従業員エンゲージメントもワークエンゲージメントも企業にとって重要な概念です。
働く環境を良くすればエンゲージメントを高められると考えている人も多いですが、実は両者には明確な違いがあります。
「従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違いがわからない」
「従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントを向上させるにはどうすれば良いのか」
「従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントが向上すると得られるメリットは何か」
このように悩んでいる経営者のために、この記事では従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違いと共通のメリットについてまとめました。
それぞれを向上させるポイントも説明していますので、ぜひ参考にしてください。
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違い
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントは似ていると誤解している人もいますが、実はエンゲージメントする対象や構成要素が異なる言葉です。
意味 | 構成要素 | |
従業員エンゲージメント | 従業員が企業に対する愛着や会社に貢献しようという意識 | ・理解度 ・共感度 ・行動意欲 |
ワークエンゲージメント | 従業員が仕事をポジティブに捉えている心理状態 | ・活力 ・熱意 ・没頭 |
ここでは、従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの特徴について詳しく説明します。
従業員エンゲージメントの特徴
従業員エンゲージメントは、従業員が自社に対して愛着を持ち自社に貢献したいと思う状態のことです。ビジネスシーンでよく使われている言葉ですが、明確に意味が定義されているわけではありません。
従業員エンゲージメントには理解度・共感度・行動意欲の3つの構成要素があり、それらを高めることで従業員のモチベーションや生産性を向上させられます。
それぞれの言葉の定義は、以下の通りです。
理解度:従業員が自社の企業理念やビジョンなどを理解していること
共感度:従業員が自社の方向性や企業活動に共感していること
行動意欲:従業員が自発的に業務に取り組むこと
ワークエンゲージメントの特徴
ワークエンゲージメントは、オランダのユトレヒト大学に所属する組織心理学者のウィルマー・B・シャウフェリ教授が定義した概念です。
厚生労働省ではワークエンゲージメントを活力・熱意・没頭の3つの要素がそろい「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」と定義しています。
活力とは仕事からエネルギーを得ていきいきとしている状態で、熱意は仕事に誇りややりがいを感じている状態、没頭は仕事に熱心に取り組んでいる状態のことです。
厚生労働省が作成したマトリックス図によると、ワークエンゲージメントは仕事に対する活動水準が高く、仕事への態度・認知が肯定的な状態と示されています。
ワークエンゲージメントの逆に位置するのがバーンアウトです。バーンアウトは燃え尽き症候群と訳され、仕事にエネルギーを吸い取られて疲弊し仕事に対する興味や自信がなくなった状態のことです。
ワークエンゲージメントが高い人は、仕事にやりがいや誇りを感じて熱心に取り組みます。仕事にエネルギーを取られるのではなく活力を得られているので、自発的に業務を遂行していきます。
従業員エンゲージメントを向上させる5つの方法
ここでは、働きやすさの向上に加えて自社への理解度を高める施策とともに、従業員エンゲージメントを高める5つのポイントを解説します。
- 企業理念やビジョンの浸透
- 多様性のある働き方を認める
- 適切な人事評価と報酬体系の整備
- コミュニケーションの取りやすい職場環境づくり
- 福利厚生の充実
従業員エンゲージメントが高い企業は従業員が働きやすい環境をつくり、従業員は企業に貢献するというWin-Winの関係性が構築されています。
厚生労働省の発表では、働きやすさを高めるには「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」やワークライフバランスがとれた制度の制定が大事だとしています。
働きやすさは従業員エンゲージメントを高めるために必要な要素です。
1. 企業理念やビジョンの浸透
企業理念やビジョンは、企業の考えや方向性を示すものです。企業理念は自社の存在意義や顧客への価値提供の目的などを宣言し、社員にとって行動規範となります。
企業理念やビジョンは従業員に覚えさせるだけでは浸透しません。創業から今までどのような歩みがあり、企業理念に込められた思いなどをストーリーとして伝えると、従業員が共感しやすくなります。
経営者や管理者が率先して企業理念に基づいた行動を実践して見せることで、従業員のお手本となるでしょう。
2. 多様性のある働き方を認める
会社には子育てや介護などの生活事情を持つ従業員やプライベートを大切にする従業員など、様々な価値観の人が働いています。それぞれの従業員のワークライフバランスに最大限配慮した就業環境が必要です。
フレックス制度やリモートワークの導入など、時間や場所の自由をある程度認めることで多様性のある働き方につながります。
3. 適切な人事評価と報酬体系の整備
人事評価や報酬体系に不公平感があると、自社に対する不信感が生まれ従業員エンゲージメントは高まりません。
今までの年功序列では、勤務年数が長く年齢が高いことが高評価となりましたが、優秀な若手社員は公平に感じられないでしょう。
- 個々の実力や能力を公平に判断する
- 自社への貢献度や企業理念の体現度などを加味した公正な評価
- 評価に基づいた報酬を与えられる制度
などをつくることが大切です。
4. コミュニケーションの取りやすい職場環境づくり
社内のコミュニケーションが活発化すれば従業員同士が信頼関係を築け、情報共有や交換がしやすくなります。
部署内だけでなく違う部署同士でもコミュニケーションが取れると関係性が強まり、従業員の行動意欲や自社への愛着心につながるでしょう。
働き方が多様化するとコミュニケーションが取りづらくなる可能性があります。気軽に双方向のコミュニケーションが取れる社内SNSの利用や、親睦を深めつつ企業理念を共有できる社内イベントの実施などが効果的です。
5. 福利厚生の充実
福利厚生は従業員やその家族の健康や生活のために企業が実施する取り組みのことです。福利厚生を充実させることで、従業員は安心して暮らし働けると考えます。
社内食堂や仮眠室の設置で従業員が社内でリフレッシュできる環境や、住宅手当や家賃補助などの福利厚生が人気です。
自社が福利厚生を充実させると、従業員の行動意欲が向上しモチベーション高く業務に取り組むようになるでしょう。
ワークエンゲージメントを向上させる5つの方法
ワークエンゲージメントを向上させるには、仕事の資源と個人の資源の両方を増やす必要があります。
仕事の資源とは、上司・同僚からのサポートや上司からのフィードバック、スキルアップのための研修などのことです。個人の資源とは自信や自己肯定感などです。
仕事の資源と個人の資源を増やすための施策を紹介します。
- 適切な人員配置と評価・報酬制度
- 心理的安全性を確保した環境づくり
- 従業員が熱中する業務ができる時間の創出
- メンター制度などを活用した人材育成
- 業務の自動化
従業員が仕事に対して充実感を持つことで、高いパフォーマンスを発揮します。
1. 適切な人員配置と評価・報酬制度
従業員の強みを把握し適材適所を行い、出した成果や結果について公平な評価と適切な報酬を与えることで、ワークエンゲージメントを高められます。
自分の強みを発揮できる環境が整っていると、従業員は自発的に仕事に取り組みやりがいを感じられるでしょう。
配属された部署での人間関係が良好でお互いにサポートし合える状態であることも大事です。
2. 心理的安全性を確保した環境づくり
心理的安全性とは、自分の意見や気持ちなどを誰にでも率直に発言できる状態のこと。
心理的安全性がある環境では自分の意見を言っても、上司や同僚が拒絶せず罰することもないと安心できます。
心理的安全性が高い職場は、コミュニケーションが円滑化し信頼関係が築きやすい環境となります。新入社員であっても自発的に意見を言って職場の輪の中に入れるため、積極的な行動に結びつくでしょう。
誰でもいきいきと仕事ができるため、心理的安全性を確保することでワークエンゲージメントを高められるのです。
3. 従業員が熱中する業務ができる時間の創出
従業員の通常業務とは別に、自分が熱中できるプロジェクトなどに自由に取り組める時間を与えることで「活力」「熱意」「没頭」の3要素をそろえることが可能です。
Googleには「20%ルール」という制度があります。勤務時間の20%は自分がやりたいプロジェクトに取り組むという制度で、そこから様々なサービスが生み出されました。
通常業務とは関係のないプロジェクトであっても、従業員は充実感を得られるうえ、そのプロジェクトから端を発して自社の業績向上につながるかもしれません。
>Googleが実施している社員教育4つの方法|基本は社員を信じることにある
4. メンター制度などを活用した人材育成
メンター制度とは先輩社員が後輩社員の指導者として1対1で指導・教育する制度のことです。年齢や勤務歴が近いため、後輩社員は日常業務やキャリアの悩みなどを相談しやすく、多くの企業で取り入れられています。
仕事上の人間関係よりも深い関係を築きやすいため、指導側も受ける側もワークエンゲージメントが高まりやすい効果があります。
5. 業務の自動化
単純作業やルーティン業務を自動化することで、従業員の負担を減らしクリエイティブな業務に時間を割けます。毎日の決まった業務で創造的な取り組みができず、従業員のモチベーションが下がることはよくあります。
自動化にはAIや外部ツールが有効です。自社で自動化できる業務を整理し必要なサービスを選択しましょう。
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメント共通のメリット3つ
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントを高めることで得られるメリットには、共通のものがあります。
- 従業員のモチベーション改善
- 顧客満足度の向上
- 離職率の低下
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントが向上すると、自社の生産性向上や職場の活性化などにも繋がります。
1. 従業員のモチベーション改善
厚生労働省によると、働きがいを示すWEスコア(ワークエンゲージメントスコア)が高いほど指示や命令がなくても自発的に仕事に取り組み、他の従業員に対して積極的にサポートしているとの結果が出ています。
なお、WEスコアとは「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素を数値化したもので、厚生労働省では働きがいをワークエンゲージメントを用いて分析しました。
ワークエンゲージメントが高い従業員は仕事に対してポジティブな感情を持っているため、モチベーションを保って仕事ができると考えられます。
従業員エンゲージメントが高い従業員も自社への帰属意識が高く、自社に貢献しようという意識が強いため、積極的に仕事に取り組みます。結果的に従業員のモチベーションが上がり、職場の雰囲気が良くなるでしょう。
2. 顧客満足度の向上
厚生労働省の調査では、従業員のWEスコアが高いほど顧客満足度も向上する結果になりました。
愛社精神を持つ従業員が多く所属している企業は、従業員の仕事に対する意欲が高まりやすく、仕事に誇りを持ち熱心に取り組んでいます。その結果、商品・サービスの質が上がります。
従業員がいきいきと働いている姿は顧客に安心感を与えるため、企業全体の信頼度も高まり、顧客満足度が向上するのです。
3. 離職率の低下
厚生労働省の調査によると、WEスコアが高いほど従業員の定着率が高くなっていることがわかります。退職する従業員は仕事にやりがいを見いだせず、企業の方針に共感できない人が多いです。
従業員エンゲージメントが高いことは、自社の企業理念に共感して愛着があり不満が少ないことを意味します。ワークエンゲージメントが高い人は仕事にやりがいを感じています。
優秀な人材を定着させ採用活動を成功させるためにも、企業は従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの両方を下げない施策が大事です。
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントを高めて生産性アップ
この記事では、従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違いと向上させる方法やメリットについて説明しました。
従業員エンゲージメントもワークエンゲージメントも、従業員が自発的に業務に取り組み生産性をアップさせるために必要な概念です。
向上させる方法には共通点もあるため、自社のできる点から改善しエンゲージメントの向上を目指しましょう。
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