新入社員研修を企画する企業は、新入社員が安心して参加することができるように入念に計画することが求められます。
もしも新入社員が長く続かず退職してしまったり、研修を受けさせても前向きにならないと効果を感じられない企業は注意が必要です。
うまくいかない理由は、新卒の社員が期待する研修と実際に受けさせている研修に大きな差異があるからかもしれません。
この記事は、新入社員研修をより良いものにしたいと考えている経営や人事担当者にこそ読んでいただきたい内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
新入社員研修についていけず「辞めたい」と感じる新入社員は多い
2023年に株式会社ライトワークスが人事担当者と研修受講者を対象に行った調査によると、研修の形式によって受講者の満足度が異なっています。
研修受講者がもっとも満足した研修は「e-ラーニング」となっており、もっとも不満を感じた研修は「オンラインでの講義型研修」となっています。
引用元:【新入社員研修に関する調査結果】
研修の形式だけでも受講者の満足度が変わるため、オンラインと対面のハイブリッド研修を実施している企業が増えています。
また、新人研修ではビジネスマナーやコミュニケーションに関する内容が一般的なので、「もっと学びたかった」という意見がある一方で、専門的な内容になると「ついていけない」「辞めたい」と感じる受講者が増える可能性があります。
そのため、新入社員研修を実施するときは、受講者のレベルを見極めて研修を実施したり、e-ラーニングといった各自のレベルに合わせた研修を取り入れたりなど、受講者にとって満足度が高い研修を実施しましょう。
新卒社員が新入社員研修についていけないと思う6つの理由
新入社員は期待に胸を膨らませて研修を受講しますが、研修についていけないと自信をなくしてしまうことがあります。
新入社員研修についていけないと考える理由は、以下の6点です。
- 生活環境の変化に戸惑う
- 研修内容の難易度が高すぎる
- 指導講師が厳しすぎる
- インプットする量が多すぎる
- 研修期間が研修内容に合っていない
- わからないことを質問できる環境がない
自社の新入社員研修は、新人を不安にさせていないか今一度考えてみましょう。
1. 生活環境の変化に戸惑う
大学を卒業して入社する新入社員は、学生生活と社会人としての生活環境に大きな変化があり戸惑う人も多いです。
学生時代には厳しい上下関係もなく、大学の時間割に合わせて講義を受ける比較的自由な生活でしたが、会社に所属すれば、上司や先輩との上下関係は避けられません。
毎日満員電車に揺られて出勤し、会社に1日の大半を拘束される生活をつらいと考えてしまう新人もいるのは想像に難くないでしょう。
新入社員研修は入社してすぐに始まることが多いため、会社員としての生活に慣れないまま研修を受け、ついていけないと考えてしまうのです。
2. 研修内容の難易度が高すぎる
早くスキルを身に着けて自社の役に立ってほしいと考えて新入社員研修を実施しますが、新人に求めるレベルが高すぎると、研修内容を理解できないまま研修期間が終了してしまうかもしれません。
大学で自社に必要なスキルを学んでいたとしても、座学のみで実践を経験せずに入社している場合もあるため、受講者のスキルレベルの把握は必須です。
特に未経験の人材を採用している場合は、研修で自信を無くしてしまうことも考えられます。きちんと学べば目標に届くレベルを設定しましょう。
とくにIT研修やプログラミング研修でつまづく新入社員は多い
業務の効率化やセキュリティへの意識、ITリテラシーの向上を目的として、新入社員研修にIT研修やプログラミング研修を実施する企業も増えています。
IT業務を行う企業であれば、新入社員も基礎ができているケースが多いですが、ITへの苦手意識がある新入社員が多いと、離脱しやすくなってしまいます。
IT研修やプログラミング研修など、実践的な研修を実施する場合は、座学の時間を設けたり、個々にフィードバックしたりなど、離脱しないように細心の注意を払う必要があります。
3. 講師の指導が厳しすぎる
企業によっては、あえて講師が厳しい態度をとり、難しい課題やストレスを与える新入社員研修をすることもあります。
今後起こりうる大きなストレスに耐えられるようにするため、学生時代に感じなかったストレスを与えます。難しい課題は問題解決能力を養うためのものです。
新卒で入ってきた社員は学生気分が抜けていない人もいますが、社会人として成長し、配属先でも活躍できるように、わざと厳しい研修を取り入れるのです。
新入社員にその意図が伝わっていなければ、ただ厳しいだけの研修になってしまいます。しっかりと研修意図を伝え、前向きに取り組ませることが必要です。
4. インプットする量が多すぎる
新入社員研修では、頭に入れさせるべき内容が多くなります。
- 基本的なビジネスマナー(身だしなみや名刺交換など)
- 社会人としてのマインド
- 仕事に必要な専門知識・スキル
- 自社のルールなど
様々な内容を一気に教えていくため、新入社員に覚えることが多すぎてパンクすると思われてしまいます。
しかし、実際は研修期間中に覚えられなくても、配属された部署で仕事をしながら覚えていくことの方が多いです。
新入社員には、今すべてを覚える必要はないことを伝えることが重要です。
5. 研修期間に研修内容に合っていない
研修内容が多いにもかかわらず、研修期間が短すぎることがあります。
新入社員がちゃんと理解していないのに、研修期間中に内容をすべて終わらせなければならなくなると、研修についていけずに不満が生まれてしまいます。
研修する量に対して研修期間が適切かどうか見極めることが大事です。
6. わからないことを質問できる環境がない
学生時代には教授や先生から教わり、わからないことがあれば気軽に質問することができました。質問を誰にすれば良いかも簡単にわかります。
新入社員研修で講師が教えるのではなく、社員が教える場合は、その社員が自分の担当業務をしていると、新入社員は質問しづらくなってしまいます。
新入社員は初めて社会人として働くため、何もわからなくて当然です。
講師を担当する人や先輩社員をはじめ、会社全体で新入社員のフォローをするのが理想的です。
新入社員研修を効果的に実施する5つの方法
自社の予算と時間を費やして新入社員研修をするのですから、受講する新人にはしっかりと研修内容を身に付けてもらいたいものです。
新入社員研修を効果的に実施する方法として、以下の5項目を説明します。
- 適切な難易度のカリキュラムを組む
- 余裕のある研修スケジュールを作成する
- 予習・復習可能な研修方法を設定する
- クオリティの高い講師を選ぶ
- 丁寧にフォローする体制を整える
新入社員研修は毎年行うものですので、受講した社員に感想などをヒアリングしておくと良いです。
1. 適切な難易度のカリキュラムを組む
新入社員研修は簡単すぎると飽きられてしまい、難しすぎると理解できずに自信を喪失させてしまいます。
新入社員に研修後のアンケートに答えてもらうと難易度の把握がしやすいです。
リクルート・マネージメント・ソリューションズが2022年の新入社員に調査したところ、会社で身につけたい力の1位が「コミュニケーション力」で、61.1%の新入社員が身につけたいと回答しています。(参考:リクルート・マネージメント・ソリューションズ「新入社員意識調査2022」)
このような調査結果から新入社員のニーズをくみ取り、研修内容を組むのも効果的でしょう。
2. 余裕のある研修スケジュールを作成する
時間をとって新入社員研修をしても、研修内容のボリュームに対して研修期間が短すぎると、教えたことが身に付きません。
研修スケジュールは余裕をもって、新入社員のレベルに合わせて段階的に設定することが大事です。
例えば、ソフトバンク株式会社では共通研修で3週間、技術職には追加で4週間の新入社員研修が設定されています。3週間で実施される共通研修のカリキュラムは以下の内容です。
オリエンテーション | 新人研修の概要説明や、研修中に大事にしてほしい行動指針の策定 |
ソフトバンク基礎知識 | 通信の基礎やビジネスフローなどソフトバンク社員として働く上で必要な知識の習得 |
ビジネスマインド | 一連の実務を疑似体験し、社会人への意識の切替およびビジネススキルの重要性の理解 |
PCセットアップ | パソコンの使用方法および社内システムの概要理解 |
ビジネスマナー | 社会人としての意識の覚醒、ビジネスマナーの習得 |
ビジネス文書 | ビジネス文書(メール、議事録など)の作成方法の習得 |
OAスキル (表計算・プレゼン) | Excel、PowerPoint(構成、表現、操作方法含む)などの基礎操作の習得 |
デザイン思考 | 問題の特定から、解決のための新しいアイディアを決めるまでの問題解決のプロセス理解 |
プランニング &プレゼンテーション | テーマに対し、企画立案〜企画書の作成〜プレゼンテーションまでの一連のビジネスプランニングのプロセスの習得 |
ソフトバンクの新入社員研修には、入社前の内定者研修や入社後3年目の社員に対するステップアップ研修があり、長期的にスキル習得を目指せるようになっています。
3. 予習・復習可能な研修方法を設定する
たいていの新入社員は、研修で覚える内容が多いことで不安を感じます。
予習や復習ができる研修体制を整えることで、自習を促しモチベーションを保てるでしょう。
研修を動画撮影しておき後から見返せるようにしておいたり、講義資料を配布したりすることも自習をさせるのに役立ちます。
動画を使うオンデマンド型の研修は、ネット環境とパソコンを用意すればいつでも学び直せます。
4. クオリティの高い講師を選ぶ
講師には新入社員を飽きさせず、わかりやすい教え方が求められます。
自社の社員を講師にする場合は、普段の教え方やコミュニケーションの取り方などから担当者を決めると良いでしょう。
ビジネスマナー講師などの外部講師に依頼する場合は、プロフィールや口コミなどを確認しておくことが大事です。
5. 丁寧にフォローする体制を整える
新入社員研修では、1人1人に対して丁寧なフォローが必要です。研修内容の理解や個性も人それぞれのため、理解できていないことはないかを個別に観察することをおすすめします。
理解が遅い人がいてもきめ細やかなサポートを行い、新入社員のやる気を引き出しましょう。
できる限り早く配属先で活躍してほしいとの気持ちで急いでしまうこともあるかもしれませんが、即戦力としては期待せず、サポートをしながら将来の活躍に期待すると、新入社員の不安も軽減されます。
新入社員研修後のフォロー体制3選
新入社員研修が終わっても、指導が終わったわけではありません。配属先でも新入社員へのフォローが必要です。
ここでは3種類のフォロー体制を説明します。
- OJT
- メンター制度
- フォローアップ面談
自社に合ったフォロー体制を選びましょう。
1. OJT
OJTとは「On the Job Training」の略で、実際の仕事をしながら上司や先輩から指導を受ける方法です。
新入社員は実践で業務を覚えられ、すぐに質問に対する回答を受けられるメリットがあります。
トレーニングの目的を明確にしたうえで、計画をしっかりと立て指導者と新入社員の両方が進捗状況を確認できるようにしておきましょう。
OJTで指導する担当社員に能力の差があれば、新入社員の育成にも差が出てきます。OJT担当者だけが指導するのではなく、部署や会社全体で新入社員のサポートをすることが重要です。
2. メンター制度
メンターとは、指導者や助言者という意味です。一般的にメンターになる社員は、入社3~5年目で新入社員と年齢が近い人が選ばれます。
新入社員は仕事の不安を先輩や上司には言いづらいと感じ、友人や家族に相談する傾向があります。
しかし、入社後に先輩や上司から指導やアドバイスがあった新入社員は、仕事の不安を上司や同僚に相談する割合が、アドバイスがなかった人よりも14.6%高い結果となりました。(参照:日本労働組合総連合会「入社前後のトラブルに関する調査2022」)
メンター制度を導入することで、新入社員と近い年齢の社員であれば、価値観が似ており、自分が新入社員だった頃の不安などを理解しやすいため、不安を相談もしやすくなるだろうと期待されています。
3. フォローアップ面談
新入社員は会社に慣れておらず、人間関係の構築もできていないため、コミュニケーションを取るためにも定期的に個別面談を行いましょう。
1対1で時間をとって面談をすることで、新入社員の悩みを聞き、解決に導きます。悩みを言ってもらいやすいよう、面談では雑談などを交えながらリラックスした雰囲気を作る必要があります。
普段からコミュニケーションを積極的にとっていくことも重要です。
リクルート・マネージメント・ソリューションズの2022年の調査では、上司に求めることとして「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が54.1%「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が44.2%という結果となりました。(参照:リクルート・マネージメント・ソリューションズ「新入社員意識調査2022」)
このことから、新入社員は上司に対して話を聞いて指導してもらいたいと思っていることがわかります。
新入社員研修についていけない新人を減らすにはコミュニケーションが大事
この記事では、新卒の社員が新入社員研修についていけないと考える理由と、新入社員研修を効果的に実施する方法、研修後のフォローアップについて説明しました。
効果的な新入社員研修を行うには、新入社員の実態を把握し、会社に求められているものは何かを知ることが大切です。
上司が率先して日ごろからコミュニケーションを取りに行くことで、新人が悩みを抱えていてもすぐに気付き、声を掛けられます。
コストをかけて採用した新入社員をすぐに退職させないためにも、新入社員研修やサポート体制を整備し、会社全体で育成する意識を持ちましょう。
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