- パーパス経営の具体的な意味がわからない
- パーパス経営のメリットやデメリットが知りたい
- パーパス経営の成功事例や失敗する理由が知りたい
時代が急速に変化し続けるなか、注目を集めているのが「パーパス経営」です。
選ばれる企業になるためには、環境や社会に貢献するパーパスを策定するのが必須とも言われています。
そこで今回はパーパス経営のメリットやデメリット、パーパス経営の成功事例を紹介します。
パーパス経営とは
「先の読めない時代」と言われるほど急速に変化する時代において、企業を長期的に存続させるために欠かせないのが「パーパス経営」です。
欧米をはじめ日本でも広がりを見せる「パーパス経営」について簡単に解説します。
社会における企業の目指すべき姿を決めて経営を行うこと
パーパス経営の「パーパス(purpose)」とは、もともと英語で「目的」や「目標」という意味で使われていました。
2019年にアメリカの経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、「企業のパーパスに関する声明」を発表したことによって、欧米を中心にパーパス経営に取り組む企業が増え始めたと言われています。
この声明が発表される前の欧米では、株主の利益優先の「株主至上主義」が横行し、自社の従業員や環境問題を犠牲にする短期的な経営方法が横行していました。
しかし、2015年に採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」などの影響を受け、ビジネスで社会貢献を実現し、企業の社会的な地位を明確にすることによって長期的な経営を実現する「パーパス経営」が注目されるようになりました。
パーパスについてさらに具体的に知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
パーパスとMVVとの違い
パーパスと混同されやすいのが「Mission(ミッション)」「Vision(ヴィジョン)」「Value(バリュー)」の頭文字を取った言葉である「MVV」です。
MVVはそれぞれ次のような意味があります。
- Mission(ミッション):企業が持つ使命
- Vision(ヴィジョン):企業が目指す将来像
- Value(バリュー):企業の価値観や行動の指針
ミッション(使命)とパーパス(目的)の言葉の意味が似ているため、混同されることも多いです。
ミッションは環境や社会に囚われず幅広い方向性があるのに対して、パーパスは社会貢献の目標で、対社会といった方向性に限定されます。
パーパス経営のメリット
必須の取り組みとも言える「パーパス経営」ですが、おもに次の4つのメリットがあると言われています。
顧客やクライアントからの支持が集まる
パーパス経営は自社のビジネスを通じて社会貢献を実現するため、企業のイメージアップにつながります。
顧客が商品やサービスを選ぶとき、もちろん価格や品質も大切な要素となりますが、何よりも重要なのは信頼感です。
ブランドのイメージが上がり、信頼感が高まれば、売上アップにつながるだけでなく、クライアントからも選ばれる企業を目指せるでしょう。
また、環境保護や人権問題の改善など自社のパーパスに賛同してもらうことで、新規顧客の獲得につながる可能性もあります。
従業員のモチベーションアップにつながる
従業員の働くモチベーションを維持するためには、労働環境や労働条件はもちろん大切ですが、やりがいや存在意義も重要です。
社会貢献できる明確なパーパスを策定すれば、自社のビジョンを認識できるほか、「自分が社会の一員として役に立っている」というやりがいを見出すことができます。
従業員のモチベーションが高まれば、生産性の向上や離職率の低下などの相乗効果も期待できるでしょう。
企業ブランディングにつがなる
パーパスを策定し、ホームページやSNSなどを通して自社の取り組みをPRすれば、企業ブランディングにもつながります。
たとえば環境や社会に貢献している会社であるというイメージが定着すれば、顧客が商品やサービスを選ぶ際に「この企業から購入しよう」と購買の後押しになる可能性があります。
また、企業のブランドイメージが明確になれば、求職者が就職活動する際に選ばれやすくなる可能性も高まるでしょう。
このようにパーパス経営で企業ブランディングを確立させれば、売上の向上や優秀な人材の確保にもつながるのです。
変化し続ける風の時代のマーケティングやブランディングの定義を知りたい人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
社内の意思決定がしやすくなる
社内で一丸となって目指せるパーパスを策定して経営を行うことで、自社のビジョンや目的が明確化できるため、事業戦略や行動計画が立てやすくなるでしょう。
たとえば新たな軸となる事業やプロジェクトを検討するときも、「自社のビジネスで利益を上げながら社会貢献できること」と方向性が決まっているため、軸がブレにくいというメリットがあります。
会議や日常の業務など、あらゆる面でコンセンサスが得やすくなるので、効率的かつ建設的な意思決定を行うことができます。
パーパス経営のデメリット
長期的なビジネスが目指せるパーパス経営は安定した経営を実現できる可能性がありますが、その反面でデメリットもいくつかあると言われています。
パーパス経営のおもなデメリットは次の3つです。
パーパスウォッシュに陥る可能性がある
パーパスウォッシュとは、策定したパーパスの実現に役立つ取り組みが行われていない状態を指します。
行動が伴わなければ、ただ単に目標を設定しただけでパーパス経営とは言えません。
パーパスを掲げているだけでは、まったく取り組みが行われていないと顧客やステークホルダーの不信感が募ります。
パーパス経営の導入によってかえって信頼を失ったり、利益が落ちたりする可能性もあるということを認識しておきましょう。
パーパスウォッシュを避けるためには、外部環境や内部環境の分析をしっかりと行い、自社の事業で実現できる現実的なパーパスを策定することが大切です。
すぐに効果を得られるわけではない
パーパス経営は短期的にリターンが見込める経営手法ではありません。
自社のパーパスを顧客やステークホルダーに周知するには、ある程度の時間と労力が必要となるほか、社会や環境を改善するのは一朝一夕で実現できるものではないからです。
パーパス経営の費用対効果を検証するためには、長期的な目線が必要になるということをあらかじめ理解しておきましょう。
自社の利益よりも社会貢献を優先してしまう危険性がある
パーパス経営によって社会や環境に貢献することによって、顧客やステークホルダーからの支持獲得や従業員のモチベーションアップにつながるメリットがあるのは事実です。
しかし、社会貢献に重点を置きすぎると自社の利益が失われる可能性があることを念頭に置いておきましょう。
社会に貢献することは大切ですが、自社の経営がうまくいかないと結果的に取引先や従業員にしわ寄せがいき、会社の存続が危ぶまれてしまいます。
パーパス経営は、あくまで事業がベースであることを忘れないようにしましょう。
パーパス経営の成功事例
パーパス経営を導入して成功している企業はたくさんあります。
有名企業の成功事例を3つ紹介するので、ぜひパーパス経営の参考にしてみてください。
また、従業員のモチベーションアップに役立つ年間計画の立て方を知りたい人は、こちらの記事もチェックしてみてください。
SONY(ソニー)
大手家電メーカーの「SONY(ソニー)」は、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」をパーパス経営の理念に掲げています。
これはソニーの持つ技術を活かして人々の生活を豊かにするという、ソニーの事業が大きく反映されたパーパスであると言えるでしょう。
ソニーは2019年に自社のポータルサイトでパーパス経営における取り組みを発表し、社内に事務局を設置してパーパスを社内外に浸透させました。
2020年には新型コロナウイルス感染症が大流行しましたが、「プレイステーション5」の発売や、「新型コロナウィルス・ソニーグローバル支援基金」の設立など、事業と社会貢献の両立を実現し、過去最高の利益を獲得しています。
NIKE(ナイキ)
世界的に人気を獲得し続けるスポーツメーカーの「NIKE(ナイキ)」は、世界的に問題となっている人権問題や子どもたちのスポーツ活動支援など、世界中の人々に信頼されるためのパーパスを掲げて積極的に取り組んでいます。
ナイキは次のようにパーパス経営の要件を取り決めているのも特徴的です。
- 正しいパーパス(存在意義)を見極める
- パーパス実現に向けて戦う
- 言葉だけでなく行動する
- 組織の内部からパーパス・ブランドを構築する
- 長期的にパーパスに取り組む
パーパスの策定だけでなく、自社のスタンスを明確にすることによって、さらなる信頼性の獲得につながっています。
東京海上ホールディングス
保険事業などを展開する東京海上ホールディングスは、創業から100年以上、経営理念である「お客様や地域社会の『いざ』を支え、お守りする」をパーパス経営の軸にして、業務を通して地域貢献に取り組んできました。
万が一の事故や災害にいち早く対応するだけでなく、事故や災害を防止するための活動にも力を入れています。
また、東京海上ホールディングスでは、日本だけでなく海外勤務に就いている社員も多く、世界各地に拠点が点在しても統制がとれるよう、CEO会議を開いてパーパスの社内への浸透に取り組んでいます。
パーパス経営が失敗する理由
パーパス経営が失敗してしまう理由として、次の3つの問題が発生している可能性があります。
自社のビジネスを長期的に成功に導くためにも、失敗する原因を知っておきましょう。
社内でパーパスの解釈に相違が生じている
自社で決定したパーパスはあくまで概念であり、各部門においては業務レベルまで落とし込む必要があります。
各部門ごとにパーパスの解釈が食い違うと、コンセンサスが得られない可能性があるので注意が必要です。
各部門ごとの認識のズレを防ぐためには、まずパーパスを策定する段階で経営陣だけでなく、各部門の代表者や従業員に参加してもらうことが大切です。
企業全体でパーパスを策定することによって従業員の参加者意識が高まり、パーパス経営がスムーズに進むでしょう。
パーパスに対する反感が生まれている
自社のビジネスを支えている従業員がパーパスに賛同できないと、パーパス経営がうまくいかないどころか、業務の生産性も低下する恐れがあるので注意が必要です。
パーパスに対する反感が生まれる理由として、従業員の業務を考慮してパーパスを策定できていない可能性が考えられます。
たとえば自社の業務とまったく関係のないパーパスを実現するとなれば、業務量が増えたり、業務の方向性を変更したりなどの手間がかかります。
また、あまりにも現実的ではないパーパスを掲げた場合、「きっと実現できないだろう」「綺麗事に過ぎない」という反感が生まれても仕方ありません。
パーパスの実現に大きく関わってくるのは自社を支える従業員です。
そのため、パーパスを策定する際は部門や部署ごとにヒアリングを行ったり、アンケートを実施したりして、現場の意見を反映させることが重要です。
事業や経営の業務レベルまでパーパスを落とし込めていない
事業や経営の業務レベルまでパーパスを落とし込めていないと、目標倒れとも言えるパーパスウォッシュの状態に陥りやすいので注意が必要です。
パーパスウォッシュに陥ると従業員や顧客、ステークホルダーなど、すべての方面から不信感が高まる可能性があります。
パーパスはいわば最終目標のKGIであり、KGIを達成するためのKPIや、タスクレベルのKDIを設定しなければ単なる「偽善」で終わってしまいます。
形だけの目標で終わらないよう、パーパスを策定するときは社内の部署や部門別に業務フローを分析し、パーパス策定後は業務レベルまでパーパスを落とし込む必要があります。
また、パーパスの軸がブレないよう、評価期間や評価基準を設定し、PDCAサイクルを回していくのも重要なポイントです。
まとめ
自社に最適なパーパスを策定して社会貢献を目指すことによって、顧客からの信頼獲得や従業員のモチベーションアップなど、さまざまなメリットが期待できます。
しかし、パーパスの策定方法を間違えると、かえって信頼性を失うことになりかねません。様々な角度から外部環境や内部環境を分析した上でパーパスを策定してみてください。
パーパス経営を成功させ、自社の利益を追求するだけでなく社会的にも有益な企業を目指していきましょう。
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