- ChatGPTが社会にどのような影響を与えるのか不安
- とくにビジネスに及ぼす影響について把握しておきたい
- AIに仕事が奪われるというのは本当だろうか？
上記のような不安や疑問を抱えていませんか？
今回は、ChatGPTが社会に与えていくと思われる影響について解説します。
ChatGPTをはじめとするAIと共存していくポイントにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
ChatGPTが仕事に与える影響
多くの経営者の方が気になっているのは、ChatGPTが仕事に与える影響ではないでしょうか。
一説には、AIが人間の知的労働を奪ってしまい、人間がやるべきことが減っていくともいわれています。
さまざまな調査結果や論文を元に、ChatGPTが仕事に与える影響を考えていきましょう。
ホワイトカラーほど影響を受けやすい
ChatGPTの開発元であるOpenAIとペンシルバニア大学は、論文公開サイトarXivにて共同研究の結果を公表しました。
論文では、会計士や数学者、翻訳者、法務秘書といった職業は少なからず影響を受けるとしています。
反対に、食品製造や農業支援活動といった職業については、ジェネレーティブAIの影響を受けにくいとも推測されています。
現状では高収入を得ているケースが多い知的労働者ほど、ジェネレーティブAIの影響を受けやすいといえるでしょう。
知識の蓄積量に関しては、インターネット上の知見をごく短時間で収集できるAIにはかなわないと考えられます。
ホワイトカラーの定義が大きく見直される日も近いのかもしれません。
アメリカの労働者の約80％が影響を受ける
前述の論文では、アメリカ全体でジェネレーティブAIが労働者に与える影響についても言及しています。
具体的には、アメリカの労働者の80％のタスクに10％程度の影響が及ぶとしているのです。
AIによる影響が及ぶ労働者のうち19％は、タスクの50％にも及ぶ領域で何らかの影響を受けるだろう、とも予測しています。
日本においても、おおむね同様の現象が起こることは容易に想像できるでしょう。
ChatGPTをはじめとするジェネレーティブAIが与える仕事への影響は、決して他人事ではないのです。
プロンプトエンジニアの台頭
AIに代替される可能性の高いタスクが存在する一方で、新たな職業が登場することも期待されています。
代表的な例として挙げられるのが「プロンプトエンジニア」です。
プロンプトエンジニアとは、AIへの質問文と回答のテストを行い、改善を図る人材を指します。
プロンプトを使いこなすには、ChatGPTのベースである大規模言語モデル（LLM）の特性を熟知していなければなりません。
実際、アメリカでは優秀なプロンプトエンジアを年収33万5,000ドル（約4,500万円）で雇用する企業も見られます。
今後、ジェネレーティブAIを制御・運用していくために必要な新しい職種が誕生していく可能性は十分にあるでしょう。
ChatGPTがマーケティングに与える影響
ChatGPTはマーケティング領域にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。
予測される影響として、とくに重要な2つのポイントについて解説します。
単純なタスクはAIに代替される
マーケティングタスクのうち、これまで人が行っていた単純なタスクの多くはAIに代替されていくと考えられます。
一例として、次に挙げるようなタスクはChatGPTで代替できる可能性が高いでしょう。
- キーワード選定
- 記事コンテンツ見出し案の作成
- 顧客に送信するフォローメールの文面作成
- ステップメールの運用
フォローメールやステップメールなどは、MAによって作業を自動化できる仕組みが活用されてきました。
メールの文面をChatGPTが生成するようになれば、人が行うべきタスクは極めて限定的になっていくでしょう。
単純なタスクをAIに任せられる分、生産性の高い仕事に集中しやすくなるはずです。
独自性・権威性がより重視される時代に
ジェネレーティブAIが文章や画像コンテンツを生成するようになると、コンテンツの量産化に拍車がかかることが予測されます。
従来も汎用性の高い画像コンテンツにフリー素材を活用してきたのと似た感覚で、AIが画像を生成してくれるからです。
コンテンツの量産化が進むにつれて、コンテンツのオリジナリティや信頼性がいっそう問われるようになっていくでしょう。
企業が発信する情報の独自性・権威性がますます問われるようになっていく可能性が高いといえます。
ChatGPTが苦手とする最新情報の提供や、明確な論拠にもとづく将来予測など人間が担うべき役割の重要性が増していくはずです。
ChatGPTが人材採用に与える影響
人材採用の領域にChatGPTがもたらす影響として可能性の高いものを解説します。
予測される影響は、主に採用基準と選考フローの2点です。
求められるスキルセットの変化
ChatGPTをはじめとするジェネレーティブAIが浸透していくと、人材に求められるスキルセットも変わっていくと考えられます。
従来は人の頭脳に頼っていた業務の多くが、AIによって代替可能となるからです。
顕著な例として、コールセンターのオペレーターが挙げられます。
ジェネレーティブAIによる自動応答が可能になれば、コールセンター業務に精通したオペレーターは不要になる可能性が高いでしょう。
反対に、顧客への応答内容をチューニングできる人材の需要は高まっていくと考えられます。
他の職種においても人が直接的に業務を担当するのではなく、AIの副操縦士のような役割を担う可能性は十分にあるのです。
応募書類をAIが生成する時代に
ChatGPTの登場により、選考フローを見直す企業がすでに現れています。
ナイル株式会社は、応募者が履歴書や書類課題テストにGenerative AIを活用することを容認すると発表しました。
With AIの時代に活躍できる人材の発掘を目指すという同社の方針が、容認の主な背景です。
ジェネレーティブAIの活用を禁じるのではなく、有効活用できる人材を歓迎する動きは今後ますます広がっていくでしょう。
応募者によるジェネレーティブAIの活用について自社のスタンスを明確にすることが多くの企業に求められています。
ChatGPTが経済に与える影響
ChatGPTの活用が急速に広がっていくことで、経済にはどのような影響がもたらされるのでしょうか。
予測される影響について日本国内と国際的な日本の立ち位置の両面から解説します。
AIを活用できる/できない人の格差が広がる
ChatGPTを活用することで、インターネット上の知見を素早く効率的に活用できるようになりました。
一方で、現状では最新情報が反映されていないことや、不正確な回答が見られることなど問題点も指摘されています。
ジェネレーティブAIの基本的な仕組みや特性を理解した上で活用できる人は、ますます効率よく情報を収集できるようになるでしょう。
反対にジェネレーティブAIを活用できない人にとって、得られる情報量は従来とほぼ変わらないはずです。
AIを有効活用する人と活用できない人の格差が広がり、経済格差がさらに顕著になっていく可能性があります。
AIに関する論文数で日本は出遅れている
2020年時点でAIに関する論文数を国別に比較した場合、世界1位はアメリカ、2位は中国です。
日本は9位にランクインしているものの、出遅れている感は否めません。
実際、世界のAI研究をリードする研究機関の多くがアメリカにあります。
今後、AI領域の優秀な人材がアメリカや中国へ流出していく可能性は十分にあるでしょう。
日本が出遅れていることを認識した上で、海外の動向を今後も注視していく必要があります。
ChatGPTが教育に与える影響
ChatGPTが社会に与える影響を考えるとき、避けて通れないのが「教育」への影響です。
いずれ社会に出ていく人材がどのような教育を受けることになるのか、2つの視点から見ていきましょう。
ジェネレーティブAIの利用ルールがシラバスに加わる
アメリカの教育現場においては、すでにChatGPTを駆使したカンニングやレポートの手抜きへの対策が始まっています。
ニューヨーク市教育局は、生徒・教師が同局ネットワークからChatGPTにアクセスできないようブロックする対策を講じました。
大学などの高等教育機関では、ジェネレーティブAIの利用ルールをシラバスに記載する動きも広がりつつあるのです。
日本においても、同様の動きが今後広がっていくことが予想されます。
ジェネレーティブAIの活用を「必要なスキル」と見なすか、「カンニング・手抜き」と見なすか、当面は意見が分かれるでしょう。
「答える力」から「問う力」重視へ
ジェネレーティブAIはインターネット上の知見をごく短時間で収集できることから、「知」のあり方を変えていく可能性があります。
顕著な例が、大量の暗記を求められるタイプの試験です。
ChatGPTは司法試験や薬剤師国家試験のように、蓄積した知識を駆使して回答する試験を得意としています。
GPT-4が模擬司法試験を上位10％程度のスコアで合格するなど、平均的な人間の能力を上回る現象が確認されているのです。
今後、私たち人間に求められる能力は、「答える力」から「問う力」へと移り変わっていくのかもしれません。
ChatGPTが道徳に与える影響
最後に、ChatGPTが私たち人間の道徳観や倫理観に与える影響について解説します。
まるで人のように会話ができ、疑問に答えてくれるジェネレーティブAIの台頭は、道徳にどのような影響を与えていくのでしょうか。
AIの回答を「信じる」人が増える
学術誌『Scientific Reports』において、AIの回答が人間の道徳に影響を与え得るとの論文（※1）が発表されました。
正解が存在しないことで知られる「トロッコ問題」（※2）で、多くの人がChatGPTによる恣意的な助言の影響を受けたのです。
被験者らは、自身に助言を与えたのがAIだと知らされてもなお、AIの助言にもとづく回答を自らの意思で選んだと信じていました。
AIによる回答を無意識のうちに信じ込んでしまう人は、決して少なくないのです。
将来的にAIが生成する文章や画像が高精度化するにつれて、フェイクニュースを見抜くことはいっそう困難になる可能性があります。
※1）ChatGPT’s inconsistent moral advice influences users’ judgment
※2）「1人の命を犠牲にして、残った5人の命を救うことが正しいか」を問う、道徳上のジレンマを象徴する問い。
Hallucination（ハルシネーション：幻覚）への対応
ジェネレーティブAIは人間と同じように作り話をしたり、いい加減な回答をしたりする場合もあることが知られています。
存在しないURLをAIが生成し、情報の出所として提示してしまう、といったケースが報告されているのです。
AIが作り話をする現象はHallucination（ハルシネーション：幻覚）と呼ばれ、ジェネレーティブAIを扱う上での課題の1つとなっています。
差別的な発言や有害なアドバイスをAIが提供し、人間のモラルに悪影響を与えるリスクも十分に生じ得るのです。
加速度的に学習していくAIを人間の制御をすり抜けることがないよう、技術と倫理の両面から対応が求められています。
AIと共存していくために
ジェネレーティブAIをはじめ、私たちはAIと共存する時代を生きていくことになります。
AIと共存していくために必要な知見やスキルを、今のうちから高めていくことが大切です。
プロンプトの使い方を覚える
ジェネレーティブAIを適切に活用していくには、的確な質問文（プロンプト）を投げかける必要があります。
AIは意味が曖昧な文章の真意を見抜くことや、行間を読むことが得意ではありません。
プロンプトは次の原則に従って生成する必要があります。
- 何についての質問か：AIに求める答えを明確な問いや指示で示す
- 背景には何があるか：前提となる情報を省略せず、詳細に記載する
- 制約条件は何か：求める回答の文字数や欠かせない条件を伝える
たとえば「アポイントの時間に遅れると伝えて」というプロンプトには、曖昧な点が多々見られます。
なぜ遅れるのか、遅れることについてどう感じているのか、といった背景や条件をAIは察知してくれません。
「電車遅延のためアポイントの時間に遅れると、申し訳ない気持ちを込めて伝えるメール本文を100字以内で書いて」
上記のように、求める答え・背景・制約条件を明確にすることで、期待する回答を得られるのです。
ChatGPTが苦手なことを知る
ジェネレーティブAIは決して万能ではなく、苦手なこともあると知っておく必要があります。
とくに注意すべきポイントは次の3点です。
- 正確性・厳密性が求められる質問への回答は苦手
- 最新情報を反映させる必要がある質問への回答は不得意
- 情報の出所は正確性に欠ける場合がある
ChatGPTが苦手とする質問を避けることで、不適切な回答が返ってくるリスクを低減できるでしょう。
AIの特性を把握し、「使いこなす」側に回ることが大切です。
「質問力」をブラッシュアップする
ChatGPTに対する適切なプロンプトを考えることは、質問力のブラッシュアップに役立ちます。
相手が人間であっても、会話の背景や前提条件が曖昧であれば、すれ違いや誤解に繋がることは十分にあり得るからです。
人間が相手の場合、私たちは知らず知らずのうちに「察してほしい」「空気を読んでもらいたい」などと期待してしまいます。
察する・空気を読むことが苦手なChatGPTは、的確な質問をするためのトレーニングアプリとしても活用できるでしょう。
自分の質問が的を射ているかどうか、ChatGPTで定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
ChatGPTはまたたく間に世の中に広がり、さまざまな場面で活用されていく可能性があります。
今ではスマートフォンが存在しない生活は考えられないように、ChatGPTも日常的に活用されるツールとなっていくでしょう。
新たな技術が台頭する時には、常にメリットとデメリットの両面が議論されます。
今回紹介したChatGPTの影響を踏まえて、ジェネレーティブAIを「有効活用する側」に回りましょう。
ChatGPTのポジティブな面に目を向けることで、人間の頭脳が内包する可能性をさらに引き出すことができるはずです。
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