
2020年から続くコロナ禍は長期化の様相を呈しており、ビジネス環境にも多大な影響を与えています。
企業における社員育成に関しても、決して例外ではありません。
次のように感じている経営者の方は少なくないはずです。
- コロナ禍の影響で社員育成が進んでいない
- 制約が多い中、社員育成をどう進めればいいのか?
- 他社は今どのように社員育成を進めているのだろう?
本記事では、コロナ禍で浮き彫りになった社員育成の課題とその解決策について解説します。
自社で社員育成の進め方を検討する際、ぜひ参考にしてください。
コロナ禍で顕在化した社員育成の課題

まずは、コロナ禍において浮き彫りになった社員育成の課題について整理しておきます。
多くの企業が直面している課題と考えられますので、自社に該当するものがないかチェックしてみましょう。
集合研修・対面指導が困難に
従来は当たり前のように行ってきた集合研修や対面による社員の教育・育成。
しかし、コロナ禍に直面したことで大人数での研修や対面指導の機会が激減した企業は多いはずです。
一方で、新たな社員研修の進め方については試行錯誤の途上というケースも十分に考えられます。
社員育成の機会そのものが制約を受けていることは、大きな課題の1つといえます。
オンライン研修に向けたハード・ソフト面での対応
集合研修や対面による育成指導が難しくなったことで、オンライン研修の導入を検討した企業も多いでしょう。
ただし、従来の社員育成計画をそのままオンラインに移行するのは容易ではありません。
オンライン環境を整備するハード面での対応と、それらを活用するソフト面での対応が同時に求められるからです。
とくにOJTのように対面での指導が前提だった社員育成に関しては、オンラインでの実施が困難になりやすいでしょう。
ハード・ソフト面での対応が追いつかなかった結果、社員育成が滞ってしまうことは十分に考えられるのです。
社員に求められる能力そのものが変容
テレワークや時差勤務を導入したことで、従業員のマネジメントが大きく変化したと実感している経営者は多いはずです。
お互いが物理的に離れた場所で仕事を進める以上、社員一人ひとりに自主性を求めざるを得ないでしょう。
したがって、社員研修等をオンラインに切り替えるだけでなく、求められる能力に合わせた社員育成を計画する必要があります。
コロナ禍以前と比較して、求められる能力そのものが変化しつつあるという点を見落とさないよう注意が必要です。
ニューノーマル時代に必要なスキル・能力

コロナ禍以降、社員に求められるスキル・能力はどのように変化したのでしょうか。
とくに顕著な変化として、次の3つのスキル・能力を踏まえておく必要があります。
ICTを使いこなす能力
コロナ禍において、ICT(Information and Communication Technology)を使いこなす能力が従来以上に求められるようになりました。
メールやチャット、ビデオ通話といったツールを活用する機会が大幅に増えたからです。
これまで業務を支援・補完してきたICTが、今や必須のツールになったことは大きな変化といえるでしょう。
ICTを使いこなして業務を遂行することは、ニューノーマル時代において欠かせないスキルの1つとなりつつあるのです。
非対面におけるコミュニケーションスキル
対面でのコミュニケーション機会の減少は、コミュニケーションスキルの重要性をいっそう高めました。
空気感や微妙なニュアンスが伝わりにくい非対面コミュニケーションにおいて、誤解や行き違いを避けなくてはならないからです。
連絡する頻度やタイミングなど、対面以上に気を遣うべき場面も出てくるでしょう。
コミュニケーションは従来からビジネスにおける重要な要素でしたが、ニューノーマル時代にその重要度はさらに増しているのです。
自律的に成果を出す力
テレワークや在宅勤務において、部下の動きが見えづらくなったと感じている管理職・経営者は少なくないはずです。
しかし、社員の動きを逐一監視するマイクロマネジメントに陥ると、社員の意欲を削ぐ原因になりかねません。
事細かに指示を与えなくても社員が自律的に動き、成果を出せるようになる必要があります。
指示を忠実に守る社員を育成するのではなく、自律的に成果を出す社員が求められているといえるでしょう。
したがって、社員育成においても社員一人ひとりの自律性を伸ばすことに重点を置く必要があるのです。
社員育成に求められる変化

ここまで見てきたように、コロナ禍を経て社員に求められる能力は大きな転換点を迎えています。
では、こうした課題に対処するには社員育成をどのように捉えていけばいいのでしょうか。
社員育成に求められる変化についてまとめました。
一律の育成計画から研修のパーソナライズ化へ
OJTに代表される対面型の社員育成においては、対象者の理解度を把握することは比較的容易でした。
実際に実務を任せれば、社員育成の効果が可視化されるからです。
しかし、オンライン研修など非対面型の社員育成では、対象者の理解度や反応をよりきめ細かく把握する必要があります。
一律の社員育成計画から脱却し、研修のパーソナライズ化を進めることが求められるでしょう。
現状のスキルや理解度に応じた研修を個別に設定する形に近づけていくのが望ましいと考えられます。
インプット中心からアウトプット重視へ
コロナ禍以前は、インプット中心の社員育成を実施していた企業もあるはずです。
とくに座学による集合研修は、典型的なインプット中心の研修といえます。
しかし、座学研修の講義映像を配信して各社員に視聴してもらうだけでは、十分な効果を得られるとは限りません。
そこで、研修内容の習熟度を測るために、アウトプットの機会をあらかじめ設定しておくことが重要になります。
前述のアダプティブラーニングと組み合わせ、個々の理解度に応じた柔軟な研修メニューを用意することが求められるでしょう。
社員の自主自律を促す社員育成へ
社員育成の目的は必要な知識・スキルを習得させることではなく、社員一人ひとりが円滑に業務を遂行できるようになることです。
したがって、これからの社員育成のゴールは「自主自律」の実現へと軸足を移していくべきでしょう。
社員育成の目標をトップダウンで決定するのではなく、各自で考えてもらうのも1つの方法です。
自ら能力・スキルの向上にのぞむ姿勢を身につけてもらうことで、社員の自己管理能力の向上を促す効果も期待できます。
オンラインでの社員育成の注意点

継続的に社員育成に取り組む上で、オンライン研修を導入する企業も今後ますます増えていくでしょう。
オンラインでの社員育成には、集合研修や対面での研修にはなかった注意点がいくつか挙げられます。
オンライン研修を実施する際は、次の注意点を考慮しておくことが重要です。
研修時間の設定
集合研修の際には「1時間に1回」「1講座終了ごと」のように、適宜休憩を入れるのが一般的です。
受講者の集中力は何時間も持続するものではないので、適度に休憩を取る必要があるからです。
オンライン研修においては、この傾向はいっそう顕著です。
長くても1時間、できれば45分程度に1回は休憩を設け、受講者の集中力が低下するのを防ぎましょう。
テレワークにおいても、時間の区切りを意識して業務に取り組む習慣を身につけることにつながるはずです。
参加者の事前準備が必要なプログラムにする
研修内容のうち、とくに理解を促したいポイントについては事前課題を設けるなど、準備が必要なプログラムにしましょう。
研修内で発表や意見交換の機会があることをあらかじめ明示しておくのも効果的です。
研修を自分事として捉え、自発的に取り組むよう促すことができるからです。
また、受講者が疑問点や不明点を事前に発見でき、研修参加の意義を見いだしやすくなるという利点もあります。
オンライン研修を想定した教材を準備しておく
研修で用いる教材は、オンラインでの実施を想定したものを準備しておきましょう。
口頭による説明のみでは理解しにくいだけでなく、画面共有などオンライン環境特有のメリットを活かせないからです。
PowerPointで作成したスライド資料など、画面上で確認しやすい形式にすることが大切です。
研修実施前に対象者へ配布しておき、概要を知ってもらうことで理解度を高めることにもつながります。
まとめ
コロナ禍が社員育成に大きな打撃を与え、企業によっては計画変更を余儀なくされたケースもあるでしょう。
しかし、今回解説してきた通り、コロナ禍を経て社員育成のあり方も変容しつつあります。
本記事を参考に、ぜひこれからの社員育成のあり方について検討を進めてください。