AI人材はビジネスでAIを活用するための人材です。
企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が必要とされており、DX化で重要な役割を果たすのがAI人材です。
AI人材といっても様々な知識やスキルが必要で、どうすればAI人材になれるのかと疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
「AIに携わる仕事に必要なスキルは何か」
「AIの仕事に就くならおすすめの資格を知りたい」
「なぜAI人材が注目されているのだろう」
このように悩んでいる人のために、この記事ではAI人材に必要なスキルセットや資格試験などについて解説します。
AIに関わる仕事に就くことを考えている人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
AIに関わる2種類の職業
AI人材には大きく分けて2種類の職業があります。AIを開発するAIエンジニアと、AIを活用してデータ分析をするデータサイエンティストです。それぞれ詳しく説明します。
1. AIエンジニア
AIエンジニアはAIの研究やAIを使ったソフトウェアの開発などに携わる仕事です。AIに膨大なデータを読み込ませて学習をコントロールし精度を上げていきます。
AIは家電製品を中心に様々なものに活用されています。
- 音声を認識して動くスマートスピーカー
- 部屋の間取りなどを記憶するロボット掃除機
- 人が飛び出してきたときに停車する自動運転
- カスタマーセンターで自動応答するチャットボット
このような製品を作る際にも、理想的なパフォーマンスが出せるようにシステム開発とテストを繰り返します。
AIが学習した結果の分析もAIエンジニアの仕事です。AIが抽出した結果をもとにリサーチを行っています。
2. データサイエンティスト
データサイエンティストとは、様々なデータを収集して分析し課題の解決方法を見つける職業です。以下のようにデータをビジネスのために活用します。
- SNSに投稿される内容からトレンドを分析
- ブログやSNSの投稿の文脈から商品・サービスの評価を分析
- 閲覧履歴による精度の高いレコメンド機能
- スポーツ映像解析による技術の向上
データサイエンティストが収集する情報はオンライン・オフライン、テキストや数値など様々な形式があるため、扱いやすい形式に変換して分析する必要があります。
情報を一元管理できる分析基盤の構築もデータサイエンティストの仕事の1つです。
AI人材に必要とされる基本的なスキルセット
AIを扱うために必要なスキルは主に7種類あります。
- プログラミングスキル
- 機械学習やディープラーニングの知識
- データベースの運用スキル
- フレームワークやライブラリの知識
- 数学や統計学の知識
- 論理的思考力
- データ分析の知識
上記のほかにデジタルリテラシーや法律の知識なども、AIに携わるなら必要です。EUはAI規制法案を成立させようとしているなど、世界の動きにも注意しましょう。
1. プログラミングスキル
プログラミングとはコンピューターに意図した計算を行わせるために指示を与える作業のことです。AIエンジニアに特に必要となるスキルです。
プログラミングではコンピューターに指示を出すためのプログラミング言語を使用します。主なプログラミング言語には以下のようなものがあります。
- Python
- HTML・CSS
- JavaScript
- Swift
- R言語
- C言語
Python(パイソン)は標準的なプログラミング言語としてよく使われており、簡潔な文法で初心者にもわかりやすい言語です。InstagramやYouTubeにもPythonが使われています。
2. 機械学習やディープラーニングの知識
機械学習とはAIが膨大なデータを学習し、その学習した内容から共通点や法則を見つけ出す方法です。
ディープラーニング(深層学習)は機械学習の1つです。人間の脳神経細胞の働きを模倣したニュートラルネットワークによって学習したデータを自動で分類し処理するため、データ分析がより高度になりました。
ディープラーニングでは十分なデータを与えればAIが試行錯誤して学習するようになります。機械学習やディープラーニングは、AIが発展していくために必要な技術です。
3. データベースの運用スキル
データベースとは収集したデータを一元管理して、参照する際には簡単に抽出できるデータの集合体のことです。データベース内のデータは最新で正確でなければなりません。
データベースの運用スキルとは、データベースを設計・構築・維持・保全するスキルです。データベースの運用にはSQLというデータベース言語を使います。
AIは膨大なデータを学習する必要があるため、適切にデータがデータベースに入っていなければ使うことができません。クラウドサービスと組み合わせてデータベースを運用することが増えています。
4. フレームワークやライブラリの知識
フレームワークやライブラリはAI開発の効率化や手間の削減に必要な知識です。
フレームワークは最低限のプログラミングが組まれたテンプレートのようなものです。フレームワークを使うことで一からプログラミングする必要がないため、効率的にAIの開発ができます。
Pythonのフレームワークには、以下のようなものがあります。
- TensorFlow
- Pytorch
- Flask
- Django
ライブラリは開発に必要なプログラムを集めたものです。ライブラリにコードを入れておくことで、必要な時に取り出して使えます。
頻繁に使うコードを入れておけば同じコードを書き直す必要がなくなるため、開発の時間短縮に役立ちます。代表的なPythonのライブラリは以下のようなものです。
- Numpy
- pandas
- matplotlib
- sys
5. 数学や数理科学の知識
AIの仕組みを理解するには数理科学の知識が必要です。統計学や機械学習・深層学習などが数理科学の分野に含まれており、数学は数理科学に共通で必要な学問です。
AIの解析結果が妥当かどうかを検証するためには確率統計学、正確なAIを開発するために微分積分、大量の計算式を簡単に表記するための線形代数学が、AIの理解に役立ちます。
ライブラリを使えば内容を理解していなくてもある程度のAIを開発できますが、AIの学習結果を分析・検証するには数理科学を理解しておく必要があります。
6. 論理的思考力
論理的思考力(ロジカルシンキング)は、筋道を立てて矛盾や破綻がないように考えるスキルです。
AIを活用する際には、問題の前提条件を整理しAIが生成した結果の重要ポイントや欠落点を深堀りして問題の解決方法を導き出しますが、このプロセスは論理的思考に基づいています。
論理的思考力はAIの学習結果が矛盾していないか、どのような規則性があるのかなどを確認するのに必要です。
7. データ分析の知識
データ分析はデータサイエンティストに必要な知識です。今までも顧客データなどを収集してビジネスに生かすことが行われていましたが、AIを使うことで膨大なデータをより早く客観的に分析できます。
POSレジを使って集めた購買情報から需要を予測し仕入れに反映したり、機械に搭載したセンサーから得られる様々なデータから機械が故障する前に点検したりすることなどにAIが使われています。
AIの学習データをどのように活用するかを決めることは人間の役割であるため、課題解決のために正しくデータを活用する知識が必要です。
AI人材が持っておくべき資格5種類
AI人材として活躍する指標の1つに資格試験があります。ここでは代表的な5つの資格試験を紹介します。
- 基本情報技術者試験
- 統計検定
- G検定
- E資格
- Python3 エンジニア基礎試験
試験内容に沿った講座や書籍などが販売されていることが多いため、受験に合わせて勉強しておくことをおすすめします。
1. 基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、独立行政法人情報処理推進機構が実施しているITエンジニアの国家試験です。IT人材に必要な基本的知識や技能と実践的な応用力を問われます。
ITの様々な専門知識を網羅している国家試験は、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の2種類があり、基本情報技術者試験はITエンジニアの登竜門と言われています。
参考:基本情報技術者試験
2. 統計検定
統計検定は一般財団法人統計質保証推進協会が実施し、統計の知識や応用力を評価する試験です。統計検定ではデータ分析や問題解決の能力が問われるため、データサイエンティストにおすすめの試験です。
統計検定は4級から1級まであり、4級では高校レベルまでの数学や確率の基本的知識などが問われます。1級では大学レベル以上の統計数学の知識が必要です。
参考:統計検定
3. G検定
G検定(ジェネラリスト検定)は、一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施しているディープラーニングやAIの基礎知識を問う試験です。ビジネスでITを活用するための知識が評価されます。
G検定合格者は日本最大級のAI人材コミュニティ「CDLE」に参加できます。メンバー間での情報共有・勉強会やミートアップなどが開催されており、最新のAI情報を手に入れられるコミュニティです。
参考:G検定とは
4. E資格
E資格(エンジニア資格)は一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施する資格試験です。ディープラーニングの理論への理解と実装できる能力が問われます。
確率や統計などの応用数学、機械学習・深層学習などの深い知識と、フレームワークを使用した実装が試験範囲に含まれています。
試験を受けるためにはJDLA認定プログラムという認定講座を受講しなければならず、難易度も高めに設定されているため、E資格を取得したAIエンジニアは高度なスキルを持っていると言えるでしょう。
参考:E資格とは
5. Python3エンジニア基礎試験
Python3エンジニア基礎試験は一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が実施するPythonの知識やスキルを問う試験です。
オライリー・ジャパン『Pythonチュートリアル』が出題内容として明記されているため試験勉強がしやすく、試験自体の難易度も高くないと言われています。
難易度の高い試験としてPython3エンジニア認定実践試験や、データサイエンスの実践的な知識が問われるPython3エンジニア認定データ分析試験もあります。
AI人材が必要とされる3つの理由
AI人材が今後必要とされる背景には、以下の3つの理由が考えられます。
- AI人材が不足している
- 日本のAIスキルレベルが低い
- AI市場が伸びると予想されている
日本のIT市場や企業の現状がAI人材の必要性に関連しています。経済産業省などの調査結果をもとに説明します。
1. AI人材が不足している
経済産業省によると、2015年時点で約17万人のIT人材が不足しており、2030年には中位シナリオで約59万人が不足すると推計しています。
少子高齢化のため2019年から入職率が退職率を下回り労働人口が減少していることに伴い、IT人材も平均年齢が高くなり人材が不足していきます。
独立行政法人情報処理推進機構が発行した『DX白書2023エグゼクティブサマリー』によると、2022年にDXを推進する人材が「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した企業は83.5%にも上っています。
特に2021年に「大幅に不足している」と回答した企業が30.6%だったのが、2022年には49.6%と半数近くとなり、企業のAI人材不足が明らかになりました。
2. 日本のAIスキルレベルが低い
経済産業省がアメリカ、日本、韓国、中国、インド、ベトナム、タイ、インドネシアのIT関連の仕事をしている人に対して行った調査によると、日本のITスキルレベルは他国に比べて低いことがわかりました。
日本のIT人材はレベル1とレベル2の基本的な知識を持っている人材が合計26%で、AIスキルの向上が必要です。自ら最新の情報をつかみ、知識やスキルのアップデートを行う人材が求められるでしょう。
3. AI市場が伸びると予想されている
IT産業は年々需要が変化しています。今後は従来型のサーバーやシステムの開発や運用などの需要は低下し、ビッグデータやモビリティ、AIへの投資が増加するを予測されています。
需要の変化に伴い、従来のIT人材はAIなどのスキルを身につけて市場に適応しなければなりません。
AI人材に必要なスキルセットを把握し教育に生かしましょう
この記事では、AI人材に必要なスキルセットや資格などについて説明しました。
AI人材はこれから多くの企業に必要とされます。AI人材に対する需要は多くても人材は不足しているため、ますますAI人材は引く手あまたとなるでしょう。
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