにもルールがあります。
以下の事項を8ポイント(官報のフォントサイズ)以上で記載した書面を作成し、申込者に渡しましょう。
・販売価格(役務の対価)
・代金(対価)の支払時期、方法
・商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
・契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項(クーリング・オフができない部分的適用除外がある場合はその旨含む。)
・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
・契約の申込み又は締結を担当した者の氏名
・契約の申込み又は締結の年月日
・商品名及び商品の商標又は製造業者名
・商品の型式
・商品の数量
・引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
・契約の解除に関する定めがあるときには、その内容
・そのほか特約があるときには、その内容
出典:消費者庁「特定商取引法ガイド」
適正な範囲でキャンセル料を設定する
セミナー申込者が申込みを取り消した場合のキャンセル料は、事業者の判断で無制限に決められるわけではありません。
消費者契約法9条において「平均的な損害の額を超える」損害賠償額は無効と定められているからです。
参考までに、セミナーズでは下記の通りキャンセル料を定めています。
2) 開催3日前以降前日までのキャンセル ⇒ 参加費の50%を頂きます
3) 開催当日キャンセル ⇒ 参加費全額を頂きます
キャンセル料は、申込者の恣意的なキャンセルを防ぐためにも必要なルールといえます。
上記の場合、開催3日前以降のキャンセルは極力控えてほしいというメッセージになっているのです。
適正な範囲でキャンセル料を設定することで、開催日直前の参加予定人数の大幅な変動を防ぎましょう。
まとめ
有料セミナーにクーリングオフが適用されるのは、通信販売以外の方法で個人を対象に集客したケースです。
クーリングオフの対象となるかどうかは、募集方法がカギを握っているという点を必ず押さえておきましょう。
クーリングオフが適用される場合は、特定商取引法で定められたルール通りに運用する必要があります。
今回解説してきたポイントと注意点を参考に、ぜひトラブルのないセミナー運営を実践してください。
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