
近年テレワークを導入する企業が急速に増えてきています。
テレワークは働き方の多様化に対応するだけではなく、災害時や感染症発生時のBCP対策としても非常に重要です。
BCP対策としてテレワークを取り入れていても、次のようなことをお考えの方もいることでしょう。
「本当に有効なのかどうかが疑問」
「BCPとしてうまく機能しているのかわからない」
「気を付けるべきことがあるのだろうか」
この記事では、BCP対策としてのテレワーク活用について解説していきます。企業での取り組み事例もご紹介しますので、参考にしてください。
BCP対策とテレワーク(在宅勤務)の関連性

働き方改革の一環としてテレワーク制度を取り入れている企業も多いですが、BCP対策にもなるとして推奨されています。
災害や感染症など緊急時にも事業継続が可能になるだけではなく、社員の安全を確保し大切な人的資源を守ることにもなるのです。
ここでは、BCP対策とはどういうものなのか、そしてテレワークとの関連を解説します。
BCP対策とは
BCPはBusiness Continuity Planの略です。
自然災害や感染症、事故などが発生した際に企業が行うべき行動や対処方法、事業を早期に復旧させ継続させるための方法などを決めておく計画のことです。
日本語では事業継続計画と訳されます。
2020年から発生している感染症では、出社することによる感染リスクが高まりました。社内で感染者が出た場合、業務に支障が出ることも考えられます。
感染拡大が続く中でも、事業を継続させるためには対応力を強化しておく必要があります。
また、大規模な地震や台風による洪水被害などが発生した場合に備えて、BCP対策を行うことは企業として不可欠なのです。
緊急事態の際にも迅速に対応するために必要なのが、BCP対策です。
テレワーク導入の目的
内閣府の調査では、民間企業のテレワーク実施率は32.2%。(全国平均 2021年9-10月時点)
東京都23区の企業に限ると、55.2%が導入しています。
急速に普及が進んだのは感染症が要因ですが、それ以前からテレワークを導入する企業もありました。
令和2年時点でのテレワークを導入する目的は次の通りです。
- 非常時(自然災害、感染症の流行など)の事業継続に備えて…68.3%
- 勤務者の移動時間の短縮・混雑回避…43.1%
- 業務効率性(生産性)の向上…29.7%
- 勤務者のワークライフバランスの向上…28.4%
- 障がい者、高齢者、介護・育児中の社員などへの対応…17.0%
約70%の企業が、BCP対策としてテレワークを導入していることが分かります。
日本は災害が発生しやすい国なので、災害により企業が大きな打撃を受けることも少なくありません。
テレワークを導入し環境を整えておけば、災害発生時にも社員が自宅から業務を行うことができ、事業の早期復旧と継続が可能です。
社員も安心して業務を遂行できるでしょう。
BCP対策としてのテレワークが有効な理由

BCP対策としてテレワークを導入する重要性がますます高まっています。
災害などの緊急時にも業務を止めることなく事業の早期再開が望めるからです。
テレワークがBCP対策としてなぜ有効なのかを具体的に4つご紹介します。
自然災害が発生した際も迅速に対応できる
テレワークは災害が起こった際に事業を継続しやすいという点で注目されています。
公共交通機関が動かなくなる可能性もあり、外出困難であっても業務を行うことが可能です。
また、出勤による2次被害を防ぎ、従業員の安全を守ることもBCP対策になります。
感染症対策になる
令和3年の調査では、テレワーク導入の目的の90.5%が「新型コロナウィルス感染症への対応(感染防止や事業継続のため)」という結果でした。
感染症拡大は企業の事業活動に大きなダメージを与えます。
出社時や勤務中に感染者が出た場合、テレワークを導入していなければ感染拡大のリスクが高くなります。
社内での感染拡大により事業が継続できなくなる可能性もあります。
自宅で仕事ができれば、人混みを避けて他人との接触を極力減らすことができるため、テレワークはBCP対策として非常に有効なのです。
データの破損や紛失を防ぐ
テレワークを導入するにあたって、書類やファイルのデータ化とクラウドの利用が必須です。
2011年の東日本大震災では、書類の紛失やシステムデータ・バックアップデータの減失を経験した企業も多く、事業復旧が遅れたケースも多く見られました。
自社ではない外部のクラウドサービスを利用すれば、自社が被害にあった際にデータを守ることができます。
クラウドサービスを行うデータセンターのサーバーは災害に強い施設に設置されていることが多いため、災害時もデータ消失のリスクが少なくなるからです。
自社内でデータセンターと同様の設備を作り、災害対策を行うには費用と時間がかかります。
外部サービスを利用する際は、自社から離れた場所にあるデータセンターを使うことがBCP対策として有効となります。
今後のリスクを軽減できる
今後も自然災害や新たな感染症が発生する可能性はあります。
あらかじめテレワークできる環境や設備が整っていれば、急な事態にも慌てることなく対応が可能です。
実際に災害が起きていなくても、平常時よりテレワークが導入されていれば、不測の事態が発生した際の被害リスクを減らすことにもなるでしょう。
新たな感染症が流行した場合も、感染者との接触リスクを減らすことができます。
BCP対策としてテレワークを導入する際の注意点

テレワークをただ導入するだけではBCP対策にはなりません。緊急事態が起きた際に事業継続に向けてすぐに対応できる仕組みになっている事が重要です。
企業のBCP対策としてテレワークを実施する際は次の3つに注意してください。
テレワーク環境の整備
テレワーク導入には、自宅での勤務環境を整えなくてはいけません。通信機器やインターネット設備を準備することが必須です。
会社でPCを提供するのか、従業員の個人PCを利用するのか、方針を明確にする必要があります。
また、自宅のインターネット環境についても考え検討しなくてはいけないでしょう。新たに機器を購入する際、費用負担がどのようになるかもルールを定めておくことが重要です。
厚生労働省では、自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備に関してガイドラインを設けています。
テレワーク環境をどのように整備すればよいか迷う方はこのガイドラインを参考にするとよいでしょう。
適切なセキュリティ対策
テレワークを行うにあたって、情報の取り扱いには細心の注意が必要です。情報漏洩が最大のリスクと言えます。
ウィルス感染などのセキュリティ対策も徹底してください。
会社内では緊張感を持ち、情報の取り扱いやWEBページの閲覧などに気を付けていても、自宅での仕事では気が緩んでしまうことも考えられます。
企業によっては、テレワーク用にセキュリティ設定を施したPCを社員に持たせることもあります。
思わぬセキュリティ事故が発生しないよう、意識づけしなくてはいけません。教育やサポートも行える環境を作りましょう。
コミュニケーションツールの導入
BCP対策としてテレワークを行う際、コミュニケーションが行えるツールを導入する必要があります。
災害が発生した時に安否確認や現状の情報共有、今後の方針などを通達する連絡手段を準備することが重要です。
業務を円滑に進めるためにも進捗確認やWebミーティングを行う必要もあるでしょう。
BCP対策、業務遂行の両面においてコミュニケーションツールの導入が必要不可欠です。
在宅ワークにおける社員のパフォーマンスが心配な方はこちらの記事も参考にしてください。
BCP対策としてテレワークを導入した企業の事例

約6,000企業を対象に行われた企業調査では、6割近い企業がテレワークを導入もしくは導入予定があると回答しています。
ここでは具体的にBCP対策を目的としてテレワークを行っている企業事例をご紹介します。
アイシン精機株式会社
アイシン精機では2020年の感染症拡大を受けて、2020年3月から在社時間の制限を解除し、在宅勤務を働き方の軸としています。
台風や大雨等の際に会社以外でも業務遂行が可能になるよう、ITインフラの拡充、業務プロセスの見直しを進めてテレワークを導入しました。
2020年以前から、働き方改革の一環として既に在宅勤務制度を導入。一部部署で行っていたテレワーク制度を、2020年1月からは全部署にて実施しています。
キユーピー株式会社
キユーピー株式会社では2020年の東京オリンピック開催をきっかけとして、テレワークの検討・実施を行いました。
事前にTV会議システムの勉強会などを行い、自宅での業務を円滑に通常通り行えるよう取り組んでいます。
災害・交通機関トラブルが発生しても各職場で事業継続が問題なく進められることも実施の目的としています。
「テレワークデイズ」を試験的に実施しましたが、その後台風上陸によって交通機関がストップした際も事業継続への大きな影響はなかったとしています。
サンダーバード株式会社
デジタルコンテンツ制作や教育コンテンツ制作を行うサンダーバード株式会社は、創業時からテレワーク制度を導入しています。
地震や台風、大雪や大雨などの災害及びそれに伴う二次災害の危険性が予想されるときにテレワークを実施するとしています。
BCP対策としてテレワークを行うために、紙媒体を全てデータ化。クラウド管理で誰でもどこでも確認できます。
あらかじめ気象予報を確認し、社長からSNSにより連絡がいくようになっています。
インフォテリア株式会社
インフォテリア株式会社では、2011年3月の東日本大震災をきっかけに、災害時の社員の安全確保と事業継続を目的として全社でテレワークを導入。
万が一の時にも対応できるよう、テレワークを推奨して、震災想定テレワークなども行っています。
気象条件が悪いときは、管理部門から事前にテレワーク推奨の通知が送られます。
また、猛暑日に対してもメールを送信し、猛暑テレワークの実施を推奨。社員の安全を確保する事と、悪条件による通勤ストレス軽減も目的としています。
2016年3月には訓練の震災テレワークを実施。万が一の大規模災害でも事業が継続できることを検証しました。
まとめ

企業にとってBCP対策は優先して取り組むべき課題でもあり、テレワークはBCP対策の一環として非常に有効です。
自社の人的資産および、データも守ることになります。
多くの企業がテレワークを導入していますが、BCP対策として活用するためには正しく計画し運用することが必要です。
ただ導入しているだけではいざという時に事業継続に繋がらないかもしれません。
適切なITツールの導入や、セキュリティ対策の徹底はもちろんのこと、社員がテレワークを行いやすい環境を整えることも重要です。
既にテレワークを導入している企業であっても、BCP対策として機能するかどうかを見直すことも必要でしょう。
最適な方法やツールを使ってBCP対策としてのテレワークを推進してください。

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