
非対面営業であるインサイドセールスは、遠隔操作によって利便性を向上させただけでなく、「マーケティングオートメーション」によってさらに集客率をアップさせてきました。
今回は、注文住宅販売を例に、マーケティング活動を部分的に自動化する「マーケティングオートメーション」についてご紹介します。
記事提供元:社長online
営業活動をよりスムーズにする「インサイドセールス」

インサイドセールスは、相手先を訪問しない内勤型営業のことで、テレアポやメールなどが例に挙げられます。
営業担当者は、見込みのある顧客の選定からアプローチ、初回のアポイント獲得、訪問、受注、その後のフォローまで、すべて対面で行うのが一般的でした。
しかし、このやり方ではどうしてもアプローチできる数に限りがあります。また、アポイントが取れた順に訪問するため、成約の確度が高い方々へのアプローチが遅れてしまい、営業の機会が失われることもよくありました。
インサイドセールスは、そのような営業課題の解決策として考えられ、電話やメール、SNSなどのツールを使って、顧客と非対面でコミュニケーションをとることができ、営業活動をより円滑に行えるものです。
とある注文住宅販売会社では、元々5%程度だったアポイント率がおよそ 10%に増加。20%だった通電率は、最低で60%、多くて96%に上昇しました。1年間で10件程度しかなかった契約数は、なんと30件になったのです。インサイドセールスの強化が業績に与えるインパクトは大きいと言えます。
なぜ、インサイドセールスを強化しただけで契約数が上がったのでしょうか。その答えは、自動化されたマーケティング活動である「マーケティングオートメーション」にあります。
これを組み合わせることで、集客率が上がっていくのです。マーケティングオートメーションの魅力と、実施する際のポイントについて紹介します。
営業を圧倒的に効率化させる「マーケティングオートメーション(MA)」

マーケティングオートメーション(MA)とは、「オートメーション(自動化)」とあるように、マーケティング活動の自動化のことを指します。
注文住宅販売を例にすると、まずは認知媒体や広告媒体、自社WEBサイトを通じて反響を獲得します。そこから、いかに来客してもらうかが、売上アップのポイントとなります。
しかし、反響を獲得したあとに、見込みの高いお客様のみを選出し、アプローチをかけていくのは、決して簡単なことではありません。
MAでは、顧客の情報を振り分けて一元管理することができます。そこから、ニーズに合わせて、共感してもらえる内容のステップメールやイベントの告知メールを、お客様に送ることを可能にしているのです。
その後、メールの開封率や見られているコンテンツによって、顧客の点数付けを自動的に行います。MAは高得点で見込みの高い方々をリスト化し、従業員宛てに送信してくれます。営業担当者は、そのリストを見てお客様に電話をかけていけばよいのです。

このように、見込みの高い顧客が自動で振り分けされることで、営業担当者の負担は大きく軽減されます。さらに、作業効率アップだけでなく、今まで放置してしまっていた層へのアプローチをすることが可能です。
東北にあるS社の電話のみでのアポイント率は、15%ほどでした。しかし、MAでの追客により最終的なアポイント率は32%にまで上がりました。MAでの追客数が、電話のみでのアポイント数を超えるという結果となったのです。

効果的なマーケティングを可能にするMAの3つのメリット
MAには大きく3つのメリットがあります。
①中長期的な顧客管理ができる
多くの会社は長い期間での顧客管理を放置してしまいがちで、接点を一度持ったお客様に対しては、月に1度メールする程度です。特に中小企業では従業員にマルチタスクが求められている中で、中長期的な管理には手が回っていないことが多くあります。
MAは「お客様はどのページを見たのか」「お客様はメールを開封したのか」によって点数付けを行います。これによって、見込みの高い層を選出することが可能です。営業担当者は、リスト化された点数の高い方々のみに電話をかければよくなるため、工数の削減に繋がります。
②顧客育成ができる
最初は、どのお客様も無関心の状態から始まります。そこから、認知・興味関心がある状態→情報収集し自社を理解している状態→他社と比較検討している状態→来店を決断する状態と、段階を踏んで徐々に顧客の温度感を高めていきます。
それぞれの段階で何を考えているのか予測し、自社はどのようにアプローチをしていけばよいのか考えて独自の施策を打つことができるのも、MAの魅力です。
③業績変化の要因を適切に把握することができる
MAでは、メールの開封状況や掲載されているページURLの閲覧状況、回数といった情報について、自動的に蓄積されます。視覚的に効果を把握して業績変化の要因を把握し、PDCAサイクルを回すことで、より効果的なマーケティング活動が可能になるのです。
MAを実施する際の3つのポイント
先ほどご紹介したように、MAでは顧客育成ができますが、それを仕組み化していくためには、3つのポイントがあります。
①カスタマージャーニーを意識
お客様の心理は、時間の経過量や自社との関わり度合いによって異なります。それを可視化したものが、「カスタマージャーニーマップ」です。
ここでは、自社に興味のない「無関心」の状態から、実際に自社へ足を運ぼうと決意する「来店決断」まで、5段階に分けて心理状態を整理します。
お客様が段階ごとに抱く感情や疑問、情報ニーズ、情報に触れた際の心理状態に合わせて、送信するメールの内容を考えていきます。

注文住宅販売を例にMAを活用したメールの内容について、カスタマージャーニーの段階ごとにコツをお伝えします。
「無関心」では、顧客は自社の名前を聞いたことはあるものの、地域の会社を色々探していて自社にはまだ関心がない状態です。
この段階では、会社・価格・デザイン・プランの情報をざっくり伝える内容にしましょう。接触を促すWEBサイトとしては、自社の公式HPがおすすめです。
ここで上手く刺されば、お客様は自社に興味を持ち、資料請求などの次のステップに進みます。
次に「認知・興味関心」の段階に入ると、より詳細な情報を欲している状態になります。
どんな家庭がどんな要望でどんな家を建てたのか、どんな価格でどんなプランがあるのかを詳細に説明し、自社の強みを理解してもらうよう意識しましょう。
お客様に、いかに「自分に合っていて満足度が高そうだ」と感じてもらえるかが重要です。
さらにもっと自社について知りたい、と考えるようになった顧客は「情報収集・理解」の段階です。
お客様は「自分たちの場合はどうなるのか」と、より現実的な情報収集をするとともに、自分たちの抱える不安を払拭してくれる会社なのかどうか調べます。
メールの送信内容は、注文住宅を進めるにあたってのポイントなど、より現実味のあるものが好まれるでしょう。
「比較・検討」の段階まで来ると、顧客は自社の強みや実際の注文の進め方についてだいぶ理解できている状態だと言えます。
注意すべきなのは、お客様が調べているのは自社だけではないということです。
自社が魅力をアピールするように、他社もお客様にアピールしています。
送信するメールの内容は、競合会社と差別化を図ることのできるものにブラッシュアップしていく必要があるでしょう。
これらを終えて、顧客はいよいよ「来店決断」の段階に入ります。「押し売りはされなさそうだ」「スタッフの雰囲気はよさそうだ」といった、来店へのハードルが下がるような内容のメールを送信することで、お客様に来店を決断してもらいましょう。
資料請求シナリオメールの例をご紹介します。こうした詳細なカスタマージャーニーマップの設定によって、メールの開封率は格段に上がっていくのです。

②カスタマージャーニー以外の客層分けも忘れずに
ポイントの1つ目としてカスタマージャーニーについて説明しましたが、段階ごとにメールの送信内容を分ければそれでよいわけではありません。同じ段階にいるお客様でも、不安な点・気になっている点は異なるからです。

MAを活用すれば、資金系のコラムを頻繁に見ているお客様、デザイン系の記事を頻繁に見ているお客様、土地探し系の内容を頻繁に見ているお客様…といったように、ニーズ別に顧客を振り分けすることが可能です。
そのため、興味や不安にマッチしたブログやコラムを紹介することで、メールの開封率を大幅にアップさせることができます。
一般的なメールマガジンの開封率は、平均して10%から15%といわれていますが、ある会社では、MAを活用して、興味や不安に合わせて内容を振り分けたところ、開封率はなんと40%から50%ほどまで上がりました。
このように、お客様がカスタマージャーニーのどの段階にいるのかだけでなく、異なる興味や不安についても考慮することが、客層別MAでメール送信内容を考えていく上で非常に重要なのです。
③高精度な条件設定
実際に契約されたお客様がどのような反響、来店をして契約に至ったのかをよく理解できている企業は、そこまで多くはありません。
しかし、MAを実施すると、見込みの高い方々をパターン化して、条件に沿った動きをする顧客に積極的にアプローチしていくことが必要になります。
MAによって振り分ける「見込みの高いお客様」を見つけるためには、精度の高い条件設定が必要です。注文住宅販売業界では、以下5つの条件が考えられています。
②イベント告知メールを3日間に2回以上閲覧した
③イベントメールのリンク先をクリックした申込フォームに飛んだ
④家づくりコンテンツ・商品ページ・施工事例詳細・展示場ページ・スタッフ紹介を10日間以内にすべて閲覧した
⑤自社のメイン客層にピッタリのお客様
これらを踏まえて、例えばローコスト住宅検討層向けのステップメールでは、建物の品質や対応力をアピールし、ライフサイクルコストが低く、資金の不安を解消できることを訴求することが重要です。






MAを実施していくために必要なこと
マーケティングオートメーション(MA)についてご紹介しました。実際に高い効果があるものの、すぐに始めようとしても設定なども難しいため、つまずいてしまう会社は多くあります。
船井総研では、成功事例のある客層ニーズ別のステップメールにおけるテンプレートなどを配信しています。ローコスト検討層・性能共感層・デザイン共感層・資金不安層などを対象にした各種ステップメール、などの1カ月の制作期間で実装可能なテンプレートをご用意しています。気になる方は、ぜひこちらからお問い合わせください。

執筆者

1990年山口県萩市生まれ。福岡大学を卒業後、2013年に船井総合研究所に入社。
経営コンサルタントとして人材ビジネス会社のコンサルティングに従事し、数多くの企業の業績アップを実現してきた。
2019年に同社史上最年少の28歳で部長に昇格し、現在は総勢50名を超える人材ビジネス専門コンサルタントが所属する部門の統括を務める。