ITリテラシーは情報技術を常に扱っている現代の企業には必須の能力ですが、ITリテラシーが低いとはどのような状況かを明確に知っている人はまだ多くはありません。
従業員のITリテラシーが低いことで自社にどのような影響を与えるのかを知り対策を講じるのは、自社をリスクから守るうえで重要なことといえます。
どのように従業員のITリテラシーを高めれば良いのか悩んでいる人のために、この記事では以下の内容を説明します。
- ITリテラシーが低い従業員の特徴
- ITリテラシーが低い原因
- 従業員のITリテラシーを高める方法
ITリテラシーを高めて業務効率を上げるためにも大切なことですので、ぜひ最後までお読みください。
ITリテラシーを構成する3種類のリテラシー
リテラシー(Literacy)という言葉はもともと「識字」と訳され、言葉を正しく読み書きできる能力という意味でした。今では物事を正しく理解し活用できる能力のことを指しています。
現代では「〇〇リテラシー」という言葉に派生し「〇〇を理解し活用できる能力」として使われています。
多くの企業は様々なリテラシーの中でも「ITリテラシー」を重要視しています。ITリテラシーはIT(Information Technology:情報技術)を適切に使うための知識や基本的なスキルのことです。
ITリテラシーは「情報リテラシー」「インターネットリテラシー」「コンピューターリテラシー」の3つを包括したスキルで、ITリテラシーがないと大きなミスにつながる可能性があります。
1. 情報リテラシー
情報リテラシーとは、情報を収集し正しいものか見極めて活用するスキルです。情報を収集するだけでなく発信する能力も含まれます。
AIの登場により簡単にフェイクニュースや偽の情報を作れるようになりました。そのような情報に触れたときでも鵜呑みにせず、真偽を見極めなければなりません。
複数のメディアや媒体から出ている情報を比較し、信頼できる情報を得ることが重要です。国や公的機関、リサーチ会社などの統計情報や、何度も検収や推敲が重ねられている論文などは情報源として信頼性が高いと言えます。
2. インターネットリテラシー
インターネットリテラシーは、インターネットを適切に活用する知識や能力のことです。インターネットで得られる情報の適切な使用も含まれます。
オンラインでのプライバシー保護や脅威に対するセキュリティ対策をすることにより、インターネットを安全に活用できるスキルです。
なお、情報リテラシーはマスメディアや書籍などのオフラインから得られる情報も含みますが、インターネットリテラシーではオンライン上の情報のみを指します。
3. コンピューターリテラシー
コンピューターリテラシーは、コンピューターやタブレットなどのIT機器の仕組みを理解し、正しく使用できる能力です。スマートフォンやウェアラブル端末などを使用するスキルもコンピューターリテラシーの1つです。
マウスやキーボードの操作、アプリケーションの使い方などの基本的な操作ができない人はコンピューターリテラシーがありません。
現代の仕事にコンピューターは必要ですし、ほとんどの人がスマートフォンを持っているため、現代人にとって必須のリテラシーと言えます。
ITリテラシーが低い従業員の特徴と企業に与えるリスク
ITリテラシーが低いと様々なリスクと隣り合わせになってしまいます。個人情報を漏洩したり、悪意ある攻撃にシステムがさらされたりする直接的なリスク以外にも、生産性の向上を妨げられるなどのリスクがあります。
デジタルリスクは企業の信頼に大きくかかわることであるため、ITリテラシーが低い従業員の特徴を知ったうえで高めるための対策を検討することが大事です。
1. デジタルデバイスやシステムに苦手意識を持っている
ITリテラシーが低い人は、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのデジタルデバイスやそのシステムに苦手意識を持ち、自ら遠ざかっていることが多いです。
IT用語が理解できず、デバイスの使い方がわからないからと諦めて、使おうとしないのです。最初はわからなくても使っているうちに慣れるものですが、使おうとしないためITリテラシーが向上しません。
日ごろからデジタルデバイスを使い慣れていない人は、何かトラブルがあっても原因がわからず対応ができないまま投げ出してしまいます。
企業にとってデジタル化は不可欠ですが、ITリテラシーの低い従業員が多いとITを十分に活用できません。コスト削減や人手不足の解消ができずに生産性も上がらないままでしょう。
2. 自分でインターネット検索をしようとしない
最近はキーワードを入力すれば、どんな情報でも手に入れられるくらい検索機能が進化しています。しかしITリテラシーが低いと、検索エンジンを用いて調べることができません。
自分で検索して情報を得ることで情報の取捨選択もできるようになりますが、ITリテラシーが低い人は能動的に調べないため、他の従業員よりも知識が少なくなってしまうでしょう。
新しい技術や知識をすすんで取り入れ使ってみる意識が必要です。
3. インターネットの危険性を理解していない
インターネットには様々な危険をはらんでいます。ITリテラシーが低い人はインターネットセキュリティに対する意識も低いことが多いです。
メールを送信する際に「bcc」で送るべきところを「cc」で送り個人情報を流出させたり、添付ファイルを開けてウイルスに感染したりするのは、ITリテラシーの低さにも起因しています。
公開しても良い情報なのかの判断ができず、オンライン上にアップすると世界中の人が閲覧できるという考えに至っていません。
たった1つのミスが会社に多大な被害をもたらす可能性があります。セキュリティを高めても使う人間の意識が低ければ効果がないため、ITリテラシーの向上が必要です。
ITリテラシーが低くなってしまう原因
ITリテラシーは教育や環境によって身につきます。IT環境が周囲にあればITリテラシーは高く、なければデジタルデバイスを触れないためITリテラシーは低くなってしまうのです。
企業も旧態依然ではITリテラシーを高めることは困難なため、ITを業務に取り入れて経営者も従業員も全員でITリテラシーを身につけることが重要です。
1. IT教育の欠如
日本では2020年からプログラミング教育が始まりました。子どもの頃からITに触れることでITリテラシーを高められます。
現在働いている人はIT教育を学校で受けていません。Z世代のようにデジタルネイティブでない世代の人には、企業がIT学習の支援をする必要があります。
基本的なITの知識や会社で起こりうるトラブルの対処方法などを研修し、マニュアルを作成するなどの対応で全社的にITリテラシーの向上を目指しましょう。
2. デジタルディバイドの拡大
デジタルディバイドとは情報格差のことです。デジタル機器を使いこなせる人と使いこなせない人との情報格差が社会的な課題となっています。
内閣府広報室の調査によると、70歳以上ではスマートフォンやタブレットを利用していない人が57.8%に上りました。(参照:総務省四国総合通信局『総務省「デジタル活用支援推進事業」等について』)
情報格差は年齢だけでなく、居住地や教育、収入などの差異によって生じます。デジタル環境に触れる機会が少ないとITリテラシーも低くなってしまいます。
3. 企業がITを導入していない
業務がデジタル化されていない場合、会社全体でITリテラシーが低くなっている可能性があります。
例えば書類をすべてプリントアウトしてファイリングしていたり、上司の承認にハンコが必要だったりするような風土があれば、業務にパソコンを使っていたとしてもデジタル化されているとは言い難いです。
ITに触れていないとITリテラシーは高まらないため、いざデジタル化を推進しようとしてもITに詳しい人材がおらず苦労する可能性があります。
ITリテラシーが高い従業員を育てる3ステップ
ITリテラシーが低い従業員は企業の成長を阻害する可能性があるため、企業が率先して従業員のITリテラシーを上げ、持続させなければなりません。
政府もITリテラシーを重視しており、独立行政法人情報処理推進機構がデジタル人材の育成を目的とした多くのセミナーや資格試験を実施しています。
イベントなどを有効活用しながら、従業員のITリテラシーを高めていきましょう。
1. 従業員のITリテラシーのレベルをチェックする
自社の従業員にどの程度のITリテラシーがあるのかをチェックすることで、レベルに応じた対策をとれます。効果的なIT研修をするには、研修を受ける従業員の知識や経験の有無を知ることが必要です。
無料でITリテラシーのレベルチェックができるサイトとして「P検5級」と「ITパスポート過去問道場」を紹介します。
P検5級
P検5級は無料で受験できる初心者向けのテストです。
設問数は30問で「コンピューターの知識」「情報通信ネットワーク」「情報モラルと情報セキュリティ」の3つの分野からそれぞれ10問ずつ出題されるので、基本的なITリテラシー全般のレベルを確認できます。
試験問題はランダムに出題されるため、何度もレベルチェックに活用できるのもメリットです。
参考:無料P検5級受験
また、P検には無料のタイピング練習や情報モラルテストも提供されています。情報モラルテストは主に子供向けとして作成されていますが、社会人にも必要なITリテラシーの知識が問われますので受験してみましょう。
ITパスポート過去問道場
ITパスポート過去問道場は、過去のITパスポート試験問題2,400問からランダム出題される無料テストです。
P検5級より難易度は高いですが正誤判定だけでなく解説も読めるため、ITリテラシーのレベルチェックだけでなく教育にも活用できます。
分野を指定して出題したり、計算問題の有無を指定したりできるため、従業員の弱い分野を重点的に出題することも可能です。
参考:ITパスポート過去問道場
2. IT教育を行う
従業員のITリテラシーレベルを把握できれば、レベルに合わせたIT研修を行います。社内に講師として適切な人材がいない場合は、外部講師を呼ぶことになるでしょう。最近はeラーニングで実施することも多いです。
IT教育を充実させることで社内のデジタル化を図り、個人情報流出などのトラブルを防ぐことができます。IT分野は変化のスピードが速いため、定期的なIT教育により従業員のITリテラシーレベルを保ちましょう。
社内のデジタルデバイスなどのマニュアルを整備することも必要です。マニュアルを作ることで誰でも一定レベルの操作や設定ができます。
3. IT系の資格取得をサポートする
従業員がIT系の資格に挑戦しやすい環境を作ることも大切です。
資格取得のための研修実施や、教材費や受験費用の補助があれば、資格取得のハードルが下がります。また、資格を取得した従業員に対する特別手当があれば、資格取得に向けたモチベーションを維持できます。
ITパスポート試験
ITパスポート試験はITの基礎知識を証明する国家試験です。
試験内容はAIやビッグデータなどの技術に関する概要や、経営全般の知識、ITセキュリティやネットワークなどの知識、プロジェクトマネジメントの知識などを総合して問われます。
ITの知識だけでなくマーケティングや経営戦略、コンプライアンスなどのITを活用するために必要な知識が網羅されているため、ビジネスパーソンとして必要な課題解決力や法令遵守の姿勢なども養われます。
参考:ITパスポート試験
ICTプロフィシエンシー検定試験(P検)
ICTプロフィシエンシー検定試験は、ICT(情報通信技術)を業務状況に合わせて活用し問題解決を図るスキルを評価する試験です。
5級から1級まであり、実務で必要なスキルや知識を問われます。5級は選択式テストのみですが、4級からは選択式テストのほかにタイピングテストやワープロと表計算の実技テストも実施されます。
特にICTを活用した問題解決分野であるプロフィシエンシー問題は配点が高いのが特徴です。
情報検定(J検)
情報検定(J検)は、ICTスキルと知識を評価する検定試験です。情報検定は情報システム試験、情報活用試験、情報デザイン試験の3種類があります。
情報システム試験 | ・システム設計、開発 ・プログラミング ・ハードウェア、ソフトウェアの基礎知識 |
情報活用試験 | ・パソコンの基本操作 ・情報モラル、情報セキュリティの基礎知識 |
情報デザイン試験 | ・情報デザインの考え方 ・ICTスキル ・情報収集や伝達 ・コミュニケーションスキル |
ITリテラシーを向上するためには、情報活用試験と情報デザイン試験の受験が有効です。情報システム試験は国家試験の基本情報技術者試験に準じた出題がされています。
参考:情報検定:J検
情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメント試験は、デジタル攻撃や脅威から情報や組織を守るための基本スキルを認定する試験です。
マルウェアや情報漏洩などの対策方法から、個人情報保護法やサイバーセキュリティ基本法などの法律の知識までITを利用する人が知っておくべきセキュリティに関する知識が網羅されています。
身近な事例を基準とした問題が多いため、実務面でも役立つでしょう。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITエンジニアの登竜門とされている試験です。
プログラミングやコンピューターシステム、セキュリティなどのテクノロジー分野とプロジェクトやサービスのマネージメントに関するマネージメント分野、経営戦略や法務関係などのストラテジー分野の3分野で構成されています。
システムやソフトウェアなどを作る人材が持つべき基礎知識やスキルが問われるもので、受験にはIT全般を理解している必要があります。
参考:基本情報技術者試験
従業員のITリテラシーを高めることは自社を守ることにつながる
この記事では、ITリテラシーが低い従業員の特徴や高めるための方法について説明しました。
オンラインを日常的に使う現代では、ITリテラシーが低い従業員1人のミスが大きな損失を生む可能性があります。従業員のITリテラシーを高めることは、自社が築き上げたブランドを守り、生産性を上げることにつながります。
ITリテラシーが低い人はそもそもITに触れたがりませんが、ITを身近に感じる環境を用意しレベルに合わせて教育をしていくことで、ITリテラシーは高まるでしょう。
社内でデジタルディバイドを広げないように対策するのが大事です。
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