
社員やチーム全体のモチベーション向上は、常に課題となるところです。
リーダーにとっては、チーム全体のモチベーション管理は急務でしょう。
しかしながら、明確な方法があるわけではありません。
日々業務の中で向き合いながらさまざまな理論を取り入れていくことになります。
この記事では、モチベーションを向上させるための手段として、心理学の理論や成功事例を解説します。
大きな成果を望むのであれば、なくてはならないモチベーションマネジメントの手法として、この記事をぜひ参考にしてください。
モチベーション向上のための理論
モチベーション向上のための理論とは、心理学の観点からアプローチして、モチベーションをコントロールする方法論のこと。
ビジネスにおいて、モチベーション向上のために効果的な理論を5つ紹介します。
- マズローの欲求段階説
- アンダーマイニング効果
- ピグマリオン効果
- 目標設定理論
- マクレランドの欲求理論
マズローの欲求段階説
アブラハム・マズローが提唱した「マズローの欲求段階説」は、人の欲求は段階的に満たされていくものとして、以下の5段階で構成されるとしました。
・安全欲求
・社会的欲求
・承認欲求
・自己実現欲求
生理的欲求〜社会的欲求は「低次の欲求」といわれ、外的要因によって満たされる欲求とされています。
たとえば、「食べたい」「寝たい」「安全に暮らしたい」「仲間が欲しい」といった欲求です。
承認欲求と自己実現欲求は、低次の欲求が満たされたあとに起こるもので、「認められたい」「自分の能力を存分に発揮したい」という内的な要因によって満たされる欲求とされています。
新入社員・中堅社員・管理職など社員は一人ひとり立場や状況が異なり、モチベーションが向上する要因もそれぞれ異なります。
マズローの欲求段階説を応用すれば、個々に適切なモチベーション向上の道筋が見えてくるでしょう。
アンダーマイニング効果
アンダーマイニング効果とは、達成感や満足感を得るための行動に対してインセンティブを得た結果、目的が「インセンティブを得ること」にすり替わり、本来のモチベーションが失われてしまう心理的効果のこと。
たとえば、「人の役に立ちたい」と思って始めた社内活動に対して、上司が報酬を与えたとします。
するといつしか「報酬がもらえるから活動する」という具合に、本来の目的がすり替わってしまうのです。
アンダーマイニング効果は本来、喜び・好奇心といった「内発的動機」によって起こった行動に対して、報酬などの「外発的動機」が加わった結果起こってしまう心理現象といわれています。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、周りから期待されると成果が上がりやすくなる心理的効果をいいます。
ピグマリオン効果が現れやすいのは、以下のようなポジティブな声かけです。
「君ならきっとやれると信じているよ」
期待された人は無意識のうちにその期待に応えようとして、その通りの成果が得られやすくなります。
得られた成果に対してポジティブな評価を積極的に行うことで、さらなるモチベーション向上に期待できます。
目標設定理論
目標設定理論とは、あいまいな目標を設定するよりも、具体的で計測可能な目標を設定するほうが達成しやすいとした理論です。
目標設定に必要な4つの要件は、以下の通りです。
・目標の具体性
・目標の受容
・フィードバック
ポイントは、明確かつ「適度に難しい目標」を設定するという点。
意欲と集中力を必要とする困難な目標に取り組むことで、社員はモチベーションを向上させ努力した結果、より大きな達成感が得られるのです。
そして最も重要なフィードバックを行うことで、チームの生産性やメンバーの貢献意欲、そして一人ひとりのやりがいをも向上させることに期待できます。
マクレランドの欲求理論
アメリカの心理学者デイビッド・C・マクレランド氏が提唱した欲求理論は、社員の行動には、主に4つの動機(欲求)が存在するというモチベーション理論。
ある一定の目標に対して、達成・成功しようと努力する
2.権力動機(欲求)
周りの人に、何かしらの働きかけがなければ起こらないような行動をさせたいと思う
3.親和動機(欲求)
友好的かつ密接な人間関係を結びたいと願う
4.回避動機(欲求)
失敗や困難なことから逃げたいと考える
マクレランドは「行動させる意欲を引き出すためには、人の心の内側にある内発的動機を刺激するのが重要」だと示しています。
マクレランドの欲求理論を基にしたフレームワークは、社員のモチベーション向上のための施策として大変有効です。
モチベーション心理学導入に成功した事例5選
ここまでモチベーション向上のための理論を紹介しましたが、実際に心理学を用いた施策を導入した成功事例を紹介します。
- クックパッド
- ザ・リッツカールトン
- 東京海上日動システムズ
- 資生堂
- サイボウズ
クックパッド
オリジナル料理レシピの検索・投稿ができるコミュニティサイトを運営する「クックパッド株式会社」。
施策の目的は、社員が担当する業務に対して自ら「やりたい」と意志を持つこと。意志だけでなく、実現性を重視することです。
マズローの欲求5段階説のうち、「自己実現欲求」を満たす施策といえます。
施策の具体的な内容は、以下の通りです。
・異動を希望する場合、現在の上司の許可は必要ない上、異動を希望した事実も伏せられる。
・スキル不足で異動希望が不採用になった場合には、理由を本人にフィードバックし、スキルを習得するための研修が受けられる。
従業員数400人を超える中、心理学を応用した施策を実施した結果、社員一人ひとりのモチベーション向上・チームの活性化を成功させています。
ザ・リッツカールトン
最高のラグジュアリーホテルと称され、世界中の人々を魅了し続ける「ザ・リッツカールトン」。
「クレド」と呼ばれる経営・営業理念を実現するため、お客さまだけでなく共に働く仲間にも感謝を示すのが施策の目的です。
マズローの欲求5段階説のうち、「承認欲求」を満たす施策といえます。
施策の具体的な内容は、以下の通りです。
・ファーストクラス・カードには「どのような場面で、どのように助けてもらったのか、どれだけ感謝しているのか」を詳しく書く。
・カードを受け取った人は仲間からの感謝が形として残るだけでなく、コピーを人事部に提出することで、「数と質」を人事考課に反映してもらえる。
・カードのコピーは社員食堂に掲示され、ほかの従業員にも役立つ顧客対応マニュアルの役割を果たす。
ファーストクラス・カードを活用することで、社員同士が助け合い団結した結果、最高のホスピタリティ精神が根付いています。
東京海上日動システムズ
「東京海上日動システムズ株式会社」では、社員一人ひとりの考えを経営に活かす施策を行っています。
マズローの欲求5段階説のうち、「社会的欲求」を満たす施策といえます。
施策の具体的な内容は、以下の通りです。
・経営ビジョン構築に参加することで、すべての社員が「会社の未来に携われている」「組織の一員として認められている」と感じられる。
・「全社論議」は、少人数制のグループに分かれて議論する形式。場所は無機質な会議室ではなく、気軽に自由に意見交換ができるようカフェなどで行われる。
・全社員が立場の垣根をこえて一丸となり、会社の未来を左右する領域まで議論される。
ボトムアップを重要視する東京海上日動システムズならではの、モチベーション向上の施策といえます。
資生堂
化粧品の製造・販売を主な事業として日本中の女性を支える「株式会社資生堂」は、全国1万人以上いる子育て中の美容部員を対象に、仕事と子育ての両立を支える施策を行っています。
マズローの欲求5段階説のうち、「安全欲求」を満たす施策といえます。
施策の具体的な内容は、以下の通りです。
・夕方〜閉店までの3時間程度の業務を、アルバイトスタッフが引き継ぐ。
多くの女性をターゲットにマーケティングを行う資生堂は、女性が働きやすい環境づくりに取り組み、社員のモチベーション向上を成功させています。
サイボウズ
ソフトウェア開発を行う「サイボウズ株式会社」は、社員のモチベーション向上のために「育自分休暇制度」を実施しています。
マズローの欲求5段階説のうち、「自己実現欲求」を満たす施策といえます。
施策の具体的な内容は、以下の通りです。
・大学や大学院に入学するもよし、転職するもよしで、十分に経験を積める期間が設けられている。
・復職が保証されているため、安心してチャレンジできる。
サイボウズは離職率28%を記録した2005年以降、ワークライフバランスに配慮した制度を実施しました。
心理学の観点から見直された施策によって、社員のモチベーションを効果的に向上させた結果、現在の離職率は3〜5%です。
チームビルディングなど人事戦略に応用
心理学は、チームビルディングなどの人事戦略に有効です。
多様な人材が集まる企業では、社員一人ひとりの能力を最大限活用することが、会社の成果へと繋がっていきます。
そして社員それぞれの力が相互作用し、チームとしての大きな力が十分発揮できるよう、「チームを一つにまとめる」ことが最重要です。
チームビルディングによってメンバーの能力・役割が明確になると、チームへの貢献意欲が生まれ、モチベーション向上へと繋がります。
チーム内で評価されたり、仲間の取り組みに刺激を受けたりすることも、モチベーション向上の原動力となるでしょう。
心理的報酬が成功体験と濃厚に紐づく
インセンティブなどの外的な報酬は、モチベーションを向上させる手段の一つです。
しかし、アンダーマイニング効果のように本来の動機が置き換わってしまう可能性も少なくありません。
一方「周りから認められた」「褒められた」といった心理的報酬は、成果を出せたという成功体験と濃厚に紐づきます。
内発的な欲求を満たす手助けとなり、より高い効果に期待できます。
社員一人ひとりが成功体験を実感することで次の成果へと繋がり、チーム活性化の好循環が生まれるはずです。
まとめ
心理学を用いたモチベーション向上の施策は、チーム活性化に大変有効です。
実際に多くの企業がモチベーション向上のための施策に取り組んでいるものの、思うような効果が得られていないケースも少なくありません。
今回紹介した成功している企業の多くは、心理学の「モチベーション理論」をもとに構築された施策に取り組んでいます。
まずは社員の声に耳を傾け課題をあぶり出したうえで、応用できそうな成功事例を参考にして、チーム活性化を図りましょう。

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