リスキリングとは?リカレントとの違いや取り組み方を紹介

最終更新日: 2023/01/30 公開日: 2023/02/01

リスキリングという言葉をよく耳にするようになり、自社でも取り組む必要があると感じている経営者の方は多いことでしょう。

一方で、次の点を懸念している方も多いのでしょうか。

  • リスキリングとは何を指すのか、明確に把握しておきたい
  • リスキリングの具体的な進め方を知りたい
  • リスキリングに取り組むメリットや注意点を押さえておきたい

今回は、リスキリングの定義や注目されている理由、取り組む手順について解説します。

リスキリングに取り組むメリットや進める際の注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

リスキリングとは?

はじめにリスキリングとは何か、定義を確認しておきましょう。

よく比較される「リカレント教育」や「アンラーニング」との違いを明確にし、リスキリングを正確に理解しておくことが大切です。

リスキリングの定義

リスキリングの語源は英語のre-skillingで、スキルを身につけ直すことを指します。

従来、社会人として必要とされるスキルは新卒入社の社員など、主に若手の人材が身につけるべきものと考えられていました。

リスキリングの対象者には若手の人材だけでなく、中堅やベテランの従業員も含まれています。

社会経験が豊富な人材まで含めて、改めて能力の再開発スキルの再習得を目指すのがリスキリングの基本的な考え方です。

近年ではDX推進に注力する企業が増えており、リスキリングがDX教育と同じ意味で使われていることがあります。

本来のリスキリングはDX教育に限らず、今後求められるスキルを身につけてもらうことを指すのです。

リカレント教育との違い

リスキリングとよく混同されやすい用語の1つに「リカレント教育」が挙げられます。

リカレント(recurrent)とは「循環する」「回帰性の」といった意味の英語です。

知識やスキルを向上させるために従業員が大学などの教育機関で学び、修学後に再び業務へと復帰することを指します。

リスキリングでは業務と並行してスキルの習得を目指すのに対して、リカレント教育では業務を一定期間離れる点が大きな違いです。

学び直し・能力の再開発という目的は共通していますが、学び方が異なるという点を押さえておきましょう。

アンラーニングとの違い

アンラーニングとは、日本語では「学習棄却」などと訳されます。

既成の知識や経験をいったん棄却して、新たな知識を取り入れる際に使われる言葉です。

人が新しい知識を得ようとするとき、経験則や既成概念が足かせとなって知識の習得を妨げることがあります。

従来の発想に囚われることなく、新たな知識をフラットな状態で吸収するために、あえて知識を棄却するのです。

アンラーニングでは既存の知識を棄却することを前提としていますが、リスキリングでは知識の「上乗せ」を主眼としています

新たな知識を取り入れる点では共通している一方で、既存の知識・経験をどう扱うかが相違点と考えてください。

リスキリングが注目されている3つの理由

2020年のダボス会議で「リスキリング革命」が掲げられたことで、リスキリングは一躍注目されるようになりました。

リスキリング革命とは、2030年を目標に世界10億人により良い教育・スキル・仕事を提供するという提言です。

近年では、2022年10月に政府がリスキリング支援制度を政策に盛り込むと表明しています。

なぜリスキリングが注目を集めているのか、理由を知りたいと感じている人もいるでしょう。

リスキリングが注目されている理由として、主に次の3点が挙げられます。

人生100年時代が現実味を帯びてきた

日本人の平均寿命は、2065年には男性84.95歳、女性91.53歳にまで伸びると予想されています(※)。

人生100年時代が到来すれば、働き続けられる期間も長期化することは想像に難くありません。

将来的に定年退職が70歳まで延びた場合、大卒(22歳)で就職した人材は48年間働くことになります。

一方で技術の進歩は年々加速しており、わずか数年間でテクノロジーが大きく変化することもめずらしくないのが実情です。

一度身につけた知識やスキルが古くなっていくことは十分に予想できます。

人生100年時代を見据えて、個人の知識やスキルをアップデートしていく必要に迫られているのです。

※内閣府「令和元年版高齢社会白書」より

求められるスキル・知識の変化

1990年代にPCが広く普及し、2000年代にはスマートフォンが爆発的に普及しました。

ビジネスにおいて求められるスキル・知識も急速に変化し、かつて必要とされた能力が不要になるケースも少なくありません。

コロナ禍に伴うリモートワークの浸透は、求められるスキル・知識の変化にいっそう拍車をかけました。

わずか10年前には通用していたスキルであっても、今後は通用しなくなっていくといった事例がますます増えていくでしょう。

急激な変化に対応していくには、求められるスキルを習得していくほかありません

ビジネス環境の大きな変化が、学び直しやスキルの再開発の潮流を後押ししているのです。

DXの推進が急務となっている

労働人口が減少に転じたことで、多くの企業は人海戦術から人的リソースの有効活用へと戦略の転換を迫られています。

人的リソースは有限であることから、人が担当する必要のない業務は機械に委ねる流れが加速しているといえます。

機械化・自動化へのニーズが高まったことで、多くの企業はDX推進に注力し始めています。

DX推進を実現するには、現場でデジタル機器を使いこなせる人材を増やしていかなくてはなりません

リスキリングの目玉としてDX教育を挙げる企業が増えている背景には、DX推進が急務となっている企業の実態が垣間見えるのです。

リスキリングに取り組むメリット

企業がリスキリングに取り組むことで、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。

従業員の能力を再開発を通じて得られるメリット、主に次の3点です。

人的リソースを有効活用できる

既存の従業員が新たなスキルを身につけることにより、求めるスキルを持つ人材を新たに採用する必要がなくなります

結果的に人的リソースの有効活用につながり、採用コストを削減することができるでしょう。

人件費という視点で見た場合、従業員のスキルアップは業務効率化の実現にも寄与するはずです。

従業員のスキルが底上げされることにより、残業手当の抑制やワークライフバランスの実現にもつながります。

優秀な人材の採用が容易ではなくなっている昨今において、人的リソースの有効活用は企業にとって重要な課題となるはずです。

リスキリングによって、企業が直面する重要な課題の1つを解決できる可能性があります。

従業員エンゲージメントの向上につながる

リスキリングへの取り組みは、従業員側にもメリットをもたらします。

従来、新たなスキルの習得は個人的な努力によって補うしか手段がありませんでした。

勤務先がリスキリングを実践することは、従業員の新たなスキル習得を後押しすることにつながります

スキルアップやキャリアアップを応援してくれる企業であれば、長く勤めたいと感じる従業員も増えるでしょう。

スキルが向上することで業務効率が高まり、成果が出やすくなる効果も期待できます。

より高い成果を挙げられれば評価も高まり、結果的に従業員の定着率も向上すると考えられるのです。

自社の文化・業務内容を熟知した人材に仕事を任せられる

リスキリングによって従業員が新たなスキルを習得することで、社外のリソースを頼る場面が相対的に減っていきます。

自社の文化や業務内容を熟知した人材に新たな仕事を任せられるため、人材教育に費やす時間や労力を削減できるでしょう

事業方針や経営方針への精通度が高い人材が業務を担当したほうが、既存の業務との連携等もスムーズに進むはずです。

事業の方向性に対する理解度が高い人材でチームを構成できるため、企業としての組織力も高めやすくなります。

長期的な視座に立った場合、リスキリングは組織力の向上や競合優位性の獲得にもつながる可能性を秘めているのです。

リスキリングを進める方法

自社でリスキリングを進めるとしたら、何から着手すればよいのか迷ってしまう場合もあるでしょう。

リスキリングを進めるためのステップについて解説していきます。

将来的に必要なスキル・人材像を見極める

最初に取り組んでおくべきことは、リスキリングを実施する目的の明確化です。

自社にとって将来的に必要とされる可能性の高いスキルや人材像を見極め、実現するために必要なスキルを絞り込みましょう。

必要なスキルや人材は、中長期の事業方針や経営戦略とも密接に関わっています。

今後達成していきたい目標に対して、現状不足している能力をリスキリングの対象スキルとして定めるのがポイントです。

策定したリスキリング計画が事業方針や経営戦略を連動できていれば、従業員としても取り組む意義を見出しやすくなります。

教育プログラムと教材を用意する

リスキリングの対象スキルを見極めたら、次に具体的な教育プログラムの策定に取りかかりましょう。

自社で教育プログラムを用意する以外にも、外部のオンライン講座eラーニングの活用を視野に入れておくことをおすすめします。

すでに完成しているコンテンツを選択肢に加えることで、質の高い教育プログラムを活用できる可能性が高まるからです。

リスキリングはあくまで手段であり、取り組むこと自体が目的ではありません。

教育プログラムの考案や教材作成に費やす時間と、実際の教育効果とのバランスを考慮することが大切です。

従業員に取り組んでもらい、実務で活かす

教育プログラムと教材が決まったら、従業員に取り組んでもらいましょう。

従業員がスキルを習得するまでの期間と、事前に想定していた期間が乖離することも想定されます。

計画ありきで進めるのではなく、従業員のスキル習得の度合いを見ながら柔軟に調整を図ることが重要です。

従業員によってプログラム完了までの期間に差が開くこともあるでしょう。

必要に応じてプログラムを追加・延長するなど、個々の状況に合わせて対応していく必要があります

習得したスキルは実務で活用してもらい、実践を通じて理解を深めてもらうことも大切です。

定期的に従業員へのヒアリングを実施するなど、リスキリングの効果を検証していくことをおすすめします。

リスキリングに取り組む際の注意点

リスキリングの取り組みは、初めからうまくいくとは限りません。

試行錯誤を重ねて改善していく必要がありますが、とくに失敗しやすいポイントは押さえておく必要があるでしょう。

次に挙げる点は、リスキリングに取り組むにあたって対策を講じておくことをおすすめします。

リスキリングの必要性について現場に理解を促す

リスキリングの意義や必要性について、現場(とくにマネジメント層)に理解を促す必要があります。

学んだことが現状担当している業務に直結するとは限らないため、業務時間を取られることに現場が反発する恐れがあるからです。

直属の上長に理解を得られなければ、部下としても学びに集中しにくくなってしまいます。

役職者を招集する会議でリスキリングを議題に挙げるなどして、自社にとって重要な試みであることを知ってもらいましょう。

従業員が主体的に取り組める環境を整える

リスキリングは短期的な取り組みではなく、継続的に実施することで効果を発揮します。

従業員が主体的に取り組めるよう、学びやすい環境を整えることが重要です。

eラーニングを活用することで、従業員が業務の都合に合わせて学びやすくなります。

着実に学びを深めた従業員にはインセンティブを用意しておくなど、従業員側にメリットのある施策を講じてもよいでしょう。

従業員が「会社の指示だから」と義務的に受講することのないよう、主体的な学びを後押しする仕組みを整えておくことが大切です。

現状必要とされるスキルとの整合性に配慮する

リスキリングを通じて習得する知識・スキルは現状担当している業務と直接関わりのあるものとは限りません。

新たな学びを得ることがリスキリングの目的とはいえ、現状の業務で必要とされているスキルとの整合性にも配慮しましょう。

現状の担当業務とあまりにもかけ離れた分野について学ぶとなると、モチベーションの維持が困難になる可能性があります

できるだけ担当業務と親和性の高いプログラムが割り当てられるよう、従業員の希望をヒアリングしておくのが得策です。

従業員が自分の意思で学ぶ分野を選べるよう、できるだけ多様な教育プログラムを用意しましょう。

まとめ

リスキリングは日本国内だけでなく、世界的な潮流として注目されています。

将来的な事業展開や組織としての存続を見据え、今からリスキリングに取り組んでおくことは非常に重要です。

能力の再開発によって、従業員自身のキャリアもいっそう豊かなものになっていくでしょう。

今回解説してきたポイントを参考に、ぜひ自社でのリスキリングへの取り組みに役立ててください。

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最終更新日: 2023/01/30 公開日: 2023/02/01