本記事では、クリニックの離職率を下げる方法や退職理由、スタッフを大事にしないクリニックの特徴を解説します。
クリニックで働くスタッフが退職する理由と、離職率を低下させる方法を把握しないと、これらの悩みを解決できないでしょう。
次のような課題や悩みがある方は、ぜひ最後までご覧ください。
「クリニックの離職率を下げる方法は?」
「看護師の退職理由は?」
本記事を読むと、自社のクリニックで看護師が退職する原因に応じて、適切な対策を事前に打てます。
看護師の離職が相次ぎ、悩んでいるクリニックの経営者にこそオススメです。
クリニックの離職率
日本看護協会によると、2021年の看護職員の離職率は、正規雇用が11.6%、新卒採用は10.3%、既卒採用は16.8%でした。
※看護職員 = 看護師・保健師・助産師・准看護師
また、厚生労働省の「医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査」によると、離職率は以下の通りでした。
民間職業紹介事業者を経由 | 民間職業紹介事業者以外を経由 | |
3ヶ月以内 | 11.9% | 6.8% |
6ヶ月以内 | 23.1% | 12% |
民間職業紹介事業者を経由して就職した看護師・准看護師は、3ヶ月以内に11.9%、6ヶ月以内に23.1%が離職。
民間職業紹介事業者以外を使って就職したケースでは、3ヶ月以内が6.8%、6ヶ月以内が12%でした。
クリニックの従業員の離職・退職理由
厚生労働省が病院で働く医療従事者に行ったアンケートによると、対象の医療従事者が前職を退職した理由は、主に以下の通りです。
退職理由 | 割合 |
職場の人間関係の難しさ | 34.7% |
勤務時間が長い | 34% |
仕事内容に不満があった | 25.9% |
休暇が取りづらかった | 24.7% |
その他 | 22.1% |
昇進・昇級・給与に不満があった | 16.1% |
夜勤・当直の負担が大きい | 14% |
通常業務以外の雑務が多すぎる | 13.1% |
自分の健康不安 | 12.1% |
結婚 | 8.4% |
妊娠・出産、子育て | 8.2% |
労働条件が募集時に説明のあった条件と異なることとなった | 8.1% |
親族の健康・介護 | 5.3% |
資格取得・就学 | 2.3% |
職業紹介事業者からの転職勧奨があった | 1.1% |
出典:厚生労働省職業安定局需給調整事業課|医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査
ただし、上記のアンケートの対象者には、クリニック以外の医療機関で働く医療従事者も含まれます。
ここではアンケート結果を基に、クリニックの大きな離職理由として、以下3つを取り上げました。
- 職場の人間関係が悪いため
- 勤務時間が長いため
- 仕事内容に不満があるため
それぞれ順番に見ていきましょう。
1. 職場の人間関係が悪いため
クリニックの医者や看護師の退職理由としては、職場の上司や同僚との人間関係が悪いことが挙げられます。
厚生労働省のアンケートにおいても「職場の人間関係の難しさ」が、退職理由のもっとも大きな割合として占められています。
この背景には、一般的な人間関係の悪さに加えて、女性が多い職場によくある「お局様」の問題もあると考えられるでしょう。
お局様が他の女性職員に対して、横柄な態度を取ったり、理不尽に怒ったりした結果、職員が退職することも考えられます。
※なお、一例ですが、三重大学によると三重大学病院の職員の男女比は、男性582人に対して女性が1,278人。
2. 勤務時間が長いため
クリニックの職員が離職する理由のひとつには、勤務時間の長さが挙げられます。
労働基準法によると、法定労働時間は休憩時間を除き、1週間に40時間(1日8時間)です。
クリニックの経営者は、準備や診察、後片付けなどの業務を、8時間以内で設定する必要があります。
しかし、一部例外もあります。
スタッフ数が10人未満のクリニックの場合は、1週間の労働時間を最大44時間までに設定可能です。
このため、他業種と比較して勤務時間が長いと感じるクリニックの職員もいるでしょう。
その結果、スタッフ数が10人以上のクリニックに転職することも考えられます。
参考:労働基準法
3. 仕事内容に不満があるため
仕事内容に不満があることも、クリニックを離職する理由のひとつとして考えられるでしょう。
たとえば、看護師のメインの仕事内容は、採血や点滴、検査の説明など外来の診療補助です。
しかし、スタッフが不足している場合は、受付や電話対応なども看護師が行います。
外来の診療補助をしたくクリニックに入社したのに、事務作業ばかりになると、その仕事内容に不満を感じる可能性もあるでしょう。
その結果、よりよい職場環境を求めて転職をすると考えられます。
クリニックの離職率を下げる方法5選
ここではクリニックの視力率を下げる方法を紹介します。
職員の退職理由に合わせて適切な対策を打てば、人材不足を解消でき、安定的なクリニック経営につながります。
離職率を下げる方法は、以下の5つです。
- スタッフの悩みを聞ける制度を整える
- クリニックのスタッフを適正人数にして長時間労働を防ぐ
- 有給休暇を取りやすい風土を作る
- 働きや資格が昇進や昇級、給与に反映される制度を設ける
- AIやシステムを用いてスタッフの雑務の負担を減らす
順番にご覧ください。
1. スタッフの悩みを聞ける制度を整える
スタッフの離職率を下げるためには、悩みを聞ける制度を整えることが重要です。
たとえば「定期的に直属の上司と面談できる制度」や「社長に直接意見を言える制度」などを設けるとよいでしょう。
定期的に直属の上長と面談できると、業務内容や同僚との人間関係の悩みを相談できます。
また「社長に直接意見を言える制度」を整えると、直属の上司に相談しにくい悩みを打ち明けられます。
スタッフの意見や悩みを聞いて働き方改革を実施したり、人事異動をしたりすると、働きやすい職場を実現できるでしょう。
その結果、スタッフの悩みが減り、離職率を低下させることにつながります。
2. クリニックのスタッフを適正人数にして長時間労働を防ぐ
クリニックのスタッフを適正人数にして長時間労働を防ぐことも、離職率の低下につながります。
医療施設の職員が退職する理由には、勤務時間の長さが挙げられます。
そのため、スタッフを適正人数にして、時間外労働をしなくても運営できる体制を整えることが大切です。
クリニックのスタッフの適正人数は、最大患者数の70%に対応できる数を目安としています。
一般的にスタッフ1人につき、適切な来院患者数は20人とされています。来院患者数の最大値が1日50人ならば、クリニックの適正人数は3人です。
この基準を目安にして、スタッフの人数が適正になるように人員補充しましょう。
3. 有給休暇を取りやすい風土を作る
医療従事者が退職する理由には「休暇が取りづらかった」があるため、有給休暇を取りやすい風土を作る必要があります。
たとえば、立場が上の方から有給休暇を積極的に取ったり、休暇の理由を求めなかったりすることが重要です。
※本来、労働者が会社に有給休暇の申請理由を伝える義務はない
スタッフが気軽に有給休暇を取得できる風土があると、職員が働きやすいと感じる可能性があり、離職率の低下につながるでしょう。
また、いつでも有給休暇を取得できるようにするとともに、運営が安定するようにスタッフの数を増やすことも大切です。
4. 働きや資格が昇進や昇級、給与に反映される制度を設ける
クリニックの離職率を下げるためには、働きや資格が昇進や昇級、給与に反映される制度を設けるようにしましょう。
たとえば、看護師のケースでは「認定看護師」や「認定看護管理者」などの資格取得により、給与がアップする手当を導入する方法。
顧客満足度の調査・アンケートを行い、評価が高かったスタッフに対して、昇給や給与アップを行う手法などがあります。
上記のように、成果が適切に反映される制度を導入しないと、より給料の高いクリニックに転職される可能性があるでしょう。
5. システムを用いてスタッフの雑務の負担を減らす
システムを用いてスタッフの雑務の負担を減らすことも、クリニックの離職率の低下につながります。
医療機関のスタッフの前職の退職理由には「通常業務以外の雑務が多すぎる」があります。
たとえば、クリニックの看護師の通常業務は採血や点滴、検査の説明などの診療補助です。
しかし、前述しましたが、人員不足の場合は、受付や事務作業なども行うケースもあります。
通常業務以外の仕事でシステムを用いると、業務時間を短縮できスタッフの負担を軽減できます。
たとえば、システムにより勤怠管理を自動化したり、受付を無人化できたりするとよいでしょう。
スタッフを大事にしないクリニックの特徴
スタッフを大事にしないクリニックの特徴を解説します。
主に以下の3つです。
- スタッフが意見を言い出しにくい雰囲気がある
- 問題があるスタッフを叱らない
- できるスタッフに仕事が偏る
自社に当てはまっていないかを確認して、社内環境を改善するための参考にしてみてください。
1. スタッフが意見を言い出しにくい雰囲気がある
スタッフを大事にしないクリニックの特徴は、職員が意見を言い出しにくい雰囲気があることです。
スタッフが悩みを打ち明けられず、働きづらくなるためです。スタッフが意見を言い出しにくい雰囲気とは、以下を指します。
- 言われたことだけをやっている風潮がある
- お局様の横暴がまかり通っている
- 上司が部下に積極的に話しかけない
上記のような状態に陥っていると、スタッフは意見を言うと「怒られる」と考える可能性があります。
その結果、スタッフは悩みがあっても言い出せず、働きづらくなったり、働きがいを無くしたりするでしょう。
2. 問題があるスタッフを叱らない
問題があるスタッフを叱らないのも、スタッフを大事にしないクリニックの特徴のひとつです。
問題があるスタッフを叱らないと、真面目に働いているスタッフが「バカみたい」と感じるためです。
特定のスタッフは勝手な行動をしても許されるが、他は許されないような環境だと、職員の心離れが始まるでしょう。
スタッフに気持ちよく働いてもらうためには、問題がある職員の行動を適切に叱る必要があります。
その上で、問題行動が改善されない場合は、始末書や反省文を書かせるなどの対応をするとよいでしょう。
3. できるスタッフに仕事が偏る
スタッフを大事にしないクリニックの特徴としては、できるスタッフに仕事が偏ることが挙げられます。
特定のスタッフに仕事が偏ると、そのスタッフはストレスが貯まります。
また、他のスタッフも「あの人だけに仕事が偏って申し訳ない」「自分にあった職場に転職しよう」と考える可能性があるでしょう。
上記を防ぐためには、すべてのスタッフに満遍なく仕事・役割を与えることが重要です。
そうすることで、スタッフに帰属意識が生まれ、快適に働くことにつながります。
クリニックに関するよくある質問
クリニックに関するよくある質問に回答します。
よくある質問は以下の2つです。
- スタッフがすぐ辞めるクリニックの特徴は?
- 潰れるクリニックの特徴は?
スタッフが不足しており困っている方は、解決につながるかもしれないので、ぜひご覧ください。
スタッフがすぐ辞めるクリニックの特徴は?
スタッフがすぐ辞めるクリニックの特徴は、主に以下の5つです。
- 求人情報と内容が異なる
- 職場の人間関係が悪い
- 激務で休みが取れない
- 給料が他社に比べて安い
- 会社に将来性がない
とくにスタッフが辞めやすいのが、求人に掲載されていた内容と、実際の業務が異なることでしょう。
たとえば、看護師として応募したのに、受付や事務作業ばかりだと、スタッフはやりがいを無くし離職する可能性が高いです。
クリニックの経営者はスタッフの早期退職を避けるために、求人に真実を記載する必要があります。
潰れるクリニックの特徴は?
潰れるクリニックの特徴としては、主に以下が挙げられます。
- 立地が悪い
- 周囲に競合他社が多い
- 資金繰りが悪い
- 院長が高齢で後継がいない
- 集客活動が不足している
- 医師の知識・スキルが不足している
- スタッフの人材が不足している
たとえば、クリニックの立地が悪いと、地域住民に認知されない可能性があるでしょう。地域の認知が少ないと、患者を集められません。
集客ができていないと、資金繰りが悪くなって、人件費を支払ったり、クリニックの初期費用分のローンを返済できなかったりするでしょう。
その結果、クリニックが潰れることにつながります。
まとめ
本記事ではクリニックのスタッフが離職する原因と離職率を下げる方法などについてまとめました。
スタッフの退職理由を把握して適切な対策をすると、離職率を下げられ安定した経営を行えます。
しかし、自社だけで対策を実施するのは難しいと考える方もいるでしょう。
そのような方は、ぜひラーニングエッジの「絆徳の経営スクール(MBS)」をチェックしてみてください。
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