BCP対策でリスクに備える!中小企業こそ策定すべき理由と事例

最終更新日: 2023/01/25 公開日: 2023/01/25

中小企業は大企業に比べて資本力や経済力が低い場合が多く、災害などが発生した際に、有効な手を打てなければ廃業に追い込まれるリスクが高くなります。

緊急時における対応力を上げるためにもBCPを策定しておくことをオススメします。

  • BCPの必要性は分かるが、従業員が少ない企業では必要なのか
  • 作成の人員確保やコスト面で先延ばしになってしまう
  • 何から取り掛かれば良いか分からない

このようにお考えの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、BCPの必要性と、中小企業がBCP対策を行うメリットをお伝えします。

BCP(事業継続計画)とは

BCPはBusiness Continuity Planの略で、事業を継続させる計画のことを言います。

頻発する地震や水害などの自然災害、火災、テロ行為、感染症など、予期しない事態はいつでも起こり得ます。このような有事の際にも事業を継続させ早期復旧するために備える計画がBCPです。

BCP対策の対象となるのは主に不可抗力によって事業継続が危うくなる場合です。

必要な方針や体制・手順を定め、定期的に見直し更新することが必要です。

日本では2011年の東日本大震災で多くの企業が被災し、事業継続困難な状況に陥りました。これを受けて、BCP対策が改めて注目されています。

BCPの目的

BCP対策の目的は主に次の3つです。

  • 緊急時に迅速に対応するため
  • 経営戦略のため
  • 今後の災害に備えるため

一つずつ解説していきます。

緊急時に迅速に対応するため

企業はいつ起こるか予測できない事態に対し、平常時から備えておかなくてはいけません。

近年、地震だけではなく洪水被害も増加しています。自然災害等発生の際に事業を迅速に復旧し継続させる体制を整えておく必要があります。

前もって緊急時の対応を決めておくことで、誤った判断をするなどの予防にもなるでしょう。

事態が起きた時に慌てて対応策を講じても、復旧に時間がかかり損害を拡大させることにも繋がります。

経営戦略のため

BCP対策を策定するステップの中で、自社の中核事業や重要業務を見直すことができます。

優先度の低い事業を洗い出すことにも繋がり、改めて経営戦略を見直すきっかけにもなるでしょう。

今後の災害に備えるため

政府の調査によると、西日本全域に及ぶ大規模地震(南海トラフ地震)や関東圏を中心とした首都直下地震は今後30年間での発生確率が70%と言われています。

内閣府:想定される大規模地震

日本における事業活動は、大規模な地震に向けてBCPが必須となっています。

また、自然災害だけではなく今後も新型インフルエンザなど新たに感染症が発生する可能性もあるでしょう。

事業への影響を最小限に抑え、事業活動が停止しないように、感染者発生の際の体制などを整えておかなくてはいけません。

BCP対策と防災対策の違い

BCP対策の目的を見ると防災対策と似ていますが、この2つには違いがあります。

BCPは自然災害を含む非常事態の際、事業を迅速に復旧・継続させるための対策。

一方で防災対策は、地震や洪水などの自然災害に対してのみ、自社の従業員や建物などの物的資産の安全を守ることが目的です。

防災対策は自社を守るために行いますが、BCP対策への取り組みは、取引先や顧客を守る事にも繋がります。

中小企業がBCP対策を行うメリット

2022年5月に行われたBCPに関する調査によると、BCP対策は大企業での取り組みが33.7%、中小企業は14.7%と大企業の半分以下です。
(時事ドットコムニュースより

中小企業の多くが策定は必要だとはわかっていても、人員不足やコスト面からハードルが高く、取り組みが難しいと考えています。

しかし中小企業でも予期せぬ事態に直面するリスクは大企業と変わりません。BCP対策は企業規模に関わらず非常に重要なのです。

中小企業がBCP対策を行うべき理由を4つ解説します。

緊急時も速やかに事業継続

BCP対策は、災害発生時に備えられるのが最も大きなメリットです。

東日本大震災では多くの中小企業が建物や設備だけではなく、貴重な人材も失いました。このため事業縮小はもちろんのこと、廃業した企業も多かったのです。

事前にBCPを策定し、いざという時に的確な決断を下せるよう、対応力を備えておくことが必要です。

自社自身は災害による直接的な被害は少なくても、取引先や顧客の被災によって間接的な被害を受ける場合もあります。

BCPを策定しておけば、迅速に対応し事業の継続が可能になるでしょう。

社会的な信頼を高める

BCP対策を実施することにより、リスク管理を徹底している企業として対外的に評価が得られます。

社会的な信頼性が高まることに繋がり、企業のイメージも向上するでしょう。

BCP対策を行っておらず、緊急時に事業を継続できなくなると、自社だけではなく多方面へ影響を及ぼすことにもなりかねません。

既に取引のある企業に安心感を与えられることはもちろんですが、BCP対策を行うことにより新たな取引先としても選ばれやすい傾向にあります。

従業員の安全を確保する

BCP対策では、災害等発生時に従業員の安否確認や被害状況の確認、怪我の応急処置といった、安全確保に対する計画も行います。

人的資源を守ることは、企業を守る事にも繋がります。

災害が発生した時に備え、事業を継続できる対策を実施していることは、従業員が働く上で企業に対する安心感も高まるでしょう。

中小企業がBCPに組み込むべき内容

中小企業庁が示す中小企業BCP策定運用指針によると、BCPの特徴として次の5つが挙げられています。

①優先して継続、復旧すべき中核事業を特定する
②緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
③緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議しておく
④事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
⑤全ての従業員と事業継続についてコミュニケーションを図っておく

この指針を基に、BCPの基本方針を立案し、運用の体制を整える必要があります。

策定後の注意点

時間と手間をかけて策定を行っても、従業員がBCPの取り組みを知らなかったり、緊急時にどう動くべきかを理解していなければ意味がありません。

策定したBCPを従業員にも浸透させることが重要です。

BCPの勉強会を行ったり、話し合う場を設けたりなどして、企業が一体となって取り組んでください。

また、BCPは1度策定して終わりではありません。会社の状況や、社会の情勢などに合わせて見直しを行い改訂することも大切です。

企業活動は常に同じではなく、取引先の変化、人事異動や社内規定の変更など、日々変化するものです。

定期的にBCPの見直しを検討することも重要でしょう。BCP策定の際に、今後の見直し手順について考えておくことも有効です。

取り組みや目的などを浸透させる方法を知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

中小企業BCP策定を支援する「事業継続力強化計画」

2019年に「中小企業強靭化法」が施行されました。

中小企業にとってBCPの導入ハードルが高い事を受け、中小企業の災害対応力を強化するために定められた法律です。

これにより、事業継続力強化計画の認定制度がスタート。

「BCPの簡易版」とも言われ、中小企業の対応力を高めることが重視されています。

BCPに比べると計画に盛り込む内容がよりシンプルになり、実効性が高くなっています。

事業継続力強化計画とは

事業継続力強化計画は、中小企業が行う、防災や減災への対策計画を国が認定する制度です。

認定を受けた中小企業は、税制措置や補助金の加点などを活用することができます。

BCPとの違い

BCPの策定と事業継続力強化計画の違いは、認定を受けられるかどうかです。

BCPは企業が自発的に作成するもので、モデルとなる計画書フォーマットは存在しますが統一されているものではありません。

事業継続力計画は国によって作成方法や記入項目などが明確に定められています。その規定通りに作成し、経済産業大臣からの認定を受けるものです。

「自然災害等が発生した際に自社を守り、速やかに事業を復旧・継続するための計画」という目的はBCPも事業継続力強化計画も同じです。

事業継続力強化計画の認定のメリット

中小企業がBCPを策定し認定を受けられると、税制優遇や金融支援、補助金申請時の加点などの支援策を受けることができます。

BCPの策定には国による認定制度が存在しないため、認定を受けて様々な措置を受けられることは中小企業にとって非常に価値があるでしょう。

認定を受けた場合、「事業継続力強化計画認定ロゴマーク」の使用が許可されます。

今後の広報活動や販売活動にも活用でき、緊急事態への対策に取り組んでいると認知され社会的信用も高まります。

事業継続力強化計画作成のステップ

事業継続力強化計画の認定を受けるためには申請が必要です。

次のような流れで申請し、認定を受けた後に取り組みを開始してください。

・記載するべき項目について検討し計画を作成
・計画の申請(認定まで約45日)
・計画の開始と取り組みの実行


事業継続力強化計画に記載するべき項目は次のように定められています。

ステップ1:事業継続力強化の目的の検討
ステップ2:災害等のリスクの確認・認識
ステップ3:初動対応の手順を検討・策定
ステップ4:ヒト、モノ、カネ、情報への対応
ステップ5:平時の推進体制

中小企業庁の手順書を確認し、BCP策定を目指してください。

中小企業BCPに活用できる補助金・助成金

BCPに取り組み、実践する中小企業を対象とした補助金や助成金が設けられています。

活用できる補助金・助成金の種類と内容をご紹介します。

各自治体の補助事業

BCP対策は、考えられるリスクと対応方針を決めるだけではありません。設備投資が必要となる場合があります。

また、社内だけで策定するにはハードルが高いため、専門家のアドバイスを受ける場合もあるでしょう。

BCP策定にかかる費用が大きな負担になるとして、取り組みに踏み出せない中小企業も多いものです。

中小企業を対象として、基本的な物品や設備の導入経費の一部を助成してくれるのが自治体が実施するBCP支援の取り組みです。

この制度は各自治体が行っていますので、自社の所在都道府県等の実施状況をご確認ください。

ここでは、東京都・大阪府・愛知県・富山県の助成金についてご紹介します。

東京都

東京都では、中小企業における危機管理対策促進事業として、BCP実践促進助成金制度を設けています。

対象となる経費・自家発電装置、蓄電池
・安否確認システム
・データのバックアップ専用のサーバ(NAS)、
 クラウドサービスによるデータのバックアップ
・耐震診断
・転倒防止装置等
・従業員用の備蓄品
・土のう、止水板
・感染症対策の物品
助成率中小企業者等:1/2 小規模企業者:2/3 以内
助成限度額1,500万円(下限額:10万円)

助成対象となる事業者は、都内にて1年以上事業を営んでいる事業者で、次の要件を満たした上でBCPを策定している中小企業・中小企業団体となっています。

  • 東京都中小企業振興公社が実施するBCP策定支援事業による支援
  • 中小企業庁「事業継続力強化計画」の認定

また、東京都ではBCP 対策の補完として実施する業務システムのクラウド化も助成対象です。

大阪府(和泉市)

大阪府和泉市では、地域経済の強化と和泉市内の中小企業の信頼性強化を目的としてBCP策定にかかる費用の補助制度を行っています。

対象となる経費・コンサルティング等委託料
 専門家等への委託に要した経費
・謝金 専門家等の招致に要した経費
助成率主たる事業所が和泉市内:
 補助対象経費の2分の1以内(1,000円未満の端数切捨)
主たる事業所が和泉市外:
 補助対象経費の5分の2以内(1,000円未満の端数切捨)
補助限度額主たる事業所が和泉市内:
 1事業者につき1会計年度当たり20万円
主たる事業所が和泉市外:
 1事業者につき1会計年度当たり16万円
【事業者向け】和泉市中小企業BCP策定支援事業補助金

助成の対象者は次の通りです。

  • 市内に事業所を有し、同一事業を1年以上行う中小企業者。和泉市に市税を滞納していない。
  • 構成員の過半数が市内に主たる事業所を有する中小企業交流団体。活動を1年以上行っており、市税を滞納していない
  • BCP策定事業の実施にあたり、他の制度により補助を受けていない

愛知県(刈谷市)

愛知県刈谷市では感染症の拡大等の緊急事態において地域経済の停滞を防ぎ、企業の経営基盤強化を図るためBCP策定または改訂を行う中小企業に対して補助金を交付しています。

対象となる経費BCPを策定、または改訂する事業に係る
業務の委託に要する費用
助成率補助対象経費に2分の1を乗じて得た額
補助限度額50万円(ただし、同一の補助対象事業者の申請は1度限り)
刈谷市事業継続支援補助金(BCP策定支援事業)

次のいずれにも該当する事業者が対象となります。

  • 認定の申請をした日及び補助金交付申請した日において市内に本店登記及び事業所を有する中小企業者
  • 市内で現在事業活動を行っており、今後も事業活動継続の意思がある
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する営業を営んでいない
  • 代表者及び従業員が暴力団員又は暴力団もしくは暴力団員と密接な関係を有する者でない
  • 市税を滞納していない

刈谷市の場合、策定業務委託に要する費用への補助となり、設備投資に係る費用は含まれません。

富山県

富山県では県内に事業所を有する中小企業に対し、災害発生に備え対策に取り組むための経費補助を行っています。

対象となる経費・BCP計画等策定費
 (専門家謝金、専門家旅費、従業員等の旅費等)
・設備や備品の導入・設置・移設費
・訓練実施費
助成率係る経費の3分の2以内
補助限度額100万円
 (共同申請の場合は、100万円に事業者数を乗じた金額
  但し、上限500万円)
富山県小規模事業者事業継続力強化補助金

補助対象事業者は、県内に主たる事業所を有する小規模事業者です。

  • 商業・サービス業:常時使用する従業員が5人以下
  • 宿泊業・娯楽業、製造業その他:常時使用する従業員が20人以下

富山県の補助金事業では、BCPが経済産業大臣の認定を受けている必要はありません。

まとめ

緊急事態が発生した際にも中小企業が生き抜くためには、事業を継続させ迅速に復旧対応しなくてはいけません。

大企業に比べて経営基盤が弱い中小企業こそ、しっかりと準備をする必要があります。

BCP策定のハードルが高いと感じるようであれば、国や自治体の補助を受けながら取り組むと良いでしょう。

自然災害はいつ来るか予測が難しく、来てからでは間に合いません。早めに対策を行うことが非常に重要です。

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最終更新日: 2023/01/25 公開日: 2023/01/25