
- 顧客との関係性を強化するための良い方策はないだろうか?
- 心理学を活用して顧客エンゲージメントを強化できないか?
- 顧客エンゲージメント強化の具体的な施策について知りたい
上記のような疑問や課題を抱えていませんか?
今回は、心理学を活用した顧客エンゲージメント強化策について解説します。
顧客エンゲージメントの低下を招きかねない心理効果にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
顧客エンゲージメントとは

はじめに、顧客エンゲージメントについて基本的な知識を整理しておきましょう。
顧客ロイヤルティとの違いや、顧客エンゲージメントが重要視される理由を把握しておくことが大切です。
エンゲージメントの定義
エンゲージメント(engagement)は、もともと「誓約」「約束」「契約」といった意味の英語です。
マーケティング領域では、強いつながりや結びつきが実現されている状態を表します。
・顧客エンゲージメント:顧客と企業との間で信頼関係が確立されている状態
・従業員エンゲージメント:従業員と勤務先企業との間で信頼関係が確立されている状態
・ステークホルダーエンゲージメント:株主や顧客、従業員、地域社会などの関係者と企業との間で信頼関係が確立されている状態
たとえば、特定のブランドの化粧品を愛用している顧客がいると仮定します。
他のメーカーやブランドがより安価な化粧品を発売したとしても、愛用している化粧品の利用を簡単にやめることはないでしょう。
顧客にとって化粧品はどのメーカーのものでもよいわけではなく、信頼できるブランドの化粧品であることに意味があるのです。
顧客が企業やブランドを信頼し、他社とは異なる特別な絆や愛着を感じている状態を「顧客エンゲージメントが高い」と表現します。
マーケティング4.0で提唱された「顧客エンゲージメント」
マーケティング領域で顧客エンゲージメントが注目されるようになったのは、比較的最近のことです。
マーケティングの変遷は、次の5段階に分けて捉えることができます。
・マーケティング1.0:商品が中心のマーケティング(1900〜1960年代)
・マーケティング2.0:買い手が中心のマーケティング(1970年代〜)
・マーケティング3.0:社会的責任を担うCSRを重視したマーケティング(1990〜2000年代)
・マーケティング4.0:精神的価値に重きを置くマーケティング(2010年代〜)
・マーケティング5.0:テクノロジーを応用したマーケティング(2020年代〜)
マーケティング4.0が提唱された背景には、ソーシャルメディアの台頭が大きく関わっています。
消費者は情報の受け手としてだけではなく、発信者としても重要な役割を担うようになったのです。
企業は「購入してもらうため」の戦略に加え、「購入後のアフターフォロー」も含めて戦略を講じる必要に迫られています。
顧客の満足度を総合的に高め、企業やブランドへの信頼を高めることが求められているといえるでしょう。
顧客ロイヤルティとの違い
顧客エンゲージメントと似た言葉に「顧客ロイヤルティ」があります。
ロイヤルティとは「忠誠心」を表す英語です。
顧客ロイヤルティという場合、顧客が商品やブランドに対して抱いている愛着度を表します。
顧客エンゲージメントと顧客ロイヤルティの違いは下表の通りです。
用語 | 概要 | 調査方法 |
顧客エンゲージメント | 企業と消費者との信頼関係の強さ | 消費者の行動を元に測定する |
顧客ロイヤルティ | 商品・サービスに対する消費者の愛着度 | NPS®(ネットプロモータースコア)による調査 |
顧客ロイヤルティは「顧客が商品を気に入っているかどうか」を表す概念といえます。
企業が提供する商品・サービスに対する消費者の評価ともいえるため、やや一方向の面があるのは否めません。
一方、顧客エンゲージメントは企業・顧客間での信頼関係を表しているため、双方をより対等な立場で捉えています。
顧客との対等なコミュニケーションを想定している点が、顧客ロイヤルティとの大きな違いといえるでしょう。
なぜ顧客エンゲージメントが重要なのか
インターネットが浸透した現代においては、消費者が情報を収集する手段は無数にあります。
単に「機能性に優れた商品」「他社よりも安い商品」というだけでは、消費者に選ばれるのは難しくなっているのです。
実際、他の消費者による商品レビューや口コミを参考にして購入する商品を選ぶ人は決して少なくありません。
好意的な口コミ・レビューを増やすには、購入後の顧客を継続的にフォローしていく必要があります。
顧客の信頼を勝ち取り、「特別な存在」となることが安定的な売上の確保につながるのです。
顧客エンゲージメントの強化は、既存顧客との継続的な関係性を築く上で非常に重要な要素といえるでしょう。
顧客エンゲージメントを強化する心理効果

顧客エンゲージメントの強化に役立つ心理効果として「単純接触効果(ザイオンス効果)」が挙げられます。
単純接触効果とは何か、なぜ顧客エンゲージメントを高める効果があるのか、詳しく見ていきましょう。
単純接触効果(ザイオンス効果)とは
単純接触効果(ザイオンス効果)とは、同じ物事や人物に接する回数が増えると、好印象を抱きやすくなるという心理効果のことです。
初めて目にした時には興味が湧かなかった情報でも、繰り返し目にしているうちに気になり始めた経験はないでしょうか。
人は見慣れたもの・よく目にするものに好意を持ちやすく、信頼を寄せやすい傾向があります。
裏を返せば、目にする機会を増やすことで好感度を高められる可能性があるのです。
単純接触効果を活用したマーケティング戦略は、日常のさまざまなところで見かけます。
・営業担当者が顧客先に毎日のように顔を出す
・テレビCMで同じキャッチフレーズ・テーマソングを繰り返し流す
・ECサイトで商品を購入した顧客にメールマガジンを配信する
上記は、いずれも顧客との接点を増やすための施策といえます。
注意点として、接点が多ければ多いほど単純接触効果が無制限に高まっていくわけではありません。
単純接触効果が発揮されるのは10回までの接触といわれているため、過度に高頻度での接触は避けるべきでしょう。
なぜ単純接触が顧客エンゲージメントを高めるのか
単純接触効果が顧客エンゲージメントを高める理由として、次の3点が挙げられます。
- 顧客の記憶に残りやすくなる
- 繰り返し目にすることで信頼度が高まる
- 企業やブランドのメッセージが伝わりやすくなる
一度目にしただけの広告や、一度購入しただけの商品であれば、顧客の記憶にほとんど残らないケースが多いでしょう。
社名やブランドロゴを繰り返し目にするうちに、顧客にとって身近な企業・ブランドとして認知されていくのです。
よく知っている企業であれば、「どのような企業だろう?」「他にどんな商品があるのか?」といった興味も湧きやすいでしょう。
結果として企業やブランドが発信するメッセージが届きやすくなり、顧客との関係性も深まりやすくなります。
顧客エンゲージメントを高める上で、単純接触効果は意識しておきたい心理効果の1つです。
顧客エンゲージメントの低下を招く恐れのある心理効果

反対に、心理効果の活用方法によっては顧客エンゲージメントの低下を招く場合もあります。
次に取り上げる心理効果はマーケティング施策でよく使われていますが、中長期的な視点で見ると注意が必要な手法の1つです。
購買行動に影響を与える「アンカリング効果」とは
アンカリング効果とは、特定の情報が基準点となり、意思決定に影響を与える心理効果のことを指します。
たとえば「2万円の羽毛布団」と聞いた場合、「高い」「もっと安いものもありそうだ」と感じる人が少なくないでしょう。
一方、「通常価格3万5,000円のところ、特別価格2万円」と聞くと「かなり安い」「お得だ」と感じるのではないでしょうか。
あらかじめ「通常価格3万5,000円」という情報を与えられたことで、値引き前の価格が判断基準になったからです。
アンカリング効果は、とくに価格表示において頻繁に使われている心理効果といえます。
なぜアンカリング効果が顧客エンゲージメントの低下を招くのか
購買を後押しする手法としてアンカリング効果は有効ですが、あまり高頻度で駆使してしまうと顧客の不信感を招きかねません。
「常に値引き価格で販売しているのでは?」「通常価格の真偽が怪しい」と思われてしまう可能性があります。
短期的に見れば、アンカリング効果を活用することで顧客の衝動買いを誘引できるでしょう。
中長期的な視点で捉えた場合、顧客の信用を失うという大きな損失を被ることになります。
顧客エンゲージメントを重視することは、顧客との良好な関係性を長い目で捉えることにもつながるのです。
心理学を活用した顧客エンゲージメント強化策5選

単純接触効果を高め、顧客エンゲージメントを強化するには具体的にどのような施策を講じればよいのでしょうか。
主な施策を5つ紹介します。
オウンドメディア
オウンドメディアの運営は、顧客との単純接触機会を増やす上で有効な施策です。
顧客の興味を惹くテーマで有益な情報を発信していくことによって、一定数の顧客が定期的にサイトを訪れるようになります。
提供された情報が「役立った」「有益だった」と実感するごとに、メディア運営企業に対する信頼感は高まっていくでしょう。
オウンドメディア施策は短期的な成果が期待できないものの、中長期的に見ると顧客との関係強化につながりやすい施策の1つです。
有益な情報を継続的に発信していくことで、企業に対する信頼度を着実に高めていくことができます。
SNS
SNSはタイムラインの更新頻度が高いことから、単純接触効果を狙うには適したメディアといえます。
ユーザー目線で役立つ情報を発信していくことにより、地道にフォロワーを獲得していくことができるでしょう。
オウンドメディアと組み合わせて活用することで、コンテンツの拡散効果を狙うこともできます。
自社アカウントを所有している企業は、顧客エンゲージメント強化という視点でSNS運用に取り組んでみてはいかがでしょうか。
リターゲティング広告
Webサイトを訪問したユーザーに対して、別のサイトやアプリを閲覧している際に自社の広告を表示させる手法です。
Webサイトを一度訪問しただけでは、記憶に残らない・印象が薄いことが考えられます。
後日改めて広告を表示させることで、以前訪問したWebサイトの存在を思い出してもらう効果が期待できるでしょう。
社名やブランド名を目にする機会が多くなるにつれて、見込み顧客の認知度も高まっていくはずです。
自社に関心のある見込み客との関係性を効率よく築いていくには適した方法といえます。
メールマガジン
メールマガジンを定期的に配信することで、顧客との接点を増やす効果が期待できます。
一般的にメールマガジンへの登録はユーザー自身が行うことから、配信するコンテンツに目を通してもらえる確率が高いからです。
文面や提供する情報に統一感を持たせることによって、同じ企業から配信されている情報と認識されやすくなります。
ターゲット層の生活スタイルを想定し、開封されやすい曜日・時間帯に配信することが重要です。
ステップメール
シナリオに沿って段階的にメールを配信するステップメールも、顧客エンゲージメントの強化に役立つメール施策といえます。
顧客のアクションに応じてシナリオを分岐させられるため、顧客のニーズに合わせてコンテンツを配信しやすいのが特徴です。
一般的にステップメールの配信回数は3〜10回程度とされており、単純接触効果が有効とされる接触回数の上限とも一致しています。
顧客との接触機会を高める施策を自動化したい場合には、取り入れておきたい手法といえるでしょう。
まとめ
単純接触効果は、顧客エンゲージメントを強化する上で意識しておきたい心理効果といえます。
購入してもらうための施策だけでなく、購入から始まる顧客とのご縁を大切にする上でも重要な視点といえるでしょう。
営業担当者が客先に足繁く通うように、顧客との接点を意識的に増やす工夫をしてみてください。
顧客の心に残る企業を目指すことが、顧客エンゲージメント強化に向けた第一歩となるはずです。
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