組織文化とは、組織内で作られる暗黙の価値観やルールのことです。
組織文化は、不確実な時代において企業が変化に対応する力を高めます。また、組織内で社員が共通の目標に向かって一致団結するために大切なものです。
今回は、組織文化の概要や重要性、組織文化を変えて改革する方法や優れた文化を持つ企業事例を紹介します。
組織文化とは
組織文化は、企業やチームが目指す目標や夢を実現するために共有する暗黙のルールや価値観の集まりのことです。
組織文化研究の第一人者である米心理学者のエドガー・シャインは、組織文化を「ある特定のグループが外部への適応や内部統合の問題に対処する際に学習して創られて発展するパターンである」と定義しています。
つまり、組織文化は市場や顧客のニーズなど外部の変化する状況に対応し、社内の業務効率や一体感を高めるために大切です。
組織文化が根付いている企業は社員は共通の目標に向かって自然と力を合わせられ、外部の変化や社内の問題に柔軟に対応できます。
組織文化と組織風土の違い
組織風土は、社員が直接感じる職場の空気感を表し、社員が日常的に感じる職場の特徴のことです。目に見える形で現れるのが特徴で、例えば、リラックスした雰囲気での会議、明るく開放的なオフィス環境などがあります。
一方、組織文化は職場で共有される深い価値観や信条を表すものです。表面上は見えにくいものですが、職場の基本的な動きを決定づけています。
具体的には、失敗を恐れずに新しいアイデアを試す風潮、正直さや透明性を基本とする企業の姿勢などです。
組織文化と社風の違い
社風は、組織文化が日常の職場環境や社員の振る舞いにどう影響しているかを示します。つまり、組織文化は会社の「心」であり、社風はその「顔」です。
例えば、ある会社の組織文化がチームワークと協力を大切にする文化を持っているとします。社風は、社員が気軽に意見交換できる環境を醸成したり、定期的な社内イベントが開催されたりすることに表れるのです。
組織文化が必要な理由
組織文化は、企業の意思決定や社員の心構え、そして企業規模や業績のアップの基礎となる重要な要素です。
企業に組織文化が必要である主な理由は、以下の通りです。
- 経営陣はどう動くべきかについて同じ方向を向きやすくなり、素早く明確な意思決定ができる
- 社内で共通の組織文化があれば、個人や部門間で異なる考え方を持っていてもその違いを乗り越えられる
- 良い組織文化は、社員が働く上でのモチベーションにつながり、仕事への満足感を高められる
企業独自の組織文化を作ることは、経営を円滑に進める役割となります。
反対に一貫した強い組織文化がないと、企業は成長の過程で遭遇する問題を解決するのが難しくなるのです。
経営者は、社内の組織文化を常にチェックして改善に励むことによって、企業は長期的に成長できます。
組織文化の構成要素
組織文化を構成する要素には、主に5つの種類があります。
次に、組織文化の構成要素の内訳を紹介しますのでご覧ください。
ミッション・ビジョン・バリュー
ミッション、ビジョン、バリューは、会社の心臓部とも言える大切な要素です。これらは会社が目指す目標や社員が共感しやすい価値観、仕事の取り組み方の指針を表します。
社員が日々の業務を進める上で迷った際に、決断や行動、考え方の参考になるもので組織文化の基盤です。
リーダーの言葉や行動、価値観
リーダーの言動や価値観は、社員の仕事の取り組み方に大きな影響を与えます。そのため、リーダーは自身の理念に沿った振る舞いを心がけることが大切です。
例えば、リーダーが「失敗は成功のもとである」という考え方を大事にしていれば、挑戦を恐れない組織文化が育ちます。
社員の採用
企業の文化を強化し維持するためには、人材採用がとても重要です。
組織の価値観に合った人材を選ぶことで職場の雰囲気が良くなり、社員のモチベーションが上がります。
評価・報酬制度
評価・報酬制度は、社員がどのような行動をすればよいかや会社が何を重視するかを示します。
例えば成果を重んじる会社では目標達成が評価の基本となりますが、プロセスを大事にする会社もあります。評価・報酬制度の内容には、それぞれの会社に独自の文化が生まれるのです。
企業の歴史・ストーリー
会社の歴史やエピソードを社員と共有することで、社員が会社の価値をより深く理解して共感するきっかけになります。
社員は自分たちの仕事を通じて会社の価値観を実践するためのモチベーションを得られるのです。
例えば、企業の創業理由や困難を乗り越えた話、新しい製品を開発した過程の話などがあります。
組織文化の4つのタイプ
ミシガン大学のロバート・クイン、キム・キャメロンは、効果的な組織の指標を研究した人物です。二人は組織文化において4つのタイプがあることを発見しました。
次に、組織文化の4つのタイプを解説します。
階層型文化
階層型文化は、組織がスムーズに機能するために秩序と安定を大切にします。はっきりしたルールと上下関係があり、それが迅速な対応や安心できる職場環境を作り出すのです。
ただし、新しいアイデアや変化を取り入れる際には、柔軟性が不足する可能性があります。
創造型文化
創造型文化は、新しい考え方や変化を積極的に受け入れる文化です。社員が自分のアイデアを自由に表現し、創造力を発揮することがすすめられます。
リスクを取ってでも新しいことに挑戦する姿勢が求められるため、安定を求める人には不向きです。
市場志向文化
市場志向文化は、顧客の要望を第一に考え、そのニーズに応じて迅速に行動することを心がける文化です。市場の変動に素早く対応する能力が求められます。
市場志向文化は競争が激しい業界において成果を出すことが特に重要とされ、目標達成を重視する人に適しています。
ただし、協力や時間をかけたプロセスを大切にする人には不向きです。
家族的文化
家族的文化は、社員同士が家族のように互いを思いやり、支え合うことを大切にする文化です。チームワークと密接な人間関係を重視し、共通の目標を達成するために信頼と協力を促します。
家族的文化はチームで働くことを好む人に適していますが、独立して働きたい人には不向きです。
組織文化の作り方・改革方法
次に、職場に新しい組織文化を作る方法、または既存の組織文化をなくし改革する方法を紹介します。
現状の組織文化を評価して課題を洗い出す
組織文化を変えるための最初のステップは、現状をしっかりと把握し、どこに問題があるのかを見つけ出すことです。問題を理解することでどのように改善していくかの方向が明らかになり、行動計画を立てやすくなります。
具体的には、社員が会社の目標や大切にしている価値にどれだけ心から共感しているかをチェックしてみましょう。
これには、アンケートや面談が役立ちます。また、社内だけでなく、顧客や取引先、外部の専門家など様々な立場の人たちからも意見を集めることが大切です。
外からの視点で意見を聞くことで、社内では気づかない組織文化の特徴や問題点を発見し、貴重な情報を得られます。
理想の組織文化を決定する
次のステップは、組織が目指すべき理想の文化を決めることです。
組織の目標や大事にしている価値観とマッチするはっきりしたビジョンを立て、それに沿った理想の行動指針を作ります。
一つ目のステップで明らかにした問題点をどう解決し、どうやって理想的な文化に近づけるか考えるのがこのステップです。
行動指針を作るときは今の組織文化で守っていきたい部分を確認し、変えた方が良い点とそのまま保持する点を区別しましょう。
組織文化の改革を成功させるためには、社員全員の意見を聞き皆が納得する文化を築くことが重要です。そのために、全社員に向けたアンケートを行い、社員の希望や期待を新しい文化に反映させます。
組織の主要メンバーを選んで話し合うことで組織全体の意見を集め、理想の文化を決定するようにしましょう。
改革のビジョンを全社員に共有する
次に、改革のビジョンを全社員に共有します。ここでは、改革の理由と具体的な内容をわかりやすく伝えましょう。
例えば、全社会議やオンラインアンケートを通じて、改革プランを共有します。組織文化を変えるためには、社員全員が改革の内容をきちんと理解して賛成することが重要です。
行動計画を実行する
最後のステップは、行動計画を実行して組織文化を浸透させることです。
まずは、リーダーは目指すべき組織文化の手本となる行動を取りましょう。リーダーの姿勢が社員にとって良い模範になります。
また、経営者と社員が直接話ができる会議を定期的に行い、皆がお互いをよく理解できるようにしましょう。このようなコミュニケーションを活発にすることで、会社内での情報の共有がスムーズになります。
組織文化を定期的にチェックしてより良くするためには、社員が自由に意見を交換できる場を設けることが重要です。ワークショップや1on1ミーティングなどを使って、意見を出しやすい環境を作りましょう。
組織文化を根付かせる際の注意点|逆機能に注意
組織文化を作る際には、組織文化の逆機能に注意してください。
組織文化の逆機能とは、組織文化が強すぎることで、会社の柔軟性がなくなることです。社員全員が同じように考えたり行動したりすると、新しい提案や変化を受け入れるのが難しくなることがあります。
例えば、長く働いている社員と、入社して日が浅く新しい考えを持っている社員の間で意見がぶつかることがあるのです。
逆機能を避けるためには、会社が様々な意見を歓迎して認め合い個人の成長を大切にする文化を育てることが重要です。そうすることで、イノベーションを促進し、変化を恐れない人材を集められます。
組織文化の企業事例
最後に、革新的な組織文化で成功している企業事例を紹介します。
ユニクロ
ユニクロで有名なファーストリテイリング社は、社員全員が経営に参加する「全員経営」の革新的な組織文化を持っています。この文化では、社員全員が経営者の目線を持ち、会社の意思決定に積極的に関わるのです。
ユニクロでは、社員が経営的な視点を持てるように教育し、経営に関する意思決定に参加することをすすめています。
社員は自分の仕事が会社全体にどのように影響するかを理解しより良い判断ができるのです。
例えば、人事評価の際には、社員の経営に対する理解度や意思決定への積極的な参加を重要なポイントとしています。
社員は自分の成長が会社の進化にどう貢献するかを考えるようになるのです。
「全員経営」は、社員一人ひとりが積極的に価値を生み出し、顧客のニーズに応えることを最優先に考える革新的な組織文化です。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、組織文化の変革を成功させた企業の一例です。2001年に始まった「トヨタウェイ」という文化は、同社が世界中でビジネスを行う上での指針となりました。
トヨタ自動車は時代の変化に合わせて、この組織文化を「トヨタウェイ2020」としてアップデートしました。この変革の中心にあるのは、「人材は企業の貴重な財産であり、その育成が企業の競争力と成長につながる」という考え方です。
「トヨタウェイ2020」では、誠実に行動する、物事を深く観察する、競争を楽しむといった10の原則が企業理念として示されました。これらの原則は、変わり続ける世の中に柔軟に適応し、成長し続ける姿勢を表しています。
トヨタ自動車は、組織文化を時代に合わせて適切に更新することで、市場の変化や顧客のニーズに応え続けているのです。
アマゾン
アマゾンは、「リーダーシップ・プリンシプル」と「Day One」に基づいた企業運営が特徴です。この二つの取り組みが組織文化を作っています。
「リーダーシップ・プリンシプル」は、16つからなる行動指針を定めたものです。社員が日々の業務や意思決定を行う際のガイドラインとなっています。
内容は、顧客中心の決断、継続的な学習、高い基準の維持などから作られています。
また「Day One」は、スタートアップの精神を大切にし、常に初日のような緊張感と使命感を持って業務に取り組む考え方です。この考え方で仕事に取り組むことで、社員の素早い意思決定や効果的な問題解決につながっています。
アマゾンは、独自の原則を定めることで世界中の100万人以上の社員に働き方の指針を示し顧客により良いサービスを提供しています。
参考:Amazonについて
組織文化は現状の見直しから
今回は組織文化について、概要や必要な理由、構成要素や変える方法、企業事例などを幅広く解説しました。
組織文化とは、企業内で醸成される暗黙の価値観や共通のルールのことです。組織文化を改革して変えていくには、自社の組織文化を見直して評価し、問題点を特定することから始めましょう。
成功している企業事例を参考にしながら、自社に適した方法を見つけてみてください。
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