Appleがマーケティング戦略で大事にしている6つのポイント

最終更新日: 2024/06/11 公開日: 2022/11/17

「なぜAppleは多くの顧客を獲得できているのだろう?」

「なぜAppleの商品は多くの顧客に好かれているのだろう?」

「自社でもAppleのようにお客様にリピーターになってもらいたい」

と考えている人もいるでしょう。

Appleは大企業でCMを何度も放送したり、都会の一等地に店を構えたりできるから商品を買い続けてもらえるのではありません。

緻密で洗練されたマーケティング戦略があるのです。

この記事では、Appleのマーケティング戦略を通して、自社や自社商品のファンやリピーターを獲得する方法を解説します。

Appleという会社について

Appleはアメリカのカリフォルニア州に本社がある多国籍企業です。

Google、Amazon、Facebook(現Meta社)、Microsoftと並んで「GAFAM」と呼ばれ、世界的な大企業と認識されています。

iPhone、iPad、Mac、Apple WatchなどのApple製品を見ない日はないくらい、Apple製品は日本でも浸透しています。

Apple製品を持っていなくても、創業者の故スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションの様子を見たことがある人は多いでしょう。

アメリカのブランディングサービス提供会社であるインターブランド社が公表した「Interbrand Best Global Brands」では、Appleは2012年から10年連続で1位を獲得しており、そのブランド価値は4800億ドル以上にのぼります。
PR TIMES『インターブランド「Best Global Brands 2022」レポート「ブランド価値」によるグローバル・ブランドランキングTOP100を発表』参照)

今でこそAppleは人気の企業ですが、30年前のAppleはビジネスに失敗し、会社の売却や買収が検討されていたこともありました。

Appleの危機的状況を救ったのが、故スティーブ・ジョブズでした。

彼が打ち出す製品一つ一つに顧客は惹きつけられていきました。そして、Apple製品を好んで購入するようになったのです。

現在のCEOはティム・クックですが、CEOが変わっても飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し続けています。

なぜAppleは今のような地位を築くことができたのかを、次章から解説していきます。

Appleのマーケティング戦略で大事なもの

Appleには確固としたブランディング戦略があります。

ブランディングとは、自社や自社製品のポジションを明確にし、「〇〇と言えば××」とイメージ付けをすることです。

ブランディングが浸透すると、人々は自社や自社製品に愛着を持つようになります。

ブランディング戦略はマーケティング戦略を決めるよりも大事な要素であるため、まずブランディング戦略を決定し、その次にマーケティング戦略を策定するのが一般的な手法です。

Appleのブランディング戦略の特徴には、6つのポイントがあります。

  1. 他社が真似できない独自性
  2. メッセージ性のあるストーリー
  3. シンプルなデザインの追求
  4. わかりやすい操作性
  5. 高級感の演出
  6. ライフスタイルの提供

これら6項目を見るだけでも、何となく思い当たるものがあるのではないでしょうか。それぞれ詳しく説明していきましょう。

他社が真似できない独自性

Appleの独自性は、製品のデザインと、故スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションにあります。

Apple独自のデザイン性は、そのデザインを見るだけで「Apple」をイメージしてもらえ、Apple製品の認知に役立っているのは明らかでしょう。

Appleのシンプルなデザインが好きで購入する人もおり、他社とは違う独自性がブランドの価値となっています。

そして、故スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは、Apple製品を効果的に宣伝し、印象付けていました。

綿密に計算され、スマートに見せたプレゼンテーションは、今となってはどの企業も新商品を同じスタイルで発表するくらいメジャーとなっています。

メッセージ性のあるストーリー

Appleが1997年に作成したテレビコマーシャルに「Think Different」があります。

「Think Different」のコマーシャルは、「クレイジーと周囲からけなされている人が偉人となった。彼らは世界を変え、前進させた。世界を変えられると信じている人だけが世界を変えることができる」というメッセージを伝える内容でした。

コマーシャルの最後にAppleのロゴマークがあるだけで、製品の宣伝をしているわけではないのですが、このコマーシャルは多くの人の共感を呼びました。

このように、Appleは消費者にプラスの感情を抱かせ、Apple製品を購入することで、少し特別な気分になれるような宣伝をしています。

製品の機能性も重要ではありますが、Appleでは機能が良いという価値よりもApple製品を購入した後の消費者の感情やイメージを大事にしています。

つまり、Apple製品を使用していると、自分が創造性あふれる人間になれたような気がする、芸術的センスがあるように感じるという気持ちをつくっているのです。

シンプルなデザインの追求

Appleと言えば、リンゴのマークやシンプルでおしゃれな製品を思い出す人が多いと思います。

1998年に発売されたiMacは、そのデザイン性からライバル企業や消費者は度肝を抜かれました。

それまでのデスクトップパソコンは、白や薄いベージュ色の角ばった形で、機械的な雰囲気のするものでしたが、カラフルなボディを持つiMacは、他社と一線を画していました。

iPhoneも同じで、今では画面にボタンがないものになっていますが、iPhone8までは、画面に丸いボタンが1つあるだけの、他社とは違う独自のデザインです。

Appleのシンプルさを追求したデザインは、シンプルだからこそ真似されづらく、ライバル他社の製品と差別化ができています。

わかりやすい操作性

Apple製品は、シンプルなデザインを叶えるために、設計もシンプルになっています。

シンプルな設計は、誰でもApple製品を操作できる手軽さと直感的な操作性を持つ製品となりました。

故スティーブ・ジョブズは、iPodの開発担当者に「電源ボタンをなくしなさい」「3タッチですべての曲に行き着けるようにしなさい」といった難題を突き付けて、感覚的に操作ができるiPodが生まれました。

故スティーブ・ジョブズの使いやすさに妥協をしない姿勢が、便利な操作性を生み出したのでしょう。

iPhoneにも、気づかないところに便利さがちりばめられています。

  • Webページの最下部までスクロールした際、Webページが跳ね返るように戻る
  • 下から上へスワイプするとホーム画面に戻る
  • ロック画面からでも、すぐにカメラ機能が使える
  • アプリをタップすると、そのアプリのアイコンを起点にアプリが開かれる
  • 「Hey Siri」と言えば、Siriが起動する
  • 指紋認証やFace ID

単純な操作性は、消費者にとって、Apple製品を選択する理由の1つになります。

それは、故スティーブ・ジョブズが遺した「あるひとは顧客が欲しいものを与えよというが、私は顧客が欲しいものを彼らがそれに気づく前に理解する」という言葉にもあるように、顧客の気づかない欲望を満たしているからです。

高級感の演出

Apple製品には、スタイリッシュなデザインと相まって、高級感があります。

製品自体のデザインだけでなく、手触りやサイズ感など、細部まで配慮されており、実際の値段も安いとは言えない金額です。

他にも、高級感は店舗やディスプレイでも演出されています。

Appleの店舗は、すべてがAppleブランドを守るため、高級感を演出するために統一されています。

  • 一面がガラス張りになっている
  • 大きなガラス窓がある
  • 天井が高い
  • ディスプレイの間隔が広い
  • 立方体に近い店の構造
  • 都会の一等地に店を構える

Apple製品を扱う他の店舗であっても、店内のポスターや装飾、プライスカードなどの細かい部分まで指定があり、守れないとApple製品を扱えなくなってしまうという厳格なルールも定められています。

店内に入ると、案内係に話しかけられ、接客担当者が1人ついて製品を選ぶのを手伝ってくれるというサービス面も、Apple以外ではあまり見かけません。

ハード面とソフト面の両方からApple製品は高級だと感じさせ、Apple製品を持つのはステータスであると消費者に考えさせています。

ライフスタイルの提供

Appleは、ただ自社製品を販売しているだけなのではなく、自社製品を通じてライフスタイルを提供しています。

iPhoneやiPad、Apple Watchなどを使うことで生み出されるオシャレで魅力的なライフスタイルを得るために、顧客はApple製品を買い続けるのです。

Apple製品はただのガジェットではなく、ライフスタイルをより良くするためのツールとして認識されているのは、昔からCMでも繰り返し言葉を変えながら伝えられていたからです。

例えば、iPhoneのCMでは快適なライフスタイルが表現されていました。

「こんなにたくさんの中から選んだことも、こんなに簡単にダウンロードしたことも、そしてこんなふうに楽しんだこともきっとないはず。そう、iPhone以外ではね」(2008年8月のCM)

「アプリケーションを手に入れるたび、毎日のちょっとしたジレンマを解決。それがiPhoneなんです」(2009年2月のCM)

「そう、すべてを叶えるアプリケーションが揃ってるんです。iPhoneにはね」(2009年4月)

「iPhoneがあれば、なんでも簡単にできるんです」(2010年4月のCM)

「iPhoneだけの楽しみがまた1つ」(2011年7月のCM)

このようなCMが繰り返し放送されていたことで、消費者は「iPhone=ライフスタイルをより良くするもの」と認識していったのです。

Appleのブランド価値が資産となる

Appleのブランド価値は4,800億ドル以上ありますが、実際に目に見える価値ではありません。

人々が「Apple」という会社名を聞いた時に、iPhoneやiPadといった商品がイメージでき、デザインの良さや使いやすさなどを思い出せるのが、ブランドの価値となります。

つまり、「Apple」というブランドが確立され、価値を生み出しているのです。

ブランドの価値が高まると、様々なメリットがあります。

  • 消費者はApple製品を持つことに特別感や優越感を感じられる
  • 消費者がApple製品の品質やサービスに安心感を持つことができる
  • 消費者がApple製品を指名して買うようになる
  • 良い口コミが増えて、新規顧客をたくさん獲得できる
  • 価格競争から抜け出すことができる
  • リピーターが増える

ブランドの価値が高い場合、Apple製品を一度購入した人は、素晴らしい購入体験や使用体験から、新機種が発売される度に購入を考えたり、他のApple製品を持ちたいと思ったりするようになります。

Appleは大きく宣伝しなくても、消費者が勝手にApple製品を購入する環境がつくられていくのです。

ブランディングの確立でリピーターを増やしましょう

この記事では、Appleがマーケティング戦略で大事にしているブランディングについて解説しました。

スタイリッシュなデザインや簡単な操作性など、「Apple」といえばイメージするものはたくさんあります。

カリスマ性のあったスティーブ・ジョブズがいたからできたことと考えるかもしれませんが、Appleのブランディングの要素を抜き出せば、自社でもブランド価値を向上させることは可能です。

それは、商品を購入した顧客の感情を動かすことです。顧客の生活を良くすることで、感動を与えられれば、その顧客はリピーターとなるでしょう。

故スティーブ・ジョブズは、開発者に大変な注文をつけると有名でしたが、それは顧客視点に立っていたからだと言えます。

「顧客が製品を使いやすいと思ってくれるか」

「顧客が製品をずっと持ちたいと思ってくれるか」

このように考えると、おのずと自社のブランディング戦略は見えてくるのではないでしょうか。

三方よしマーケティング特別セミナー

「絆徳(ばんとく)の経営スクール(MBS)」は、中小企業経営者に必要なマーケティングの知識や考え方などが体系的に学べるセミナーです。

「絆徳(ばんとく)」とは「あなたがよいことをするので、ずっと一緒にいられる関係性」という意味です。

自らが顧客にとって「よいこと」をすれば、顧客は自社のファンになってくれるでしょう。
そして自社の売上が上がります。

自社の利益だけを追及するのではなく、社会性・理念と経済合理性を矛盾なく両立させることが絆徳経営です。

セミナーでは実際に自社ビジネスに活用できる実践的スキルや、マーケティングによってビジネスを拡大した成功事例を学べます。

自社だけが良いのではなく、顧客や社会にとっても良いビジネスをするために「三方よしのマーケティング」をぜひ学んでください。

最終更新日: 2024/06/11 公開日: 2022/11/17