- 「物価上昇により、利益率が下がっている」
- 「景気後退により、売上が伸びていない」
- 「今は守りを固める時期だから、投資を抑えざるを得ない」
物価上昇・景気後退局面の昨今、このような状況の経営者も多いのではないでしょうか。
一方で、これからご紹介する2つの財務戦略を実行し、積極的に投資を行い、売上150%成長、営業利益200%成長を実現している企業もいます。そのような例について、詳しくご紹介します。
物価上昇・景気後退時にするべき2つの財務戦略
同じ経営環境下でも、積極的に投資を続けることができる企業と、そうでない企業の違いは、どこにあるのでしょうか?
前者には共通した経営手法があります。
それは、ファイナンスとデジタルを活用した、①キャッシュリッチ戦略と②リアルタイム経営です。
この2つは必ずすべき財務戦略です。この2つの戦略を実行した企業の例をご紹介します。
この企業は、キャッシュリッチ戦略の施策により、
- 1年で融資枠が3億円が8億円に増加
- 個人保証・本社担保を解除
- 金利は半減
資金力が大幅に強化され、投資ができる体制となりました。大きく年商を伸ばすことができたのは、それらの積み重ねの結果です。
また、リアルタイム経営に移行できたことで
- 適正な値上げが可能になった
- 経費の無駄使いに気づけるようになった
- 決算対策もできるようになった
- 資金繰りが上手にできるようになった
- 人材や設備などへの投資判断が容易に
といったプラスがあり、利益率が大きく向上しました。
改善した会社がかつて抱えていた課題
好業績になった事例企業も、以前は以下のような、多くの課題を抱えていました。
このような課題は、特に小売業の経営者であれば、納得されるものも多いでしょう。
売上が伸びていくと
- 在庫資金の借入増加によるキャッシュフロー悪化
- 出店資金の借入、銀行対応
- 規模拡大による経理業務の煩雑化、月次決算の遅れ
- 店舗が増えたものの、店舗別、部門別の経営状況が把握できない
- 投資判断の複雑化、高度化
このような課題が発生します。
商品在庫を増やすための資金を厚くするために、借入本数が増えると、借入の総額は増えていなくても、月々の返済額はどんどん増加してしまいます。
投資額(借入額)が増えると、融資に必要な資料も、金融機関との交渉内容も複雑化します。
規模が大きくなると、経理業務が煩雑化し、月次決算の遅れが生じます。それにより、以下のようなことが起こってしまうのです。
- 試算表完成までに1カ月以上かかり、想定した利益が実際に出ているかどうか把握できない
- 経理業務が月末月初に集中し、担当者の残業が発生する。会社の規模拡大とともにその量が増える
- 試算表の提出や内容確認の対応に時間がかかり、必要な資金をすぐに借りられず機会損失が生まれる
このような課題を解決したのが、ファイナンスとデジタルを活用した、①キャッシュリッチ戦略と②リアルタイム経営でした。
キャッシュリッチ戦略を実現する3STEP
キャッシュリッチ戦略を行うには、以下の3つのSTEPを踏みます。
STEP① キャッシュフローが最大化する最適な借入方法(借り方・返し方)と金融機関との付き合い方(バンクフォーメーション)を分析する
STEP② 金融機関に融資枠の作成、増額の交渉をする
STEP③ 融資枠を利用して既存の借入を整理し、実際にキャッシュフローを最大化する
具体的には、通常運転資金分を「短期」、設備資金等を「長期」と色分けして調達をしました。
運転資金分を約定弁済の伴わない短期継続融資により調達することで、月々の返済が軽くなり、浮いた分の資金を次の投資等へ割り振ることが可能になったのです。
先程の事例企業は、既存と新規合わせて9つの金融機関と面談をしました。その結果、それまで2行のみだった取引金融機関の数が6行になりました。
融資枠についても、従来は3億円だったのが8億円に増加しました。個人保証・本社担保も解除でき、金利は半分になったのです。
財務戦略実行前は、融資額6800万円をすべて長期で借り入れていましたが、3100万円は当座貸越になり、借入金額を変えることなく、年間2400万円返済額を減らすことできました。
つまり、年間2400万円キャッシュが増えたのです。この分を、在庫資金や販促費など運営費用に充てることができ、攻めの経営を可能にしています。
リアルタイム経営を可能にする3つのSTEP
リアルタイム経営とは、クラウド会計の導入&自動計算化です。
「リアルタイム」という言葉の通り、常に自社の経営状況を正確に把握できるようになります。人員も増やさず、従来していた残業もなくし、経営に大きくプラスになるアクションです。
クラウド会計の導入で変わったことを、以下の通り詳しくお伝えします。
- 見たい数字がすぐ見られるようになり、経営判断がしやすくなった
- 人員を増やすことなく、試算表を5日で、社内だけで出せるようになった
- 部門別・取引先別など個別の損益についてリアルタイムで表示可能に
- 仕入れや経費の発生源の請求書や領収書の即時閲覧
- 資金繰り管理&先手の資金調達が可能に
- 未来予測による投資判断への活用
リアルタイム経営は、以下の3STEPで実現します。
STEP① クラウド会計を導入し、自社で月次決算をできるようにする
STEP② AIを活用し、経理業務の自動化を進める
STEP③ 月次決算データを経営判断や融資交渉に活用する
クラウド会計の導入、月次決算のデジタル化の進め方をお伝えします。
初期設定として、口座連携をします。銀行口座との連携設定を行い、AI推測による記帳を自動化します。
次に、会計・固定資産・取引先などのデータをクラウド会計へ移行します。
そして、経理担当者がクラウド会計の操作方法を身に着ければ完了です。
経理のデジタル化は、まずクラウド会計に合った最適な業務フローを設計します。
紙伝票を自動認識によりデータ化し、記帳を自動化
レジ・請求・業務・勤怠などのシステムと連携し、記帳を自動化します。
リアルタイム経営移行により発生する2つの課題と、その解決方法
リアルタイム経営に移行するとき、社内の経理と、顧問税理士でそれぞれ1つ、合計2つの課題が発生します。
経理:経理業務を社内へ移行することで、業務が増える
税理士:新たなものを導入するのではなく、自分が使っている会計ソフトを使いたいと考え、移行に消極的
それに対する解決方法は「やってくださいと経営者が言い、対応してもらう」しかありません。
以下のようなことを伝え、また経理担当者にはプラスもあることを伝えています。
物価上昇・景気後退時でも売上を上げようとするならば「キャッシュフローの悪化」「借入・銀行対応の複雑化」「月次決算の遅れ」「経営状況把握の複雑化」「投資判断の高度化」といった財務の課題が発生します。
これらの課題を解決するための方法が①キャッシュリッチ戦略と②リアルタイム経営です。リアルタイム経営を実現するために必須のクラウド会計の導入は、今ならば補助金も活用できますから、導入コストを大きく下げることが可能です。
会社の成長のボトルネックにもなりやすい財務の課題。それにより成長スピードが一気に落ちてしまうため、先手先手で取り組むことが必要です。
逆に、財務をしっかり味方につけられていると、できることが増えていきます。
経営者は攻めの経営、前向きなアクションに集中しやすくなりますから、ぜひこの機会にそのような経営の形への移行を進めていただければと思います。
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本記事は船井総合研究所が運営する経営者向け情報サービス「社長online」よりお届けしました。
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