相互理解とは、お互いの考え方や価値観を知り、理解し合うことです。
- 組織における相互理解とはどんな意味?
- 相互理解を深めるメリットやデメリットが知りたい
- 相互理解を深める方法が知りたい
このように考えている方もいるでしょう。
組織において相互理解ができているかどうかによって、業務効率や業績に関わってくる可能性があります。
相互理解を深める方法を理解し、職場の人間関係を構築していきましょう。
相互理解とは?
働き方の変化や時代の流れによって、組織における相互理解の重要性が注目されるようになりましたが、実用レベルで理解できている人は少ないでしょう。
そこでこの記事では、そもそも相互理解とはどんな意味があるのか、相互理解が重要視されている背景について詳しく解説します。
相互理解とは考え方や価値観を理解し合うこと
お互いの考え方や価値観を知り、理解し合うことを相互理解といいます。
相互理解に部署や役職、関係性などは関係ありません。
上司や部下、同僚同士など、関係性の垣根を超えてお互いのことをよく知り、理解し合うことが相互理解です。
相互理解を深めて相手のことを深く知ることで業務がスムーズに進むほか、コミュニケーションの円滑化などの効果が期待できます。
相互理解に深く関係がある「心理的安全性」について詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
相互理解が重要視されている背景とは
近年、働き方の変化や人間関係の複雑化によって相互理解がさらに重要視されるようになりました。
相互理解が重要視されている理由はおもに次の2つです。
働き方改革によるリモートワークの普及
政府が進めている働き方改革の影響や、新型コロナウイルスなどの影響によってリモートワークの普及率が高まりました。
リモートワークはネット環境があればどこでも働けるというメリットがある反面、コミュニケーションが希薄になりやすいというデメリットがあります。
というのも、リモートワークの場合、コミュニケーションのおもな手段はチャットや電話、メール、Web会議などに限られます。
気軽に声をかけて会話ができる対面の環境とは違い、リモートワークの場合はどちらかが発信しない限りコミュニケーションを取ることができません。
そのため、意思疎通がうまくできなかったり、信頼関係が築きにくかったりなど、業務に支障をきたすことも少なくないのです。
だからこそ、相互理解の重要性に焦点が当たるようになりました。
ハラスメントなどの問題が表面化
近年ではセクハラ、モラハラ、パワハラなど、人間関係における配慮の無さが原因となるハラスメントが社会問題となっています。
職場に専門の相談窓口を設置する企業も増えました。
ハラスメントは加害者が一方的に行っていることもありますが、認識のズレによって加害者と被害者の立場が生まれてしまうケースも少なくありません。
事実に関わらず被害者が声をあげれば、自動的に加害者が生まれてしまうこともあるでしょう。
このような思い込みによるハラスメントは、相互理解ができていれば防げる可能性があるのです。
相互理解を深めるメリット
相互理解を深めるメリットはおもに次の3つです。
- 業務効率化や生産性アップに役立つ
- コミュニケーションが取りやすくなる
- マネジメントがしやすくなる
このように、相互理解を深めることによって、職場に大きなメリットをもたらします。
業務効率化や生産性アップに役立つ
相互理解を深めて部署やチーム内で信頼関係が構築され、意思疎通ができるようになれば、業務効率化や生産性アップにつながります。
お互いのスキルを把握すれば、不足している部分をフォローし合って効率的に業務を進めることができます。
また、性格や仕事への取り組み方を把握すれば、接し方を工夫することができるため、チームワークの向上が見込めます。
また、部署やチームのベクトルを合わせることで、業務のムダがなくなったり、新しいアイデアが生まれたりなど、生産性アップにつながるでしょう。
コミュニケーションが取りやすくなる
相互理解を深め、お互いを受け止めることで安心してコミュニケーションが取れるようになります。
たとえばミーティングにおいても、上司や部下などの垣根を超えて気軽にアイデアや意見を言えるようになるため、新しいアイデアが生まれやすく、精度が高くなります。
また、業務フローや社内の制度についても意見が出やすいため、福利厚生や業務環境などをブラッシュアップすることができるというメリットがあります。
マネジメントがしやすくなる
相互理解を深めることによって、部署やチームのメンバーがお互いの強みや性格を把握すれば、最適なポジションに人材を配置できます。
それぞれの強みを無駄なく活用できるようになるため、業務効率の向上が見込めるでしょう。
性格や業務の取り組み方も考慮して人材を配置できるので、部署やチーム間でトラブルが起きにくくなるのも相互理解を深める大きなメリットの一つです。
相互理解を深めることは、適切な人事評価をするためにも重要な役割を持っています。
相互理解がうまくいかないことで生じる問題
相互理解を深めるメリットはたくさんありますが、反対に相互理解がうまくいかないと社内でさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
社内のトラブルは業績の低下や信用問題につながることもあるため、注意が必要です。
離職率が上がる可能性がある
「職場のハラスメントについての定量調査」によると、実際にハラスメントに悩む人の中には、ハラスメントを訴えることによって自分が損をしたり、ハラスメントがエスカレートしたりするのを恐れ、およそ2割の人が離職を選んでいるという調査データがあります。
また、同調査によるとハラスメント被害の6割以上が上司によるものという結果になっており、会社内で加害者への具体的な対処が取られた例は少ないという現状があります。
ハラスメントはコミュニケーション不足や捉え方の違いによって起こるケースが多く、ハラスメントの被害者は多くの場合、休職などの段階を踏んでから退職を選んでいるのです。
早めに対処したり、相互理解を深める取り組みを行っていれば、ハラスメントによる退職は防げる可能性があります。
反対に何も施策をしないまま、ハラスメントが常態化すると優秀な人材を失い、会社の損失につながってしまう可能性も十分にあるのです。
部下の離職を防ぐ方法が知りたい人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
部門間の連携ミスが起こりやすくなる
会社における相互理解とはお互いの価値観や考え方を理解し合うだけではなく、お互いの業務内容を理解することも含まれます。
部門間で業務の内容や業務フローが理解できていないと、連携が取れず、ミスにつながる可能性があります。
また、部門間でコミュニケーションが希薄になると、認識ミスや確認ミスなどのトラブルに発展するケースも例外ではありません。
プロジェクトが円滑に進まなくなる
メンバー間の相互理解がうまくいかないと業務の振り分けがうまくいかず、プロジェクトの進行に支障が出る可能性があります。
プロジェクトはチームが一丸となって進める必要があるため、方向性の認識ミスによって無駄な業務が増えたり、連携がうまく取れなくなったりするケースも少なくありません。
相互理解がうまくいけば、お互いの得意なスキルや性格の傾向を理解し合うことができているため、適切に業務を分担してスムーズにプロジェクトを進めることができるでしょう。
モチベーション低下につながる
上司と部下など、評価する側とされる側で相互理解がうまくできていないと、適切な評価ができなくなることがあります。
頑張っているのに認められなかったり、頑張っていない人が認められたりすると、仕事に対するモチベーションが低下してしまいます。
その結果、能力のある従業員が退職を選択することも少なくありません。
相互理解が深まれば、上司が部下のスキルや業務内容を平等に把握できるようになるため、適切な評価を下せるようになります。
相互理解を深める方法
相互理解を深めるためには、従業員同士のコミュニケーションを活性化させる必要があります。
相互理解を深めるのに役立つ主な取り組みは次の4つです。
- フリーアドレス制を導入する
- ジョブローテーションを実施する
- シャッフルランチや交流会を開催する
- 1on1ミーティングを実施する
フリーアドレス制を導入する
フリーアドレス制とは、社内に個別の決まったデスクがなく、範囲内であればどのスペースで働いてもいいという制度です。
フリーアドレス制は部署内に限定して実施されることもありますが、社内の広い範囲で実施される場合、部署やチームの垣根を超えてさまざまな立場の人が隣同士で働くこともあります。
フリーアドレス制を導入するメリットは、コミュニケーションの範囲を広げ、相互理解を深めたり、新しいアイデアを生み出したりできることです。
また、別の部署やチームのメンバーと交流することで、お互いの業務を把握できるというメリットもあります。
ジョブローテーションを実施する
ジョブローテーションとは、数ヶ月や数年といったように期間を定めて部署やポジションなどをローテーションする制度です。
ジョブローテーションのメリットはコミュニケーションの範囲が広がるため、社内の相互理解が深まりやすいほか、業務の適正を確認できる点です。
さまざまな部署やチームの業務を経験することで、他部門の業務への理解度も深めることができるため、導入する企業が増えています。
シャッフルランチや交流会を開催する
シャッフルランチとは、部署やチームの垣根を超えて、さまざまなメンバー同士でグループを組み、ランチに行って交流を深める取り組みです。
シャッフルランチのグループは役職に関係なく組まれるので、普段は交流することがない上司や新入社員など、幅広い従業員とコミュニケーションを取ることができます。
また、ランチだけでなく交流会やワークショップを開催するのも一つの方法です。
なかでもゲームやスポーツなどを通してチームワークの向上を目指すチームビルティング研修は、相互理解を深めるのに役立ちます。
1on1ミーティングを実施する
上司と部下がマンツーマンで個別に面談を行う1on1ミーティングも、相互理解を深めるのに役立ちます。
1on1ミーティングは、業務中にはなかなか聞けないことや気になっている点など、個別ミーティングだからこその意見が聞けるため、相互理解が深まります。
また、1on1ミーティングを実施することによって、従業員の不満やストレスが溜まりにくくなるため、離職率低下にも役立ちます。
カウンセリングに重要なポイントを知りたい人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
相互理解を深めるために大切なこと
相互理解とは、相手のことを知るために根掘り葉掘り聞き出すことではありません。
ここからは、お互いに理解を深めるために大切なポイントを解説します。
自己開示する
信頼関係が構築できていない相手に踏み込んだ質問をたくさんすると、かえって不信感を抱かせることになりかねません。
そのため、相手と相互理解を深めたいと思うなら、自分から自己開示するのがおすすめです。
人は相手から何かを受け取ると「お返ししたい」と感じる心理である「返報性の原理」が働きます。
そのため、自分の内面やプライベートな出来事を相手に伝えることで、相手も自己開示しやすくなるのです。
自己開示は相互理解を深められるのはもちろん、相手のパーソナルな情報を収集できるので、コミュニケーションが取りやすくなるというメリットもあります。
適度な距離感を持ってコミュニケーションをとる
相互理解を深めるためには信頼関係の構築がカギとなります。
信頼できない人には自分の内面や生い立ちを明かしたいとは思えません。
そのため、一度にプライベートな質問をたくさんするのではなく、適度な距離感を持ちながら相互理解を深めるための取り組みを行うのがおすすめです。
相互理解は短期間で急速に深まるわけではありません。
お互いに心地よい距離感でコミュニケーションを取ることが、相互理解を深める近道といえるでしょう。
相互理解を深めるための取り組み事例
相互理解の重要性を理解している企業は日本国内にもたくさんあります。
なかでも、今回は日本の大手企業の相互理解への取り組み事例を2つ紹介します。
株式会社ヤクルト本社
乳酸菌飲料の製造などで有名な株式会社ヤクルト本社では、ジョブローテーション制度を採用しています。
従業員は入社後10年間で3つの部署を経験できるように、一定期間で配属先が変わるシステムとなっています。
企画、総務、営業などの部署移動をはじめ、海外出向を経験することもあるため、業務や関わる従業員の幅が大きく広がるのが特徴です。
このジョブローテーション制度のおかげで、株式会社ヤクルト本社では、部門や営業所の垣根を超えてシームレスな業務連携が行われているそうです。
参考:CROSS TALK「総合職」座談会|Yakult Recruit 2025
株式会社資生堂
化粧品販売業大手の株式会社資生堂では、相互理解を深めるためにリバースメンター制度を実施しています。
メンターというと、経験豊富な先輩が専属で指導やフォローするというイメージがありますが、リバースメンター制度はその逆の発想なのがユニークなところです。
若手社員が役員に指導を行うことで、若者独自のアイデアや固定概念にとらわれない自由な意見を取り入れることができる制度になっています。
株式会社資生堂では、リバースメンター制度を取り入れたことにより、相互理解が深まったことはもちろん、新しい風を経営や商品開発に取り入れるのに成功しました。
まとめ
ビジネスにおいて相互理解の深さが業績や社内の雰囲気に直結することがあります。
リモートワークが普及し、コミュニケーションの希薄さが表面化するようになってからは、とくに相互理解の重要性が注目されるようになりました。
成功をおさめている大手企業のなかでも、相互理解を深めるための取り組みを導入している事例はたくさんあります。
会社という大きな視点はもちろん、個人間でも取り組めることはたくさんあるので、ぜひ相互理解を深めて円滑なコミュニケーションを目指してみてください。
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