
自社の売上伸長を目指し、マーケティングを学んでいる経営者の方は多いはずです。
書籍やメディアを通じて、さまざまな成功哲学に触れてきた方もいるでしょう。
ところで、次の疑問を抱いたことのある経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- 成功哲学を学んでも売上が伸びないのはなぜ?
- 営利を追い求めることが、本当に社会のためになっているのだろうか?
- 今のビジネスモデルで、将来にわたって経営を持続できるのだろうか?
もし上記のことが心に引っかかっているなら、ぜひ知っていただきたいのが「絆徳(ばんとく)経営」です。
今回は、絆徳経営とは何か、なぜ絆徳経営が重要なのかを解説していきます。
蔓延する「成功哲学」の限界

書店のビジネス書コーナーには、成功哲学を説く書籍が数多く並んでいます。
成功哲学は世の中に溢れているものの、どれもしっくりこないと感じたことはありませんか?
実は、現在巷に溢れている成功哲学は「ある大きな問題」を抱えているのです。
欧米の成功哲学がもたらしたもの
私たちが今日触れている成功哲学の多くは、近代に入って欧米から日本へ輸入されました。
たとえば、マーケティングの基礎的なフレームワークに「4P」「4C」があります。
Product(売れる商品を)
Price(売れる価格で)
Place(売れる販路で)
Promotion(売る)
【4C】
Customer Value(買いたい価値を)
Customer Cost(買える価格で)
Convenience(買いやすい場所で)
Communication(納得して買う)
端的にいえば、4P・4Cは「売る側」と「買う側」の立場から販売戦略を立てるフレームワークです。
一見すると合理的な考え方のようにも思えますが、1つ大きく欠落している点があります。
「売ること・買うことによって何がもたらされるのか」という要素が、すっぽりと抜け落ちているのです。
日本に古くから根ざしてきた「絆」
売る側と買う側を対立構造で捉えることの根底には、「経済的合理性の追求は善」という欧米的な考え方があります。
しかし、経済的合理性を追求することで社会が豊かになり、幸せに暮らせるという発想に違和感を抱く人もいるはずです。
日本では古くから「三方よし」という言葉が使われてきました。
「売り手よし・買い手よし・世間よし」の実現こそが、行商の理想的なあり方とされていたのです。
「三方よし」には、損得勘定を超えた高い理想が込められています。
売り手と買い手の対立構造ではなく、世の中全体も含めた「絆」を意識している点は注目に値するでしょう。
日本社会には、古くから「絆」の意識が根ざしているのです。
限界を迎えつつある「成功哲学」
売り手と買い手の対立構造は、いつしか功利主義・株主第一主義へと変容していきました。
現在、世の中に蔓延している成功哲学の大半は「個人や企業がいかにして成功を手にするか」を説いています。
「三方よし」で説かれてきた「世間よし」が置き去りにされてきた結果、絆が失われつつあるのです。
結果的として「幸福を追求するはずのビジネスが、人を幸せにしていない」という矛盾が生じています。
- 理想を掲げて会社を経営しているのに、社員が疲弊して次々に辞めていく
- 売上目標や四半期決算ばかりが重視され、常に数字に追い立てられている
- 顧客に不利益をもたらすと分かっていても、経費削減のために目をつぶらなくてはならない
昨今の日本社会を覆う閉塞感は、従来の成功哲学が限界を迎えつつあることを示唆しているのではないでしょうか。
「絆徳経営」がもたらすもの

売り手と買い手という対立軸ではなく、日本人が大切にしてきた「絆」を重視する経営を「絆徳(ばんとく)経営」と呼んでいます。
絆徳とは、道徳的な行いにより人間関係を構築し、絆を創っていくことです。
絆徳経営を目指すことにより、次の3つの変化がもたらされます。
- 高収益体質の企業に生まれ変わる
- 持続可能な経営が実現する
- 理念と経済合理性が両立する
なぜ上記の変化がもらされるのか、詳しく解説していきます。
高収益体質の企業に生まれ変わる
絆徳経営を目指すことで、高収益体質の企業へと生まれ変わることができます。
高収益体質の企業に共通する特徴は「リピーター」や「Raving Fan(熱狂的ファン)」を数多く抱えていることです。
たとえば、次のような次元に到達することによって、製品やサービスを提供する企業の収益は自ずと高まっていきます。
- なくてはならない必需品を供給している(スマートフォンなど)
- 常連やお得意様が大勢いる(地元の名店といわれる飲食店など)
- 世代を超えて親しまれている(ディズニーやサンリオのキャラクターなど)
リピーターやRaving Fanを増やすには、お客様にとってかけがえのない価値を提供し、愛着を感じてもらう必要があります。
お客様を「消費者」ではなく、家族のように「守るべき人」と捉えることが、高収益体質の企業へと変わるための第一歩なのです。
持続可能な経営が実現する
絆徳経営によって、長きにわたって持続可能な経営を実現できます。
相手を想い、大切にしていることがあらゆるステークホルダーに伝わっていくからです。
直近の売上や収益を改善するために策を講じても、効果は一時的なものに過ぎないでしょう。
企業と顧客の関係が需要と供給で成り立っており、顧客との絆(エンゲージメント)が介在していないことが原因です。
絆徳経営を基盤とすることで、顧客との間に容易には崩れない信頼関係を構築できます。
顧客にとって「なくてはならない企業」であり続けることにより、持続可能な経営が実現へと近づいていくのです。
理念と経済合理性が両立する
絆徳経営は、理念と経済合理性を両立させる経営スタイルです。
功利主義的な経営においては、しばしば理念と経済合理性が不一致になりがちでした。
過度に収益を追い求めたことが、社会に歪みをもたらした原因の一端となったのではないでしょうか。
日本における資本主義の父と称される渋沢栄一は、次の言葉を遺しています。
経済合理性だけを追い求めるのではなく、道徳を土台とすることで企業活動は社会性・公益性を帯びていきます。
「三方よし」を見直すことにより、理念と経済合理性は矛盾なく共存できるのです。

理念と経済合理性を相反するものと捉えるのではなく、両立を目指すことで企業の社会的価値は高まっていくでしょう。
絆徳経営のルーツについては、下記の記事もぜひ参考にしてください。
なぜいま絆徳経営が重要なのか

絆徳経営は、令和時代だからこそ重要視されるべき経営スタイルです。
絆徳経営がビジネスにおいて重要となる理由として、次の3点が挙げられます。
- ビジネス環境の変化
- 顧客の変化
- お金の意味の変化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ビジネス環境の変化
昨今、ビジネスを取り巻く環境はめまぐるしく変化し続けています。
DXやSDGs、AIの台頭といった世界的な潮流は、日本のビジネス環境にも多大な影響を与えていくでしょう。
ただし、変化していくのはあくまでも手段であり、目的ではありません。
ビジネス環境が変化していくからこそ、経営の土台となる哲学を盤石にしておく必要があるのです。
借りものではない確固とした方針を掲げるには、私たち日本人が長く親しんできた感覚を見直す必要があります。
「絆」を創っていくことは、日本社会の土壌に馴染む経営方針といえるのです。
顧客の変化
社会の変化に伴って、顧客も大きく変化しつつあります。
典型的な例がSDGsでしょう。
欲望のおもむくままモノやサービスを消費するのではなく、次世代に渡す社会のあり方を真剣に考える人が増えているのです。
必然的に、消費者が企業に向ける視線もシビアになっています。
社会全体のことを考えて事業に取り組んでいるか、功利主義に走っていないか、消費者は企業に厳しい目を向けているのです。
事業の公益性がますます問われていく中、絆徳経営はサステナブル経営を実現するための重要な示唆を与えてくれるでしょう。
お金の意味の変化
社会のデジタル化が進むにつれて、お金の意味そのものが変化しています。
「資金力がある」「儲かっている」といった金銭が主体の社会から、信用が主体の社会へと変容しつつあるのです。
都心の一等地に自社ビルを構える企業よりも、SNSのフォロワー数が伸びている企業のほうが信用される傾向があります。
富が信用を生むのではなく、信用が富を生む時代へと移り変わっているのです。
信用は人と人との間で築かれていきます。
道徳を基盤とし、絆を創っていく絆徳経営は、信用が重視される社会だからこそ求められる経営スタイルなのです。
絆徳経営がもたらす3つの恩恵

絆徳経営を実現していくことで、具体的にどのような恩恵がもたらされるのでしょうか。
想定される恩恵として、主に次の3点が挙げられます。
- 顧客・社員ともに幸福度が高まる
- 事業の収益性が高まる
- 組織の絆が深まり持続可能な経営を実現できる
それぞれ詳しく確認していきましょう。
顧客・社員ともに幸福度が高まる
絆徳経営を指向することによって、功利主義的な企業体質から脱却することができます。
顧客にとっての幸福・社員にとっての幸福が経営の重要課題となるため、必然的に幸福度が高まる方向へと進むでしょう。
また、社会貢献度の高い企業に勤務している事実や、提供する商品を購入している事実は、社員や顧客にとって誇りとなるはずです。
世の中をより良くしていきたいという気運が高まれば、社会に好循環が生まれ、結果的に事業環境にも良い影響をもたらします。
「三方よし」を指向することで、自社に関わる全ての人々の幸福度を高めることに繋がるのです。
事業の収益性が高まる
売上を増やすために、事業の拡大や多角化を検討する経営者の方は少なくないでしょう。
しかし、事業の拡大には必ずリスクが伴います。
まして、ビジネス環境が変化し続けている今日では、安易に事業を拡大するのは憚られる面も多々あるはずです。
絆徳経営を目指すことによって、事業の収益性を高めることができます。
リスクを負って事業を拡大しなくても、しっかりと収益を上げられる企業体質へと変えられるのです。
事業に余裕が生まれ、社会の次なる変化にも対応しやすくなるでしょう。
収益性を高められる点は、絆徳経営がもたらす大きな恩恵といえます。
組織の絆が深まり持続可能な経営を実現できる
組織はしばしば生き物にたとえられてきました。
経営者がどれほど知恵を絞って施策を講じても、まるで生き物が病気に罹るように組織にほころびが生じてしまうものです。
組織がほころび始めたからといって、権力や恐怖で抑えつけても逆効果になるケースがほとんどでしょう。
組織を良い状態に維持するには、従事する一人ひとりが所属する組織を良くしていきたいと心から思うことが大切です。
絆徳経営は組織の絆をより深め、互いを尊重し合う企業風土をもたらします。
強い絆で結ばれた組織は容易に崩れることがないため、持続可能な経営を実現できる土台が固まるのです。
長い目で見たとき、絆徳経営は向こう数十年、さらには100年以上続く企業を創ることへと繋がっていくでしょう。
絆徳経営のすゝめ

絆徳経営についてより詳しく知りたい方は、『絆徳経営のすゝめ』を読んでおくことをおすすめします。
100年続く一流企業がなぜ「絆」と「徳」を大切にしてきたのか、より良く分かるはずです。
第1章 これからの最強の資産は「絆」である
第2章 絆徳経営でピラミッド型から「丸ダイヤ型」を目指しなさい
第3章 分断を生み出す「7つの罠」とは?
第4章 絆がどんどん強くなる「5Kマーケティング」
第5章 社員との絆が勝手に強くなる「絆徳の人事」
第6章 世界と絆を結べば、いつまでも幸せになる
令和時代を生き抜く経営者の方々にとって、重要なヒントを得られるでしょう。
ぜひ本書を手に取って、絆徳経営への理解をさらに深めてください。
まとめ
今回は「絆徳哲学」をビジネスで生かしていくことの重要性について解説してきました。
絆徳経営とは何か、具体的にどのような恩恵がもたらされるのかが理解できたのではないでしょうか。
さまざまな成功哲学に触れてきた経営者の方にとって、絆徳経営は経営課題を解決するための突破口となり得ます。
絆徳経営への理解をより深め、ぜひ自社での経営に取り入れてみてください。
「三方よし」のビジネス実現へと繋がり、事業の価値をますます高められるはずです。
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