日本企業は従業員エンゲージメントが低い従業員が多く、離職率の低下や人材の確保が大きな課題です。
「従業員が会社に定着してくれない」
「従業員エンゲージメントを高めたいがどうすれば良いかわからない」
「従業員に自発的に働いてもらいたい」
このような悩みを持つ人のために、この記事では従業員エンゲージメントを向上させるコツや企業事例などについて説明します。
優秀な人材に長く勤めてもらうためにも、従業員エンゲージメントを高めるための参考にしてください。
従業員エンゲージメントの意味と3要素
従業員エンゲージメントとは、従業員が企業に対する愛着や会社に貢献しようという意識のことです。
「エンゲージメント(engagement)」は契約という意味ですが、ビジネスにおいては「深い関係性」という意味で使われています。
従業員エンゲージメントは「理解度」「共感度」「行動意欲」の3つの要素で構成されています。
1. 理解度
理解度とは、従業員が自社の企業理念やビジョンなどを理解しているかどうかという意味です。従業員エンゲージメントを高めるには、従業員の理想と自社のビジョンが同じ方向を向いている必要があります。
自社が自分と同じ方向へ進んでいくと従業員が感じられれば、自発的に考え行動できるようになるでしょう。
従業員の理解度を上げるには、自社の経営方針や方向性など核となる部分を従業員に浸透させることが重要です。
2. 共感度
共感度とは、従業員が自社に対して帰属意識や愛着を持っていることです。共感度が高くなると、同僚と協力し合って業務を行ったり自社への貢献意識が高まったりするため、職場の雰囲気が活性化します。
自社の企業理念やビジョンに対しても理解したうえで共感することが大事です。共感することで愛着心が生まれ、コミュニケーションが円滑化します。
従業員の共感度を高めるには、経営陣から積極的に従業員とコミュニケーションをとり、業務のサポート体制を構築することが必要です。
3. 行動意欲
行動意欲は、従業員の仕事に対する意欲や自発的な行動です。自分の今取り組んでいる業務が自社の業績向上に役立っていると感じれば、従業員のモチベーションを保ち自発的な行動に繋がります。
企業は従業員が意欲的に業務を行うことで、生産性や業績の向上を期待できます。従業員の行動意欲を高めるには、公正な人事制度や適切な報酬などを定め、透明性のある組織にすることが大事です。
従業員の意欲に任せるのではなく、自社が従業員の意欲を引き出す施策を実施する必要があります。
日本企業の従業員エンゲージメントが低い理由
現代は働き方の多様化や終身雇用・年功序列制度の崩壊などにより、従業員エンゲージメントが重視されています。しかし、日本企業の従業員エンゲージメントは海外企業に比べて低く、人材の流出が大きな課題です。
アメリカのGALLUP社の調査によると、日本の従業員エンゲージメントは5%しかありません。(参考①)
パーソル総合研究所の調査では、従業員の継続就業意向が世界平均の71.2%に比べて日本人は56.0%と低い結果となっています。49.1%の人しか働くことを通じて幸せを感じておらず、調査対象の18か国中最下位です。(参考②)
2023年5月時点の日本では、現金給与総額を消費者物価で割った実質賃金が12か月連続で低下しており賃金アップを感じられない状況です。(参考③)
頑張っても給料が上がらないという考えに陥り、結果として従業員エンゲージメントが低くなっていると考えられます。
参考①:GALLUP Inc.『State of the Global Workplace: 2023 Report』
参考②:パーソル総合研究所『グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)』
参考③:野村総合研究所『実質賃金の低下はなお長く続く(3月分賃金)』
従業員エンゲージメントを向上させる7つのコツ
従業員エンゲージメントを向上させるには、以下の7つのコツがあります。
- 現在の従業員エンゲージメントを測定する
- 企業理念やビジョンを周知する
- 公平な人事評価と適切な報酬を設定する
- 承認や称賛を適切に行う
- 従業員同士のコミュニケーションを活発化させる
- 従業員のキャリア開発をサポートする
- ワークライフバランスを重視する
従業員のモチベーションが高い企業では、従業員が企業理念に共感し、コミュニケーションが活発な職場となっています。
1. 現在の従業員エンゲージメントを測定する
従業員エンゲージメントを測定するにはアンケートを用いることが多いです。アンケートにはパルスサーベイとエンゲージメントサーベイの2種類があります。
パルスサーベイは簡単な質問を10問程度回答するもので、週に1回から月に1回程度実施するため、現在の従業員エンゲージメントに即した結果になりやすい調査です。
エンゲージメントサーベイは半年から1年に1度の間隔で実施されるアンケート調査です。質問数が多いため細かく従業員エンゲージメントを測定できます。
アンケート実施後は回答を集計して自社の現状を分析し、必要な改善を実施することが必要です。
2. 企業理念やビジョンを周知する
従業員が企業理念やビジョンを理解していないと、自社に共感や愛着心がわきません。企業理念を唱和させて覚えさせるのでなく、なぜこの企業理念を掲げているのかという理由や経緯を示すことで共感が深まるでしょう。
企業理念などを周知する方法にはブランドイメージなどをまとめたブランドブックや社内報、ミーティングでの発表などがあります。
3. 公平な人事評価と適切な報酬を設定する
従業員は公正に評価を受け適切な報酬を得ることで、モチベーションが向上します。
従来の年功序列では、優秀な若手社員であっても歴が浅いからという理由で安月給だったり管理職に就きにくいという問題もありました。
会社の貢献度や職能の高さなどの成果以外の部分でも評価をすることで、従業員は会社からの評価に納得し積極的に業務にかかわろうとするようになります。
4. 承認や称賛を適切に行う
従業員に対する適切な承認や称賛は、モチベーションを保つために有効です。上司が部下に期待していると声をかけたり、部下の意見にきちんと耳を傾けて承認したりすることは、従業員に働き甲斐を感じさせられます。
最近では、管理職向けにフィードバックスキルを高める研修を実施している会社があります。セミナーズでも管理職に必要なスキルが学べるセミナーが多数開催されているため、ぜひ確認してください。
5. 従業員同士のコミュニケーションを活発化させる
社内で従業員同士のコミュニケーションが活発になると、自社に対する帰属意識が生まれやすくなります。部署内だけでなく全社的に交流を活発化させて、広く従業員同士の関係構築ができる施策が求められます。
従業員が報酬を送りあえるピアボーナスや社内SNSなどのサービス活用、ランチミーティングの設定などで、同僚や上司との接点を増やすことが愛社精神を高めるでしょう。
6. 従業員のキャリア開発をサポートする
従業員が自分の将来を考え成長する機会を与えられることで、自社に対する貢献度が高まります。従業員のスキルや能力の向上を継続的にサポートすることは、自社にとっても生産性向上などに繋がる施策です。
キャリア開発のための研修や、職能別・階層別の研修などのキャリア開発の取り組みがあると、従業員の行動意欲が上がりやすくなります。
7. ワークライフバランスを重視する
ワークライフバランスとは、私生活と仕事の両方を充実させることです。残業や休日出勤が多い会社では私生活が疎かになり、十分な休息をとれず気分転換ができません。
在宅勤務やフレックス制度、ノー残業デーの実施など、従業員それぞれのライフステージに合わせた働き方を可能にすることでモチベーションがアップします。
従業員エンゲージメントを向上させている企業事例5選
今回紹介する従業員エンゲージメントを向上させている5社は企業理念が明確や方向性が明確で、従業員に浸透しています。
従業員のモチベーション向上のための施策や考え方が各企業で異なりますが、どの企業も風通しの良い職場となっていると言えます。
1. スターバックスコーヒージャパン株式会社
スターバックスの店舗は、1~2人の正社員と大勢のアルバイトで運営されています。レジに立ったりドリンクを作ったりしているのは、アルバイトのパートナーです。
カップにお客様の名前を書いたり、笑顔でコーヒーとシロップの組み合わせを提案したりするのは、すべてアルバイトの自発的な行動によるものでマニュアル化されているわけではありません。
スターバックス会長のハワード・シュルツは会社とパートナーとのつながりを重視し、以下のように述べたそうです。
「パートナーと長く続く関係を築いている時、人間としてのつながりを築いている時、スターバックスは最高の状態にある」
日本の人事部『マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか(前編)』より引用
スターバックスでは会社と従業員が対等な立場だと考えているため、従業員をパートナーと呼んでいます。
人々の価値観や考え方が多様化しているため、スターバックスの経営方針や方向性をパートナーが共感し一緒に進みたいと思っているかを理解することで、従業員エンゲージメントの把握をしています。
2. Google LLC
Googleは、転職・就職情報サイトOpenworkが発表した「働き甲斐のある企業ランキング2023」で2位、転職サイトdodaの「転職人気企業ランキング2023<総合>」でも2位にランクインしました。
Googleは社員の体調管理のために社内のカフェテリアやマイクロキッチンを無料で開放し、オフィスの規模によりジムや診療所などを併設しています。
会社の規模が大きくなると社内のコミュニケーションが希薄になりがちですが、Googleでは子供が親の職場を見学に来る「子供の職場参観」や、親を職場に招く「親の職場参観」を実施し、社内だけでなく家族内のコミュニケーションにも一役買っています。
会社が家族との幸せな時間を作ることでも従業員エンゲージメントは向上し、自社のために働こうという意欲をかき立てるのです。
3. 株式会社小松製作所
2021年4月に小松製作所では国内・海外グループ会社の社員約63,000人に対してエンゲージメントサーベイを実施しました。エンゲージメント関連スコアはグローバルで79%、国内では69%が好意的な回答をしています。
小松製作所には「コマツウェイ」というブランドブックがあります。「コマツの強さ」「強さを支える信念」「基本的な心構え・視点」「行動様式(スタイル)」を定義したもので、2020年に9か国語に翻訳されました。
現地の使用言語でブランドアイデンティティを示すことにより、世界中のコマツグループが同じ方向性で業務に取り組めます。
4. 株式会社LIXIL
住宅設備機器・建材メーカーのLXILは2020年にSAP Japan Customer AwardのExperience Management 部門を受賞しました。
LIXILは「従業員満足と顧客満足は連動する」との考えで、従業員エンゲージメント向上に取り組んでいます。
それまでは年1回の従業員満足度調査を実施していましたが、2019年から月1回のエンゲージメントサーベイを実施し始めました。月1回に頻度を上げることでPDCAのスピードアップに役立っています。
エンゲージメントスコアを会社の健康状態として認識し、スコアの低いショールームにはエリアマネージャーが訪問回数を増やしたり、高スコアの取り組みを共有したりして全社的にエンゲージメントスコアの向上を目指しています。
5. 株式会社鴻池組
2021年に創業150周年を迎えたゼネコンの鴻池組は、2050年までの長期ビジョン「KONOIKE ONE VISION 2050」を策定しました。その中の従業員価値として「従業員エンゲージメント業界No.1」を掲げています。
鴻池組では企業理念が浸透しておらず、早期退職が多いことが課題でした。経営理念などを従業員に向けて発信していても、それを従業員が見聞きする機会がなく企業理念が浸透していなかったのです。
2021年から渡津社長と社員との座談会を開催し、社員のアイデアや意見を吸い上げ、現場の状況を確認する時間がとられています。この取り組みにより、社員は課題について積極的に考え行動する意識が定着します。
会社が決めた施策についても現場の状況や意見を直接確認できるため、PDCAを回しやすく満足度の高い取り組みにできるのです。
従業員エンゲージメント向上は離職率低下の必須施策
従業員エンゲージメントを高めるには、企業理念などを従業員と共有し、上司や同僚とも活発にコミュニケーションが取れる職場を作る必要があります。
会社が従業員を大切にしていると感じられれば、従業員も自社に愛着を示してくれるでしょう。
従業員エンゲージメントを高めることは、自社と従業員が良い関係性を築くことでもあるのです。
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