今こそ優秀な女性・若者・外国人を採用を|中小企業が花開く「多様性による理念経営」

最終更新日: 2024/02/01 公開日: 2023/11/15

この記事を読んでいる経営者の方は、すでに今年の利益をどこに仕込もうか?とお考えのはずです。

そこで私がお勧めしたいのは、会社をつくる「人財」への投資。中でも、5年先・10年先を見据えた人財計画です。

ご存知の通り、これからの日本は、超少子高齢化の人材不足に陥ります。

一度採用できた優秀な人材を、いかに留めておけるか。そして、その人材がいかにして成長して会社を牽引してくれるかの教育や人材開発の問題は死活問題でしょう。

さらに、昨今の日本の経済成長の鈍化と諸外国の経済成長という外的要因も見逃せません。

どうしても経済と人口は結びつきがあります。

人口が中国を抜いて1位になったインドや人口爆発から急速な成長を遂げる東南アジア・中東・北アフリカは、これから10年、生産と消費の中心地となって時代はこれまでとも大きく変わっていきます。

今回は激動の令和の時代に、必要な人材を獲得しながら繁栄するための「多様性による理念経営」についてお伝えします。

教育コンサルティング会社で、自己開発から、人材開発・組織開発までを行なっていますが、真実をお伝えすると、教育投資は回収に時間がかかるものの一つです。

でも、「企業は人なり」という言葉があるように、企業の土台は人にあります。

上手く行っている今だからこそ、未来のために投資して、仕込んでおく必要があるのです。

中小企業に「多様性による理念経営」が必要な3つの理由

これまで「理念経営」の重要性については、各所で学んだり実践をされてきた経営者も多いと思います。

今後の「多様性」の時代にこそ、それがより重要性を増すことに気づいていらっしゃいますか?

まず、「理念経営」の特徴を共有しておきたいのですが、会社を拡大するフェーズにおいて「理念経営」は非常に重要になります。

それは、人や仕組みを採用して、経営者一人ではできない規模のことが起こり始めたときに、仕組みそのものに「意思決定の基準」が必要となるからです。

そして、この意思決定の基準はどこからくるかというと、会社の目的(理念・MMV:ミッション、ビジョン、バリュー)から来ます。

大きくなればなるほどに、法の下に人格を持った「法人」という存在が、同じく人格を持った「個人」のように、一つの体として動いていく必要があります。

そのときにまとまって、収斂(しゅうれん)していくのに、体で言えば動くための軸となる「背骨」のような存在である「理念」が必要になります。

「多様性」の時代においては、この「理念」に多様な価値観を持ち合わせた人たちの力をどれだけ集められるのかが重要になってきます。

そして、大企業よりも中小企業の方が、多様な価値観を受け入れることができる余白を持ち合わせているために「おもしろい」のです。

大企業はすでに「社風」が存在しています。

新しいものや異なる資質のものを少々受け入れても「既存」の仕組みが自然と勝利してしまいますが、中小企業はその小ささゆえに、イノベーティブな化学反応を起こしやすいのです。

超少子高齢化の成熟国ガラパゴス・ジャパン

とはいえ、今の日本の現状は決して明るいニュースばかりではありません。

私たちが生きるこの時代は、超少子高齢化であり、生産力も消費力も衰退して、経済成長は鈍化しています。

こうした少子高齢化は日本だけではなく、世界的には北欧諸国や一部の先進国なども同じ状況です。

ただし、こうした少子高齢化をイノベーションのチャンスに変えていった国々も多く、女性活躍が進む幸福度の高いデンマーク、起業家の移民を増やしてスタートアップ立国を目指すエストニアなどがあります。

それらの国々と日本には、どんな違いがあるのでしょうか?

それが「多様性」です。「多様性」とは、英語にすると「ダイバーシティ」です。

少子高齢化に直面した先進国は移民を受け入れたり、女性や若者・高齢者などを社会づくりの力として積極的に活用してきました。

こうした違いをもった要素を統合・包括していくことを「インクルージョン」と呼び、多様性推進は、「ダイバーシティ&インクルージョン」とも呼ばれます。

企業活動でも、多様性推進は年々重視されるばかりで、人種・国籍・性・年齢を問わずに人材を活用することで、ビジネス環境の変化に柔軟、迅速に対応できると考えられています。

しかし、日本ではまだまだ、ビジネスの現場や政治の世界を見てみると、人種・国籍・性・年齢の「多様性」と言える景色は実現していません。

 女性・若者・外国人の価値を知らずに競争力を失った日本

あえて私が、「女性・若者・外国人」という言葉を使用しているのですが、何の違和感も持たないのであれば「日本人の中年男性」が職場の「当たり前」の景色になっているのではないでしょうか。

日本のジェンダーギャップ指数は先進国最下位。

ポイントは昨年より下がっているという状況で、この状況に社会全体が麻痺している可能性があります。

「当たり前」とは、そうではないものとの対比を知らないと、どれだけ異常なのか、どれだけ違うのかを知り得ません。

単に、日本はこれに慣れすぎていて、風穴を自分たちでは開けられないのかもしれません。であれば、「外や他(ここでは海外)を知る」というのは、「自分(日本)を知る」ための一歩です。

2022年にスイスのビジネススクールである国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界競争力ランキング」で日本は34位でした。

かつて1989年から1992年まで、日本の国際競争力は4年連続で世界第1位でしたが、その後日本の順位は低下の一途をたどっています。

1990年からの30年の間、インターネットの発展とともに爆発的なイノベーションが進行しましたが、このイノベーションを牽引したのはアメリカのシリコンバレーです。

アメリカは移民の国であり、シリコンバレーでは、さまざまなバックグランドをもった人たちが、日々ユニークな発想やアイデアを持ち寄り、意見を闘わせています。

一律ではなく多様性を受け入れ、それを尊重する組織でこそ、世界を変えてしまうようなイノベーションが生まれたのです。

日本はもともと「調和」を重んじる国ですから、そのマイナス面は、多様性や、そこから生まれる”型破り”を認めようとしない社会とも言えます。

また、失敗に終わった挑戦を「恥」として非難されてしまうことも少なくなく、これでは新しいイノベーションは生まれづらくなります。

 新興国に存在する「ジャパン・リスペクト」

私が昨年末にドバイで起業してから肌で感じたことは、あんなに遠くの中東の国々で、そして中東以外でも、私が足を踏み入れてきたアジアやアフリカ諸国では、日本をものすごく尊敬してくれているということです。

TOYOTA、SONYは、新興国では高品質商品のジャパン・ブランドの代名詞。

ドバイは夏場に50度近くになりますが、TOYOTAは砂漠の炎天下に置いていても壊れないから重宝されるのです。日本国内にはないニーズが、圧倒的に揺るがない地位を築いています。

こうした日本へのポジティブなイメージもあり、日本への留学生の数はコロナ前までは右肩上がりでした。

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)発表データによると、2019年には30万人を突破し、最新のデータ(2022年)でも21万人を超えています。

日本語が通じるのは日本だけで、日本語を勉強したところで、日本または日系企業以外ではほとんど使う機会がありません。日本にきて勉強したい外国人は、働く、住むといった選択肢を意識しているはずです。

それにもかかわらず「留学」で日本にきた学生の、日本での就職状況は10%程度なのをご存知でしょうか。

2021年の法務省発表データによると「留学」から「就労」へと在留許可がおりたのは28,974人です。中国、ベトナム、ネパール、韓国、インドネシアからの学生が多いのですが、自国でも優秀な学生たちです。

にも関わらず、10%しか残らないのはなぜでしょうか?

中小企業が仕込むべき「理念経営」3つのポイント

世界では常に優秀な人材の争奪戦です。

その中で、英語が通じない国日本に留学生が来てくれていたのも、これまでの「経済大国」の地位があったからです。

その魅力がなくなっていけば、当然留学生も減っていくことが考えられます。

そして、国内の市場が縮小する中で日本は海外市場に目を向ける必要も出てきます。

ここからはこれからの時代で中小企業がイノベーションを味方にして繁栄するための「多様性の理念経営」3つのポイントについてお伝えします。

優秀な女性・若者・外国人を採用する

日本人で英語が話せるのは圧倒的に女性が多いです。

大手留学会社の自社調べですが、留学する人の65%が女性。私は大学では外国語学部でしたが、やはり女性が多く、留学していたカナダのキャンパス内を思い出しても女性が多いです。

近年、日本の女性の教育レベルは非常に高く、大学進学率は先進国でもトップクラス。なのに、ビジネス・経済界のリーダー層になると極端にポイントが下がります。

女性が働きやすい職場、外国人が働きやすい環境にするだけで、あなたの会社は優秀な人材を獲得できるでしょう。

それでいて、あなたのビジネスにイノベーティブな視点をもたらし、中長期では海外展開やインバウンド需要などの橋渡しになってくれる可能性すらあります。

そして、ITリテラシーの高い、デジタルネイティブの若者を採用しておくことも重要です。

マーケティングを中心にビジネスの環境を一変させたソーシャルメディアだけでなく、AIなどのテクノロジーは、これから益々存在感を増してきます。

そのときに、新しいテクノロジーに対してリテラシーの高い人を採用しておくことが必要です。

会社の理念と個人の人生の指針を一致させる

多様性ある個性的な人たちが揃ったとき、どのように経営していけばいいのでしょうか?

次のステップは、異なる者同士が相乗効果(シナジー)を生み出していくときに起こるステップです。

  1. 抵抗:少数派が現れたときに多数派の人たちが抵抗を示して、違いを拒否する。
  2. 同化:少数派が多数派に同化しながら、多数派に認められるように努力する。
  3. 尊重:違いを尊重し、違いがあることを理解する。
  4. 分離:短期的・局所的に違いを成果につなげて、違いを経営に生かす段階
  5. 統合・包括(インクルージョン):長期的に、異なる人同士が相互作用によって新しい価値を生み出していく

私の社名にも使用しているSynergy(シナジー)とは相乗効果を指しますが、そこで重要なのが「相互理解」です。

「相互理解」には、「自分を知ること」と「相手を知ること」の両方が存在します。

そして、相互理解を超えて、相乗効果を起こしていく方向性がどこなのかというと、会社の目的に他なりません。

冒頭に述べたように、組織が一つの個体として動いていくときに、まとめていく求心力は「理念」への共感なのです。

このときに、会社と個人の絆が重要になります。

「会社の理念を実現することが、顧客・従業員などの個人レベルの幸福度を満たしていく手段」となっている必要があります。

幸福度を満たすために、顧客・従業員などの個人が、会社を手段化できるか?ということなのです。

もし、目的と手段が逆転してしまっていて、会社の目的のために個人の生活が手段化されていくと、個人の力は弱まり、会社に依存する人たちが増えてしまいます。

そして、会社とは人の力で成り立つものですから、結果的に会社は弱体化していきます。

あなたの会社の理念は、顧客・従業員などの個人レベルの幸福度を満たしていくものになっていますか?

多様性と社内ベンチャーを奨励する

最後に、多様性の中で生まれる革新的な技術、イノベーションについてお話させてください。

アメリカのシリコンバレーは、イノベーションと多様性の結びつきの象徴的な例として挙げられます。

シリコンバレーには、世界中から集まった技術者や起業家が存在し、彼らの異なる背景や視点が高度なイノベーションを生み出す土壌を提供しています。

具体的なエピソードとして、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズが、インドへの旅から持ち帰ったデザインや哲学の概念を、Appleのプロダクトに取り入れた事実をご存知でしょうか?

この経験が、彼のデザイン哲学や製品へのアプローチに影響を与え、Appleの革命的な製品の一因となったと言われています。

また、Google、Facebook、Microsoftなどのテックジャイアンツとよばれる巨大企業も、多様性を重視した採用政策を採用しています。

その結果として様々な国籍や文化の背景を持つ人材が集まり、グローバルな視点でのイノベーションを推進しています。

つまり、イノベーティブな議論をしたければ、同じような考えを持った人たちが集まっても意味がなく、むしろ多様性あるメンバーで行わないと意味がないのです。

あなたの会社に、女性、若者、外国人がいたときに、会社にどんなイノベーションが起きるでしょうか?想像がつかないでしょう?それこそが、可能性が未知数であることを示しています。

「わかっている」とか「居心地のよさ」というのは、成長の限界点に到達したのと、同じなのです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

多様性あるメンバーでの議論をトレーニングされていない日本の中小企業にとって「多様性の理念経営」は、シフトまでに少し時間がかかるかもしれません。

だからこそ、利益が出ているうちに、今、仕込んでおきたいもの。

3年先、5年先のために種まきをしておきたいなら、まずは新しい人たちと交流する中で、事業のビジョンのヒントを得てみてはいかがでしょうか?

社内ベンチャーがあなたの会社を次の成長フェーズへ引き上げてくれるかもしれません。また、既存の考えの枠を取り払ってくれるような経験に投資するのもおすすめです。

海外視察や、海外の経営者との定期的な交流など、あなたの中にまずは「多様性」をつくることからはじめてみてください。

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北原万紀(きたはら まき)
株式会社GSEコンサルティンググループ 代表取締役
エグゼクティブコーチ / 女性起業家育成 / コーチ育成 / 人材開発・組織開発


個人のミッション・ビジョンを引き出し、最も繁栄する法則にあった人生とビジネスを構築するコーチング技術に高い定評があり、経営者やリーダー層を担当する。

「人間行動学」を基礎技術とする教育コンサルティング事業では、セミナーや講座の教育コンテンツの企画と指導を行う他、人材育成や起業家のビジネスプロデュースを行う。

インターネットのみで繋がる国をまたいだビジネスチームで会社を経営し、時間と場所に制限を受けないチームの働き方を実現。2022年末、日本と世界を繋ぐ国際ビジネスのサポートのためにドバイにて起業、企業海外進出サポートを行う。

Ms. Hope International 2018 世界グランプリ・2022年同大会国際審査員 大阪関西万博 Expo 2025 共創パートナー登録

北原万紀 GSEコンサルティンググループ
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最終更新日: 2024/02/01 公開日: 2023/11/15