
「売り手」や「買い手」だけでなく、「世間」も含めた三方の満足を目指す精神である「三方よし」の価値観です。
江戸時代に始まった考え方なので「もう古いのでは?」と感じる人もいるでしょう。
しかし、コロナ禍への突入により世間への配慮を重視せざるを得ないなか、「三方よし」の精神が注目を浴びています。
今回はコロナ禍のビジネスだからこそ取り入れたい「三方よし」について解説していきます。
コロナ禍で三方よしを取り入れている事例なども紹介するので、ぜひ今後のビジネスの参考にしてみてください。
コロナ禍にこそ取り入れたい「三方よし」とは
コロナ禍にこそ取り入れるべきと言われる「三方よし」の精神は、江戸時代に現在の滋賀県(近江)から始まったと言われています。
では「三方よし」はどんな考え方なのか、どのように広まったのかを見ていきましょう。
3つの要素を重視する考え方
三方よしとは「売り手」「買い手」「世間」の三方が良い状態を目指すビジネスの考え方です。
三方が良い状態についての詳細は次のとおりです。
- 売り手:商品やサービスを提供する企業が、コストに見合う利益を出している状態
- 買い手:商品やサービスを購入した顧客の満足度が高い状態
- 世間:売り手である企業が社会や世間に貢献しており、評価が高い状態
もちろんビジネスを続けていくためには売り手の利益を重視することが大切です。
しかし利益だけを追求するあまり、顧客への対応を疎かにしたり、商品やサービスの質が低かったりすると顧客は離れてしまいます。
このように「買い手」と「売り手」を重視したビジネスは、古くから行われてきました。
しかし、かつての近江商人は、長く続くビジネスを目指すためには「世間」の満足も大切だと考えたのです。
「売り手」「買い手」「世間」の三方が良い状態を目指した近江商人のビジネスは、近江以外の地域でも大きく繁栄しました。
現代でもこの精神は注目を集めており、「三方よし」を企業理念に掲げる企業もあるほどです。
近江商人の精神がもとになっている
「三方よし」の考え方を広めた近江商人は、かつて近江と呼ばれた滋賀県を拠点に商いを行っていました。
近江商人の特徴は、近江だけで商いを行っていた商人とは違い、近江に本店を構えながらほかの地域でも商いを行っていた点です。
当時ほかの地域に赴くことは、現代でいう外国に足を運ぶようなもの。
土地によって文化や風習がまるで違ったのです。
そのため、自分たちの利益よりも地域の情勢や社会を優先する必要がありました。
そこで生まれたのが、「売り手」や「買い手」だけでなく「世間」を大切にしてビジネスを行う考え方です。
近江商人が大きく成功したのは、この「三方よし」の精神があったからだといわれています。
また、現在の滋賀県である近江は琵琶湖を有する特殊な地形であったため、斬新なアイデアや思考を持った近江商人が多く誕生したといえるでしょう。
なぜコロナ禍で「三方よし」に注目が集まっているのか
「三方よし」は長い年月を経ても通用する考え方として、さまざまな企業がビジネスに取り入れてきました。
ではコロナ禍でなぜ「三方よし」に大きな注目が集まっているのか、詳しく見ていきましょう。
世界的な企業が方向転換を始めている
2019年のはじめ頃から猛威を振るうようになった新型コロナウイルスで、かつてないほどの変化を世界中の人にもたらしました。
そんななか、アマゾンやアップルなど、アメリカのトップ200の主要企業が会員となっている経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は、すべてのステークホルダーに貢献すると表明しました。
ステークホルダーは企業や顧客、従業員、株主、取引先、金融機関など、売り手である企業に関わる全ての人を意味します。
つまり、売り手や買い手だけでなく世間にも貢献するという「三方よし」の考え方に、世界の大企業が移行し始めているのです。
近江商人は江戸時代からこれまで「三方よし」の精神で商売を行っていましたが、世界的にはあまり注目されていませんでした。
しかし、ここにきて日本古来からある「三方よし」の考えを取り入れたビジネスに注目が集まっているのです。
「三方よし」はSDGsに通じるものがある
2030年までに達成すべき、17の「持続可能な開発目標」であるSDGs。
SDGsは貧困や格差などの経済環境や気候変動などの外的環境に関わる問題を解決し、すべての人が住みやすい世の中をつくることが目的です。
この目標はコロナ禍においても共通していえることです。
生活や仕事が制限されるなか、誰もが住みやすい世の中を作るために、17の開発目標実現を目指す企業が増えています。
そこで注目を集めているのが「三方よし」の考え方だということです。
三方よしとSDGsは、課題を解決して格差のない社会を目指しながら、経済成長も目指していく点で共通しています。
たとえば、SDGsでは子どもたちの明るい未来を目指す目標がたくさん採用されています。
「誰もが平等に教育を受けることができ、働きがいのある仕事に就ける」。
このような目標を実現するには、企業が従業員や採用者の教育環境を整備する必要があります。
一見コストが膨らむと思うかもしれませんが、教育の充実によって優秀な人材が増えれば、企業の利益につながるでしょう。
「世間(社会)」への貢献で「売り手(自社)」が利益を生めば、より質の高いサービスや商品を「買い手(顧客)」に提供できます。
三方よしの精神はSDGsの根幹ともいえるため、改めて注目が集まっているといえるでしょう。
「三方よし」の精神で成功する企業が増えている
「三方よし」の考え方が再び注目されている背景には、時代の流れによる商品の変化が関係しています。
かつては商品を提供するためにはコストをかけるのが一般的でした。
質の高い商品を提供するためには、少なからずコストをかける必要があり、顧客満足度を高めるためには手厚いカスタマーサポートが必要と考える企業が多かったからです。
そうしたビジネスの構築が進んでいく中で、平行して次のようなビジネスモデルが増えていきました。
継続的に顧客と関わり続ける「サスティナビリティ」の浸透
世の中がサスティナブルという方向に傾き、サブスクリプション型のサービスが増えました。
たとえば、ネットフリックスなどの動画視聴サービスは、1つの商品(動画)をたくさんの人に届けることができます。
コストを最小限に抑えて利益を出しながら、一定の顧客満足度も獲得できるのです。
顧客満足度はかけたコストとイコールで結びつくわけではありません。
商品へのコストを最小限に抑えれば、社会貢献に投資して企業のイメージアップや従業員の教育に投資できます。
「三方よし」の精神をベースに、商品やサービスの質とコストの兼ね合いを見極めることで成功している企業はたくさんあるのです。
三方よしの考え方をベースにしたマーケティングの方法は、こちらの記事を参考にしてみてください。
コロナ禍で「三方よし」を取り入れている事例
コロナ禍だからこそ「三方よし」を取り入れている事例はたくさんあります。
今回は自治体や企業の事例を2つ紹介するので、コロナ禍でビジネスを成功させるための参考にしてみてください。
滋賀県
滋賀県は「県」として次のような発信をしています。
現在のステージは、「滋賀らしい生活三方よしステージ」ということで、気をつけながら、基本的な感染予防対策を講じながら、経済活動、社会活動、生活を行っていこうということです。この点を皆さま方にしっかりとお声がけしていきたいと思っております。
引用元:滋賀県ホームページ
徹底した感染対策を行うだけでなく、経済活動や社会活動、生活も充実させていこうという考え方です。
「コロナ禍だからできない」と制限するのではなく、県民や社会が良くなる方向性を模索していこうという精神は、「三方よし」発祥の地である滋賀県ならではといえるでしょう。
ラーニングエッジ株式会社

経営者に向けて数多くのセミナーを実施したり、ビジネススクールの運営を行ったりしているのが弊社ラーニングエッジです。
経営理念は「全従業員の物心両面の豊かさを追求すると共に教育を通じた社会の成長発展に貢献します」としており、三方よしの精神が色濃く反映されています。
従業員の教育環境や適切な評価制度を実践して人材の育成を行うのはもちろん、売上の一部を寄付やボランティア活動に充てるなど、社会への貢献にも力を入れていれています。
売り手や買い手だけでなく、世間への貢献も忘れない姿勢で、会社も従業員も大きく成長しています。
「三方よし」を取り入れて成功した企業について、さらに詳しい事例を知りたい人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
「三方よし」をマーケティングに取り入れる
「三方よし」をマーケティングに取り入れるためには、次の2つの方法があります。
- マーケティングのフレームワークを取り入れる
- セミナーを受ける
それぞれ2つの方法について、詳しく見ていきましょう。
マーケティングのフレームワークを取り入れる
マーケティング活動をスムーズに、効果的に進めていくためには、チームの共通言語とも言われる「フレームワーク」を取り入れるのがおすすめです。
今回は「三方よし」の考え方をマーケティングに活かすフレームワークを2つ紹介します。
自社の戦略を立てる際に活用してみてください。
4P分析
4P分析は自社の新サービスや新製品を、どのように売り出すかを検討するときに役立つフレームワークです。
4つのPは次のとおりです。
- Product(製品・サービス)
- Price(価格)
- Place(販促場所)
- Promotion(販促方法)
4P分析の特徴は、買い手ファーストのマーケットインに偏った考え方ではなく、売り手視点のプロダクトアウトの観点から販売方法を分析できる点です。
買い手重視の分析である「4C分析」とあわせて行うと「三方よし」を意識したマーケティング活動ができるといえます。
4C分析
4C分析は買い手の目線に立って、商品やサービスを購入するまでに関わる4つの要素を分析するためのフレームワーク。
4つのCは次のとおりです。
- Customer Value(顧客価値)
- Cost(顧客のコスト)
- Convenience(顧客にとっての利便性)
- Communication(顧客とのコミュニケーション)
4つの観点から買い手が購入に至る前での行動や心理を分析し、適切なアプローチ方法を検討できます。
マーケティングに役立つフレームワークを詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
セミナーを受ける
「三方よし」のマーケティングセミナーを受けるのも、おすすめの方法です。
ラーニングエッジでは、自社が取り入れる三方よしの精神をマーケティングに活かすためのセミナーを実施しています。
長く存続する企業を目指すためには、経営者自身がマーケティングの本質を理解し、チームのメンバーである従業員に発信することが大切です。
従業員のスキルやモチベーションを高めるためにも、経営者が自らセミナーなどに参加して必要な情報をインプットしていきましょう。
まとめ
コロナ禍において世界の情勢が大きく方向転換するなか、売り手や買い手だけでなく、世間にも貢献する「三方よし」の考え方が注目されています。
「三方よし」の精神は、経済活動や環境保護活動を活発に行いながら誰もが住みよい世界を作るための開発目標である「SDGs」とも共通点が多いのが特徴です。
古くから続く考え方ですが、これからの時代になくてはならない考え方といえます。
ぜひ取り入れて、長く繁栄するビジネスを目指していきましょう。
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