
- ステークホルダーという言葉を耳にするが、どういう意味なのだろう?
- なぜステークホルダーが重要視されているのか?
- 経営戦略にステークホルダーがどう関わってくるのだろう?
ステークホルダーについて、上記のような疑問を感じていませんか?
今回は、ステークホルダーの基本的な概念や重要視されている理由について解説します。
ステークホルダーに関する具体的な取り組み事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ステークホルダーとは

はじめに、ステークホルダーの基本的な意味と、他の用語との違いについて整理しておきましょう。
ストックホルダーやシェアホルダーといった用語とは意味が大きく異なるため、混同して使わないように注意してください。
経営に直接的・間接的な影響を与える利害関係者
ステークホルダーは日本語で「利害関係者」と訳されます。
企業経営に直接的・間接的に影響を与える全ての利害関係者を指していると考えてください。
もともと英語のstakeは「掛金」、holderは「保有者」という意味です。
ステークホルダーという言葉は、アメリカの哲学者R・エドワード・フリーマンが著書で用いたことを契機に浸透していきました。
具体的には、次のような各方面の関係者がステークホルダーに含まれます。
- 顧客
- 仕入先
- 従業員
- 株主
- 債権者
- 地域社会
- 行政機関
- 金融機関
- 政府
- 各種団体 など
企業が事業において何らかの接点を持つ可能性がある人々は、ステークホルダーに含まれると考えて差し支えありません。
ステークホルダーは、企業にとって「あらゆる利害関係者」を包括する概念なのです。
一般的な「利害関係」との違い
一般的に「企業の利害関係者」と言う場合、株主や顧客といった金銭的な関わりのある人々を連想しがちです。
ある企業の株主にとって、企業の業績は配当に影響することから直接的な利害関係者といえます。
一方、たとえば地域社会の中には特定の企業と取引のない住人や事業従事者も多数含まれているはずです。
直接的な利害関係がなかったとしても、企業の事業活動によって間接的な影響を受ける可能性はあるでしょう。
ステークホルダーは、一般的な利害関係者という概念を超えてより広範囲かつ多方面の人々を指しています。
利害関係者と訳されることが多いものの、指し示す対象はより広い点に注意しましょう。
「ストックホルダー」「シェアホルダー」との違い
ステークホルダーとよく似た言葉にストックホルダーやシェアホルダーがあります。
ステークホルダーとの最も大きな違いは、ストックホルダー・シェアホルダーともに株主を指している点です。
- ストックホルダー:株を保有している人(=株主)
- シェアホルダー:議決権を持つ株主
ストックホルダーの中でも一定以上の株を保有し、議決権を持つ人のことをシェアホルダーと呼びます。
ステークホルダーは株主に限らず、あらゆる利害関係者を包括する概念です。
ストックホルダーもシェアホルダーも、もちろんステークホルダーに含まれています。
ステークホルダー>ストックホルダー>シェアホルダーの順に広い範囲を指し示していると捉えてください。
ステークホルダーの種類

ステークホルダーには、大きく分けて「直接的ステークホルダー」と「間接的ステークホルダー」の2種類があります。
ステークホルダーが指し示す範囲は非常に広いため、企業との関係性を見極めていくことが大切です。
直接的・間接的ステークホルダーへの理解を深めることで、ステークホルダーの洗い出しに役立てましょう。
直接的ステークホルダー
直接的ステークホルダーとは、企業活動に直接的な影響を与え得る人や団体を指します。
具体的には、次のような人や団体が該当するケースが多いでしょう。
- 消費者・顧客
- クライアント
- 従業員
- 株主
- 金融機関
直接的ステークホルダーの特徴は、企業と利害が一致しているケースが多いという点です。
企業の業績が好調だと従業員の待遇が改善されたり、株主への配当が増えたりするといった利害の一致が想定できます。
利害関係者という訳語とも親和性が高く、すでに顕在化しているステークホルダーともいえるでしょう。
間接的ステークホルダー
間接的ステークホルダーとは、企業活動によって直接的な影響を受けるとは限らない人や団体を指します。
一例として、次のような人や団体をイメージするとよいでしょう。
- 従業員の家族
- 地域社会
- 行政機関
- 政府
上記の人・団体は企業とはとくにつながりがなく、一見すると無関係のように映るケースも多いはずです。
反対に企業とは一切関係がないと言い切れるかと問われたら、完全に無関係と断言することもできません。
実際、事業が成功することで地域社会に還元できたり、従業員の家族の生活がより豊かになったりすることもあり得ます。
間接的ステークホルダーとは潜在的な利害関係者のことであり、相互に何らかの影響を与え合う可能性のある人や団体を指すのです。
ステークホルダーが経営において重要視される理由

ステークホルダーはなぜ注目され、経営において重要な課題の1つと考えられているのでしょうか。
主な理由として次の3点が挙げられます。
企業のあり方・経営姿勢がシビアに問われているから
近年、企業のあり方や経営姿勢に対する世の中の視線はシビアになりつつあります。
かつては業績が良い企業・利益を上げている企業が賞賛され、注目される傾向がありました。
今日では、利益を独占している企業に厳しい目を向けられる場面も増えているのが実情です。
自社の利益を追求するだけでなく、社会全体のことを考える経営姿勢があらゆる企業に求められています。
多方面のステークホルダーと良好な関係を築いていくことで、結果的に企業価値が高まっていくことでしょう。
企業としてのあり方や経営姿勢がシビアに問われていることは、ステークホルダーが重要視される理由の1つといえます。
従業員エンゲージメントを高める必要があるから
従業員エンゲージメントを高める必要性が増していることも、ステークホルダーが注目されている要因の1つです。
労働人口が減少していくことが確実となった今、人材の確保はあらゆる企業にとって喫緊の課題といえるでしょう。
企業は顧客や株主だけでなく、従業員からも信頼され、愛される存在になっていく必要があります。
従業員エンゲージメントを高めるには、福利厚生などのサービスを充実させるだけでは十分とはいえません。
企業として積極的に社会貢献に取り組み、世の中から大切にされる企業であり続けることが求められています。
多方面のステークホルダーと良好な関係を築くことは、従業員エンゲージメントの向上にも繋がるのです。
持続可能な経営への転換期を迎えているから
持続可能な社会を掲げるSDGsの理念が浸透するにつれて、企業の社会的責任(CSR)への関心も高まりつつあります。
自社さえ利益を確保できればよいというスタンスでは、世の中から理解や共感を得られなくなっているのです。
短期的な利益を追求するあまり、環境破壊や社会格差を放置しているようでは批判の的にもなりかねません。
持続可能な経営を実現するには、直接的な利害関係のある人や団体以外にも配慮していく必要があります。
持続可能な経営への転換期を迎えていることは、ステークホルダーに関心を寄せる企業が増えていることと深く関わっているのです。
経営戦略を立てる際に知っておきたい3つの概念

経営戦略を立てるにあたり、ステークホルダーをどのように扱うべきなのか判断しかねるケースもあるでしょう。
次の3つの概念に対する理解を深め、ステークホルダーの存在を経営戦略に反映させていきましょう。
ステークホルダー分析
ステークホルダー分析とは、ステークホルダーを特定し、優先順位付けを行うことです。
ステークホルダーは多方面にわたっており、対象となる人や団体はほとんど無限にあるといっても過言ではありません。
自社にとってとくに重要度の高いステークホルダーは誰か、何を必要としているのかを明確にしておく必要があります。
各ステークホルダーが自社に及ぼす影響力を予測しておくことも重要です。
下図のようなマトリクスを作成し、事業に与える影響度と関心度によってステークホルダーを分類しましょう。
影響度 | 関心度 | 対応 |
強 | 高 | 綿密に管理 |
強 | 低 | 満足の保持 |
弱 | 高 | 報告の継続 |
弱 | 低 | 監視・観察 |
ステークホルダー分析を行うことで、現状とくに重要度が高いと思われる関係者に注力して対応することもできます。
影響度・関心度は時間の経過とともに変化する可能性があるため、定期的に分析し直すことが大切です。
ステークホルダーマネジメント
ステークホルダーマネジメントは、前述のステークホルダー分析とセットで実施するのが一般的です。
分析結果を踏まえ、エンゲージメントの状況を管理していくのがステークホルダーマネジメントと捉えてください。
ステークホルダーマネジメントが必要になるのは、全てのステークホルダーを満足させるのは現実的ではないからです。
投じるリソースを調整し、関係者にバランスよく施策を講じることをエンゲージメントコントロールといいます。
各ステークホルダーの影響度・関心度に見合った適切な状態が維持できているか、継続的に管理していくことが大切です。
ステークホルダーエンゲージメント
ステークホルダーエンゲージメントとは、ステークホルダーの関心事を事業や意思決定プロセスに組み込む組織的な試みのことです。
企業が単独で取り組むこともあれば、ステークホルダー自身と協働で推進することもあります。
具体的な取り組みは多岐にわたりますが、重要となるのは手段ではなく「視線がステークホルダーに向けられていること」です。
短期的・直接的に利益に繋がる活動でなくても、長期的に見て自社とステークホルダーの関係強化に繋がる施策を指します。
一例として、次のような活動が想定できるでしょう。
- 顧客相談窓口の設置
- 自社メディアでの情報提供
- セミナー開催
- 地域貢献活動
- 事業所の一般公開
- サプライヤーへのアンケート実施
ステークホルダーエンゲージメントは目標であり、単独で取り組んですぐに達成できるものではありません。
前述のステークホルダー分析やステークホルダーマネジメントを通じて、自社にとって必要な施策の検討を重ねる必要があります。
ステークホルダーに関する取り組み事例

ステークホルダーに関する取り組みとして、とくに有名な事例を見ていきましょう。
自社で活用できそうなものや取り入れられそうなものがないか、ぜひヒントを探してみてください。
キリングループ
キリングループでは下記の関係者をステークホルダーと位置付け、新しい価値共創のパートナーと捉えています。
- お客様
- 株主・投資家
- 地球環境
- ビジネスパートナー
- コミュニティ
- 従業員
取り組みの一例として、サプライチェーンの人権リスク評価と活動計画の策定が挙げられます。
サプライチェーンの水面下で発生するリスクのある人権リスクを洗い出し、地域社会への影響を踏まえて解決策を模索したのです。
一連の取り組みは企業Webサイトにも公開し、サプライチェーン以外のステークホルダーにも発信していくとのこと。
自社の利益だけでなく、関係者全員の幸福や働きやすさを追求する姿勢は、多方面の業界から注目を集めていくでしょう。
ステークホルダーに関する取り組みが、さらなるステークホルダーエンゲージメントへと繋がっていく好例といえます。
大和証券グループ
大和証券グループでは、社会課題の解決だけでなく社会課題の発見をも重要な使命と捉え、行動指針を打ち出しています。
企業Webサイトにおいて、下記の情報を公開しているのも特徴的な試みの1つです。
- ステークホルダー(人・団体)
- エンゲージメント方法
- 主な窓口
- 自社Webサイトにおける関連ページ
証券会社にとって、投資家や発行体が主な顧客です。
株主に関しても、同グループが発行する債券の投資家も含まれることになります。
特定の業種や組織に限らず、広範囲の人や団体をステークホルダーとして位置付けることができるのです。
証券会社という業種特有の強みを活かし、多方面にわたってステークホルダーとの関係性を築いている事例といえるでしょう。
スクウェア・エニックス・ホールディングス
ゲーム開発で知られるスクウェア・エニックス・ホールディングスでは、ステークホルダーとの具体的な関わり方を開示しています。
たとえば、次のような試みが特徴的です。
- 安心・安全なゲームプレイ環境の提供(有料アイテムの確率表記を徹底するなど)
- 教育・啓蒙支援活動(東京藝術大学に仮想のゲーム学科を開校するなど)
- 慈善活動(PCダウンロードゲームの収益全てを慈善団体に寄付するなど)
- 感染症対策への協力(感染症蔓延対策を目的とした行為には特許権の権利行使を行わないなど)
どのステークホルダーと具体的にどう関わるのか、何をしているのかを明示することで、取り組みが認知されやすくなっています。
ゲームプレイヤーではない層のステークホルダーにも、同社の取り組みは社会的価値の高いものとして認知されるでしょう。
結果として、ゲーム業界全体のイメージアップや社会的価値の向上といった長期的な効果をもたらしていくと考えられます。
まとめ
ステークホルダーに関する取り組みを重視することは、「社会の公器」という企業の立ち位置を再認識することに繋がります。
同時に、多方面の人や団体に自社がどう映るのかを客観視し、事業方針を見直していくきっかけにもなるでしょう。
今回解説してきたポイントを参考に、ぜひステークホルダーとの関係強化に取り組んでください。
ステークホルダーと強固な信頼関係が構築できれば、企業の社会的価値はいっそう向上していくはずです。
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