「グループワークを効果的に行うためには、心理学的にどのようなことに気を付ければよい?」
「グループワークの心理学的メリット・デメリットは?」
グループワークと言えば、研修や人事教育の際に使われる複数人の課題への取り組みのことを思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、グループ単位で通常業務を行うこともグループワークと呼ばれるのをご存じでしょうか。
成果が出るグループワークには一定の特徴があります。
それは、共同作業時に起きやすい心理学的なデメリットを理解し、あらかじめ対処すること。
グループワークで起きる心理的な変化を知っておくことは、グループ全体の生産性や業務効率を上げることに役立ちます。
グループの中で、一人一人の力を最大限に活かすことが可能となるでしょう。
この記事では、次の内容について解説していきます。
- グループワークとは何か
- グループワークの種類
- グループワークの心理的メリット・デメリット
- デメリットに対する具体的な改善アプローチの仕方
- グループワークを効果的に進めるために参考にしたいおすすめ本
グループワークとは
グループワークとは、複数人で事業の戦略設計や商品・サービスのローンチなどのワークに取り組むことです。
チームのメンバーにリーダーや進行役、書記などの役割を与え、ワークの目的・目標の達成を目指します。
グループワークは、社内研修や就職試験の選考などで、コミュニケーション能力を測るために行われるケースが多くあります。
また、ビジネスでは、一人でプロジェクトを進めることは少なく、チームで行うことが多いのではないでしょうか。
そのため、グループワークなしでビジネスは成り立たないといえます。
グループワークの種類
グループワークには、主に以下の3つの種類があります。
グループワークの種類 | 特徴 |
プレゼン型 | 指定されたテーマに対して議論し、結論を発表する型 |
ビジネスケース型 | ビジネスのテーマに対して議論し、結果を発表する型 |
作業型 | グループ内で意見を出し合い、成果物を作成する型 |
ビジネスシーンにおいて、グループワークを行うならば、おすすめなのはビジネスケース型です。
自社の事業に関するテーマでグループワークを行うと、より商品やサービスに対する理解が深まるでしょう。
採用試験の選考や新入社員研修などでビジネスケース型を行うと、応募者や社員がどれだけ自社理解を深めているかがわかります。
また、ビジネスにおける提案力やプレゼン力を測ることができ、配属の指標にすることも可能です。
心理学的に見たグループワークのメリット
グループワークのメリットを確認しておきましょう。
『グループディスカッション 心理学から考える活性化の方法』(著者:西口 利文、 植村 善太郎、伊藤 崇達)によると、メリットは
- 情報量の増加
- 社会的促進
- 結果への満足感と行動変化
- 認識の揺れおよび深化
この4つであるとのことです。
この本では、ディスカッションについて述べていますが、広義でグループワークに包括されるものとして紹介します。
情報量の増加
グループワークは、個人での活動に比べて、情報量が増加します。
考え方や価値観の異なる複数人が集まると、その事項に関する意見が増えるためです。
そうすると、個人で結論を導き出す場合と比べて、さまざまな意見を比較・検証できるため、正確性が増すことがあります。
一方、コミュニケーションが多様性に富み過ぎている場合は、コミュニケーションを取ること自体に難しさを感じてしまいます。
よって、チーム全体の働きが低下するようです。
社会的促進
グループワークを行うと、業務や課題に対しての遂行量が増えることを意味する「社会的促進」が見られるようになります。
グループワークは、ひとつの課題や仕事に対して、複数人で解決・遂行していきます。
ほかの人の目があると、課題に取り組む姿勢が主体的になったり、解決のための発言が増えたりするでしょう。
ただし、社会的促進は難しすぎる課題や業務に対しては現れないそうです。
そのグループにとって、丁度よい課題を与える必要があります。
結果への満足感と行動変化
グループワークのメリットには、結果への満足感と行動変化が挙げられます。
これは、個人が一人で物事を決定するよりも、グループで話し合って決めて行動するほうが、満足感が高くなるというものです。
また、決定事項の順守率が高くなります。
つまり、個人で行動するのに比べてグループワークだと、取り決められた目標や課題を達成するための努力の量が増えます。
以下は事例です。
住宅地におけるゴミ捨て場の設置場所を決定する場面を仮想的に構成した実験研究(柴田 2014)でも得られています。
グループディスカッション 心理学から考える活性化の方法(著者:西口 利文、 植村 善太郎、伊藤 崇達)p67より引用
設置のための話し合いを行った実験参加者の多くは、結果とプロセスの両方に満足している人が多く、プロセスに満足している理由に、全員が意見を述べて話し合いができたことをあげていました。
認識の揺れおよび深化
認識の揺れとは、考えに及ばない価値観や反対の意見も聞くと、各々の認識に揺れが生じるということです。
自分が当然だと思っている認識が大きく揺れるので、多様性を受け入れることにつながり、柔軟な考えを受容する力がつきます。
また、ひとつの課題の解決方法について話し合っていると、意見が活発化した後、ある話題について話が深化することがあるでしょう。
そこから、深みのある結論に至ることも多いです。
深化した結論は、そこにいきつくまでのプロセスに説得力があります。
心理学的に見たグループワークのデメリット
グループワークのデメリットを確認しておきましょう。
『グループディスカッション 心理学から考える活性化の方法』(著者:西口 利文、 植村 善太郎、伊藤 崇達)によると、デメリットには、
- モチベーションの低下
- 決定の質の低下
このような現象が起きると言います。
それぞれについて詳しく解説しましょう。
モチベーションの低下
グループワークを人数の多い環境でおこなっていると、社会的手抜きという現象が起こります。
社会的手抜きとは、大人数でひとつ作業を行っていると、個人の力は微々たるものであると感じ多くの人が手抜きをしてしまうことです。
つまりは、結果全体のパフォーマンスが下がります。大勢で力を合わせる、綱引きは良い例です。
社会的手抜きの具体的な外的要因を突き止めることができれば、グループワークを効果的に進める対策が打てるでしょう。
社会的手抜きの発生要因は3つに整理されています。
釘原(2013)は、社会手抜きの発生要因を、環境的な外的条件と心理的・生理的な内的条件に整理しています。
グループディスカッション 心理学から考える活性化の方法(著者:西口 利文、 植村 善太郎、伊藤 崇達)p71より引用
外的条件としては、「評価可能性」「努力の不要性」「手抜きの同調」があげられています。
「評価可能性」とは、自分個人の努力や貢献が評価される程度を意味します。
「努力の不要性」は、まわりが優秀であったり、稼働している人の数が非常に多かったりすることで、自分の努力が全体の結果に大きくは影響しないと感じる程度です。
「手抜きの同調」とは、集団内のほかの人が、まじめにやっていないときに、それに同調して、自分も作業量を減らしてしまうといったことを意味しています。
決定の質の低下
個人より集団になると、最終的に導き出される決定の質や完成品の質が低下する現象が起こることがあります。
例えば、議論の際に途中まで多くの意見が飛び交っていても、結論で間違った方向に行ってしまったという経験はないでしょうか。
しかし、各々が心の中では違うと感じていても、誰も口を出さずにその結論に至ってしまうことも少なくありません。
こうした現象は、集団全体に集団浅慮が働いていると考えられます。
集団浅慮とは、集団で一致した結論を得ようとすることで、メンバー自身が異論を自ら押さえ込んだり、集団の考えにとって不都合な逸脱した意見の影響を低減するような役割を演じる人が出てきたりして、個人で考えるよりも決定の質が低下する現象を意味します(Janis,1971)。
グループディスカッション 心理学から考える活性化の方法(著者:西口 利文、 植村 善太郎、伊藤 崇達)p73より引用
集団浅慮が起こる原因には、以下が挙げられるとのことです。
- ある特定の方向に進めようとするリーダーシップ
- 業務遂行の完了までの手続きが不明瞭である
グループワークのデメリットを防ぐ方法
グループワークのメリットを最大限に活かしながら、デメリットはできるだけ小さくしたいものです。
デメリットである「モチベーションの低下」「決定の質の低下」を防ぐ具体的アプローチをご紹介します。
具体的には以下の4つです。
- 定期的にメンバーを変える
- あらかじめメンバーを選定する
- 自己コントロール感を促進させる
- 心理的安全の確保に留意する
それぞれ順番に見ていきましょう。
定期的にメンバーを変える
グループワークで、メンバーの社会的手抜きをなくすために、定期的にメンバーを変える必要があります。
だらけてくると、社会手抜きをおこなった人に、同調する人が発生する(手抜きの同調)危険性があるためです。
また、なれ合いが出てくると、公平でなく一方的なリーダーシップをとることもあるでしょう。
通常業務でも定期的に部署内のメンバーを変更することで、新たな気持ちで緊張感をもって仕事に取り組めます。
あらかじめメンバーを選定する
あらかじめメンバーを選定するのも、グループワークにおける社会的手抜きを防ぐために重要です。
これは社会的手抜きの発生要因とされる「努力の不要性」に着目します。
能力差があまりにも大きいメンバーが混合されている場合、能力の低い人に社会的手抜きが起こる場合があります。
メンバー構成に迷った際は、以下に注意して選択をおこないましょう。
- 能力に差が少ないグループを設定する
- 能力差が大きくあるメンバー構成でも、中立的なリーダーシップをとりマネジメント能力が高い人を配置する
自己コントロール感を促進させる
自己コントロール感とは、自分で物事をコントロールしている感覚のことを言います。
一人ひとりが主体的になって、ワークを進めることが大切です。
反対に、意見が受け入れられない、物事がうまく進まないと思い込みふさぎ込んでしまう状態を学習性無力感と言います。
グループのリーダーは、得意な分野のタスクを割り振って活躍の場を作ったり、主体的な取り組みを促して挑戦させたりしましょう。
グループワークでは、一人ひとりが尊重される姿勢をもつための心理的安全性も大切です。
個々の意見を尊重する姿勢や、自分が発言してもメンバーに受け入れてもらえるという安心感を生み出しましょう。
心理的安全性の確保に留意する
一人ひとりが安定的に力を発揮するためには、心理的安全性の確保が大切です。
心理的安全性とは、どんな言動をしてもそれを受け入れてもらえると、心理的に安全を感じることをいいます。
心理的安全性が確保されていないと、それぞれが思っていることを発言できないため「決定の質の低下」を引き起こします。
心理的安全性を確保するには、具体的にどのような取り組みができるでしょうか。
それには、相手との心のつながりであるラポールを形成することが大切です。
例えば次のようなものです。
- 相手の意見をしっかりと聞いて尊重する気持ちを持つこと
- 意見を真っ向から否定せず、まずは受け入れてから自分の意見を話すこと
相手を受容する姿勢を大事にしましょう。
ビジネスシーンで生かせる心理学のラポールの形成方法について、知りたい方はこちらの記事もご覧ください。心理的安全性に関連した対人心理学や、アドラー心理学について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
おすすめ書籍のご紹介
心理学の観点からグループワークを進めるうえで、参考にしていただきたい本をご紹介します。
グループディスカッション 心理学から考える活性化の方法
この記事を書く際に参考にさせていただいた書籍で、グループディスカッションの特徴や、効果、課題を多く取りまとめた書籍です。
心理学的にグループディスカッションがうまくいかないときには人にどのような心理が働いているのかがよく分かります。
また、活性化させるためには、どのようなおこないに気を付ければよいかが具体的に書かれていて実践的に役立つでしょう。
この書籍は、以下の方におすすめします。
- 心理学を用いて、グループワークや部署内の業務効率や生産性を高めたい人
- 心理学を用いて、部署内のメンバー構成やリーダーシップの取り方次第でチームのパフォーマンスが変わることを知りたい人
世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法
グループ内における心理的安全性の大切さについて書かれた書籍です。
心理的安全性の概要から、チームの会話やおこないで生産性が上がること、チームで成果を上げる方法について記載されています。
この書籍は、以下の方におすすめします。
- チーム全体の生産性を上げたい方
- マネジメント能力を向上させたい方
- 心理学的安全性の観点からグループワークを効果的に進めたい方
まとめ
グループワークを効果的に行うために、心理学的に起こるメリット・デメリットを把握しましょう。
また、デメリットを防ぐアプローチ方法を知り、よりパフォーマンスの向上を目指していただけましたら幸いです。
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