- 心理学を使った働き方改革の方法は?
- 心理学と働き方改革の関係は?
心理学で働き方改革を行うためには、ポジティブ心理学を活かすことで実践が可能です。
超高齢化社会の突入による人口減少や競争の激化により、私たちは少ない時間で多くの成果を出すことが必要となっています。
そのような社会のなかで、私たちが自分らしく働きやすさを感じるための働き方改革には何が大切なのでしょうか。
今回は、なぜ心理学を使用して働き方改革ができるのかについてや、心理学を利用した働き方改革の方法を紹介します。
心理学で働き方改革ができる理由
心理学で働き方改革ができる理由は、個人の前向きさを促して仕事のモチベーションや生産性を上げられるからです。
私たちが働き方改革という言葉を聞いて考えることはなんでしょうか。多くの人は、フレックスタイム制度や時短勤務の導入などといった就業規則の面を考えると思います。
一方でこのような組織の仕組みを整えたものの社員の就業満足度や生産性が上がらないと悩む経営者の方もいらっしゃるでしょう。
このようなことでお悩みの方は、感情を動機とした心理学を利用した手法を取り入れてみてください。
次に、心理学の要素を取り入れることで働き方改革ができる2つの理由を確認していきます。
より前向きに幸せな気持ちで仕事をすることで、生産性が上がるから
一つ目は、より前向きに幸せな気持ちで仕事をすることで、仕事の能率が上がるからです。
心理学を用いてより仕事に前向きさを感じる手法を取り入れることで、それが生産性の向上につながります。
ポジティブ心理学は「よりよく充実した生活を送る」ことを目的とする学問です。働き方改革では、この心理学の考え方を取り入れられます。ポジティブ心理学では、持続的な幸福感を持ち続けることが成功につながると考えます。
幸福と成功の関係について書かれた書籍『幸福優位7つの法則』は、働き方改革に関する重要な示唆を得られる本です。
本書は、ポジティブ心理学者の第一人者の一人であるショーン・エイカーにより書かれました。
本書では、多くの人は成功したら幸福感を感じると考えるといいますが、順序が逆であるといいます。
幸福感を感じることが成功につながるのです。これを「幸福優位性」と呼びます。
つまり、前向きで仕事に充実感を感じていて自分らしく働けている企業は業績もあがることを意味するのです。
幸福感が成果へと結びつく例
実際に幸福感を持って働いている人は、生産性が上がり効率的に働くということが立証されているのです。
これにより、社員の生き生きとした働きが企業成長へとつながることが分かります。
ショーン・エイカーは、フォーチュン500に選ばれた大企業数十社を対象にポジティブ心理学に関する研究を行いました。そのメタ分析の結果と、他の研究によって示された幸せと成功の関係を例として紹介しますのでご覧ください。
このメタ分析によって、仕事のみならず、結婚生活、健康、友人関係、地域社会とのつながり、創造性など、私たちの生活のほぼすべての面で、幸福感が成功を導くということが実証された。
『幸福優位7つの法則』(著者:ショーン・エイカー,翻訳:高橋由紀子,2011年8月,徳間書店,P.58,59より引用)
幸福度の高い社員は、生産性が高く、売り上げも多く、リーダーとしても優れ、高い業績を上げるので給料も高い。また職も安定し、病欠も離職も少なく、仕事のストレスに負けることもない。さらに幸福度の高いCEOの下で働く社員は、幸福度も高く健康で、職場の雰囲気が高成績につながっていると感じている。
(中略)
この「幸せと成功、どちらが先か」という問題を解く一つの方法は、長期にわたって人々の状況を調べることである。たとえばある研究では、二七二人の社員のポジティブ感情のレベルをまず測り、その後一八カ月の仕事の業績を追跡した。他の要素を調整した後でも、最初に幸福度が高かった人たちは一八カ月後に、そうでない人たちよりもよい評価を得ていて給料も高かった。
ストレスの溜まりにくい考え方ができるから
二つ目は、ストレスの溜まりにくい考え方ができるからです。
心理学の考え方を用いれば、作業に取り組む際に感じるストレスへの対処法を知って、それらを未然に防ぐことが可能です。
これらを防ぐことができれば、安心感を持って仕事内容や企業に満足感を持って働けるようになります。
心理学で働き方改革を行うための考え方と具体的手法
ここでは、ポジティブ心理学の観点から社員が生き生きと働きながら企業の業績上昇も期待できる方法を紹介します。
自己コントロール感を持つ
一つ目は、仕事に対する自己コントロール感を持つことです。
私たちは、目の前のことを自分の意思によってコントロールできることに喜びを感じる性質があります。自己コントロール感を持つことができれば、満足感が増しモチベーションが上がるのです。
一方で、やりたくない作業や無理矢理やらされていると感じて自分でコントロールができないと感じる仕事ではやる気をなくしてしまいます。これでは、嫌々作業に取り組むため生産性もあがりません。
『幸福優位7つの法則』(P.184)によると、実際にコントロールできるかよりも、コントロールできると思えているかが重要であるといいます。
ここで自己コントロール感が、生活や仕事に及ぼす影響をご紹介しますので参考にご覧ください。
仕事において高いコントロール感を持っていると答えた社員は、業績もよく、仕事により多くの満足感を覚えている。
『幸福優位7つの法則』(著者:ショーン・エイカー,翻訳:高橋由紀子,2011年8月,徳間書店,P.184より引用)
この恩恵は、職場からさらに周辺へ波及していく。3,000人近くの賃金動労者、給与労働者を対象にした、労働者の2002年「労働者の変容に関する全国調査」によれば、仕事におけるコントロール感覚が強いほど、家族、職場、人間関係など人生のすべての面での満足感が大きいという。仕事においてコントロール感覚を持っている人は、ストレスレベルが低く、仕事と家庭をうまく両立させ、離職率も低い。
仕事で自己コントロール感を持つ具体的方法
自己コントロール感を持って働くためには、今目の前の作業に関してどのような意識をもって取り組んでいるか見つめることです。
自分の行っている仕事について、自分でコントロールできている部分とそうでない箇所を明らかにします。
このようにして自己コントロールできない箇所の原因を特定して、徐々にそれを改善するための行動を取ることができるでしょう。
どうしても自分でコントロールできない部分は、それが得意な人に任せたり周囲に相談したりすることができると思います。
ここでは「幸福優位7つの法則」で語られている例を紹介しますのでご覧ください。
上海の会社のマネージャーたちにコンサルティングを行った折、私は彼らに、ストレスのこと、日々の試練のこと、そして自分の目標などを書き出すように言った。そしてそれらを、自分がコントロールできるものとできないものに分別するのである。これだけの単純なことなので、一枚の紙があれば誰でもすぐにできる。パソコンのエクセルを使って書いてもいいし、仕事の後にマティーニを飲みながら、ナプキンの裏に書きつけてもいい。
『幸福優位7つの法則』(著者:ショーン・エイカー,翻訳:高橋由紀子,2011年8月,徳間書店,P.193,194より引用)
手に負えないストレスに対処するには、それを一度バラバラにして、自分ではどうにもならないことを切り離してしまうことだ。そして、自分が有効に影響を及ぼすことのできる部分を見きわめる。そうすれば、そこにエネルギーを集中することができる。
ほかにも、その人が目の前の仕事を達成することで、得られる価値や自分のためになることを考えることもよいでしょう。
これ以外にも、この作業が周囲にどのような影響を及ぼすか考えることもコントロール感を取り戻すために役立つはずです。
称賛する文化を醸成する
二つ目は、称賛する組織文化を醸成することです。
この実践により、社員が生き生きと働きかつ社内エンゲージメントを高めて業績をアップさせることができます。
働き方改革として残業時間の削減や時短勤務の実施を取り入れても、時間に対する仕事量の多さに疲弊する社員は少なくありません。
これでは、社員がよりよく自分らしく働く機会を失い、働き方の本質的な改革にはつながらないのです。
称賛する文化形成は社員の生産性を上げることができます。これを取り入れれば、例えば残業時間を削減しなくても社員は残業をせず仕事を終えられるかもしれません。
ここでは、ショーン・エイカーの『潜在能力を最高に引き出す法』から、実際に称賛する文化が影響を与えた企業例をご紹介します。
グローボフォース社はジェットブルー航空のために、社員同士が互いを称え合うプログラムを開発した。社員たちが、努力や仕事ぶりが模範的な同僚を、表彰候補として推薦するのである。表彰されたことは、社内のニュースフィードを通して、全社員に共有される。(中略)
『潜在能力を最高に引き出す法』(著者:ショーン・エイカー,翻訳:高橋由紀子,2018年12月,徳間書店,P.172,173より引用)
表彰された社員には、ポイントが与えられる。これはクレジットカードのポイントやマイレージポイントのようなもので、自由に使うことができる。
(中略)
結果は目覚ましいものだった。従業員の仕事の成果も意欲も大いに高まり、顧客ロイヤリティも高まった。具体的に言うと、貢献が認められる事例が10%増えるごとに、社員定着率は3%上昇し、エンゲージメントは2%増加した。
互いを賞賛する企業文化を作ることは、社員の成果や意欲向上のみでなく社内エンゲージメントの活性化につながります。
そして、エンゲージメントを向上させることは、社員のモチベーションを上げたり離職率を低下させたりする効果があるのです。
ほかにも、社員の仕事に対する熱意が上がることで顧客に対するロイヤリティもが上がり顧客満足度も上昇します。
称賛する文化を醸成する具体的方法
称賛する文化を醸成する方法は、GoogleやAmazonなど世界的な大企業を始めとした多くの会社で取り入れられています。
例えば、Googleは「ピアボーナス」制度を始めて導入した企業です。この制度では社員に毎月一定の現金が支給され感謝や評価したい気持ちを表したい人に報酬を送ることができます。
ほかにも社員表彰を行ったり感謝の気持ちを送りあう「サンクスカード」を交換し合ったりすることもよりよい風土作りに有効です。
現在では、社内での賞賛文化醸成を手助けするさまざまなクラウドサービスやツールも多くあります。このような外部ツールを導入して称賛文化を醸成することも可能です。
心理学で働き方改革を行う注意点
心理学の観点から働き方改革を行う注意点は、これらの心理に働きかける実践が義務的にならないように注意することです。
あくまでその働き方改革に対してやらされ感を感じるのではなく、自らやりたいと思い実践する姿勢が大切になります。なぜなら、義務感があるとやはり生産性が上がらないからです。
例えば、称賛文化を取り入れる試みとしてサンクスカードを始めても義務感が生まれると心理的効果を感じられないでしょう。
他にも、普段の業務が忙しくその時間をぬってそれらの取り組みをしてはかえって社員の負担になってしまいます。
このようにならないように、まずは社員一人一人の気持ちを大切にして意見を出し合いながら整備を進めていきましょう。
社員の自主性や主体的な取り組み姿勢を大切にしながら、働き方改革をおこなってください。
まとめ
今回は、心理学の観点から働き方改革を行うことができる理由やその具体的手法について紹介しました。
社員が自分らしく一人ひとりに合った働き方で生き生きと働くためには、ポジティブ心理学の観点を基にしたアプローチが有効です。
幸福感やモチベーションの向上は、生産性向上や成果へと結びつきます。就業満足度が上がることで離職率の低下を防ぐことができ人材確保にもつながるため、紹介した手法を実践してみてください。
今回ご紹介した項目がよりよい企業経営のためのヒントとなれば幸いです。
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