
スタートアップ企業や、長年経営をおこなってきた企業が、本格的に上場を目指そうと考えるタイミングがあると思います。
上場に必要な準備は、申請する数年前から準備や戦略を練ることが重要であり、フェーズごとにやるべきことがあるのです。
「上場の法則」チャンネルでは、伊藤雅仁氏が、上場を目指す経営者に向けての発信をおこなっています。
この記事は、「上場の法則」チャンネルの『【永久保存版】上場に必要な条件・戦略・ステップを徹底解説』を記事化したものです。
スタートアップ企業が上場するために必要な準備と条件を知りたい方はご覧ください。上場を目指すためにおこなうべき、戦略やステップを具体的に知ることが可能です。
上場チャンネルをおこなう伊藤雅仁とは
「上場チャンネル」のオーナーは、経営戦略センター社長の伊藤雅仁です。
伊藤雅仁プロフィール
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=NTrVhXY3Moo
経営戦略センター社長として次代の孫正義/柳井正を生み出すべくIPOの総合的支援を行っている。 これまで、上場企業2社で代表、SBIホールディングス取締役常務執行役員、ヤフー子会社社長など歴任。 時価総額1000億円以上、営業利益50億円以上など複数の企業で経営実績を残す。
今回は、IPOの総合的支援をおこなう伊藤雅仁氏が解説する、上場に必要な条件やステップを紹介します。詳しい内容を知りたい方は動画もぜひご覧ください。
上場までに必要な二つの条件

上場までに必要なステップと条件とは、予実(予算と実績)と内部統制であると言います。
上場すると業績見通しを発表し、投資家はそれを見て投資をおこなうかどうかの判断をしていきます。
そのために、発表した数字に対して、大きくぶれないような形で経営をしていく必要があるそうです。
発表した業績予想に対して、ずれる見込みがあれば、業績修正を発表しなければなりません。
そしてこのような修正の事態が頻繁に起こると、投資判断が正確にできなくなってしまいます。
出した数字に対して、実績も近いものにすることは大切であると言います。予算と実績を合わせることも、上場前からしっかりと練習しておかなければなりません。
そのため、予実がしっかりと管理できていることは、とても大事な要素であるそうです。
上場してからであると、例えば、売上については10%ずれたら業績修正、利益に関しては、30%ずれたら業績修正となると言います。
上場準備の段階では、そこまで大きくずれることはよくないと伊藤氏は述べました。できれば利益でいけば数パーセント、10%以内にはおさまるようにしたいと言います。
下方修正よりは上方修正の方がよいため、保守的な数字で予算を立てましょう。
上場後に、投資家が判断できるような数字を出すための練習でもあります。
上方修正であれば、大きくずれてよいわけでなく、出来るだけそのレンジの中で数字を出していくことが大事となるそうです。
フェーズごとの戦略

動画では、表を用いて上場までのフェーズごとで数年間でおこなうことについて、具体的かつ分かりやすく述べられています。
フェーズごとでおこなう戦略をご紹介しましょう。
会社視点で考える場合に、上場する決算期(申請期)を「N」と言います。申請というのは、取引所に上場したいと申請することで、その期のことを「N期」と言うそうです。
動画では、例えば、決算期は3月期であり、2022年の3月決算を持って上場申請するとなった場合の想定をご紹介しています。
22年の4月以降が申請期(N期)です。2020年4月~3月が N-1、N-2、N-3というようにさかのぼってカウントします。
かみ砕くとN-1は、上場するおおよそ1年前、N-2は2期前、2年前のことです。
N-3以前、N-3でおこなうこと

それぞれフェーズでどのような戦略をおこなっていくかについては、伊藤氏はN -3以前から、ある程度考えていくべきだと言います。
具体的にステージごとに考えた場合に伊藤氏の整理としては、3つのカテゴリーに分かれると述べました。
- 戦略整理
- 内部体制整理
- 対外折衝
一つずつご紹介しましょう。
戦略整理
戦略整理と言った場合にまずN-3やN-3以前にやらないといけないことは、事業戦略や会社のビジョンの言語化であるそうです。
「私たちはこういう会社です」「事業戦略でこういう計画をやっていきます」ということを、上場後は、次々に発表していくこととなります。
事業は、成長させる前提であるため、事業戦略やビジョンをまずは言語化しましょう。
例えば言語化は、ミッションステートメントや、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)といったものがあげられるそうです。
また、基本的な事業戦略やビジョンに基づいて事業計画を数値の計画に落としていき、長期的な計画を作る必要があると言います。「事業計画の策定」です。
また、いつ、いくら、誰から資金調達するのかの「資本政策策定」をおこないます。
株式型のインセンティブをどういう制度でやっていくか、あるいは主要な役員や幹部などに渡すということの取り組みも必要です。「ストックオプションの発行」の着手もおこないます。
内部体制整理
内部体制の整備では、まず「コア人材の採用」が大切であると述べます。
企業の中心になっていくような人材の採用が必要です。「ヒト・カネ・モノ」の中でも人の要素は事業を伸ばしていくうえで非常に重要であると言います。
また、戦略整理をおこない事業戦略やビジョンを言語化したものの社内共有が進むよう「組織文化を醸成していく」ことは大切です。
例えばビジョンや、バリューは、事業をおこなううえでの価値観を示すものです。
よって、行動の仕方や、事業をどのようにつくっていくかなどの考え方といった組織文化を作る必要があります。
N-3以前の段階では、コア人材採用といっても、まだまだ人が流動的なフェーズであると言います。
長年の経営をおこなった後で、上場準備に入るということであれば、ある程度、さまざまな整理はできているでしょう。
しかし、スタートアップで本格的に上場を目指す時期であるとすると、確かに組織文化というものはできていません。
そのため、ビジョン、ミッション、バリューというものを核にしながら、例えば人事制度などを作っていく必要があると言います。
組織文化醸成のために取り組むべきこと
組織文化を醸成させるためには、言語化をとにかく徹底しておこない、それをみんなで確認する機会が多いほどよいそうです。
例えば、ミッションステートメントのような冊子を作成している企業もあります。また、カードのようなものに記載したり、ホームページに掲載したりしている場合もあると言います。
自分たちの会社のミッション、ビジョン、バリューなどを、日々確認できるよう明文化して手元に置けるような形にすることが大切であるそうです。
日本の昔の企業には社訓や、家業では家訓などがあります。実は長く続いている老舗企業は、そのようなものがしっかりとしているそうです。
スタートアップ企業においても、確実に作成をおこない、確認する機会を増やしましょう。
例えば、半期や四半期ごとに、社員全員で集まる機会があるでしょう。前の期の振り返りや、次の期の方針を策定する中で、ミッションビジョンバリューを確認する場を作っていくとよいとのことです。
初期の段階でこのようなことをやっておいた方がよいと言います。
そして、組織文化が醸成されると、やがて上場前のコミットしてやっていけるメンバーも固まっていくでしょう。
一般的に会社の場合は取締会や、経営会議、それ以外もトピックスに基づいた会議のようなものがあります。
そして、会社経営になると、少しメンバーを絞った経営会議の実施が必要になっていきます。
このようなものをしっかりと運営できるようにしておくのも大事であるそうです。
対外折衝
対外折衝というのは、例えば「 VC (ベンチャーキャピタル)対応」があげられます。
上場して、資本政策をおこなうにあたり、外部の株主の方とやり取りすることが必然的に発生します。
また、N-3の時期になっていくと、「監査法人・主幹事証券の選定」をおこなう必要があるそうです。
例えば、ショートレビューというものがあります。正式な監査に入る前に、過去の決算について監査に近いことをおこない、その時点での問題点を洗い出すものです。これらを改善しながら、正式な監査に入っていくと言います。
上場を目指す場合は監査法人を選定し、また、主幹事と呼ばれる証券会社を決めなければなりません。そして、監査法人の選定から、先におこなうとよいと言います。
二つの役割を確認しておきましょう。監査法人は、数字面をチェックする役割、主幹事証券は、上場準備全体のことを確認してもらえる役割があるそうです。
例えば、上場すると、将来的には、決算書を作成して開示をおこないます。監査法人は、そのベースとなる数字に関して正しく処理できていることのチェックをおこないます。
監査法人が最初にチェックをおこない、今までのことについて大きな問題はないと結論を下すのです。
また、上場企業を目指すには、こういうことを改善しないといけないというのは、やはり数字面から固めていく必要があるそうです。
多くの監査法人が存在していますが、その中から自分の企業の監査をおこなってもらう、監査法人を選定する必要があるのです。
主幹事証券というのは、上場するときは基本的には証券会社がさまざまなアレンジをします。
直接、証券取引所に上場するのではなくて、その前に証券会社が「上場できる会社かどうか」についての審査をします。つまり、上場に向けての、準備や案内をしてくれるのが主幹事証券です。
対外折衝では、「組織体制の整備」をしていき、「予実管理」もおこないます。そして、とても大事な事項は「労務チェック」であると言います。
以前上場企業で、問題になった事項には、残業代が適切に払われていないことや、過剰労働があります。
例えば、課長やマネージャーと名前がついているけれど、実は管理職の権限がないみなし(名ばかり)管理職に、残業代が払われていなかったことです。
基本的な管理職には会社側としては、経営側の人間だということで残業代は払わなくてよい決まりがあります。
そのため、管理職ではない方には、しっかりと残業代を支給しないといけないという判決が出ました。
N-3の段階で、労務に問題はないか早めにチェックしておきましょう。
N-2でおこなうこと

N-2になると、2期前であるため、かなり上場への現実感が出てくると言います。
上場時に、どのような評価をされるかを想定しながら、会社としての戦略を練っていく「上場時評価想定の戦略策定」があります。
「資本政策」も引き続き必要であり、またコーポレートガバナンスという観点で「社外役員選任」をおこなう時期とのことです。
社外取締役の方をお呼びしたいとなった場合は、よい探し方のルートが二つあると伊藤氏は述べます。
一つは人材会社経由、もう一つはスタートアップコミュニティの中から探す方法です。
事業において、よいアドバイスをくれそうな方や、スタートアップの経営に詳しい弁護士や公認会計士の方を招へいするとよいと言います。
ガバナンスという意味では、いわゆるコンプライアンスに強い、弁護士や公認会計士の方になっていただく場合もあります。
また、事業系がわかる人を招へいすることもできるでしょう。
スタートアップ経営をおこなっていたり、上場経験があったりする人なども社外役員候補として入ることもあります。
スタートアップのコミュニティを始め、さまざまなところに人脈を持ってお願いできるようにしておくことは大事です。
N-2やN-1に社外役員選任をご依頼しますが、必要なことはその前からやっておくべきであると言います。いざとなったときにご依頼できる方がいない状況になってしまうからです。
また「予実運用」や、「内部統制」のコンプライアンスのチェック体制の整備を進めましょう。
N-1でおこなうこと

N-1では、さまざまな準備をしてきたことが、完全に運用できる状態です。極論で、いつ上場してもよいぐらいの準備をしておく必要があると言います。
決算も今までは開示するということはありませんでしたが、開示のための書類を作り、運用できる状態にすることが必要です。
要するに、書類業はすでに作成できているという状態を作っておくのがよいそうです。
例えば決算短信を、上場企業は発表します。決算短信を実際に作ってみるという練習もおこなう時期です。
そのほかの上場までにやるべきこと

動画の言葉や表を参照していただきながら、それを一つ丁寧に埋めていくとよいと言います。これをおこなっていただくと、基本はおさえられるイメージです。
しかし、自分たちでできる勉強も限られています。そのために、やるべき行動として、伊藤氏は二つの事項があると述べました。
一つは身の回りにいる上場経験のある方や、上場企業の役員や、経営者に話を聞くことです。
「最初は何からやったらいいですか?」ということを自分の会社状況を話しながら相談するとよいと言います。
二つ目は監査法人の選定です。
決算がしっかりできていないと上場の要件は満たされません。そのため、監査法人はどうするのか、この二つを早めに取り組むとよいと伊藤氏は述べています。
まとめ
スタートアップ企業が上場をおこなうために必要な、準備や戦略・ステップをご紹介しました。
上場までには、申請をする数年前から段階にあった準備をおこない、出来る限り早めの対応をおこなうことが大切であることが分かりました。
動画で表を確認しながら、ぜひフェーズごとに具体的な取り組みを確認してみてください。
> 動画:【永久保存版】上場に必要な条件・戦略・ステップを徹底解説 を見る

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