
オウンドメディアリクルーティングという、従来とは少し違った採用戦略が注目されています。
実はこのオウンドメディアリクルーティング、通常よりも難易度が高く、ある程度長期的に継続していかなければ効果が見込めません。
ではなぜ多くの会社が資金と労力を費やし取り入れているのでしょうか?
この記事では、オウンドメディアリクルーティングについて知っておくべきことを幅広く解説していきます。
今までの求人サイトなどを使った採用戦略と何が違うのかや、その効果が分かるようになっています。
具体例や事例なども交えてイメージしやすいように説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
オウンドメディアリクルーティングとは何かを分かりやすく解説

オウンドメディアリクルーティング(略してOMR)とは、その名の通り「オウンドメディア」を使った「リクルーティング」のことです。
・リクルーティング:採用活動
もう少し具体的に表すと以下のようになります。
「自社が運営するメディア(Webサイト)を使って採用情報を発信し、自社に最適な応募者を集める取り組み」
具体例は後ほど紹介しますが、「社員インタビュー」や「自社の取り組み」「この会社で何が得られるのか」などを自ら発信し、それを元に応募者を集める採用戦略です。
オウンドメディアリクルーティングと通常のリクルーティングの違い
通常のリクルーティングでは求人サイトなどに自社の情報を掲載して応募者を集めます。
つまり、他社の媒体を使った採用活動ということです。
対してオウンドメディアリクルーティングでは他社の求人サイトを使わず、自社のメディア(WebサイトやSNS・YouTube)を使った採用活動を行います。
後に記載しますが、この違いが採用活動に関する様々な効果の違いを生み出します。しかし、一見従来の求人サイトなどを使った採用活動の方がうまくいくようにも見えてきます。
「最初からアクセスが集まっている求人サイトを使った方が効率がいいのではないか」と考える方も多いでしょう。
ではなぜ求人サイトなどを使わないオウンドメディアリクルーティングが注目されているのでしょうか。
オウンドメディアリクルーティングはなぜ必要?注目される背景とは

オウンドメディアリクルーティングが注目されている背景には、以下のようなものがあります。
- 情報収集が多様化してきたから(求職者のリテラシーが向上してきたから)
- 働き方が多様化してきたから
順番に見ていきましょう。
理由①:情報収集が多様化してきたから(求職者のリテラシーが向上してきたから)
インターネットやSNSが発展することによって、求職者の情報収集が多様化してきました。
就職活動・転職活動をしている人たちは、企業のHPやSNSからも情報収集をしている人がほとんどです。
株式会社リクルートの調べで「求人メディアを利用したうちの約8割が、同時に企業HPも見ている」ということが分かりました。
出典:求人メディアと企業HPの両方を見る求職者が増加│RECRUIT
また同調査では、企業HPを見た求職者のうち「応募意欲が高まり応募した」と回答した人が37%もいたようです。
さらに株式会社SNSコーチの調査によると
- 44.8%の学生が、就職活動でTwitterを活用した
- そのうちの約半数が、発信内容を見て志望度が上がった
このような結果が得られたとのことです。
出典:22卒就活生の44.8%が志望企業のTwitterをチェック!│FNNプライムオンライン
これらのことからも分かる通りオウンドメディア(企業自身の発信内容)は、求職者にとって大きな情報源になってきています。
優秀な人を獲得するのであれば、ITリテラシーの高い求職者にアプローチをすることが求められてきているということです。
なおSNSを使った採用戦略についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
理由②:働き方や価値観も多様化しているから
次に情報収集だけでなく、求職者の働き方そのものも多様化しているという理由があります。
「フリーランスとして個人で活動する」という働き方は増加傾向なので、業務委託で仕事を発注するケースも増えてくることでしょう。
転職を意識することも一般的になってきており「金額よりも得られるスキルを重視して会社選びをしたい」という価値観を持つ人も増えてきています。
こういった多様な働き方・価値観に対応するためには、従来の採用戦略では不十分でしょう。
市場価値の高い人材に選ばれるには、会社が主体となってリアリティのある情報を発信し、多様な働き方・価値観に共感する姿勢を取る必要があります。
オウンドメディアリクルーティングの効果・メリット

前章で解説した通り、オウンドメディアリクルーティングを行なって会社主体の情報発信をすることで、自社に最適な人材・市場価値の高い人材に選ばれるようになるというメリットがあります。
ここではもう少し細かく、オウンドメディアリクルーティングのメリットや効果を見ていきましょう。
- 潜在層へアプローチできる
- 掲載期間を気にする必要がない(採用活動が資産になる)
- 採用活動自体が自社の認知拡大につながる
メリット①:潜在層へアプローチできる
一般的な転職サイトなどを利用したリクルーティングでは、基本的には顕在層をターゲットとしています。
対してオウンドメディアリクルーティングでは、潜在層にアプローチすることができます。
例えばTwitterを利用して採用活動を発信しているならば、普段からTwitterを使って業界の情報収集をしているユーザー(潜在層)の目に留まる機会があるでしょう。
発信内容が魅力的であれば、それを目にしたユーザーは転職の際に「以前Twitterで見たあの会社をチェックしてみよう」となるかもしれません。
つまりオウンドメディアを使った潜在層へのアプローチがうまくいけば、複数社を比較検討するフェーズを飛ばし、最初から自社を選んでもらえる可能性が上がるのです。
メリット②:掲載期間を気にする必要がない(採用活動が資産になる)
転職サイトなどを利用する場合は、掲載期間やそれに応じた費用などを考えなければいけません。しかし、オウンドメディアリクルーティングではこうした費用やリスクを気にする必要がありません。
もちろんメディアの作成や情報発信にはコストがかかりますが、すべて自社の資産になるため、メリットは計り知れません。
一度作ったコンテンツが半永久的に効果を発揮し続けることになります。
さらに情報発信を続けて資産を蓄積することで集まる人の傾向も見えてくるというようになります。
採用活動において、ブランディングは重要な要素です。
詳しくはこちらの記事で解説しているので参考にしてみてください。
メリット③:採用活動自体が自社の認知拡大につながる
オウンドメディアリクルーティングは、それ自体が話題を呼び自社の認知拡大につながることがあります。
例えば株式会社wevnalでは、元ZOZO執行役員の田端慎太郎氏をマーケティング戦略顧問に迎え入れたことを、メディアやTwitterで取り上げました。
これがSNS上で話題になるなど、自社の認知拡大に貢献しています。
出典:元ZOZO執行役員の田端信太郎氏がwevnalのマーケティング戦略顧問に就任│wevnal
オウンドメディアリクルーティングのデメリットや注意点

ここまでオウンドメディアリクルーティングの良い点ばかりを見てきましたが、当然デメリットや注意点も存在します。
- 採用がうまくいくまでに時間と労力がかかる
- 情報発信の体制を整える必要がある
順番に見ていきましょう。
デメリット①:採用がうまくいくまでに時間と労力がかかる
ここまで見てきたようにオウンドメディアリクルーティングは「自社の適切な情報発信により、多様な価値観を持つ市場価値の高い人材にアプローチする取り組み」です。
情報発信を見てもらい、共感してもらったうえで自社にマッチする人材を採用するとなると、当然時間がかかります。
またそもそも発信した内容が、訪れた求職者のニーズに合致しているとは限りません。
そのためオウンドメディアリクルーティングでは、長期的に戦略を立ててPDCAを回していかなければいけないということになります。
短期的な採用が目的なのであれば、従来通り求人サイトなどを使った方が効率的だという結論になります。
オウンドメディアリクルーティング | 従来の採用戦略(求人サイト) |
長期的 | 短期的 |
潜在層・顕在層 | 顕在層がメイン |
ただし時間がかかるということは、なるべく早いうちからオウンドメディアリクルーティングを行っておかなければ、本当に必要になったときに対応できなくなってしまう可能性があります。
デメリット②:情報発信の体制を整える必要がある
オウンドメディアリクルーティングを行うには、当然オウンドメディアが必要になります。
会社のWebサイトやSNSを持っていない企業は、これらを制作するところから始めなければいけません。
そして準備ができたら、コンテンツを作成する必要があります。
自社の価値観や求める人材を適切に表現するためのライティング、それらを多くの人に見てもらうためのマーケティングなどを行わなければいけません。
このように従来の求人サイトなどを使う方法に比べて難易度が高く、資金が必要だったり労力がかかったりする点に注意が必要です。
こんな会社はオウンドメディアリクルーティングが必要・おすすめ

以上を踏まえると、オウンドメディアリクルーティングは次のような企業におすすめです。
- 時代の変化に伴って、なるべく早いうちから多様な価値観・働き方をする人材を迎え入れるための準備をしたい
- 今すぐの採用ではなく、中長期的にPDCAを回して継続していくための余裕がある
- 転職サイトなどを利用した採用活動に限界を感じている、ミスマッチなどが頻繁に起こっている
- ある程度特徴的な人が集まる会社である
オウンドメディアリクルーティングの具体事例・成功事例

それではもう少しオウンドメディアリクルーティングに関する理解を深めるために、具体事例を見ていきましょう。
事例①:ナイルのかだん(ナイル株式会社)

ナイル株式会社はSEOをメインとしたデジタルマーケティングなどの事業を行っている会社です。
ナイルのかだんとは「生のナイル」を伝えることをテーマに、ナイルで働いている人や会社の文化を発信しているメディアです。
オウンドメディアリクルーティングとしても活用されており、以下のようなコンテンツを発信しています。
前者では対談形式で、編集者を目指す読者の興味を引くようなコンテンツを作成し、記事の途中で「ナイルの編集者募集要項」というボタンを設置しています。
後者では新卒入社したエンジニアがどのようなプロダクトに関わり、どんな困難にぶつかってそれをどう乗り越えたのか、どのように成長できたのか、などが書かれています。
「この会社で働くことによって何が得られるのか」が分かるようになっているのです。
事例②:mercan(株式会社メルカリ)

「メルカリの人を伝える」というテーマで運営されているメルカリのオウンドメディアです。
mercanでは「○○さんとトーク」という形で一人のゲストを呼び、対談形式でインタビューした内容が発信されています。
例えば「メルカリ経営戦略室のメンバーからPMへキャリアチェンジしたのはどういう背景があったのか?」など。
どんな人がどんな環境で働いていて、どういう想いで活動しているのかが分かるメディアになっています。
オウンドメディアリクルーティングの始め方!流れや発信内容を解説

具体的なオウンドメディアリクルーティングのやり方を解説していきます。
以下の流れで戦略を考えたり、オウンドメディアを構築していきましょう。
- プロジェクトの体制を整え、オウンドメディア作成の準備をする
- オウンドメディアを作成する
- コンテンツを作成し、オウンドメディアで発信する
- PDCAを回しながらコンテンツを発信し続ける
順番に見ていきましょう。
手順①:プロジェクトの体制を整え、オウンドメディア作成の準備をする
ここまでで、オウンドメディアリクルーティングは簡単なものではなく、中長期的にコツコツ行っていかなければいけないことを解説してきました。
そのことを理解し、プロジェクトを進めるための準備をする必要があります。
- 採用するポジションを明確にする
- どんな人であれば自社にマッチするのかを考える
- 社内に協力体制を作る
- メディアの作成はどうするのか、コンテンツの作成はどのように行うのかを考える
- 予算はいくらで、月に何本、どのようなコンテンツを発信するかを考える
- KPIを考える
具体的にどんな発信をしていくか、また、どんなユーザーをターゲットにするかを考える際は、以下の記事も参考にしてみてください。
手順②:オウンドメディアを作成する
準備ができたら、情報発信用のオウンドメディアを作成しましょう。
作成するには、以下のような方法があります。
- 自社でWordPressなどのCMSを利用して作る
- 外部のホームページ制作会社に依頼して本格的なものを作る
- Airワークなどのサービスを利用して、手軽にホームページを作成する
ある程度本格的なオウンドメディアの作成を外部に依頼するのであれば、費用は20万円~100万円ほどを見ておくと良いでしょう。
どのようなメディアを作るかによって大きく異なるので、一度制作会社に相談して希望やイメージなどを伝えてみてください。
自分たちの理想とするオウンドメディアを提示して「このメディアのようにしたい」と伝えると、より正確な見積もりを出してもらいやすいでしょう。
手順③:コンテンツを作成し、オウンドメディアで発信する
手順②と少しかぶる部分もありますが、オウンドメディアリクルーティングに必要なページやコンテンツを追加していきましょう。
必要なページには以下のようなものがあります。
- 会社概要
- 事業内容
- 求人情報
- お問合せページ
- よくある質問
- 発信するコンテンツ
発信するコンテンツとしては、以下のようなものがおすすめです。
- 社員インタビュー(どんなプロジェクトに関わりどう成長できたのか)
- 自社の価値観や社風などを伝えられるコンテンツ
- 社内で行っている珍しい取り組み
- 懇親会やイベントなどの様子
- お役立ち情報
- ニュース
当メディア「セミナーズ」を運営するラーニングエッジ株式会社でも、社員へのインタビューを行いコーポレートサイトに掲載しています。
ぜひ参考にしてみてください。
手順④:PDCAを回しながらコンテンツを発信し続ける
コンテンツをただ発信するだけでなく、分析をして改善を行っていかなければいけません。
- どんなページがよく見られているのか
- オウンドメディアを見て応募してきた方は、自社にマッチしているか(メディアで正しく自社について伝えられているか)
- どんなコンテンツがバズを起こしたか
- その他KPIやそれに関する数値目標が達成できているか
などです。
特に最初は手探りになるので、根気よく分析・改善を続けていくことが大切です。
まとめ

「ただ求人サイトに求人情報を掲載しておけば人が集まってくる」という時代から、様々な働き方・価値観に合わせた情報発信をしなければいけない時代になりつつあります。
これからの時代は、会社が主体となって自社の価値観や取り組みを発信しなければ、市場価値の高い人材を獲得することが難しくなっていくでしょう。
そのために有効な手段として、オウンドメディアリクルーティングが注目されています。
- 転職サイトなどを利用した採用活動に限界を感じている
- 時代に合わせた採用活動をしたい
という会社は、ぜひオウンドメディアリクルーティングを取り入れてみてください。
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