
この15年ほど拡大の一途を辿っている美容医療市場。
コロナ禍に突入した2020年以降も消費者にとっては施術後のダウンタイムを気にしなくても良いメリットが生まれ、美容医療市場が更に盛り上がりを見せました。
市場が拡大すれば当然、新規参入するクリニックも増え、競争の激化著しい昨今、自院のマーケティングに頭を悩ませている経営者やマーケティング担当者の方も多いのではないでしょうか?
本記事では「カスタマーサクセス」という観点から美容クリニックにおけるマーケティングに必要な考え方やメソッドをお伝えします。
美容クリニックにカスタマーサクセスが必要な4つの理由

「カスタマーサクセス」とは自社のサービスや製品を顧客に売るだけではなく、利用してもらうなかで、顧客を成長や成功へと導くための概念のことです。
受動的ではなく能動的に働きかけ、顧客の成功と自社の収益の両立を目指すマーケティング概念であるカスタマーサクセスは競争が激化しています。
競合他院との差別化が難しくなってきている美容医療のマーケティングにおいても必須の概念になることは間違いないでしょう。
サブスクリプション式サービスの広がり
近年、決まった料金を支払って一定期間サービスが利用できるサブスクリプション式(定額制)サービスが日本社会にも浸透しました。
消費者にとってはリーズナブルに余裕を持ってサービスを利用でき、提供する側は継続的な売上が見込めて、顧客の利用状況などのデータが把握しやすいメリットがあるのがサブスクリプション式サービスの特徴です。
継続利用が前提のサブスクリプション式サービスはカスタマーサクセスの基本的概念である「販売後も顧客の成功や成長を目指す」と目的がニアリーイコールとなります。
サブスクリプションの継続利用率向上とカスタマーサクセスは切っても切り離せない関係と言ってもよいでしょう。
近年は美容クリニックでも定額で特定の施術メニューが受け放題というサブスクリプション式の販売方法は珍しくなくなり、今後更に増加してゆくことが予想されます。
サブスクリプションで顧客を取り込み、その後のカスタマーサクセスは美容クリニックのマーケティングでも必須の流れになります。
Web集客ツールの浸透
かつては美容クリニックの集客はSEOや広告が中心でした。
いかにSEO対策で医院のホームページへの流入を増やすか?いかに費用対効果が高い広告運用ができるか?に重きが置かれたマーケティングが殆どでした。
既存顧客の囲い込みを行うにもDMなど手段が限られていたのは、まだ記憶に新しいです。
近年はInstagramなどSNSでクリニックや医師個人のアカウントを作成し、そこからの情報発信が盛んになりました。
また、LINE公式アカウントやCRMツールによるメッセージ配信など手段が多様化し、既存顧客へのアプローチがより戦略的に行える状況になり、カスタマーサクセスを実施しやすい状況になったことは間違いありません。
成熟した市場
株式会社矢野経済研究所の調査によると国内の美容医療市場の規模は2017年に2014年比114.8%の3,252億円、2019年には2017年比125.2%の4,070億円まで拡大し、前述したように2020年のコロナ禍以降も成長を続けています。
近年は脱毛特化型クリニックやエイジングケア治療を提供する美容皮膚科が特に増えて、男性も美容クリニックで医療レーザー脱毛やエイジングケア治療を行うのが珍しくない時代になりました。
二重整形なども一昔前は世間の価値観としてネガティブな印象も根強くありました。近年はむしろ若い女性の間で、美を追求するためのポジティブな取り組みとして捉えられることも多くなっています。
美容医療に対する価値観自体がこの10年ほどで大きく変容しているといえます。
同業他社との住み分け
需要は拡大する一方で、施術を提供しているクリニック側は競合他院との差別化が非常に難しくなっています。
特に2018年に医療広告ガイドラインが改定されて以降は従来は広告とはみなされていなかったホームページも広告扱いになり、明らかに自院の優位性や価格の優位性を訴求するようなコンテンツ作成が困難になりました。
ゆえに新規顧客の開拓と共に既存顧客の満足度向上やリピート強化(LTV向上)などが経営課題となっているクリニックが殆どで、カスタマーサクセスは今後より注力されてゆくことは間違いなさそうです。
美容クリニックの顧客体験向上のコツ5つ

定期的に来店するきっかけをつくる
美容クリニックにおけるカスタマーサクセスを成功させるために最初に必要な要素は顧客が定期的に来店するきっかけを作ることです。
例えば近年流行のHIFUやスレッドリフトなどの「たるみ治療」は半年に1回ほどのサイクルで定期的に施術を受けてもらうことによって、その効果を最大化しやすい治療です。
顧客のためにも自院のためにもHIFUやスレッドリフトをコンスタントを受けに来院してもらえるきっかけを準備しましょう。
きっかけとなり得るのは下記のような案内です。
- 定期カウンセリング(肌・症状診断)
- 対象施術の割引キャンペーン
- 紹介割引
- 定期的に再治療を行うことによって効果が高まる症例写真の公開
- 術後の効果や肌質をキープさせるためのドクターズコスメ(医療機関専売コスメ)の案内
上記は基本的な取り組みではありますが、顧客一人一人に対してクリニックとして「応援したい」、「気にかけている」ことを定期的に伝え続けることによって再来院率は高まります。
特にドクターズコスメは一度購入されて、使用感や効果を気にいってもらえるとそれだけで商品が無くなった時に顧客が再来院するきっかけになります。
顧客との繋がりを強化するために顧客に適したドクターズコスメを提案すると良いでしょう。
相談しやすい環境を提供
例えば、「お金のプロ」であるファイナンシャルプランナーは一度保険を提案し、自分を信頼して保険に加入してもらった顧客とはその後も家計におけるお金のやりくりを長年に渡り相談に応じてゆくのが仕事です。
ファイナンシャルプランナーと同様に美容クリニックも「美容のプロ」として、顧客である患者一人一人に丁寧に向き合う姿勢が欠かせません。
「いつでも気軽に相談してください」というスタンスで対応し、患者が相談しやすい環境を提供するのもカスタマーサクセスの一環です。
二重整形を提供したクリニックであればその後の検診で症状の確認だけでなく、術後の患者のメンタルにも気を遣うべきだといえます。
しみやたるみ改善のコース治療を提供しているクリニックであれば定期カウンセリングで患者の声に耳を傾ける意識をもちましょう。
時間の限られている定期カウンセリングの場で相談し切れない悩みや不安を抱えている患者も少なくありません。
ホームページで医師やカウンセラーへ直接悩みや不安を伝えられる相談フォームを設けているクリニックは、それだけで相談フォームを設けていないクリニックよりもカスタマーサクセスが進んでいるといえます。
選ばれる理由は一つでも多い方が良く、ホームページの有無は選ばれる理由となる背景の一つにもなる、重要なコンテンツです。
ホームページでなくても医院の公式SNSアカウントなどで患者が気軽に相談できる環境を提供することは、カスタマーサクセスの基本にして最重要要素でもあります。
口コミが増える仕組み作り
今も昔も美容医療のマーケティングにおいて最重要と言えるのが口コミ対策です。
美容医療専門の口コミ投稿サイトやアプリ、SNSで消費者たちは盛んに情報交換をして自分に最適なクリニックを探しています。
「〇〇と言えばあの美容整形外科・美容皮膚科」といった口コミが自然に拡散され、自然に消費者たちによってブランディングされてゆく流れができることが理想のマーケティングです。
その流れを作るために、最初は地道な営業努力が必要です。
例えば施術にご満足いただい患者にその場で自院の口コミを対象サイトやアプリで書いてもらい、そのお礼として次回来院時に使用できるクーポンを配布するなどするのは、有効な手段です。
口コミを書いてもらうための営業努力や特典も必要になってきますので、その場で有意義な特典を設けて口コミをもらうのは、クリニックに限らず全業種に共通する取り組みといえます。
LINE公式アカウントで定期配信
今や日本人が最も連絡手段として活用している通信アプリでありSNSであるLINE。多くの企業や店舗は自社LINE公式アカウントを作成・活用し、顧客と積極的な情報配信を行っています。
LINE公式アカウントもどんどん進化しています。
- 顧客属性をセグメント分けして配信できる
- 顧客の流入経路の掌握
- 配信したメッセージの開封率
- リッチメッセージの配信バナーのクリック数やクリック率
こうした、マーケティングを組む側からすると、なくてはならない情報をLINE公式や、付随した有料ツールによって把握することができるようになりました。
戦略的に自社の既存顧客とコミュニケーションを取り、新商品のプロモーションにも活用できるCRM・MAツールとしても本格的に認知され始めています。
美容クリニックでは「友だち」である顧客限定の予約の空き情報やモニター募集の告知、限定割引キャンペーンなどの配信に積極的に活用されています。
顧客側の心理としても普段使い慣れているLINEであれば「友だち」からの情報として確認するのに抵抗感がなく受け取ってくれることでしょう。
LINE公式アカウントは無料で作成することもできるので、まだ活用されていないクリニックはまずは無料でアカウントを作成して、基本方針や運用方法を決めてから有料プランへの変更を検討しても良いでしょう。
「通いたい」と思われるマーケティング戦略

かかりつけクリニックになってLTVを上げてゆく
今後の美容クリニック運営の大きなカギはどれだけ多くの顧客のかかりつけクリニックになれるか?ということです。
ひとつの施術やコース治療が終了して、そこで顧客との関係性を切らさずに、また別の悩みの解決やメンテナンスなどで顧客との関係性を切らさないようにする取り組みが大切です。
こうしたカスタマーサクセスを実施することで、顧客にとってのかかりつけクリニックになり、結果的に集客で獲得した顧客一人あたりの売上を意味するLTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)を上げることができます。
特にエイジングケア施術目的で来院した顧客は、最初に相談された悩み以外にも潜在的な悩みを抱えていることが多く、美意識も高いので、顧客のニーズを常に引き出せる取り組みや環境づくりが必須条件です。
新治療メニューやキャンペーンメニューなども積極的に紹介し、顧客の人生が豊かになるための提案を継続することにより、顧客にとって身近で頼れる存在となれるように医師だけでなくスタッフ一丸で顧客に向き合いましょう。
紹介したくなるクリニックになろう
クリニックに関わらず店舗運営で重要な指標となるのが「紹介数」です。
紹介は一人の顧客に「他の人にも薦めたい!」と評価された証であり、サービスに満足いただけた紹介が連鎖してゆくことは理想的なマーケティングでもあります。そしてそれは良い口コミの拡大、LTVの向上に繋がってゆきます。
紹介が紹介を呼ぶ連鎖を生むためのマーケティング手法は費用対効果も高いので近年、「リファラルマーケティング」という概念として、注目を集めています。
紹介割引キャンペーンを積極的に案内するのは勿論のこと、LINEやInstagramなどのSNSで手軽に自院を紹介してもらえる仕組みづくりが大切です。
インセンティブの準備などを行って施術やサービス以外の要素でも「紹介したくなるクリニック」として顧客に認知してもらえるようにしましょう。
まとめ
医療機関のマーケティングは一般企業のマーケティングと別物と考えている方もいるかもしれませんが、マーケティングは売上を人を集めて生みやすくする仕組みという点では共通しています。
美容クリニックのマーケティングを機能させるためにはカスタマーサクセスを理解し、顧客が施術に満足いただいた後もクリニックに通い続ける仕組みづくりをきちんと決めておくことが重要です。
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