Googleが実施している社員教育4つの方法|基本は社員を信じることにある

最終更新日: 2023/10/10 公開日: 2023/10/10

Googleの社員教育は、日本の企業と大きく考え方が異なっています。優秀な社員がたくさん育っているGoogleの社員教育を自社にも取り入れたいと思っている経営者や人事担当者も多いでしょう。

Googleはどのように社員を教育しているのか、なぜ自由な企業風土なのに社員が育つのか気になっている人のために、この記事では以下の内容について説明します。

  • Googleの社員教育の考え方
  • Googleの社員教育の方法
  • コミュニケーションを活発にするGoogleの取り組み
  • Googleの社員教育を学べる書籍

Googleの社員教育の考え方

Googleの社員教育には3本の柱があります。

  1. 社員が本音で語り合える環境が重要
  2. 社員全員が学ぶ権利を持つ
  3. 挑戦しないことは失敗よりも評価が低い

これら3つの考え方は社員教育の根本を成し、業務でも指示待ちではなく自ら提案して意見を求めることが重要とされています。

Googleは自由な働き方で人気の企業ですが、社員教育にも発言する自由・学ぶ自由・挑戦する自由が与えられているのです。

1. 社員が本音で語り合える環境が重要

Googleでは、心理的安全性が確保されています。心理的安全性とは、会社の中で自分の意見や気持ちを誰に対しても安心して話すことができる状態のことです。

会議中に発言するときに「こんなこと言っては迷惑ではないだろうか」と考えて発言しなかった経験は誰にでもあると思います。

Googleでは発言を遠慮する必要がなく、もしその発言が的を射ていなかったとしても誰も批判せず聞きます。

心理的安全性が担保されているため、新入社員であっても発言できるのです。年齢や職歴に関係なくお互いに敬意をもって意見を言い合えるため、本音でのやり取りができます。

2. 社員全員が学ぶ権利を持つ

Googleは勤務地や職種、職歴や役職などに関係なく、どの社員も学ぶ権利を持っていると考えています。

社員が学ぶことが会社が成長することに結びついているからです。

社員に学ばせることは会社全体の責任であり、人事部や研修責任者だけが考えれば良いというものではありません。

Googleには学びの哲学があります。

学びはプロセスであり、一過性の出来事ではありません。しかしそのためには、学ぶためのモチベーション、学んだ事を実践する機会、そして継続的なフィードバックが必要です。
学びの機会は現実の世界にあります。特に変化やチャレンジに直面したときこそ、学びの絶好の機会です。
学びは個人的なものです。学びのスタイルや取り組めるレベルには個人差があります。
学びは社会的なものでもあります。Google では、社員が同僚からアドバイスやサポートを受けられるような環境づくりを支援しています。

Google re:Work「従業員間での学習プログラムを導入する」より引用

Googleは従業員同士の学びが組織文化の一部となるように、必要なサポートを続けています。

3. 挑戦しないことは失敗よりも評価が低い

Googleでは目標に100%の達成を求めておらず、失敗しても責めないという風土があります。目標の達成度は60%でも良いけれども、失敗を恐れずにチャレンジすることを推奨しているのです。

失敗しても挑戦したことが評価され、失敗しないことは挑戦しなかったことと考えられてしまいます。

目標がどんな結果であっても挑戦することに重きを置いていることは、社員の学びの機会を増やしていると言えます。失敗の経験が学びになり、社員の成長に繋がり、最終的には会社の利益となるのです。

Googleが実施している社員教育の4つの方法

Googleは社員の学習環境を大事にしています。社員の学びに対するモチベーションを重んじ、学習環境を整備しサポートすることで、社員は自信をもって業務に就くことができます。

社員に学ぶ自由を与えることは、クリエイティブな発想が生まれやすく、より良い商品やサービスにもつながることがメリットです。

1. 20%ルール

20%ルールとは、勤務時間の20%を自分の自由に使えるという取り組みです。自分の自由に使えると言っても、怠けて良いということではありません。

勤務時間では決められた業務をこなさなければならないため、個人の発想力やアイデアを活かすことは困難です。

自分の自由に使える20%の時間を使い、部署を超えてアイデアを実現させるために動いたり、業務内では学べないスキルを得たりします。

20%ルールを使ってできたプロジェクトには失敗したものもありますが、失敗までの過程で得たスキルなどが成功に繋がることも多くあります。

今世界中で使われているGmailは、20%ルールの失敗プロジェクトから得られた技術から生まれました。

2. OKR

OKRとは「Objective and Key Result」の略で、目標(Objective)と主な成果(Key Result)という意味です。「目標」がゴールであり「主な成果」はゴールを達成するための指標となります。

OKRの設定方法は、以下の通りです。

  1. 「目標」は数値化できないチャレンジングな内容を1つ決める。
  2. 「主な成果」は数値化できるもので、50%位の確率で達成できる内容を3つくらい決める。
  3. 部署内やチーム内でOKRを共有する。
  4. 達成期間が終われば「主な成果」の達成度をそれぞれ0~1.0で評価する。
  5. 「主な成果」の評価点の平均が「目標」のスコアとなる。

OKRは社内で共有されるため、社員がどのようにOKRを達成するために挑戦しているのかを確認し合えます。

3. Search Inside Yourself

Search Inside Yourselfは直訳すると「あなたの内面を検索せよ」です。略してSIYと呼ばれています。SIYはGoogleのエンジニアだったチャディー・メン・タンが20%ルールの時間を使って開発しました。

SIYは自己を知るためのプログラムです。仏教をベースにしたマインドフルネスと科学的根拠のある神経科学、自分をコントロールできるようになるエモーショナルインテリジェンスの3つをプログラムに組み込んでいます。

SIYを受講すると自分や周囲を客観的に認識し、自分の感情をコントロールしながら物事に対応できるようになります。

4. g2g

g2gは「Googler-to-Googler」の略語です。Googleでは社員を「Googler(グーグラー)」と呼んでいます。g2gは社員から社員へという意味です。

g2gは社員が持っている知識やスキルを別の社員に教えるという取り組みです。

従業員同士で教え合うことで、教わる社員は社内の最も詳しい人間に直接学ぶことができ、教える側の社員は教えることでより知識が深まり成長できます。

教える方法は研修などの座学もあれば、マンツーマンでコーチングするもの、学習コンテンツを作成する人など、さまざまです。

年間100種類以上のプログラムが用意されており、英会話やリーダーシップなどのビジネススキルもあれば、コーディングやヒアリングスキルなどの特定の職種に絞った内容もあり、社員が必要とするスキルが網羅されています。

人事部の講師が行うセミナーもありますが、それよりもg2gで社員が講師を務めるセミナーの方が多いというくらいg2gは活発です。

社員のコミュニケーションを活発化させるGoogleの3つの取り組み

Googleはコミュニケーションを通じた信頼関係を大切にしています。お互いを理解しているからこそ、心理的安全性が確保され議論を戦わせることができます。

また、社員同士で教えあうg2gもコミュニケーションが活発だからこそできる学びの環境であると言えるでしょう。

1. カフェやマイクロキッチンの設置

Google社内にあるカフェとマイクロキッチンはどちらも無料で利用できます。カフェでは昼食と夕食が提供され、マイクロキッチンでは軽食をとることが可能です。

カフェやマイクロキッチンでリフレッシュした社員の生産性向上を期待していると同時に、他部署の社員とコミュニケーションをとる機会も与えています。

会議などの仕事の場で交流するのではなく、食事の場をほかの社員と共有することはお互いの親密度を上げる効果が高くなります。

2. 全社ミーティングの実施

Googleでは毎週金曜の夕方にTGIF(Thanks God It's Friday)という全社ミーティングが行われます。ミーティングといっても、部署の垣根を取っ払ったコミュニケーションができる気軽なものです。

TGIFにはCEOや他の役員も参加して一般社員と直接会話することで、お互いの距離が近くなり、社員はCEOが何を目指して経営しているのかなどの考え方がわかります。

また、一般社員が現場で働いている中での思いや考えを直接経営陣に届けられるため、会社の問題点などの改善もスムーズです。

企業が成長し従業員が増えてくるにつれ、企業のトップと一般社員のコミュニケーションが希薄になりがちですが、TGIFを開催することで縦のつながりが強化されます。

3. 会議を長引かせない

Googleでは、会議を無駄に長引かせない様々な工夫があります。

  • 会議は30分間のみ
  • 会議は社員の判断で出欠を決める
  • 議事録は会議中に簡単に作成
  • 疑問があれば即解決する

1回の会議は基本的に30分間と決められています。1時間以上のミーティングを設定しようとしても、社員用のGoogleカレンダーでは50分までしか予定を入れられません。

会議が必要と感じなければ社員個人の判断で欠席することも可能なため、会議は本当に必要な時に必要な時間だけ実施します。無駄だと感じられれば出席する社員がいなくなるからです。

会議の議事録はGoogleドキュメントを使って会議中に作成し、Googleドライブ上で保存するため、会議のメンバーは誰でも好きな時に内容を確認し、必要であれば加筆修正することも可能です。

疑問があれば、メンバー以外の社員にも短時間だけ会議に参加してもらい解決させます。他の社員にも協力を呼びかけられるのは、日ごろのコミュニケーションの深さによるものです。

Googleの社員教育について学べる書籍3選

ここで紹介する3冊の本は、Googleで働いていた、もしくは現在も働いている人が書いています。

Googleの内部をよく知っている著者だからこそ、詳しく具体的に社員教育について説明されています。どの会社にも同じ社員教育ができるとは限りませんが、マインド面は真似できるのではないでしょうか。

タイトル著者名出版社名
サーチ・インサイド・ユアセルフ――
仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法
チャディー・メン・タン英治出版
ワーク・ルールズ! ―
君の生き方とリーダーシップを変える
ラズロ・ボック東洋経済新報社
How Google Works:
私たちの働き方とマネジメント
エリック・シュミット
ジョナサン・ローゼンバーグ
日経BPマーケティング

1. サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

引用元:Amazon

GoogleのマインドフルネスプログラムであるSIYの内容を、開発したエンジニアであるチャディー・メン・タンが説明した本です。

SIYはGoogle社内で多くの社員が受講し、人気を博しています。また、アメリカン・エキスプレスやLinkedInなどの大手企業も採用しているカリキュラムです。

この本では抽象的に説明されがちなマインドフルネスを、エンジニアの視点で科学的根拠に基づいたSIYの実践方法を誰にでもわかりやすく説明しています。

2. ワーク・ルールズ! ―君の生き方とリーダーシップを変える

引用元:Amazon

著者のラズロ・ボックはGoogleの人事担当上級副社長で、Googleの人事システムを設計した人物です。

Googleの大きな強みである組織や人事制度について書かれており、現在に至るまでのGoogleの試行錯誤がわかります。

社員に気持ちよく働いてもらうにはどうすれば良いか、社員が成長することにより組織も成長することなど、組織づくりに参考になる本です。

3. How Google Works: 私たちの働き方とマネジメント

引用元:Amazon

Googleの現会長で前CEOのエリック・シュミットと前プロダクト担当のシニア・バイスプレジデントのジョナサン・ローゼンバーグが、Googleの組織文化やマネジメントの教訓について書いた本です。

Googleには多くのスマート・クリエイティブがいます。スマート・クリエイティブとは、高度な専門知識やスキルを持つ優れた社員のことです。

この本では、スマート・クリエイティブがずっとGoogleに在籍し続け、目標を達成できるようにするために大事な考えを事例とともに説明しています。

Googleの社員教育には学びを重視する組織文化が根付いている

この記事では、Googleの社員教育について解説しました。

GoogleではSIYやg2gなどの独自の教育システムを持ち、階級に関係なくコミュニケーションを大事にしていることがわかります。

Googleはすべての会社にGoogleの社員教育が当てはまるわけではないと言っています。自社の予算や会社の規模によっては、g2gよりも外部講師に研修を受け持ってもらう方が適切な場合もあるのです。(参考:Google re:Work「従業員間での学習プログラムを導入する」

社員教育制度自体が自社に合わなくても、その教育制度ができた背景には学びが大きいです。

学びを重視し、社員を信じて挑戦させる環境は、社員を成長させるとともに自社を成長させてくれます。

セミナーズ通信

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最終更新日: 2023/10/10 公開日: 2023/10/10