心理学で読み解くリーダーシップ論!組織の発展に必要な考え方とは?

- 社員がついてくる・組織が活性化するリーダーシップとは何だろう?
- 現代の企業組織に適したリーダーシップのあり方を知りたい
- リーダーシップは時代とともにどう変化してきたのだろう?
企業経営に日々取り組む中で、上記のようなことを考えたことはありませんか?
今回は、リーダーシップ論の歴史を心理学の視点から読み解いていきます。
時代とともにリーダーシップ論がどのような変遷を経てきたのかが理解できるでしょう。
ぜひご自身に適したリーダーシップのあり方を考える際に役立ててください。
心理学とリーダーシップ論の関わり

そもそも、心理学とリーダーシップ論にどのような関わりがあるのか疑問に感じた人もいるはずです。
リーダーシップ論の歴史と、心理学が取り入れられてきた背景について解説します。
リーダーシップ論の歴史
リーダーシップ論と聞くと、いかにも古くから研究が行われ確立した理論があるかのように思えるかもしれません。
実はリーダーシップ論の歴史は意外にも浅く、本格的に研究されるようになったのは1940年代後半からです。
リーダーシップ論が辿ってきた歴史は、次のように整理することができます。
理論 | 年代 | 概要 |
特性理論 | 〜1940年代 | リーダーシップを先天的な性質と捉える |
行動理論 | 1940年代後半〜 | リーダーシップを行動レベルで捉える |
条件適合型理論 | 1960年代〜 | 普遍的なリーダーシップはなく、状況に応じて変わる |
コンセプト理論 | 1980年代〜 | 環境や組織によってリーダーシップのあり方を細分化 |
リーダーシップ論に関する研究は現在も続けられており、めまぐるしく変化する現代社会にふさわしいリーダー像が問われています。
確立されたリーダーシップ論が存在するのではなく、現在もなお発展し続けているという点を押さえておきましょう。
リーダーシップ論に心理学が取り入れられた背景
なぜリーダーシップ論に心理学が取り入れられるようになったのか、疑問に感じた人もいるでしょう。
結論としては、各時代に唱えられてきた理論ではリーダーシップを説明し切れなくなったことが主な理由です。
特性理論では説明がつかない事例が数多く確認されたことによって、行動理論が導き出されました。
行動理論では矛盾が生じると条件適合型理論が提唱されるといったように、現実に即した理論が求められてきたのです。
リーダーシップを発揮するのは「人」のため、新たな理論を構築するには人間の内面を掘り下げて分析する必要があります。
リーダーシップを人の内面から問い直す必要に迫られた結果、心理学が取り入れられるようになったのです。
古典的なリーダーシップ論「特性理論」

特性理論とは、リーダーシップを生まれ持った資質に見出す考え方のことです。
古代から近代まで長く唱えられてきた理論であり、最も古典的なリーダーシップ論といえます。
特性理論の例
古代ギリシャ時代の哲学者プラトンは、著書『国家』で次のように述べています。
(プラトン『国家』より)
優れたリーダーシップを発揮できる人物はあらかじめ決まっており、本人の資質しだいとプラトンが考えていたことが分かります。
紀元前500年頃、中国春秋時代に書かれた兵法書『孫子』においても、リーダーの条件として次の要素を挙げているのです。
・智:先見性、洞察力、判断力
・信:信頼・信義を貫く力
・仁:仁徳・思いやりがあること
・勇:決断力・実行力があること
・厳:威厳があること
孫子もまた、リーダーシップには人物としての資質や素養が深く関わっていると捉えていた向きがあります。
1940年代まで、実に2000年以上にわたりリーダーシップ論は特性理論に支えられていたのです。
特性理論の弱点
特性理論の最大の弱点は、実態に即していないことに尽きます。
過去にめざましい功績を挙げたリーダーが、必ずしもプラトンや孫子が説くような優れた資質を備えていたわけではありません。
反対に、優れたリーダーシップを発揮した人物を分析した場合、上記の条件を満たしていないケースも多々見られたのです。
特性理論は一握りのレアケースにのみ当てはまる理論と考えたほうが自然でしょう。
リーダーシップ論に関する研究が進むにつれて、特性理論に代わる新たな理論が求められるようになりました。
行動に着目する「行動理論」

より実態に見合ったリーダーシップ論の研究が進むと、リーダーシップを行動レベルで捉える「行動理論」が登場しました。
優れた資質を全て備えている人物でなくても、行動が適切であればリーダーシップを発揮できるという考え方です。
資質・特性に頼るリーダーシップ論に異を唱えたという点で、当時としては画期的な理論だったといえます。
行動理論の例
行動理論の中でも、広く知られている理論の1つに「PM理論」が挙げられます。
心理学者の三隅二不二が1966年に提唱した理論です。
PM理論では、リーダーシップを「Performance(目標達成機能)」と「Maintenance(集団維持機能)」に分けて捉えます。
・pm:目標達成能力・チーム統率能力ともに高いとはいえない
・Pm:目標を達成するための能力は高いものの、チームを統率する資質に欠ける
・pM:チームを統率する能力は高いものの、目標を達成するための能力が不十分
・PM:目標達成能力・チーム統率力ともに優れた理想的なリーダー像
行動レベルでリーダーシップを分析し、欠けている能力を補うための教育・指導が可能となるのがPM理論の特徴といえます。
リーダーシップを先天的な資質に見出すのではなく、育成可能な能力と定義した点が特性理論と大きく異なるのです。
行動理論の弱点
行動理論の弱点は、PM型リーダーの行動を誰もが再現できるとは限らない点にあります。
理想とするリーダーシップのあり方と必要な能力が明確になった点は大きな進歩ですが、誰でも習得可能な能力ではありません。
もともと目標達成能力が高い人や集団維持能力に長けた人が存在することは、多くの人が経験的に理解しています。
PM型リーダーを目指せる人は限られるとすれば、特性理論の拡張版に留まってしまうでしょう。
時代の流れとともに、行動理論に縛られないより広義のリーダーシップ論が求められるようになってきました。
環境・状況に着目する「条件適合型理論」

条件適合型理論とは、リーダーシップを普遍的な能力と捉えるのではなく、状況に応じて柔軟に使い分ける能力と捉える理論です。
属する集団の状況に応じて、求められるリーダーシップが変化することは多くの人が経験しているでしょう。
たとえば、若手がそろっているチームとベテラン勢が大半を占めるチームとでは、必要なリーダーシップも異なります。
リーダーは同じ人であっても、属するチームやプロジェクトが変わればリーダーシップを使い分ける必要に迫られるのです。
リーダーを中心に捉えるのではなく、働きかける相手に合わせることを前提としている点が行動理論と大きく異なります。
条件適合型理論の例
条件適合型理論の1つに、心理学者フレッド・エドワード・フィードラーが提唱した「コンティンジェンシー理論」があります。
いかなる状況でも最高のパフォーマンスを発揮できるリーダーは存在しない、という前提にもとづく理論です。
リーダーが置かれた状況下で、次の3つの状況変数が高いか低いかをそれぞれ判断し、リーダーシップが発揮できるかを判断します。
・リーダーがチームメンバーに支持されている度合い
・職務や課題が明確になっている度合い
・リーダーがチームメンバーを制御できる権限の度合い
フィードラーは、上記の3要素がいずれも高いほどリーダーシップを発揮しやすい状況にあると唱えました。
リーダーシップをゼネラリストに求められる資質と捉え、状況に応じて言動を使い分けられるのが優れたリーダーと定義したのです。
条件適合型理論の弱点
条件適合型理論は特定の状況で発揮されるリーダーシップに着目する反面、状況が絶えず変化することに関しては考慮していません。
現代のようにビジネス環境が目まぐるしく変わる時代においては、状況の変化に対応できない可能性があります。
一時期は優れたパフォーマンスを発揮していたリーダーが、環境の変化によって成果を出せなくなるのは好例の1つです。
普遍的なリーダーシップの存在を否定している以上、リーダーが淘汰されていくことを認めざるを得ない残酷な理論ともいえます。
急激な状況の変化にどう対応するべきかについては、条件適合型理論では追求し切れなかったといえるでしょう。
リーダーシップのあり方を再定義する「コンセプト理論」

条件適合型理論を土台として、リーダーとリーダーを取り巻く環境に重きを置いているのがコンセプト理論です。
コンセプト理論では、環境に応じて求められるリーダーシップの概念を定義します。
リーダーシップの良し悪しに関する固定的な価値基準を決めるのではなく、相対的に捉えている点が大きな特徴といえるでしょう。
コンセプト理論の例
コンセプト理論では、数多くのリーダーシップのあり方が提唱されています。
代表的なリーダーシップのスタイルは次の5つです。
変革型リーダーシップ
ビジョンを掲げ、組織の変革を促すスタイルのリーダーシップです。
現状に対して問題提起し、チームメンバーに危機感を抱かせることで自発的に動いてもらうことを目指します。
急激なビジネス環境の変化や経営危機が危惧される状況など、思い切った改革が必要な場合に効果を発揮するスタイルです。
カリスマ型リーダーシップ
リーダー自らが高度な実務能力と発想力、行動力を発揮してチームを率いるリーダーシップのスタイルです。
リーダー自身の求心力がチーム結束のカギを握ることから、カリスマ型と呼ばれています。
強力なリーダーシップを発揮できる人材がいればうまく機能する反面、メンバーが受動的になりやすいのが難点です。
EQ型リーダーシップ
チーム内の良好な人間関係や就業環境の構築を重視し、チームメンバーのモチベーション向上を図るスタイルです。
チームメンバーの感情面を重視する点が大きな特徴であり、実務の進め方に関してはメンバーに委ねるケースも少なくありません。
チームワークを重視すべき状況下で、効果を発揮するリーダーシップのあり方といえるでしょう。
ファシリテーション型リーダーシップ
メンバーが自律的に動けるよう、情報や意見を引き出す「傾聴」を重視するリーダーシップのスタイルです。
上限関係にもとづく権威的なリーダーシップではなく、中立な立場でメンバーと接する点が大きな特徴といえます。
熟練したメンバーが多勢を占めるチームだけでなく、意欲の高い若手が集まるチームにおいても有効なリーダーシップのあり方です。
サーバントリーダーシップ
サーバントとは「使用人」「召し使い」のことです。
実務に携わるチームメンバーこそが主役であり、リーダーはチームメンバーのフォロー役に回ります。
チームの先頭に立って統括するリーダーとは180度異なる、新たなリーダーシップのあり方といえるでしょう。
コンセプト理論の弱点
環境に応じてリーダーシップのスタイルを変えられることは、コンセプト理論の強みであり弱点ともいえます。
求められるリーダーシップを発揮できる人材が、都合よく在籍しているとは限らないからです。
リーダーシップの多様化は、「そもそもリーダーシップとは何か?」を分かりにくくするという側面もあります。
コンセプト理論の本質を理解するには、リーダーシップの歴史的変遷や心理学との関わりを押さえておく必要があるでしょう。
リーダーシップ論を読み解く際の注意点

リーダーリップ論を読み解く際には、誤解や先入観にもとづく解釈をしないよう注意を払う必要があります。
次に挙げる注意点を押さえた上で、リーダーシップのあり方についてじっくり考えていくことが大切です。
リーダーシップのあり方に「正解」はない
リーダーシップ論には決定的な「正解」が存在しません。
正解がないからこそ「理想的なリーダーシップとは何か?」が研究され続けてきたのです。
自分に合ったリーダーシップのスタイルを見つけることは重要ですが、正解は1つではないことを念頭に置く必要があるでしょう。
リーダーシップに何らかの「正解」があると誤解し、特定のスタイルのリーダーシップを盲信することのないよう注意してください。
新しい理論ほど「正しい」とは限らない
リーダーシップは時代を追うごとに変化してきたのは前述の通りですが、新しい理論ほど「正しい」わけではありません。
行動理論や条件適合型理論はやや古典的なリーダーシップ論ですが、現在でも参考になる点は多々あります。
反対に、最新の理論こそが正しいと考えた結果、リーダーシップの本質を見落としてしまう恐れもあるのです。
リーダーシップ論は現在もなお議論や研究が進行中のテーマであり、新しい理論が完成形ではないことを理解しておきましょう。
変化し続けるリーダーシップ論を注視する
ビジネス環境がめまぐるしく変化する現代において、リーダーシップ論は変化を遂げつつあります。
過去に提唱された理論を学ぶだけでなく、変化し続けるリーダーシップ論を今後も注視していくことが大切です。
一例として、「オーセンティックリーダーシップ」と「絆徳経営」についても押さえておきましょう。
オーセンティックリーダーシップ
借り物の理論に頼るのではなく、自分自身の価値観や信条にもとづくリーダーシップを重視するスタイルです。
オーセンティックとは「真の・本物の」という意味を表し、次の5つの特性を重視する傾向があります。
・自己の目的理解
・モラルの遵守
・真心を込めたリード
・人間関係の継続的な構築
・自分自身を律する
リーダー自身がどうあるべきか?という本質に立ち返っている点が、オーセンティックリーダーシップの特徴といえるでしょう。
絆徳経営
絆徳経営とは、顧客・社員・社会の「三方よし」を目指す理論です。
社内外を問わず「絆」を重視することによって、持続可能な経営と経済合理性の両立が可能になると考えます。
リーダーシップの本質が「組織や社会をより良くしていくこと」にあると再認識する上で、重要な理論といえるでしょう。
世の中には多種多様なリーダーシップ論がありますが、ともするとリーダー自身の個人的な問題に終始しがちです。
視野を広げてリーダーシップを捉え直し、定期的に原点へと立ち返るためにも絆徳経営への理解を深めておくことをおすすめします。
まとめ
リーダーシップ論は心理学を取り入れながら、時代とともに進歩してきました。
現在もなお、確立された決定的なリーダーシップ論は存在しないのが実情です。
求められるリーダーシップのあり方は今後も変化し続け、進歩と発展を続けていくでしょう。
今回紹介してきた各種のリーダーシップ論を参考に、ぜひご自身に合ったリーダーシップのあり方を模索し続けてください。
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