
パタゴニアは、環境に配慮した製品開発に取り組むなどの社会貢献を行いながら、長期に渡って企業成長を遂げています。
また、企業の責任として、社会や地球にできることを考え実行しているのです。
この記事を読めば、長期にわたって活躍する企業の秘訣を知ることができます。
『パタゴニア流企業の責任とは DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文』の要約を紹介しますのでご覧ください。
『パタゴニア流企業の責任とは DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文』の概要

『パタゴニア流企業の責任とは』は、2013年4月号のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの一部の記事をまとめたものです。
パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナードと、パタゴニアグローバル/マーケティング副社長のヴィンセント・スタンリーによって執筆されました。
パタゴニアが事業を成長させ、また社会貢献を同時に実現させているパタゴニアが考える企業の責任について書かれています。
パタゴニアが成功した3つの秘訣とは?

私たちの多くは、収益を伸ばしながら環境に配慮した製品を作ったり、また社会に貢献したりすることを難しいと考えるでしょう。
パタゴニアは、実際に企業成長と社会貢献を両立させました。
その成功の裏には3つの項目があります。
詳細を確認していきましょう。
適切な処遇を与えること│信頼と忠誠を獲得すると長期的成功につながる
一つ目は、企業と関わる対象のそれぞれに適切な処遇を与えることです。
パタゴニアは、顧客、社員、社会に対しての信頼と忠誠を獲得することを第一に考えます。
信頼と忠誠を得ることで、マイナスになる事業などないと述べ、これらを獲得することは長期的な成功につながると触れています。
環境面を整えること│収益が改善する
二つ目は、環境面を整えることです。パタゴニアは、環境面の不足を見つけて整えることで、結果的に収益が改善すると述べます。
たとえば、製品作りの過程で水を汚染する工程がある、大量の廃棄物が出てしまうなどがあるかもしれません。
このような環境面の改善に努めると、エネルギー、水の消費量や、環境に悪影響を与える物質の排出量が減るために、結果的に企業のコスト削減につながると言います。
持続的な企業経営を考えること│企業レベルが向上する
三つ目は、持続的な企業経営に取り組むことです。長期的に収益を維持し成長し続ける体制を目指すことで、企業レベルが向上すると言います。
短期的に物事を考えると、どうしても視野が狭くなり、目先の利益を求めてしまうでしょう。
持続性の高い企業経営を目指すことで、私たちは長期的な視点に立ち物事を考えるようになります。
そうすると、自然と企業にとって必要な情報が集まり、企業のトップとしてのあるべき振る舞いや成長につながるのです。
「質を上げ革新を続ける」ことが持続的な企業経営につながる
パタゴニアは長期的な経営を考えると企業レベルが上がり、結果的に質と革新が増えると言います。そして、この質と革新を続けることが持続的な企業の成功につながるのです。
実際に、長期的に活躍する企業は「質を高め革新を続けていること」が共通点にあるそうです。
同族経営で創業二〇〇年以上の老舗のみが加盟できるエノキアン協会という国際組織があるが、ここのメンバーに共通する特質ないし体質が「質と革新」だ。パタゴニアはまだ創業四〇年程度にすぎないが、そのパタゴニアがエノキアン協会に加盟できる日が来るとしたら、それは、我々が質と革新という体質を見失わない場合だと思う。
パタゴニア流企業の責任とは DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文( 著者:イヴォン・シュイナード 、ヴィンセント・スタンリー)P.5より引用
実際にパタゴニアは、創業当初から「質と革新」を大切に経営をおこなってきたと語ります。
パタゴニアの源流とは│創業当初から「質と革新」を大事にした

パタゴニアは、前進の企業である1973年に生まれたシュイナード・イクイップメントの頃から「質と革新」を大切にしています。
シュイナード・イクイップメントはクライミング道具の制作企業です。市場に出回っている製品に満足できず、さらに良い製品を作りたいという思いから作られました。
実際に、シュイナード・イクイップメントの道具は、世界一という評判を得ていたと言います。
さまざまな製品の「質を上げて革新をもたらすこと」を実践して、その思いはパタゴニアにも反映されました。
パタゴニアは、いつも最高品質の製品を作ることだけに注力してきました。
最初につくったのは、岩との摩擦に耐え、肌を守ってくれる丈夫な服(ラグビー・シャツ、目の詰んだウールのセーター、お尻の部分に補強が入った短パンなど)だった。そして、化学繊維のアンダーウェア、フリース、透湿性のストーム・ジャケットの発売で事業の基盤が固まった。高い山で体を守ってくれる、より軽量・快適なウェアだ。
パタゴニア流企業の責任とは DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文 ( 著者:イヴォン・シュイナード 、ヴィンセント・スタンリー)P.6より引用
以来四〇年ほど事業を続け、その間、まあまあのレベルまで質を引き下げた製品を増やすなどの誘惑を退け、質と革新を重視してきたが、これは簡単な道のりではなかった。自分たちが誇りに思えない製品を上手につくれなかったのは、幸いだったといえる。当社の顧客は要求水準が高く、まあまあの製品が売れなかったことも幸運だった。
パタゴニアは、一貫して当初から質と革新を重視してきたのです。
顧客・社員・社会と企業における「質と革新」の深いつながり

パタゴニアが当初から「質と革新」を大切に経営をおこなってきた姿勢が、現在の環境保持や社会貢献の行動につながっているのです。
現代社会では、顧客・社員・社会と企業の「質」は深い関係性でつながっています。そして、企業が社会や環境に与える悪影響を大きく減らすためには、革新が必要であると言います。
顧客・社員との関係性のみならず、環境保全や社会貢献を同時におこなうことを困難であると多くの人は感じるかもしれません。
それは解決が難しいものであり、また短期的な利益で言えばマイナスになることもあるでしょう。
身近な例で言えば、製品を作成するにあたって発生する廃棄物や、環境汚染などがあるかもしれません。
しかし、パタゴニアは実際に実現不可能であると思える課題を解決し、実際にその取り組みの努力が報われた経験をしたと言います。最終的には、企業の収益へとつながっていくということです。
そのような仕事をすれば、必ず、自分たちの偉業について詳しく学ぶことができるし、我々を支えてくれる複雑なサプライチェーンについても詳しく学ぶことができる。そして、この学びが新製品の開発や既存製品の改良につながり、最終的に収益が増えて帳尻が合うことが多いのだ。
パタゴニア流企業の責任とは DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文( 著者:イヴォン・シュイナード 、ヴィンセント・スタンリー) P.8より引用
その実例を紹介します。
実例1:サプライヤーの最適化
製造を委託するサプライヤーを減らし質を高めることで、結果パタゴニアの収益を拡大させました。
製造を委託する製造工場のサプライヤーを100以上から60にまで減らしました。現在ではさらに最適化をおこない、45カ所まで減らしています。
そして、サプライヤーを減らし質を上げることで、様々なメリットが起こりました。通常であれば、できるだけ多くのサプライヤーと取引をするほど、収益はあがると考える人が多いでしょう。
しかし、それは事実でなかったのです。実際に、取引先を減少させた3年後に収益は当時の3倍にまで増加しました。
パタゴニアは、取引先を厳選して付き合っていくことの大切さを以下のように示します。
- 工場当たりの発注数が増加するために交渉力があがる
- パートナーとの関係性を深めれば、社会・環境面での改善協力がしやすくなる
実例2:オーガニック・コットンの導入
1988年、ボストンに新店舗を開業した際の出来事です。普通ならマイナスの投資であると考えられるオーガニック・コットンの総入れ替えをしたことで、よい影響を生み出しました。
新店舗をオープンした数日後、スタッフに異変が生じます。
スタッフが、頭痛と吐き気を訴えるようになったのです。調べたところその原因は地下に在庫として置いてあったコットン生地であり、ホルムアルデビトという有害物質が発生していました。
栽培時に化学物質を多く使っていたことがそのような事態を引き起こしていたのです。
そこでパタゴニアは、今までのコットン生地をすべてオーガニック・コットンに切り替えることにしました。
この初めての試みは、一から調べ直さなければならなくなりましたが、この時の実践があったからこそ現在のプラスの利益をもたらしているということです。
オーガニック・コットンに切り替えた後は、具体的に以下の利益が生まれました。
- オーガニック・コットンに切り替えた後は、農家から直接製品を仕入れるため栽培場所が明らかになった(切り替える前は、仲介人から製品を仕入れていたために、生産場所が分からなかった)
- 切り替えた直後は、農家への資金援助をしなければならず、また、コットン栽培に使用された化学製品を取り除く工場を見つけなければならなかった。しかし、そこから、コットンから衣料品を作成する方法やサプライチェーンの仕組みを学ぶことができた。
パタゴニアは企業の責任を全うするため環境保全に取り組む

パタゴニアは、企業の責任として環境保全や社会貢献により取り組んでいます。そして、企業としてあるべき責任を全うすることに意味があると考えているのです。
創業当初から一貫して「質と革新」に取り組んできました。持続性を高くすることを目指せば、斬新なアイデアを実践してみたり常によい事業の進め方や展開を考える必要に迫られたりするでしょう。
パタゴニアは、この取り組みによって最終的に社員・顧客・社会とよりよい関係が生まれると示しました。すなわち好循環が生まれるのです。
このような、売り手・買い手・社会の三方向に対してよいことをする経営の仕方を「三方よし」経営と言います。「三方よし」の実践は、現代社会において持続性の高い経営をするうえで大事な考え方です。
最後に、パタゴニアが企業としての責任を果たすべく行っている取り組みについて紹介します。
実例1:メリノ・ウールの生産方法開発
パタゴニアは、ネイチャー・コンサーバンシーとアルゼンチン領パタゴニアの羊飼いとともに、メリノ・ウールの生産方法の開発を進めています。
メリノ・ウールとは、メリノ種の羊からとれる繊維のことです。再生可能な繊維であるため、環境に配慮した製品であり、伸縮性が高く柔らかな肌触りであることが特徴です。
パタゴニアは羊を飼う場所として草原を復活させて、カウボーイのガウチョの伝統を継承しながら新たな試みをおこなっています。
実例2:サーモンの乱獲を防ぐ
パタゴニアは、カナダのブリティッシュコロンビア州テラスにある水産加工工場を買収し、サーモン・ジャーキーを加工しました。
工場で使用されるサーモンは、その地域に住む先住民が伝統的な方法で捕獲されたものであり、乱獲ができないため資源の適正化につながります。
さらに、この工場で加工されるサーモン・ジャーキーは、一週間以上にわたって保存できるものです。
この取り組みは、環境資源を守りつつ、与えられた資源を無駄にしないことにつながるでしょう。
まとめ
パタゴニアは、質を上げ革新を続けることを大切にして経営を続けてきました。そして、企業の責任として環境に配慮した製品を開発したり環境によい社会貢献をおこなったりします。
そして、これは企業の利益にもつながり長期的に持続性の高い経営や、持続可能な世界を作ることにもつながるのです。気になる方は、ぜひ原文も手に取ってみてください。
> パタゴニア流企業の責任とは DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文

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