
絆徳(ばんとく)経営とは、「顧客」「社員」「社会」の三方と絆を結び、絆を基盤にして理念、経済合理性を高め、持続化経営を実現へ導くという考え方です。
絆を結ぶために必要なことは、「相手にとってよいこと」を実践すること。互いにWin-Winの関係を構築することが、持続化経営につながります。
「よいことをしているのに、相手が離れて行く」という企業は、見落としがちな罠を知り、絆の分断を防ぐことが大切です。
この記事では持続化経営を目指すために必要な意識、考え方を紹介します。
持続化経営には「絆」が重要

絆徳(ばんとく)とは道徳的な行いによって、相手との絆を結ぶことから始まります。
「相手にとってよいことをする」ことでずっと一緒にいられる関係が築かれ、持続化経営を可能にするという考え方です。
絆徳経営は、三方よしという経営思想を軸にしています。三方よしとは「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」、3つのよしを指す言葉。
自分の利益だけを考えるのではなく、相手に貢献することで、事業に携わるすべての人に利益をもたらすというものです。
絆徳経営における三方とは、以下を示します。
- 売り手:社員
- 買い手:顧客
- 世間:社会
社員、顧客、社会との絆が断たれた企業は、会社の持続、発展が困難になってしまいます。
相手の利益を考えずに自分の利益ばかり優先していると、社員にも顧客にもそっぽを向かれてしまうでしょう。
商売でもプライベートでも良好な人間関係を築くには、「相手にとってよいこと」をする必要があるのです。
三方よし経営、絆徳哲学に関しては、こちらを参考にしてください。
絆が途切れることで生じる3つのコスト

相手との絆が分断されると、さまざまな場面でコストがかかります。
たとえば以下の3つです。
- 顧客獲得コスト
- 人事コスト
- 信頼コスト
これらが損なわれることで経済的合理性が低下し、理念を追求することが難しくなります。くわしく見ていきましょう。
顧客獲得コスト:お客様との絆が分断される
顧客との絆が分断されるとリピートや紹介がなくなります。そのため常に新規開拓に追われることになるでしょう。
新規開拓は営業活動において、最もコストがかかるといっても過言ではありません。人件費や広告費など、顧客獲得のためにコストが生じます。
顧客獲得コストは、お客様との絆があれば圧倒的に減らすことが可能です。
人事コスト:社員との絆が分断される
社員との絆が途切れると人事コストがかかります。
時間や費用を投じて採用し育成した社員が自社を去るということは、人事コストがかかることを意味します。
企業が人材を採用するには、以下のコストがかかるでしょう。
- 求人広告料
- 会社説明会の会場代
- 人材会社への紹介料
- 採用担当者の人件費
就職サポートを行う株式会社リクルートの調査では、新卒社員1人あたりの採用コストの平均額は93.6万円。
コストをかけて採用した人材の退職は会社にとって大きな痛手です。売上に貢献していた社員であればなおのこと。こうなると売上が激減してしまいます。
人事コストが増大することは、経営に大打撃を与えるのです。
信頼コスト:社会との絆が分断
社会との絆が断たれることで信頼コストがかかってしまいます。
現代は企業が提供する商品やサービスだけでなく、社員の待遇や働きやすさなどで会社に点数がつけられネットに公開される時代。このことから売上などより信頼の方が価値が高いとされています。
企業が社会から高評価を得るためには、あらゆる場面で努力が必要となります。
しかし信頼が崩れ落ちるのは一瞬です。社会との絆が断たれると、積み上げてきた努力が水の泡になるでしょう。
社会を構成する人たちには、潜在顧客や社員も含まれます。社会的信頼が損なわれることで、顧客や社員との絆が分断されてしまうのです。
このような事態を避けるためには、絆が分断される原因を探り、除去することが有効です。
絆が断たれる7つの罠

「理念を掲げ、経済合理性を意識しているのにうまくいかない」
このように悩んでいるとしたら、絆を分断する罠にはまっている可能性があります。
罠は見えないからこそ脅威だといえます。罠を避けて通るためには、罠の存在に気づくことが重要です。罠にはまっていることに気づくと、適切な対策が見えてきます。
絆の分断につながる7つの罠は、以下のとおりです。
- 愛情より心の傷を選ぶ
- 感謝より不足を選ぶ
- 幸福より正義を選ぶ
- 信じるより疑うを選ぶ
- 理解より批判を選ぶ
- 与えるより受け取るを選ぶ
- 「全体」より「部分」を選ぶ
さっそくご紹介します。
1.「愛情」より「心の傷」を選ぶ
自分が受けた傷にこだわっていると、相手との絆が断たれてしまいます。
夫婦喧嘩を例に挙げてみましょう。
相手から心ない言葉をぶつけられたとしても、相手に対する愛情を大切にする人であれば、傷がふさがり、関係が修復できます。
しかし相手からもらった愛情よりも自分が受けた心の傷を選ぶことで、痛みだけを思い出しネガティブな思考にとらわれてしまうのです。
これでは許せない気持ちが膨れ上がってしまって、心の傷がふさがりません。やがて愛情も絆も失ってしまうでしょう。
このようなことは職場でも起こります。例えば次のようなものです。
- 「上司から怒鳴りつけられた」
- 「取引先からの理不尽な要望に対応している」
残念ながら、社会人であれば心の傷を完全に避けることはできません。
大切なのは
相手から受けた愛情、恩恵に対して感謝の気持ちを抱き、習慣化することが重要です。
2.「感謝」より「不足」を選ぶ
「部下の仕事が遅いから、自分が評価されない」
「上司の理解がないから、ボーナスが低い」
このように考える人は、「不足」を選ぶ傾向があります。
現状が当たり前だと思い込む人は感謝する気持ちを忘れてしまい、さらに欲しがる傾向にあります。求めたものを入手した瞬間に手元にあることが当たり前になり、新たな不足を感じてしまうでしょう。
この不足感が自己成長につながっているのであれば問題ありません。しかし不足感は不満感を生み出します。「不足しているのは誰かのせい」だと考え、感謝の気持ちが離れていくのです。
経営側は会社に文句ばかり言っている社員を大切にしたいとは思えません。逆に部下に責任を押しつけるような上司を尊敬することも難しいでしょう。
「感謝」を選ぶためには、「ありがとう」という言葉にして相手に伝えることが重要です。相手に感謝を伝えることが、組織のトップとしての魅力につながります。
3.「幸福」より「正義」を選ぶ
どのような会社にもルールがあるものです。ルールは大切ですが、正しさだけにこだわると本質を見失ってしまいます。
たとえば日報提出の義務があるのに、いつも提出を忘れる社員がいると仮定します。ルールを守らないことに腹を立てた上司は社員を責め立てたとします。
すると社員は、上司から叱責されたことが原因で退職。こうなってしまうと、日報の提出よりも大きな人事コストがかかります。
退職した社員が顧客獲得を得意としていたのなら、会社にとっては大きな損失です。日報の提出よりも成果を出すことの方が会社のためになります。
正しさを押し通す前に、その正しさが「幸福」よりも価値があることなのか考えてみましょう。
4.「信じる」より「疑う」を選ぶ
相手を疑ってばかりでは、絆を築くことは難しいでしょう。この罠にはまる傾向があるのは「自分に自信がない人」です。
自信のない人は相手を恐れ、「だまされるのではないか」と疑心暗鬼になります。常に疑いを持って相手と接しても、絆は築けません。
人を信じるためには自分に自信を持つことが大切です。自信を持っている人は、「自分は大丈夫だ」という安心感があるので恐れに振り回されません。
自信をつけるためには「自分と小さな約束を交わし、守ること」を意識してみてください。
他人との約束を守ると信頼関係が構築できますよね。これと同じように、自分との約束を果たすことで自信が得られます。
簡単なことでも、自分自身との決めごとを守ることから始めてみましょう。
5.「理解」より「批判」を選ぶ
能力の高い人が陥りやすい罠です。能力が高い人ほど「できて当たり前」だと思う傾向があるため、相手に厳しい言葉を投げかけてしまいます。
たとえば部下のパフォーマンスが落ちた場合、メールで業務連絡をしても返信がなく、反省している素振りもありません。
この場合、上司が行うべきことは相手を理解しようと歩み寄ることです。「やる気があるのか!」と声を荒げ、否定的な言葉を使うと絆が断たれてしまいます。
「最近キツそうだけど、何かあった?体調悪くない?」
このようなひと言で、相手の人生に対する愛情や理解が深まります。社員は会社の道具ではありません。相手を1人の人間として認め、向き合うことで絆が築かれるのです。
6.「与える」より「受け取る」を選ぶ
相手との絆を作るには「相手が求めているものを与える」ことから始まります。これは顧客や社員だけでなく、すべての人間関係に該当するコミュニケーションの大原則です。
しかし、与えることを損だと感じる人がいます。「受け取ること=得をする」と考えていると絆を結ぶことができません。
たとえば会社の利益になることを考えるよりも、自分の給与やボーナスに対する不満を漏らす社員。これでは会社との絆が弱くなる一方です。
自分が「受け取る」ことにこだわるのではなく、「与える」ことを選び、尽くすことが相手との絆を深めます。これがやがて、お互いの利益につながるのです。
7.「全体」より「部分」を選ぶ
企業では各部署によって意見や利害の対立が時折見られます。互いが主張を曲げず、いざこざが起きることもあるでしょう。
残念ながら、これでは組織の絆に歪みが生じて雰囲気が悪化します。一部が改善されたとしても、それ以外が取り残されているのであれば全体的に見るとマイナスになります。
「部分」に注目することは大切ですが、とらわれすぎると社員との絆が分断されるのです。
会社全体の改善を目指すのであれば、「部分」と「全体」の両方に目を向ける必要があります。
社内の各部署はすべて同じ会社の仲間です。「部分」にとらわれるのではなく俯瞰的に捉え、「全体」を選ぶことで組織そのものの絆が高まります。
絆の分断を生むものは価値観・世界観の違い

紹介した7つの罠は、価値観と世界観の相違によって生じるケースが多いでしょう。
価値観とは「物事を選択する基準」。世界観とは「物事の在り方の解釈」です。個人の価値観と世界観にとらわれすぎると、相手との絆が分断されてしまいます。
価値観、世界観の違う人と絆を育むには、共感を得ることが大切です。
「共感メンバーを増やしたいけれど、社員のことがわからない」のなら、日常的にコミュニケーションを取ることから始めましょう。
価値観・世界観が異なる人と絆を築くためには「共感」が必要
多様性を確保することはSDGsを推進する企業ならば重要な課題です。持続可能な経営を行うためには、さまざまは価値観、世界観を持つ社員を受け入れる必要があります。
相手との価値観、世界観に違いが生じることで、絆が分断されてしまうこともあることでしょう。
だからこそ、価値観や世界観が異なる人と絆を結ぶためには、共感が必要です。
考え方が違っても共感できる部分があれば対立を避けられます。社内に共感できるメンバーが多くなると会社全体の絆が深まります。
共感メンバーを増やす方法
共感メンバーを増やすには、相手が「どのような人物なのか」「何を求めているのか」を知ることから始まります。相手に興味を持って接し、絆を深めていきましょう。
もし社員の考えがわからない場合は、朝の挨拶から始めてみることをおすすめします。
毎日社員の顔を見ながら朝の挨拶を継続していると、
「今日は元気がない」
「今日はやる気に満ちている」
など、社員のことがわかってくるものです。
コロナ禍で人と人が出会いにくい現代だからこそ、オンラインの場であったとしても対面での挨拶を心掛けましょう。
さらに絆徳哲学を社内に浸透させるためにおすすめな価値観をお伝えします。
プライマリークエスチョンに「人」を加える
世界的指導者のメンター、アンソニー・ロビンズ氏によると、
といいます。
プライマリークエスチョンとは、「自分が自分に投げかけている質問」のこと。人は「自分が何に焦点を当てているのか」、自分でも気づかぬうちに日頃から自問自答しています。
たとえば「今期は目標販売数を達成できるだろうか」と考えている経営者がいるとします。目標販売数を達成することを優先的に考えるため、社員に対して意識が向かなくなる傾向があります。
もしこのような傾向があると感じるのなら、プライマリークエスチョンに人を追加しましょう。社員のことを気にするようになると理解や共感が育まれます。
社員に興味を持って接し「どのような人物で、何を求めているのか」考えることが大切です。
アンソニー・ロビンズ氏に関しては、こちらの記事で紹介しています。
リーダー層が実施すべき意識改革|3つのポイント

部下の意識を上向きにするためには、リーダー自らの意識改革が重要です。
「社内の雰囲気がよくない」
「部下の仕事に対する熱意が感じられない」
このように感じたときは、リーダー自ら以下の3点を変えてみてください。
- 身体
- 焦点
- 言葉
これら3つはどれか1つではなく、すべて改善することをおすすめします。
3つは互いに影響を与え合うものです。身体がよくなると焦点や言葉もよくなるでしょう。対して焦点が悪ければ、身体や言葉も悪くなります。
トップに立つ人物がポジティブな意識を持ち、社員の幸せを願うことが、持続可能な組織へと導くのです。
身体を変える
身体を変える方法には、以下の内容が挙げられます。
- ゆっくりと呼吸する
- 背筋を伸ばす
- 口角を上げて笑顔を浮かべる
ネガティブな感情が心を支配していても、身体を変えることで、ポジティブな気持ちが芽生えます。
焦点を変える
ポジティブな面に焦点を置くことを意識しましょう。
たとえば部下を評価するとき。長所と短所、どちらに客観的に焦点を合わせるかによって内容が変わります。
部下の長所を見るためには、その人に対するプライマリークエスチョンをポジティブなものに変換することが有効です。
「なぜできないのか」と、ネガティブな理由に焦点を当てるばかりでは、部下に対する影響もネガティブなものになるでしょう。
部下を見る目の焦点がポジティブなものになれば、絆が深まります。
「あいつの得意なことは何か」
「今日はどのようなことに頑張っていたのか」
このように、ポジティブな目で見ることを心がけましょう。
言葉を変える
嘘や悪口を言わず、ポジティブな言葉を使うことを心がけましょう。日常的に感謝の言葉を口にしていると、意識も気持ちもついてくるものです。
部下たちはトップに立つ人物の言動を自然と真似るものです。ポジティブな言葉を使うことで、周囲の人によい影響を与えるでしょう。
絆は資産!日常的な意識改革で持続化経営を実現しよう

「思うように絆が深まらない」と感じている経営者は、はまりやすい罠の存在を知ってより良い選択をすることを意識しましょう。
会社の雰囲気をよくしたい場合は、組織のリーダーが意識を変えることで改善可能です。
日頃から社員とのコミュニケーションを意識し、共感メンバーを増やしていくことが持続化経営につながります。
常によい方を選択し続けるのは難しいことかもしれません。しかし日常的に意識してよい選択に寄せていくことで、経済合理性と理念が高まるのです。
絆づくりはいわば種まき。罠の撤去はその土台を整える土づくりのようなものです。絆という名の芽を育てるために、土壌を整えましょう。
絆徳経営に関しては、こちらの書籍でくわしく紹介しています。より深く学びたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

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