
会社を見渡すと、眠そうにしている人はいませんか。
パソコンに向かいながら、あくびをしている人を見かけませんか。
もし社内で多くの人が眠そうにしているのであれば、それは睡眠負債を抱えた従業員が多い可能性があります。
睡眠負債とは、睡眠不足が続くことにより、心身に不調をきたしてしまっている状態のことです。
睡眠不足は、慣れてしまうことにより、本人は気が付かないこともあります。
もし睡眠不足を放置しておくと、重大なミスや事故につながることもあるため、早急な対処が必要です。
この記事では、質の良い睡眠をとるために個人でできることから、会社全体での取り組みまでを解説していきます。
質の良い睡眠のメリット

企業にとって、従業員が質の良い睡眠をとることには、大きなメリットがあります。
- 生産性の向上
- 社員の健康維持
- プレゼンティーイズムによるコストの削減
- 社内の雰囲気の活発化
従業員にとっても、会社にとっても、質の良い睡眠はwin-winとなります。
どのようなメリットがあるのか、4点にわけて説明していきますが、こちらの記事もおすすめですので、ぜひご覧ください。
1. 生産性の向上
睡眠不足は、人の判断を鈍らせ、ミスが増える原因となります。
厚生労働省健康局の「健康づくりのための睡眠指針 2014」にも、睡眠不足が仕事の能率を低下させていると書かれています。
第 8 条.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
厚生労働省健康局「健康づくりのための睡眠指針 2014」
日中の眠気が睡眠不足のサイン
睡眠不足は結果的に仕事の能率を低下させる
睡眠不足が蓄積すると回復に時間がかかる
午後の短い昼寝で眠気をやり過ごし能率改善
この指針では、もし昼間に眠くなってしまったら、短い昼寝をとることで、能率を改善させるとも言っています。
それだけ十分な睡眠をとることが、従業員1人1人のパフォーマンスを上げるためには重要であるということです。
質の良い睡眠をとり、全員が最大限のパフォーマンスを発揮できれば、生産性を上げ、業績をアップすることが可能となります。
2. 社員の健康維持
質の良い睡眠は、健康の増進に繋がります。身体だけでなく、精神面でも睡眠は大切です。
睡眠不足になると、生活習慣病のリスクが増え、うつ病などの心の病にもつながります。
第 1 条.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
厚生労働省健康局「健康づくりのための睡眠指針 2014」
良い睡眠で、からだの健康づくり
良い睡眠で、こころの健康づくり
良い睡眠で、事故防止
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2014」の第1条でも、良い睡眠が健康に良いことを伝えています。
自社が業績を上げるには、社員が元気に働くことが不可欠です。
会社全体で、社員の睡眠の質や時間の改善を行う施策を行いましょう。
3. プレゼンティーイズムによるコストの削減
出社していても、心身の不調によりパフォーマンスを100%発揮できない状態をプレゼンティーイズムと言いますが、その原因の1つとして睡眠不足が挙げられています。
厚生労働省保険局の「平成29年7月データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」をご紹介します。
プレゼンティーイズムでの損失は、会社が支払っている医療費よりも格段に多く、医療費が15.7%に対して、プレゼンティーイズムは77.9%もコストがかかっています。(参考:厚生労働省保険局「平成29年7月データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」)
従業員が質の良い睡眠をとることで、プレゼンティーイズムを減らし、会社の経済損失を減らすことができるのです。
4. 社内の雰囲気の活発化
従業員の睡眠不足が解消されると、社内が明るく活発化します。
睡眠不足による頭の働きが鈍ったぼんやりとした雰囲気がなくなり、頭が働くためです。
社内が活発であると、従業員同士の関係も良くなり、前向きに業務を行うことができます。
社内環境が良いことは、離職率の減少にもつながるとともに、客観的に見てもこの会社で働けば楽しく働けそうだと思ってもらいやすくなります。
睡眠の質を上げる方法

睡眠不足を防ぐためには、睡眠の量よりも睡眠の質を改善する必要があります。
- 就寝3時間前までに食事を済ませる
- 就寝2時間前に入浴する
- 寝る前に軽めのストレッチをする
- 就寝30分前以降はブルーライトを浴びない
- 寝る前にカフェイン飲料やアルコールを飲まない
- 自分に合う寝具を選ぶ
- スリープセレモニーを習慣にする
どのようにすれば睡眠の質を向上させることができるのか、個人でできることを7点解説します。
1. 就寝3時間前までに食事を済ませる
寝る前に食事をすると、消化器官が食べ物を消化するために活発化してしまうため、体が休まりません。
深い眠りとされるノンレム睡眠をとるには、体全体がリラックスしている必要があります。
胃の中にある食べ物は約2~3時間で消化されるので、就寝の3時間前までに食事を終わらせておきましょう。
2. 就寝2時間前に入浴する
入浴はベッドに入る2時間前がおすすめです。
入浴することで体温が上昇しますが、2時間後の就寝時間には体温が下がります。
眠る時には、深部体温という体の中心の温度が下がるため、入浴後ゆっくりと体温が下がることで、眠りにつきやすくなるでしょう。
38~40℃のぬるめのお湯に30分くらいゆっくりと浸かると、副交感神経が働き、心身ともにリラックスさせてくれます。
3. 寝る前に軽めのストレッチをする
寝る前にストレッチやヨガをすると、リラックス効果を得られます。
ストレッチやヨガには、血液の循環が良くし、深部体温をスムーズに引き下げる効果と、筋肉をほぐし、体をリラックスさせて深い眠りに入りやすくなる効果があります。
寝る10分くらい前に行うと、良い睡眠に入れるでしょう。
逆に、激しい運動をすると、体の深部体温が上がり、眠れなくなってしまいます。
ジョギングやウォーキング、汗をかくような運動は、ベッドに入る3時間までに終わらせるようにしましょう。
4. 就寝30分前以降はブルーライトを浴びない
ブルーライトはスマートフォンやパソコン、テレビなどから発せられるライトです。
ブルーライトは太陽光に近い性質を持っています。
そのため、寝る前にブルーライトを浴びると、脳が活性化してしまい、眠れなくなってしまいます。
寝る30分前以降には、スマホやテレビを見るのではなく、読書などをするのがおすすめです。
5. 寝る前にカフェイン飲料やアルコールを飲まない
珈琲や紅茶に含まれるカフェインは、覚醒作用があります。
カフェインの血中濃度が半減するのは、摂取から約3~5時間後ですので、遅くとも寝る4時間前以降はカフェイン飲料などを飲まない方が良いです。
また、アルコールも質の良い睡眠を妨げます。
寝酒を習慣にしている人もいるかもしれませんが、アルコールを摂取すると眠りが浅くなってしまい、質の良い睡眠をとることができません。
カフェインもアルコールも利尿作用があるため、尿意をもよおし、目が覚めてしまう可能性もあります。
6. 自分に合う寝具を選ぶ
朝起きて、肩や首が凝っている、腰が痛いなどの症状がある場合は、寝具が合っていないことが多いです。
自分に合う寝具を選ぶには、枕の高さや、敷布団の硬さなどを店頭で試してみることをおすすめします。
専門店に行けば、自分の体形を測定し、選んでもらうことも可能です。
羽毛布団のように、保温や吸湿性、発散性に優れている寝具を使うと、暑すぎず、寒すぎず、快適に眠ることができます。
7. スリープセレモニーを習慣にする
スリープセレモニーとは、睡眠儀式とも呼ばれているもので、寝る前に行うと眠くなる習慣のことです。
例えば、ラベンダーのアロマを嗅ぐことや、本を読むこと、ストレッチなどを寝る前に行い習慣づけることで、体がそれを覚えて、眠りに入りやすくなります。
寝る前にパジャマを着るというだけでも、それがスリープセレモニーになるため、必ず寝る前に着替えましょう。
企業が社員の睡眠改善のためにできること

質の良い睡眠をとることは、基本的に個人の裁量による部分が大きいです。
しかし、仕事だからと無理をしてしまう従業員も多いため、会社が主導して睡眠改善を働きかけましょう。
- パワーナップの導入
- フレックス制度の導入
- カウンセリング受診の促進
勤務形態により難しいものもありますが、ここでは、3点の施策を紹介します。
1. パワーナップの導入
パワーナップとは、昼寝のことです。昼食後に20分程度の短い仮眠をとることで、午後に眠くならず、パフォーマンスの向上に繋がります。
パワーナップは、集中力や記憶力が向上し、眠気によるストレスを削減することができるため、従業員1人1人の生産性を上げられます。
20分程度の昼寝は、脳の疲労を回復させる効果があるため、最近では導入し始める企業も多いです。
2. フレックス制度の導入
フレックス制度は、従業員が始業時間と終業時間を自由に決められる制度です。
人は夜型か朝型か、遺伝で決まっています。朝9時出勤の場合、朝型の人には問題なく出勤できますが、夜型の人には少しつらい出勤時間だと思われます。
フレックス制度を利用すれば、1時間遅れて出勤し、1時間遅く退勤することができるので、自分の最もパフォーマンスを発揮できる時間に仕事ができるメリットがあります。
3. カウンセリング受診の促進
睡眠不足は、自分では気づきにくいものです。
そのため、残業が続いている社員や、いつも眠そうにしている従業員には、自社の産業医を受診するようにすすめましょう。
従業員本人は、ちゃんと寝ていると思っているかもしれませんが、実は睡眠不足であることが多々あります。
プロの第三者が診ることで、自分の状態を知ることができ、生活習慣の改善に繋がります。
企業の睡眠対策事例

質の良い睡眠をとることを従業員に促すため、企業はどのような施策をしているのでしょうか。
住友ファーマ株式会社 (旧社名:大日本住友製薬株式会社) | 寝てもいい・寝たらいいレクチャーシリーズ |
株式会社CRAZY | 睡眠報酬制度 |
株式会社サーバーエージェント 株式会社アシロ | 近隣住宅手当 |
実際に従業員の睡眠対策を行っている企業の事例を見ていきましょう。
寝てもいい・寝たらいいレクチャーシリーズ
住友ファーマ株式会社(旧社名:大日本住友製薬株式会社)は、昼休みの後の約30分間で、「寝てもいい・寝たらいいレクチャーシリーズ」という講演会を開催しています。
会社主催の講演会ですが、昼寝しても良いという珍しい取り組みです。
講演会の内容は有益なものなので、講演会中に眠らなくても、従業員のためになり、講師となる従業員は人前で話す練習にもなり、一挙両得です。
睡眠報酬制度
株式会社CRAZYでは、独自の睡眠報酬制度を導入しています。
睡眠報酬制度とは、1日6時間以上睡眠をとった従業員は、社内のカフェで使えるポイントをもらえるという制度です。
睡眠報酬制度によって、会社は従業員の健康が守れ、仕事のクオリティの向上を期待できます。
従業員も睡眠不足を解消でき、カフェメニューの割引を受けられるので、会社も従業員もwin-winの制度であると言えます。
近隣住宅手当
近隣住宅手当は、近距離手当と呼んでいる会社もあります。
株式会社サーバーエージェントや、株式会社アシロなど、導入している企業も増えつつある制度です。
近隣住宅手当は、会社の近隣に住めば、特別手当を与えるというもので、近隣の範囲や手当の金額は企業により異なります。
株式会社サーバーエージェントの近隣住宅手当は、会社の最寄駅から2駅以内の場所に住めば、家賃を補助するという制度です。
従業員が会社の近隣に住むことで、通勤の疲労から解放され、業務に最大限の力を発揮でき、生産性を向上させることができます。
また、満員電車に乗る必要がなく、通勤時間が短くなったことで、睡眠時間を含むプライベートの時間を増やすことができます。
質の良い睡眠で、プレゼンティーイズムを防ぎましょう
この記事では、質の良い睡眠のメリットと、質の良い睡眠をとるための対策を説明しました。
日本のビジネスパーソンの睡眠時間は、世界の平均時間よりも短いという調査結果や、日本人の約4割の睡眠時間は、6時間未満という厚生労働省の統計結果から見ても、慢性的に睡眠が不足していると見て取れます。
睡眠負債があると、プレゼンティーイズムに陥りやすくなり、従業員が出勤していても、会社の損失となってしまいます。
従業員自身は「ちゃんと睡眠をとっている」と思っていても、実は睡眠不足であることも多々ありますので、会社の働きかけで睡眠不足の解消を目指しましょう。
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