
経営者の方の中には、リーダーシップについて次のように考えたことがある方もいるでしょう。
- 経営者として、リーダーシップの基本的な定義を知っておきたい
- リーダーシップのフレームワークがあれば把握しておきたい
リーダーシップという言葉はビジネスシーンでよく使われていますが、具体的に何を指すのかが曖昧なケースが少なくありません。
本記事では、リーダーシップの基本的な定義と主要なフレームワークについて解説します。
ぜひリーダーシップへの理解を深めて、企業経営に活かしてください。
リーダーシップとは

「リーダーシップとは何か?」と従業員から聞かれたら、即座に答えることができるでしょうか?
リーダーシップのフレームワークへの理解を深めるには、そもそもリーダーシップとは何かを押さえておく必要があります。
リーダーシップの定義と主なリーダーシップの種類について整理しておきましょう。
リーダーシップの定義
実は、リーダーシップには決まった定義が存在しません。
さまざまな人がリーダーシップについて論じ、論者ごとにリーダーシップの定義に言及しているのが実情です。
数あるリーダーシップ論の中でも広く知られているのが、ピーター・ドラッカーの言説です。
ドラッカーは著書『プロフェッショナルの条件』にて、リーダーシップを次のように定義しています。
上の定義を踏まえると、リーダーシップは「組織の使命」ありきといえます。
たとえ新入社員であっても「組織の使命」を体現するために行動する人はリーダーシップを備えているのです。
リーダーシップは役職や肩書に付随するものではなく、役割やマインドを指すという点を押さえておきましょう。
リーダーシップの種類
アメリカの心理学者ダニエル・ゴールドマンは、リーダーシップを6種類に分類しています。
リーダーシップの種類 | 概要 |
強制型リーダーシップ | 強制力や圧力によってメンバーを統率していく |
ビジョン型リーダーシップ | ビジョンやミッションを示し、達成するためのプロセスはメンバーに考えてもらう |
コーチ型リーダーシップ | メンバーに寄り添い、個々の成長を促すことでチームを統率していく |
関係性重視型リーダーシップ | 信頼関係を第一に考え、メンバーと同じ目線で物事を捉える |
民主型リーダーシップ | 有益な意見を取り入れて実現していくことを重視する |
ペースセッター型リーダーシップ | リーダー自身が手本となり、メンバーを率いていく |
上記の6種類は、リーダーのパーソナリティを分類するためのものではありません。
1人のリーダーが異なるタイプのリーダーシップを発揮するケースも少なくないのです。
取り組むプロジェクトの特性やメンバーの傾向に合わせて、柔軟に使い分けられるのが優秀なリーダーといえます。
リーダーシップのフレームワークを知るメリット

リーダーシップには決まった定義が存在しないこと、多様なリーダーシップが存在することがお分かりいただけたでしょうか。
リーダーシップには定型的な「正解」がないことが、「リーダーシップとは何か」を複雑で分かりにくいものにしてきた側面があるのです。
リーダーシップのフレームワークを知ることで、リーダーシップへの理解をより深められます。
フレームワークを理解する主なメリットは次の3点です。
リーダーシップの変遷が分かる
リーダーシップは時代の変遷とともに形を変え、より現実に即したものへと改良されてきた経緯があります。
時代ごとに提唱された代表的なフレームワークを知ることは、リーダーシップ自体の変遷を把握することにもつながるのです。
現代においてスタンダードとされているリーダーシップ論がどのような経緯で築かれたのかが理解しやすくなるでしょう。
かつて提言されたフレームワークの問題点を知ることで、リーダーシップのあるべき姿に対する理解度を高めることにつながります。
自分に合ったリーダーシップの在り方が分かる
リーダーシップのフレームワークを理解しておくと、自分に合ったリーダーシップの在り方も見極めやすくなります。
たとえば、リーダーシップと聞くと「強烈なカリスマ性」や「メンバーに恐れられる威圧感」などをイメージする人もいるでしょう。
たしかに、生まれ持った「リーダーらしさ」や個人的な資質が重要とされてきた時代もありました。
一方で、現代においてはリーダーの資質を生来の才能や性格に求めるのは現実的ではないと考えられています。
自分ではリーダーに向いていないと考えている人も、実はリーダーシップを備えているかもしれません。
フレームワークを知ることは、自分に合ったリーダーシップのスタイルを見出すことにもつながるのです。
リーダーシップとマネジメントの違いが分かる
リーダーシップとしばしば混同されがちな用語の1つに「マネジメント」が挙げられます。
マネジメントとは、戦略の構築や実践のためにメンバーを管理する「役割」のことです。
管理職にマネジメントスキルが求められるのは、部下を管理する役割を担っているためと考えてください。
リーダーシップのフレームワークを知ると、リーダーシップに求められているのが「行動力」や「影響力」だと分かるはずです。
与えられた役割やポジションに関わらず、行動力や影響力を発揮することが求められる場面は多々あります。
リーダーシップのフレームワークを理解することで、マネジメントとの違いが把握できることはメリットの1つといえるでしょう。
古典的なフレームワーク:特性理論

リーダシップにおける古典的なフレームワークとして「特性理論」がよく知られています。
特性理論の定義や特徴、現在主流となっている捉え方について理解を深めていきましょう。
特性理論とは
特性理論とは、リーダーとしての才能や資質を重視する考え方です。
リーダーたる者には生来リーダーシップが備わっており、カリスマ性によって人を統率していくものと捉えています。
強烈な個性や人を惹きつけてやまない人間的な魅力を持つリーダーなどは、特性理論におけるリーダーシップ像と考えてください。
前述の「強制型リーダーシップ」や「ビジョン型リーダーシップ」には、特性理論に依拠したリーダー論が垣間見えます。
リーダーシップはトレーニングによって後天的に体得するものではなく、生まれ持った才能と捉える点が特徴です。
特性理論の特徴
特性理論が成立するためには、そもそもリーダーシップを生まれつき備えている人物が不可欠です。
もちろん生来リーダーの資質が備わっている人も一部には存在しますが、あくまでもレアケースといえるでしょう。
生来の資質に依拠している以上、必然的にリーダーシップを発揮できる人材は有限ということになります。
特性理論に終始することは、リーダーシップは努力によって体得できないという諦観につながるリスクを孕んでいるのです。
特定理論の現在
現代では特性理論は古典的なリーダーシップのフレームワークとされ、一種の理想論として捉えられるケースが多くなっています。
いわゆるカリスマ型リーダーの条件に合致しないものの、強力なリーダーシップを発揮する人物が次々と現れたからです。
結果的に「生まれながらのリーダー」のような人物は想像の産物に過ぎないと考えられるようになりました。
リーダーシップを資質や才能と見なしていては、組織を牽引し自発的に成長していく人材が現実的に不足してしまいます。
リーダーシップは資質以外の要因で習得可能な能力と見なすことが、現在はスタンダードとされているのです。
基礎的なフレームワーク:PM理論

現代のリーダーシップにおける基礎的なフレームワークと位置づけられているのが「PM理論」です。
特性理論との違いを軸に、PM理論の特徴について見ていきましょう。
PM理論とは
PM理論とは、Performance(目標を達成する能力)とMaintenance(チームをまとめる能力)に着目する考え方です。
PとMがそれぞれ表出する度合いに応じて、リーダーシップを4象限に分類します。
タイプ | P | M | 特徴 |
pm | 低い | 低い | 目標達成ができず人望もない |
Pm | 高い | 低い | 目標は達成するものの人望がない |
pM | 低い | 高い | 人望はあるものの目標を達成できない |
PM | 高い | 高い | 目標を達成でき、人望も厚い |
PとMがいずれも高いことが理想ですが、PM理論は理想とするリーダーシップのあり方を振りかざすための理論ではありません。
従業員が各自の行動を振り返り、自分が実現できている点と改善が必要な点を明確にすることが本来の目的です。
特性理論がリーダーシップを生来の資質と捉えていたのに対して、PM理論では努力によって体得可能な能力と捉えています。
PM理論の特徴
PM理論の大きな特徴として、人の「行動」に着目している点が挙げられます。
行動は意識することで変えられるため、生来の資質や才能に頼ることなくトレーニングによって改善可能です。
目標を達成する能力とチームをまとめる能力を共に意識することで、バランスの取れたリーダーシップを育むことができます。
「高い成果は挙げるものの、人間性に問題のあるリーダー」のような人物を生み出さないためには、適した理論といえるでしょう。
従来は特性理論に終始しがちだったリーダーシップ論を、誰もが対象となる理論へと一般化したことがPM理論の功績といえます。
PM理論の現在
PM理論は現在もリーダーシップの基礎的なフレームワークとして広く活用されています。
成果主義に偏った組織が機能不全に陥ることが明らかになり、バランス感覚に優れたリーダーが求められるようになったからです。
一方で、PM理論が万能なフレームワークではないことも徐々に明るみに出てきました。
PM理論はあくまでもリーダー側の視点に立った理論のため、現代の多様なビジネス環境に適応できるとは限りません。
より柔軟で汎用性のあるリーダーシップのあり方を考えるには、状況に応じてリーダーシップを使い分けるという視点が必要です。
実用性を重視したフレームワーク:パス・ゴール理論

ビジネス環境が多様化し、変化のスピードも速くなっている今、リーダーシップのあり方は1つに定まりません。
状況に合わせてリーダーシップを使い分けられるよう、実用性を重視して考案されたのがパス・ゴール理論です。
PM理論との違いやパス・ゴール理論の特徴について確認していきましょう。
パス・ゴール理論とは
リーダーシップをリーダーの視点から捉えるのではなく、状況に応じて柔軟に使い分けることを想定した理論です。
パス・ゴール理論では、メンバーの特性やチームの傾向によって必要とされるリーダーシップスタイルは変化すると考えます。
使い分けるべきリーダーシップスタイルは次の4種類です。
スタイル | 特徴 |
指示型リーダーシップ | メンバーに期待する事項を明確に伝え、進め方やスケジュールを具体的に示す |
支援型リーダーシップ | メンバーの考えや感情に配慮し、メンバーの動きをサポートする役割に徹する |
参加型リーダーシップ | メンバーから挙がった提案事項の活用を試み、相談ベースで物事を決定する |
達成指向型リーダーシップ | 難易度の高い目標を設定し、達成に向けて尽力するようメンバーに求める |
道筋と到達目標を示すのがリーダーの役割と捉えるのがパス・ゴール理論の基本的なスタンスです。
道筋と到達目標を明示することが目的のため、提示する手段や伝え方は状況に応じて使い分ける必要があります。
メンバーの目標達成意欲が高いチームなら達成指向型、メンバーに熟練者が少なければ指示型を選択するといった要領です。
パス・ゴール理論の特徴
パス・ゴール理論では、「リーダーシップはこうあるべき」といったように定義を固定していません。
リーダーシップを発揮する本来の目的を踏まえ、実現するための手段を柔軟に使い分けることを前提としています。
実際、1人の従業員や経営者が異なるプロジェクトや事業に携わるケースは決してめずらしくないはずです。
あるプロジェクトでは優秀とされたリーダーが、別のプロジェクトでは能力を発揮できないといったリスクを回避しやすくなります。
ビジネス環境がめまぐるしく変化する現代において、実用性を重視して誕生した理論といえるでしょう。
パス・ゴール理論の現在
近年、会社組織のあり方が大きく変わろうとしています。
ピラミッド型組織によく見られたトップダウンの指示系統から、よりフラットで従業員の個性を活かす形へと変化しつつあるのです。
リーダーとしての資質に頼る特性理論や、リーダー中心の視点で捉えるPM理論が実態と乖離しつつあるのは明らかでしょう。
パス・ゴール理論は、より柔軟で実態に即したリーダーシップのフレームワークとして主流になりつつあります。
リーダーシップはより実用的で現代の組織の実態に適したスタイルへと変貌を遂げているのです。
まとめ
リーダーシップのフレームワークは、リーダーシップの歴史的な変遷と深く関わっています。
過去のフレームワークが抱えてきた課題や、課題を解消するために進化してきた軌跡を知ることで、より理解を深められるのです。
今回紹介してきたフレームワークを参考に、ぜひ日々の経営で実践できるリーダーシップのスタイルを見出してください。
フレームワークが判断軸となり、より適切なリーダーシップのあり方を判断しやすくなるはずです。
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