
- 仕事も人生もやりきりたい…!
- 経営者として仕事を成功させるために必要なことは?
松下幸之助の『人生と仕事について知っておいてほしいこと』では、人生と仕事で成功するための方法が紹介されています。
PHP総合研究所が松下幸之助が直接語った言葉を編集してまとめた本です。
今回は『人生と仕事について知っておいてほしいこと』の中から、経営者に役立つ内容の一部を紹介します。
ぜひ松下幸之助から企業経営を飛躍させる方法や人生をよりよいものにするためのエッセンスを学んでみてください。
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』とは

『人生と仕事について知っておいてほしいこと』は、若い世代に向けて伝えたい仕事と人生についての本質が書かれた本です。
PHP総合研究所が、松下幸之助が直接語った言葉の中から若い世代に届けたい事柄をピックアップしてまとめています。
なお、同シリーズではその他の対象者に向けた本も出版されています。
例えば、『社長になる人に知っておいてほしいこと』は、経営者や幹部向けに書かれた本です。また、『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』は、初級・中級のリーダーに向けて心得をまとめています。
類似本も併せて読むことによって立場上で大切にすべきことの違いや、また共通項を読みとることが可能です。ぜひ他のシリーズも目を通してみてください。
3つの章で構成される
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』の構成は、以下の3つに分かれていて、項目別に合計41個の項目が記されています。
- 人間として成長するために知っておいてほしいこと
- 人生で成功するために知っておいてほしいこと
- 仕事で成功するために知っておいてほしいここと
今回は、3つの項目のなかから特に経営に役立つ項目をピックアップしてご紹介します。
人間として成長するために知っておいてほしいこと

ここでは、経営者の方向けに人間力を成長させる項目を紹介します。
社内人事をよりよくするために役立ててください。
咲く花はみな違う
松下幸之助は、私たちに同じ性質を持つ人は一人としていないといいます。世の中は同じものが一つとしてないからこそ、社会美が形成されるのです。
例えば、私たちは外見、内面として一人として等しい人はいません。また松下幸之助は松下電器産業で生産した電球も同様であったと触れます。
当時は、電球を一か月につき二百万個余り生産していたそうです。これらはすべて同じ機械で形成されすべて同じ工程をたどって作られるため、ほぼ誤差がなく完成します。
しかし、一つ一つの形は拡大鏡でのぞくと異なって見えるというのです。
松下幸之助は、この面白みを世の中に例えました。
世の中も同じものは一切なく、特色、個性は異なっていて、それぞれに合った使命があると記します。それらが互いに作用することで社会が作られると語りました。
同じものが二つとないこの世の中で、それぞれの特色、個性、使命が相交差し、相調和することによって社会が形成される。そこに、社会のほんとうの美しさが表れてくる。
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(著者:松下幸之助)P.22より引用
事なかれ主義には陥ってはならない
松下幸之助は、人間関係について「事なかれ主義」に陥ってはならず、対立をしながら調和する大切さを説きます。
例えば、「これは聞かないといけない」と感じられたり、聞くことによって良くなると思われたりする要求はしたがうべきだといいます。
反対に、断固として聞かないことも大切であると語るのです。もちろん、妥協して譲歩して相手の気持ちを立てることも良いことであるといいます。
しかし、相手の要求や話を受け止めたらかえって悪くなることは、断固として聞かないということも大切であると述べました。
事なかれ主義でなんでも物事を了承するようでは、発展が生まれないといいます。
世の中はいっさいが対立しつつ調和している。宇宙の森羅万象、たとえば地球と太陽でさえ、対立しつつ調和している。人間も同じく、言うべきを言い、そのうえで、"なるほど"と調和することが大事である。決して事なかれ主義に陥ってはならない。
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(著者:松下幸之助)P.29より引用
物事に対立が生まれるのは自然のこと
松下幸之助は、物事に対立があることは自然であるといいます。しかし、重要なことは対立した後に調和することです。
例えば、業界内での企業競争をあげます。対立している企業が多い業界は、過当競争に陥り業界全体が墜落してしまうのです。一方で、対立しながら調和を保つ企業は、互いの事業が相乗効果を生んで業界全体がさらに飛躍していきます。
この調和を意識することは、ビジネスのみでなく日常生活でも大事なことです。
人生で成功するために知っておいてほしいこと

私たちは、時折周囲に振り回されてしまったり、自分自身にとって大事なことを見失ったりします。
自分の望む未来を手にして幸せな毎日を過ごすために、知っておきたい項目をピックアップして解説します。
≫ 孫子を経営に活用する方法とは?経営者が好む理由
中庸であること
松下幸之助は、経営において中庸の大切さを説きます。
中庸とは元々は儒教から生まれた概念であり、何事も真ん中をとって片方に偏らないようにすることです。
この考え方が大事な理由は、意識せず放っておくとどちらかに傾いてしまうからです。振れ幅が大きくなってしまい、極端なおこないをするようになってしまいます。そうすると、個人も企業も段々と消耗して倒れてしまうことになりかねません。
この振れ幅を小さくできれば、私たちは少ない消耗で済むため安定感が増して発展することができるのです。
例えば、営業をおこなうにしても過当におこないすぎても失脚しすぎても良くありません。ほかの仕事の取り組み方も同様です。
適用はいけない。中庸こそが真理であり、真髄である。中庸とは、いうならば道の真ん中を走ること。それを保っていくことは、むずかしい。ほうっておくと、人間は行きすぎてしまう。
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(著者:松下幸之助)P.56より引用
中庸を求めること=勢いが低下することではない
中庸を求めることが、勢いを低下させる訳ではありません。
そうではなく、真ん中という道があることを教えることであるといいます。真ん中を走れば、勢いをつけても少しの消耗で済むのです。
間違った方向に進んでも、軌道修正が容易であり順調に発展することができます。
大志を抱いても今日の現実を忘れてはならない
「青年よ大志を抱け」という言葉は、誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。松下幸之助は、大志という言葉に対して一般的ではない独自の哲学を持っていました。
松下幸之助は、若い頃「大志を抱け」というような言葉に心を動かされた経験はなかったと語ります。
その理由が当時生活を安定させたいという思いが強かったからです。一日一日を一生懸命に過ごすことは考えていたそうですが、大きな志を持ってそのときの仕事についた訳ではないと語ります。
しかし、毎日を真面目に取りくんだことの積み重ねが、結果大志を抱いて取り組んだことと同等の成果を上げたそうです。
そのため、大志を抱いて遠方のみを見るのではなく、足元にある毎日をしっかりと過ごすことの大事さも同様に語ります。
"大志を抱く"という言葉だけに浮かれてはならない。大志を抱かずとも、一日一日を積み重ねて大きな成功を得る人もいる。決して足元を見忘れてはいけない。
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(著者:松下幸之助)P.53より引用
もちろん若い人には大志を抱いてもらいたい
もちろん、若者には大志を抱き大きく成功していただきたいと語ります。しかし一方、大志を抱いていなかったとしてもいいのです。
平凡に見える一日をしっかりと過ごしてそれを積み上げていれば、いつのまにか相当の成果を出していることがあるといいます。
もし大志を抱き目標ばかりに囚われてしまっては、目の前の一日をないがしろにするかもしれません。現実を見なければ夢は失敗に終わる可能性もあるのです。
松下幸之助は、それぞれの人が持っている自分自身に合っている方を考えて取り組むべきであると述べます。
人の才能を伸ばす力
松下幸之助は、人には短所と長所があることを述べたうえで短所にはおおまかに目をつむり長所に焦点をあてて欲しいといいます。
なぜなら、強みをより発揮できるよう考えたり、その人に対して協力できる事柄を見つけられたりするからです。
実際にそれらの取り組みを実践すると、大きな成果が上がるとともに職場の雰囲気も明るくなるといいます。
それを見た周りの人が一層協力するようになりその事業はさらに伸びていくのです。
「才能をどれだけ生かすことができているか」という問題に、はたして何冊のノートを費やしているだろうか。
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(著者:松下幸之助)P.39より引用
企業は人材の長所を伸ばすことに熱心に取り組もう
人材の才能を伸ばすことに熱心に取り組む企業とそうでない会社には、企業発展や成長に著しい差が出るといいます。
一方でこれがうまくできるかどうかは、人間関係によるところでもあるのです。
松下幸之助は、日本の習性として人が上へ行こうとするのを引っ張って下におろそうとするといいます。
そうではなく、成長する人をもっと上がるようにと皆で協力してあげることの大事さを語ります。
これを企業で実践すると企業全体の発展につながります。それが給与に反映されるなど、相手に良いことをすると自分にもかえってくる可能性があるのです。
そして、上に上がることで見える景色やその達成の面白さを感じられます。
仕事で成功するために知っておいて欲しいこと

ここでは、仕事で成功するために松下幸之助が大切にしていた項目を紹介します。
自社にも当てはめてよいところを活かしてみてください。
「愛される会社」にしているか
松下幸之助は、競争する他者との関係性をよくして「愛される会社」になることの重要性を述べます。
松下電器産業は、企業創業から着々と発展して売り上げ合計がトップの企業に成長していきました。
業界が同じ企業は、常に競争することを強いられます。しかし、相手のよさを素直に見つけ、そこに共鳴することが大事であるといいます。
非難をしているようではならないのです。
競争相手との会社の関係をも良好に努めていれば、企業の弱点をつかんでアドバイスをもらえることもあります。
競合にすら「良い会社だ」「参考になる」と思われる企業を作っていきたいものです。
競争社会のよさをみつけ、共鳴しているだろうか。競争会社に自社の弱みを教えてもらえるほど、愛される会社、いい会社だと思われているだろうか。
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(著者:松下幸之助)P.83より引用
上司と部下を上手に生かして仕事をしているか
松下幸之助は、一人で何かをおこなう自主の精神は大事であると触れたうえで、上司、部下をうまく使うことの大切さを説きます。
誰もがそれぞれに持つ力を発揮できると述べたうえで、もしうまくできない場合には精神や知識の使い方が今一つである可能性を指摘します。
自分自身をどのように活かせるのか考えることはもちろん大切です。しかし、人間には長所もあれば短所もあり全方位に完璧な人はいません。
一方で、その部分を周囲の人に支えてもらうことで企業として大きく力を出すことができるのです。
自主の精神だけではこと足りない。上司をうまく使い、部下をうまく生かす。お得意先や敵対する人の知識さえもみずからに取り込んでこそ、ほんとうの成功を得ることができるのではないか。
『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(著者:松下幸之助)P.123より引用
歩む方向は自ら決め、躍進するためには万人の知識を取り入れる
松下幸之助は、歩む方向は自らが強い意志を持って決め、その方向に躍進的に進むためには万人の知識を取り入れるべきと述べます。
重大な選択は自主の精神で取り入れなければならず、歩む方向は自ら決めなければなりません。
さまざまな意見を参考にしすぎて選択をすることは自主性がないということになってしまいます。
つまり、自分がどの方向に進むかは固い意志を持って決めるべきです。しかし、その方向性に効率的に躍進するためには、他の人の知識や力を借りることができます。
まとめ
今回は、『人生と仕事について知っておいてほしいこと』について紹介しました。
本書では仕事と人生で成功するためのそれぞれの項目を分けて解説していますが、すべての項目が二つともに活かせると考えられます。
松下幸之助から人生と仕事の考え方を知って、経営に役立てていただけましたら幸いです。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
