
- 競合が激化し、大手企業に勝ち抜くためにはどうすればいい?
- 豊富な資金力やブランド力を持つ大手企業には敵わない...
このような悩みを抱える中小企業の方は、ランチェスター戦略を活用することで中小企業でも勝ち抜くことができます。
ランチェスター戦略を理解して的確なアプローチをすることで、ビジネスも大きく飛躍することができます。
本記事では、そんなランチェスター戦略をマーケティングで活用する方法を詳しく解説していきます。

ランチェスター戦略とは?

そもそもランチェスター戦略とは、「弱者」が「強者」に勝つためにどのような戦略を取るべきなのかを表した理論です。
簡単に言うと「弱者が強者に勝つためのビジネス戦略」のことを指します。
元は、第一次世界大戦中に誕生した戦争のための戦略ですが、現在ではマーケティング理論として広く用いられています。
とくに現代では、国内企業の99.7%が中小企業であることから、「弱者」が「強者」に対して“どう立ち向かえばいいのか”が重要視されています。
ランチェスター戦略が生まれた背景
ランチェスター戦略は、第一次世界大戦中の軍事作戦の分析に基づいて提唱された戦略です。
当時、イギリス陸軍の将校だったフレデリック・ランチェスターが提唱したことから「ランチェスター戦略」と呼ばれています。
F.W.ランチェスターは、勝利を決定づける要因は「兵力数」と「武器の性能」であると説いたことから始まっています。
また「武器の質が同等であれば、兵力の差によって勝ちが決まる」というものです。
その後は、第二次世界大戦中に軍事戦略として発展し、さらに日本でマーケティング理論として広がっています。
ランチェスター戦略の2つの法則

ランチェスター戦略を深く理解するためには、「弱者の法則 (第一法則)」、「強者の法則 (第二法則)」と理解することが重要です。
ここからは、ランチェスター戦略の2つの法則について解説します。
ランチェスター第一法則(弱者の法則)
ランチェスター第一法則は、限られたエリアでの接近戦や局地戦において、原始的な武器を使用する戦いを想定した法則です。
「戦闘力=武器効率×兵力数」
第一法則は上記の式で表され、一騎打ちで狭い範囲、至近距離による戦いで計算式が成り立ちます。
現代のビジネスでいうところの、リアルセミナーや握手会、スーパーの試食などがこれに近いです。
例えば以下のようなチームがあったとします。
- Aチーム=兵力数5人、武器効率3
- Bチーム=兵力数4人、武器効率4
この場合、Aチームの戦闘力は「兵力数5人×武器効率3=15」。
一方、Bチームの戦闘力は「兵力数4人×武器効率4=16」です。
つまり、Bチームの方がAチームよりも兵力数が劣っているにも関わらず、武器効率に優れたBチームのほうが戦闘力は上回る結果となります。
ランチェスター第二法則(強者の法則)
ランチェスター第二法則は、広大なフィールドでの戦いで、近代兵器を使用する戦闘を想定しています。
「戦闘力=武器効率×兵力数の2乗」
この法則は、銃やミサイルなどの現代的な兵器が使用される遠隔戦の戦いで使用されます。
第一法則との違いである「兵力数の2乗」に着目して、前章と同じ以下の例で比較してみましょう。
- Aチーム=兵力数5人、武器効率3
- Bチーム=兵力数4人、武器効率4
第二法則においては、Aチームの戦闘力は「兵力数5人の2乗×武器効率3=75」。
一方、Bグループの戦闘力は「兵力数4人の2乗×武器効率4=64」です。
第一法則では、武器効率に優れたBチームの戦闘力のほうが上でしたが、第二法則においては、兵力数に勝るAチームの方が戦闘力は高くなります。
つまり、接近戦や局地戦と異なり、広範囲の遠隔戦では兵力数がより重視されるということです。
ランチェスター戦略をマーケティングで活用する方法

ここまで、【弱者の法則】と【強者の法則】を詳しくご紹介してきました。
しかし、そもそもマーケティングで活用する場合に「弱者」と「強者」の定義はどのようになるのでしょうか?
シェア率が最も大きい企業=強者
シェア率2位以下の企業=弱者
例えば、ハンバーガーチェーン店において「マクドナルド」がシェア率No.1であれば、どんなに有名な「モスバーガー」や「バーガーキング」でさえも全て「弱者」となります。
ここからは、具体的にランチェスター戦略をマーケティングで活用する方法をご紹介します。
ランチェスター第一法則を活用して、競合相手との戦略を考える
ランチェスター第一法則を活用して、競合相手との戦略を練ることができます。
ランチェスター第一法則をマーケティングに活用した場合、企業が競合相手と競争する際に、自社の商品やサービスの武器効率と競合相手の兵力数を分析することができます。
例えば、スマートフォン市場で「スマートフォンA」と「スマートフォンB」の2つの商品を販売していたとします。
- スマートフォンA:高性能で多機能な武器を持っている
- スマートフォンB:性能や機能はやや劣るが低価格で提供
競合相手は、スマートフォンAとBをそれぞれ3つの種類で販売しているとします。
この場合、自社はスマートフォンAに特化することで、高い武器効率を活かして競合よりも優位に立つことができます。
つまり、競合相手の兵力数が多い状態でも、自社のスマートフォンAが優れているため、勝利することができるということです。
ランチェスター第二法則を活用して、市場シェアの拡大を目指す
ランチェスター第二法則を活用して、市場シェアの拡大を目指すことができます。
ランチェスター第二法則を活用するシーンとしては、意図的に大きな市場でビジネスを展開し、品揃えや資本力などによって他の企業を圧倒するということです。
例えば、スマートフォンメーカーが新しい機能を開発して投入する場合で考えてみましょう。この機能が武器効率にあたるとします。
同時期に競合他社も同様の機能を開発しているとしたら、自社の武器効率を高めるために開発に多額の投資を行います。
しかし、競合相手が同様に投資を行っている場合、自社の武器効率が良くても競争優位性を得られない可能性があります。その場合、兵力数を増やすことで競争優位性を得ることができます。
具体的には、新規市場に進出して兵力数を増やすことで、より多くの顧客に商品やサービスを提供し、市場シェアを拡大することができるということです。
企業戦略としてのランチェスター戦略

ここからは、企業戦略としてのランチェスター戦略について解説します。
戦略 | 強者 | 弱者 |
---|---|---|
地域戦略 | 広域戦 | 局地戦 |
顧客戦略 | 確率戦 | 一騎打ち |
流通戦略 | 遠隔戦 | 接近戦 |
ランチェスター第一法則の場合
企業における第一法則の武器には、商品やブランド力があり、ビジネス上の「一騎打ち」「局地戦」「接近戦」には次のような意味があります。
- 一騎打ち(競合企業を1社に絞る)
- 極めて少数のライバルしかいない市場やターゲットに顧客を絞ること。
- 局地戦(特定の市場や地域に焦点を絞る)
- 限定したビジネス領域や地域を狙い、競合他社に対して強力な競争優位性を築くこと。
- 接近戦(自社の商品やサービスをより身近に感じてもらう)
- 競合企業と直接的に争うことなく、顧客との距離を縮めて接触頻度などの回数を増やし、自社の印象を植え付けること。
このように第一法則では、社員数や売り場面積などの量的な要素で戦わず、商品やブランド力を高めることで企業価値を向上させることが重要です。
シェア率No.1の大手(強者)との差別化を図るのであれば、ターゲット顧客を絞り、提供する商品やサービスの質やブランドイメージの向上が最重要ということです。
ランチェスター第二法則の場合
企業における第二法則の武器には、従業員数、店舗数や売り場面積、豊富な資金力などがあり、ビジネス上の「確率戦」「遠隔戦」「広域戦」には次のような意味があります。
- 確率戦(競合他社よりも有利な状況を作り出す)
- 多くの競合企業が存在する激しい市場や、同じ顧客層を狙う競合企業が多数存在するような市場で、自社の商品やサービスをより有利にアピールするなど、弱者に付け入る余地を与えないこと。
- 遠隔戦(多様なメディアを活用して、広く消費者に訴求)
- 大量の資金を投入して広告宣伝を行い、消費者が自社の商品やサービスを直接体験する前に、自社の認知度を高めること
- 広域戦(ビジネスの拡大による多くの顧客を取り込む)
- 企業が意図的に大きな市場でビジネスを展開し、豊富な資本力や優れた商品のラインナップによって他社を圧倒すること。
このように第二法則では、一騎打ちや局地戦、接近戦などの直接的な競争を避け、代わりに豊富な資金力を武器にするという「ミート戦略(追随)」が基本的な戦略となります。
シェア率No.1の大手(強者)は、「質より量」で攻めていき、弱者がとる差別化要素を徹底的に潰していくことに重点を置くということです。
ランチェスター戦略のマーケティング活用事例

ここからは、ランチェスター戦略のマーケティング活用事例をご紹介していきます。
Apple(ユーザーに高い付加価値を提供)
テクノロジー企業の代表「Apple」は、独自のデザインと技術革新によって市場を独占してきました。
その商品が「iPhone」や「iPad」などです。

- iPhone:「ボタンが1つ、または無し」というスマートフォン市場の変革
- iPad:競合のWindowsやAndroidといったタブレット端末の弱点を克服した同ジャンルの商品を開発
とくに、iPhoneの発売によってスマートフォン市場を変革し、Appleは革新的なデザイン、使いやすさ、高品質な製品というブランド価値を確立しています。
また、iTunesやApp Storeといったサービスの提供も行っており、ユーザーに高い付加価値を提供しています。
トヨタ自動車(高品質かつ低コストな自動車を提供)
トヨタ自動車はランチェスター戦略を行い、競合他社との差別化を図ることで市場占有率を拡大してきました。
自動車業界で最も重視されている「燃費の向上」を駆使した事例が「プリウス」です。

「プリウス」の最大の特徴は、【燃費の向上】にあります。ハイブリッドシステムを採用し、エンジンとモーターを組み合わせることで、燃費の効率がとても良くなっています。
つまり、ガソリン代を抑えることができ、顧客にとって燃料費が安くなります。
元々、ハイブリッドシステムは、競合他社が安価で販売し「ハイブリッドカー」としての立ち位置を確立していました。
ここで、トヨタ自動車は『生産システムの革新』『品質管理や製造プロセスの改善』を行い、高品質かつ低コストで同じハイブリッドカーのプリウスをモデルチェンジし、更に安い価格帯で発売しています。
セブンイレブン(一点突破を活用し新しい地域に次々に出店)

1974年に、1号店を東京都江東区にオープンしたセブンイレブンは、最初から全国展開をしていたわけではありません。
数々の地域に徐々に展開を進めていくことで、現在のNo.1の地位を獲得しています。
当時、関西地域は「ローソン」の知名度の方が高く、セブンイレブンは大きく出遅れていました。
一部の地域に集中的に出店を行うことで、その地域内のシェアを挙げ、知名度の向上につながっています。
ランチェスター戦略の『局地戦』(短期の間に集中的に出店を続ける)を利用し、大阪内での認知度は急速に高まり、出店数が300店舗に達する頃には、かなりの集客力を実現していました。
セブンイレブンは、関西地域でのシェア率もNo.1に至っています。
まとめ|ランチェスター戦略は、競合との販売競争で勝ち残るためのマーケティング理論
ランチェスター戦略は、マーケティングの分野で広く用いられる戦略の一つです。
ランチェスター戦略を用いることで、企業は競合他社との競争を有利に進めることができます。
今回の記事のまとめは以下のとおりです。
②シェア率No.1が「強者」、それ以外は「弱者」
③弱者は「一点集中」「局地戦」など提供する商品やサービスの質やブランドイメージの向上が最重要
④強者は「質より量」で攻め、さらに広い市場を目指すこと
⑤強者と弱者は、それぞれの戦い方が違う
ランチェスター戦略を活用することで、競争が激しい市場においても企業は勝ち残ることができます。
今回の記事を参考に、ランチェスター戦略を活用し、適切な施策を打ち出していきマーケティング活動の成功につなげていきましょう。
